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はじめに

資格は自分のスキルを客観的に振り返ることができますが、俗にいう資格マニアのように手当たり次第に保有していても仕事に生かせるかどうかはまた別問題となってきます。そうはいっても書店などに行くと膨大な数の資格関連の参考書が並んでおり、その中にはIT系の資格もたくさんあります。需要がないと書店にも置かれないので、資格の取得はとても重要なことなのでは?と思うこともあるでしょう。この記事では資格なしでIT業界へ就職できるかという点について、また資格の種類について紹介します。

IT系資格の種類について

IT系の資格は、試験を実施(資格を認定)している機関によって大きく2つに分けられます。一つは経済産業省が所管のIPA(独立行政法人情報処理推進機構)実施の試験で、もう一つは様々なベンダーが実施している試験です。

IPAは国の機関で実施されているため、国家試験・国家資格に該当します。ITに関する基本的な知識が問われる「基本情報技術者試験」を含め、IPAには2021年時点では13種の試験があり、それぞれの試験が独立して存在しています。そのため最上位の「情報処理安全確保支援士試験」を受験する場合も、その他試験への合格が条件になることがありません。各試験の関連性はないものの、知識や業務経験年数、知識レベルごとにカテゴライズされています。IPA系資格の導入部分として「ITパスポート」と、情報セキュリティに特化した「情報セキュリティマネジメント試験」があり、その上に「基本情報技術者試験」「応用情報技術者試験」があります。さらに上位レベルになると、9種類の専門性の高い分野ごとの試験に分けられます。その中の一つである「情報処理安全確保支援士試験」に合格すると、サイバーセキュリティを推進する人材として「情報処理安全確保支援士」の資格が認められます。

一方のベンダーの試験はITシステムや製品を提供する企業である「ベンダー」が、自社製品の知識や関連する分野のIT知識を問う独自の試験・資格です。試験に合格すると資格が認定され、証明証等が送られてきます。なおベンダーの試験は製品のバージョンアップ等によって新機能の追加や仕様変更が頻繁に発生することもあり、資格の有効期間が決められていることも多いです。有効性を維持するためには再度最新バージョンの試験を受験する必要があります。ベンダー試験として有名な例は、LPIの実施するLPICやシスコシステムズ社のシスコ技術者認定、オラクル社のオラクルマスター、同じくオラクル社のJava認定試験等があります。なおベンダー試験は1万以上の受験料が発生することも珍しくなく、全体的に高額です。

資格なしの場合は採用されづらくなるのか?

資格勉強が苦手でできれば避けたい、受験はしているものの一向に受からないという人もいるでしょう。資格なしの人がIT業界に就職できないかというと、全くそういったことはないです。もちろん企業が提示する応募条件に特定の資格の保有が入っている場合は別ですが、特に条件にない場合は、希望するIT職種を目指すに当たって免許のように必須とされる資格はありません。

またIT業界は特に実務経験を重視する傾向にあるので、もし資格取得できないという理由で自分にはIT業界が向いていないのでは、と悩んでいるようなことがあれば、まずは資格なし、未経験OKのIT系求人への応募を試してみることをおすすめします。ベンチャー企業やスタートアップ企業においては、例えばプログラマーからSE等へのキャリアチェンジを積極的にバックアップするところもあります。そういった柔軟な社風がある企業を選ぶと、後から目指したい方向性の軌道修正もできるのでなお良いでしょう。

なお資格の中には実務経験がないと取得できないものがあり、これらは経験や資格相当のスキルを裏付けることになるので、保有していることが有利に働く可能性が高いです。また次の項目でも紹介しますが、業界的に一定の評価を受けている資格というのも存在します。

就職活動時の資格取得はアピールするツールの一つになるくらいですが、就職後においては付加価値もあります。試験の合格・不合格は別として、取得に向けて勉強することで仕事のスキルアップに繋げられるという点です。あくまで自分の職種に関連する資格の勉強をしている場合に限りますが、ちょうど自分が取り組んでいる業務の解決の糸口が見つけられたり、便利な方法を見つけたりということが起こります。特にベンダー試験であれば受験料も高額なので受かった方が良いのはもちろんですが、例え不合格になったとしてもそれまでの過程が無駄になりません。また企業によっては、推奨する資格を取得すると受験料を出してくれるところや、報酬があるところ、年収アップ、昇格に繋がるところもあります。中には昇格するために必要な資格を設定しているような企業もあります。

持っていると役に立つ資格を紹介

就職活動時だけではなく、業務上含めて役に立つ資格について、今回は5つ紹介します。

ITパスポート

基本情報技術者試験、応用情報技術者試験と同じ経済産業省所管のIPAが実施する試験の一つで、ITの初心者レベルの知識が問われる試験です。プログラマーやエンジニアを目指す場合の資格としての効力は大きいと言えませんが、IT業界未経験の場合に基礎知識を身につけるには適した試験です。また事務系やサポート系の職種の場合は、基本的なIT知識を持っているということで多少の評価につながる可能性があります。

基本情報技術者試験

ITやコンピュータに関する基礎知識が問われる試験ですが、ITパスポートよりは難しく、専門的な知識が必要となってきます。午前・午後それぞれ150分の試験時間が設定されている長時間の試験です。テクノロジ系、マネジメント系、ストラテジ系という3つのカテゴリーからそれぞれ出題されます。

CCNA(Cisco Certified Network Associate)

シスコシステムズ社が認定するネットワーク系の資格です。同社が実施する試験は複数ありますが、CCNAはエントリーとしての「CCT」に次ぎ、入門的な位置付けとなる資格です。試験内容はシスコ製品に関する知識だけではなく、ネットワークに関する基礎知識が問われるため、ネットワーク系のエンジニアを目指すのであれば知識を習得するためにおすすめの資格です。

LPIC

LPICはLPI(Linux Professional Institute)が実施する、Linux系OSにおけるシステムの仕組みや、コマンドについての知識が問われる資格です。3段階のレベルに分かれていて、レベル1、レベル2はそれぞれ2つの試験に合格することで認められ、レベル3は3つある中から一つを選択して受験し、合格すれば認められるという構成になっています。レベル1ではLinuxのディストリビューション(種類)について、Linuxシステムの仕組みや基本的なコマンドが出題されます。レベル2ではレベル1の応用に近い内容となり、ネットワーク構築に関する知識も問われます。レベル3は、複数OSの混在するシステム構築、セキュリティ重視のサーバー構築、仮想化やクラウドサービスの構築の中から一つを選択します。サーバーエンンジアや、ヘルプデスク、インフラエンジニア等、Linuxに触れる機会が多い、コマンド操作が必要となる職種を目指す場合は有効な資格です。

MOS(マイクロソフトオフィススペシャリスト)

Microsoft社が実施する、Microsoft Office製品全般の知識が問われる世界共通の資格です。Office、Excel、PowerPoint、Access、OutlookといったMicrosoft Officeを代表する5ソフトのスキルや知識が問われます。Windowsを共通のパソコンとして利用することの多い日本企業においては、事務作業や資料作成においてOffice製品を使用する場面も多いので、オフィスワーカーであれば取っておいて損のない資格です。

まとめ

今回見てきたようにIT企業への就職においては実務経験が重視されるため、資格なしということが致命的となる場面は少なく、無理に取得を目指す必要はありません。応募条件に必須資格が記載されてないのであれば、資格なしは問題ないと言えるでしょう。それでも就職後は資格取得を目指すことで業務知識を増やす良い機会となるため、すでに就職している人に関しては、多忙な合間を縫って少しずつでも資格勉強を始めてみてはいかがでしょうか。