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はじめに

世の中に多くのハウツー本が出ていたり、様々なビジネスモデルがあったりと先人達の成功体験やその手法はあらゆる形で残され、活用されています。またIT業界のシステム開発時にはウォーターフォール、アジャイル、ハイブリッド等の開発モデルが紹介されていたり、他にもデータベースのデータモデリングであるERモデルや、ITIL(Information Technology INfrastructure Library)というITサービスマネジメントにおける成功事例を文章や図でまとめた資料があったりと、誰もがそれらを参考に業務を効率的に行える情報が揃っています。この記事ではプロジェクトマネジメントに必要となる知識体系としてまとめられたPMBOKについて、また関連した資格について紹介していきます。なお似た言葉にCMBOKがありますが、CMBOKはコンタクセンターのマネジメントに関する知識体系であるため、両者に特に関連性はないことにご注意ください。

PMBOKの概要

PMBOK(ピンボック)はプロジェクトマネジメントの基礎知識を把握して業務に活用できるようにまとめられている知識体系で、アメリカの非営利団体であるPMIが作成しています。PMBOKはITだけではなく様々な業界で必須となるプロジェクトマネジメントの世界水準とされていて、今もなお時代の流れに沿って数年に一度改訂され続けています。なお2021年10月現在では第7版が最新とされており、第7版は一つ前の第6版より大幅な変更が加えられています。

プロジェクトマネジメントは、期限や予算が定められた中で要件を満たしたプロダクトを開発するためのスケジュールや適切な人員配置、プロジェクト開始から終了までの管理を行う業務ですが、PMBOKはマネジメントするうえでの基準となっているQCD(生産管理)の管理を主な目標としています。QCDは「Quality(品質)、Cost(費用)、Delivery(納期)」の頭文字で、それぞれのバランスに偏りができないようにプロジェクトを進めていくことが基本的な考え方となります。この目標を達成してプロジェクトを成功に導くため、PMBOKでは「5つのプロセス」と「10個の知識エリア」という2つの要素を定義づけしています。なおこの2つの要素は「ウォーターフォール」という開発モデルを前提とした内容となっており、現時点でのPMBOK最新版である第7版では、近年多くの現場で採用されるようになっている開発モデル「アジャイル」の考え方を多く含むようになっているために内容が大きく変わった状況です。しかし実際の開発現場ではプロジェクトの特性によってウォーターフォールやアジャイル、あるいはハイブリッドという開発モデルを使い分けているため、第6版以前の知識が役に立たなくなったわけではありません。そのため以下に第6版までの考え方を解説したうえで、第7版で変わった点を紹介していきます。

「5つのプロセス」について

PMBOKではプロジェクトの開始から終了までの流れを、立ち上げ、計画、実行、監視・コントロール、終結の5プロセスに分けます。QCDを達成するためにプロジェクトのプロセスも定義して管理していくという考えが5つのプロセスに表れています。「立ち上げ」はプロジェクトの認可を得る段階であり、プロジェクトの目的や予算、開発期限、ステークホルダー等を設定します。「計画」ではプロジェクトで必要な作業や人員、スケジューリング等をして詳細を詰めていきます。「実行」は、立ち上げ、計画にて定めた計画に沿って各々に割り当てられたタスクを遂行していきます。「監視・コントロール」では、本来の計画と実行された内容に差異が発生していないかをチェックし、必要があれば修正していきます。最後の「終結」ではQCDの評価をして次回以降に活かせるようにデータとして残し、プロジェクトを終了させます。

「10個の知識エリア」について

10個の知識エリアに含まれるものは、統合管理、コスト管理、調達管理、リスク管理、スコープ管理、資源管理、コミュニケーション管理、スケジュール管理、品質管理、ステークホルダー管理で、プロジェクトにおいてマネジメントするべき対象を細かく分類しています。「統合管理」はプロジェクトの全体管理を指し、その他9分野を全て管理します。「コスト管理」は費用に関する管理、「調達管理」は必要な資材やサービス、ツールの他、業務の委託先等の管理をしてプロジェクトの遅延がないようにコントロールします。「リスク管理」は、想定される問題を管理してあらかじめ回避策や発生時の対応策を考えておきます。「スコープ管理」ではプロジェクトで対応する範囲や成果物を定義します。「資源管理」は、プロジェクトに携わる人員の適切なアサインやタスクの分配、物理的な資源に関する管理です。「コミュニケーション管理」では、プロジェクトメンバー同士が円滑にコミュニケーションを取れる関係づくりをして、問題が発生した場合は解決しながら管理します。「スケジュール管理」では、スケジュールを作成したうえ、プロジェクトの進捗具合等に応じて調整も行います。「品質管理」では、成果物が一定の品質を満たせているかを検証します。「ステークホルダー管理」では、開発メンバーや依頼元、関連部署等といったプロジェクトの利害関係にある関係者間における情報共有や連絡状況を管理します。

「5つのプロセス」と「10個の知識エリア」の関係性

PMBOKでは、5つの各プロセスごとに10個の知識エリアに分類された分野の管理が必要と定めています。なお1プロセスで必ず全ての知識エリアが必要というわけではなく、プロセスによっては全く必要とならないものも出てきます。5つのプロセスを横軸、10個の知識エリアを縦軸とした表を思い浮かべていただけるとわかりやすいことでしょう。さらに平面の表に奥行きを持たせて「3パート」を加えるとPMBOKの考え方を表した表の完成形となります。3パートとは「入力」「ツールと技法」「出力」の3つで、それぞれ設計書作成、実行、納品に該当する部分を表し、この3パートを加えることで表は横5×縦10×奥行き3の直方体のようになります。PMBOKではさらにどのプロセスのどの管理分野で行うべき業務について具体的に提示されていますが、実際のプロジェクトにおいてPMBOKの内容を再現することに注力してしまっては進行の妨げにもなりかねず本末転倒なので、概要を頭に入れたうえで担当するプロジェクトに適した形に応用することが重要となってきます。

大きく変わったPMBOK第7版

ここまで紹介してきた5つのプロセスと10個の知識エリアはウォーターフォール開発モデルに沿った考えですが、第7版ではアジャイル開発モデルの内容を多く取り扱っているのに伴って、これまでのプロセスや管理分野が詳細に決められたプロセス重視から原則重視という考え方に方向転換しています。プロジェクト管理ではなく、プロジェクトの提供に焦点を当てることで、単にプロジェクトのプロセスを管理してその通りに完成させるのがゴールではなく、時には臨機応変に変更も加えながら最終的に価値のある成果物を完成させることを目的としてる様子が伺えます。また第6版までは、全てが計画通りうまくいくことを前提に理論的に構築された結果、まるでコンピュータのプログラミングのように定義されていたPMBOKですが、第7版では刻々と変わっていくプロジェクトの状況変化が考慮され、複雑化する状況において求められることが定められています。具体的に第7版で5つのプロセスは「価値提供システム」「12のプロジェクト提供原則」へ、10個の知識エリアは「8つの行動基準」という項目へ変更されています。

PMP試験とは?

PMPはPMI日本支部が実施するプロジェクトマネジメントに関する経験や知識が問われる国際資格試験です。具体的な試験概要は、PMIの公式ページ内にある「PMP Exam Preparationページ」のリンクより英文で確認が可能ですが、同説明欄に日本語のPDFにアクセスできるリンクもあります。受験費用は一般で555ドル(再受験は375ドル、更新は150ドル)、PMI会員の場合は405ドル(再受験は275ドル、更新は60ドル)です。なおPMIの会員に登録するには入会費10ドルと年会費129ドル、支部年会費50ドルがそれぞれ必要となり、登録すると受験費用の割引の他、PMI発行の書籍類が割引価格で購入できる、セミナー等に安く参加できる等の特典があります。

試験時間は230分で、180問の4者択一問題をパソコン上で回答していきますが、そのうち5問は採点に含まれない予備問題となっていて、今後の試験における有効性を調査するものとなっています。なお合格率や合格点の目安は公式に記載されていませんが、おおよそ合格率が8割(複数回受験している人が多い)、合格点は6割程度と見られています。試験内容は予測型プロジェクトマネジメント・アプローチ、アジャイル、ハイブリッドアプローチに関するもので、問題は「人」「プロセス」「ビジネス環境」の3分野に分けられています。問題数の比率としては「人」と「プロセス」がほとんどを占め、「ビジネス環境」は8%のみです。

PMPは試験の仕組みが独特で、不合格になった場合も一年以内に3回まで受験が可能となっています。3回とも不合格の場合は、最終試験日から1年間受験はできません。また受験資格が細かく定められており、中等教育卒業(高校卒業)の場合は60ヶ月以上、4年制大学卒業の場合は36ヶ月以上の、一意かつ重複しないプロジェクトマネジメントの実務経験が必要となります。PMPは多くのベンダー試験と同様に資格の有効性を維持するために3年ごとに大学の単位のようなポイントを60取得することが義務付けられています。これはPDUというシステムで、教育プログラムを受講したり、講演活動を行ったりすることでPDUポイント(1時間=1PDU)を獲得できます。維持は容易ではありませんが、継続してプロジェクトマネジメントの学習を続けることで知識を化石化することなく、更新し続けることができます。

まとめ

PMBOKは「Project Management Body of Knowledge」の略であることからわかるように、あくまでBOK(知識体系)でありプロジェクトマネジメントの説明書やマニュアルを使って基礎を学んでいるようなものです。多くの仕事をマニュアル通りに進めたとしても全てがうまくいくわけではないのと同様に、一言一句違わずPMBOKで説明されている通りに進むことはほぼ皆無です。しかし基礎を深く把握しているからこそ臨機応変に応用を効かせられるようになるとも言え、さらには第7版からは柔軟さについても考慮されるようになっているため、今後マネジメントを希望する人、すでにマネジメントをしていているもののノウハウが足りずに悩んでいる方はぜひPMBOKを学んで実務に役立ててみてはいかがでしょうか。