支援対象地域:札幌、仙台、関東、愛知、関西、広島、福岡


はじめに

応用情報技術者試験は、基本情報技術者試験で知られているIPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が実施する国家試験の一つで、名称を「AP(Applied Information Technology Engineer Examination)」と略されることもあります。試験名に「応用」と付いているだけあってITに関する応用的な知識全般を問われる試験内容となっており、エンジニアとしてある程度経験を身につけた人が受験する傾向がある試験です。

また資格の取得は転職時に自分のスキルや知識を証明するものの一つとなるだけではなく、企業によっては昇進や給料アップに必須となる、取得することによって給料とは別途資格手当がもらえるという場合もあります。自ら知識を身につけようと受験するのではなく、勤務先での昇進や給料アップのために取得をしなければいけない場合は往々にして対象の試験がどういった内容なのか把握していないことが珍しくないです。今回は数ある資格試験の中から、応用情報技術者試験について詳しく紹介していきます。ぜひ学習を始める前、参考書を購入する前に一読いただけると幸いです。

応用情報技術者試験の位置づけ

IPAには各レベルに応じて全13種類の試験が設けられていますが、応用情報技術者試験はIPAで独自に設定された1〜4のレベルのうち3に分類されており、比較的難しい試験として位置付けられています。その他資格で同レベルにあるものはCCNP、ORACLE MASTER GOLD等が当てはまります。

IT入門者に適した「ITパスポート(IP)」、セキュリティに特化した「情報セキュリティマネジメント(SG)」があり、その上に「基本情報技術者試験(FE)」があるような構成で、さらにその一つ上のレベルとされているのが応用情報技術者試験です。

応用情報技術者試験が適切な対象

応用情報技術者試験の受験が適している人物像として、IPAの公式ページでは高度IT人材となるために必要な応用的知識・技能を持っている人、高度IT人材としての方向性を確立した人と定められています。

ここで言われている「高度IT人材」とは経済産業省が提唱する定義で、IT技術をIT業界内に留めず、その他業界と結び付けて新たなサービスを作り出すことができる人のことを指しています。人材は基本戦略系、ソリューション系、クリエーション系の3つに分けられている他、キャリアが7段階に設定されることとなります。経済産業省は体系的にしたそれらの指標を使い、さらに情報処理技術者試験の試験結果や実務状況も含めて考慮したエンジニアのスキルの見える化を推奨しています。

なお具体的な業務内容で高度IT人材を説明すると、従来のIT人材がシステムの請負開発や運用・保守のみ行うエンジニアを指しているのに対して、高度IT人材はクリエイター、カスタマーサービスのマネージャー、ブリッジエンジニア、プロジェクトマネージャー、アナリスト、コンサルタントといったITサービスを作るだけではなく、それらを活用して新たなサービスを生み出したり、サービスを向上させていく人に焦点が当てられています。

話を戻して、応用情報技術者試験を受験する対象が求められる能力についても詳細を解説していきます。受験者が業務上で求められることは、システム開発における上流工程が一通り行える知識やスキルの保有、マネジメント能力、自力でITシステムによる課題解決ができる能力等です。基本情報技術者試験はシステム開発を行うエンジニアとしての技術的な知識がメインであるのに対して、応用情報技術者試験の対象者はエンジニアとしての能力以外の部分も多く求められることがわかるでしょう。さらにイメージしやすいように掘り下げていくと、経営層で固められた戦略や方針を正しく把握したうえで、情報収集を行い、提案、提案書の作成ができる人物、プロジェクトにおいて各チームをコントロール、管理できる人物、経営層と現場の間でバランスを取りながらプロジェクトを進行し、自身で課題解決を行っていく人物となります。

試験概要について

平成21年に大幅な改正が行われるまで、応用情報技術者試験は「ソフトウェア開発技術者試験」という名称で、単純に技術的に基本情報技術者試験の上位試験という位置づけでしたが、応用情報技術者試験に変わってからはマネジメントや経営戦略に関する要素も多く含まれる内容に変わりました

受験料は7,500円(税込)で、試験は例年4月(春期)と10月(秋期)の年2回実施されています。なおこれまでに4月は第3日曜日、10月は第2日曜日に実施されることが多くなっています。申し込みは春期、秋期どちらも実施日の3ヶ月程前から1ヶ月程度受け付けていて、試験後の合格発表は試験からおよそ2ヶ月後となります。申し込みはインターネット上となりますが、試験は全国62都市の会場に出向いて受けることとなります

なお応用情報技術者試験は特に受験資格や年齢制限がなく、ITパスポートや基本情報技術者試験に合格していなくても受験が可能です。また応用情報技術者試験に合格するとそこから2年間、高度試験受験時の午前I試験が免除となります。なお高度試験とは、同じくIPAの実施するITストラテジスト、システムアーキテクト 、プロジェクトマネージャ試験等、全9種類の専門的な試験のことです。

応用情報技術者試験は午前と午後に分かれていて各150分(合計300分、間に60分の休憩有)、午前はマークシートでの四肢択一で全80問(解答数80問)、午後は記述式で全11問(解答数5問)から構成されています。合格率は20~25%と低めで、午前・午後それぞれ100点満点中60点以上取ることが合格目安と言われています。そのため午前が80点で午後が40点の合計120点であっても合格とはならないことにご注意ください。

応用情報技術者試験の出題範囲

午前問題は大きくテクノロジ系、マネジメント系、ストラテジ系の3分野に分かれていて、各分野はさらに大分類、中分類と細分化されていきます。テクノロジ系は主にハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク、データベース、セキュリティに関する知識や、プログラミング、計算問題等が全50問出題されます。マネジメント系ではプロジェクト、サービスのマネジメント、システム監査に関する問題が全10問出題されます。またストラテジ系は企業活動、法務、システム戦略、企画、経営戦略に関する問題等が全20問出題されます。

午後問題が11問出題されるにもかかわらず解答数が5問となっている理由は、一つを除いて選択式になっているためです。必須となっているのは情報セキュリティに関する内容で、残りの4つは、10分野ある中から解答したいものを受験者自身が選択することとなります。

なおこの記事では2022年1月時点の出題範囲を参照した内容となっていますが、内容は変更される場合もあるため、実際に受験する際は申し込み前にIPA公式サイト内にある応用情報技術者試験の最新シラバス等を確認することをおすすめします。

応用情報技術者試験のベストな勉強方法は?

午前問題の勉強方法としては、重要なワードを丸暗記するのではなく、概要や全体像を把握したうえでしっかりと関連付けながら覚えていくことをおすすめします。覚えることが多いので丸暗記が困難ということもありますが、仮に丸暗記で試験に受かったとしても、試験後に全てを忘れてしまってはせっかくの試験勉強が役に立たなくなってしまうためです。また過去問や練習問題を繰り返し解くことで知識が定着していきます。

午後問題は記述式となるので、浅い知識だけでは対応が難しい部分となります。午前問題と同じく過去問や練習問題で解答方法や出題傾向を掴みながら、問題に慣れていきましょう。また試験では10分野から4分野を選択することとなりますが、あらかじめ得意分野の4つを定めていたにもかかわらず対象分野の出題内容が難しくて手をつけられないという状況も考慮してプラスで1、2分野追加で勉強しておくことをおすすめします。

勉強で利用するツールは参考書や問題集、公式サイトや試験関連サイトの過去問が挙げられます。初めてIT系の試験を受験するのであれば全体像を把握するためにも参考書は必須と言えます。またすでに情報処理技術者試験に合格している場合も、応用情報技術者試験で初めて出てくる内容もあるため、応用情報技術者試験に必要となる知識がまとめられた参考書を1冊で良いので勉強することをおすすめします。

また試験問題の解き方や傾向をあらかじめ把握しておくと、実際の試験時に効率的に解答でき、心に余裕も生まれるので、参考書に付属している問題集や詳しい解説のついた問題集のみの書籍等で慣れておくこともおすすめです。応用情報技術者試験の過去問に関してはIPAの公式サイトや、「応用情報技術者試験ドットコム」というサイトの「過去問道場」で無料で問題と解答が確認できるのでぜひ利用しましょう。なお「過去問道場」では解答だけではなく詳細な解答も付いていて、さらに独自の問題集も無料で公開されています。問題集を解く時は、実際の試験時間を守って実施すると時間配分もわかるようになるので当日焦らなくて済みます。注意点として、過去問だけでもある程度試験問題に慣れることは可能ですが、特に試験内容が前回と比べて変更された場合は過去問で網羅できていない内容も実際の試験で出てくるため、可能な限り最新の問題集も併せて解いておくことをおすすめします。

なお応用情報技術者試験は特に受験資格が定められていないため、初めから受験することも可能ですが、どうしてもIT経験が浅い場合は合格が難しい試験内容であるため、ITパスポートや情報処理技術者試験への合格を経て応用情報技術者試験を受験する人が多い傾向にあります。

まとめ

応用情報技術者試験は合格率20~25%と決して高くないIT試験の一つですが、試験に向けて勉強することでテクニカル面だけではなくマネジメントや経営に関する知識が習得でき、さらに合格すればITに精通していて経験豊富な人材と見られる可能性が高くなり、企業によっては資格手当が受給できることもあります。特にシステムエンジニア(SE)や、ゲームプログラマー、ネットワークエンジニアといった職種で役立つ内容が多く含んでいるのでそれらエンジニアを目指す方や、今後マネジメントをする方、自分のIT知識やレベルを客観的に確認したい方等はぜひ応用情報技術者試験を受験してみてはいかがでしょうか。