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はじめに

IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)ではIT関連の様々な国家資格が実施されています。エントリー資格となる「ITパスポート」、情報セキュリティがメインとなっている「情報セキュリティマネジメント」があり、IPAが実施する各試験の基盤となる「基本情報技術者」「応報情報技術者」があります。そして今回取り上げる「ITサービスマネージャ」を含めた全9種類の高度情報技術者試験に分類された試験があり、これら9つは総じて難易度が高めとなっています。

ITサービスマネージャは試験の名称にもあるようにITサービスを運用・管理するに当たって必要な知識が問われる内容となっていますが、今回は受験を検討している方、またどのような試験なのか気になっている方に向けて概要や取得するメリットを紹介していきます。

ITサービスマネージャ資格の取得が適した職業

ITサービスマネージャは、ITサービスの運用・保守に携わっているインフラエンジニア、またその他に運用・保守の知識が必要とされる各エンジニアの中で特にマネージメント職を目指す人、マネージメントをする立場となった人におすすめの試験です。IPAが対象者としている対象像も指揮・管理をする者とされており、要件を満たしたサービスが提供できるように計画立案、設計、移行、改善をコストパフォーマンス良く実行できる人物としています。

また高度IT人材として確立した専門分野を持っている人物との定義もありますが、この高度IT人材とは近年よく使われる経済産業省が提唱する言葉で、直接ITに関連しない様々な業界とITサービスを結びつけて新たなサービスを生み出せる人材のことを指しています。ITサービスマネージャの対象人物像の前提として高度IT人材に触れられているため、マネージメントする立場の人もこれまでの開発、運用・保守を行うエンジニアを管理するだけではなく、ITサービスを使って新たな分野を開拓できるようなエンジニアをも導いていける程のスキルや知識が求められるようになっていると言えます。

ITサービスマネージャ試験の難易度について

ITサービスマネージャの合格率は一般的に約12〜14%程で難易度が高いと言われている試験の一つです。なおIPAではITスキル標準として難易度のレベルを7段階に分けていて、一番低いレベル1は情報技術に携わる最低限の基礎知識を保有するレベルと定義されており、最上位のレベル7は専門分野を確立させて自らビジネスを創造、牽引していくレベルとしています。その中でITサービスマネージャは専門分野が確立したプロフェッショナルとして保有するスキルを活用し、課題点の発見や解決を自ら行えるレベルのレベル4に分類されています。また専門的な知識だけではなく、基本情報技術者、応報情報技術者で学習する内容を確実に押させていることも求められます。

ITサービスマネージャ試験の概要と詳細

ITサービスマネージャを含めた高度情報技術者試験の特徴として覚えておいた方が良いこととして、試験時間が長いということがあります。ITサービスマネージャに関しては午前I(50分)、II(40分)、午後I(90分)、II(120分)の4つを1日のうちに受験するので合計300分(5時間)も試験を受けなければなりません。なおI、IIの間にはそれぞれ30分の休憩があり、午前と午後の試験の間には1時間の休憩があるのでそれら休憩時間2時間を合わせると、試験会場に1日7時間以上いることになります。普段から集中することが苦手という人は試験勉強はもちろん、集中力を持続する方法を習得することも必要になるでしょう。またほぼ半日試験会場にいるだけの時間も確保する必要があります。

なお午前Ⅰに関しては応用情報技術者試験、その他の高度情報技術者試験への合格、または高度情報技術者試験において午前Ⅰの合格基準を満たしている場合に免除となります。必然的に対象となる試験を事前に受験して条件を満たしている場合とはなりますが、免除が受けられることでITサービスマネージャ試験当日の受験時間を午前I(50分)+休憩30分の合計80分削減できることになります。

ITサービスマネージャの試験構成

午前Ⅰは出題数30問、午前IIは出題25問の四肢択一式、午後Ⅰは出題数3問中2問解答、午後Ⅰは出題数2問中1問解答の記述式という構成になっています。なお合格基準は午前Ⅰ〜午後Ⅰまでが100点満点中60点以上、午後IIに関してはA〜Dの評価ランク式となっていてAが合格水準となります。

出題内容について

午後Ⅰの出題内容は応用情報技術者試験に合格していると免除されるというだけあって、同試験の内容30問で構成されています。分野は大きくテクノロジ系、マネジメント系、ストラテジ系の3つに分けられていますが、テクノロジ系からの出題比率が多くなっています。

午前IIも午後Ⅰの範囲を引き継ぐような構成で、コンピュータ構成要素、システム構成要素、データベース、ネットワーク、セキュリティ、プロジェクトマネジメント、サービスマネジメント、システム監査、法務の9分野から出題され、特にサービスマネジメントからの出題数が多くなっています。その他8分野は均等に出題されるためいずれの分野も偏りなく理解しておくことが求められます。

午後Ⅰからは記述式となりますが、午後Ⅰの記述は40文字前後の短文で回答する内容です。問題数は少ないものの長文なため、あまり時間をかけずに問題文の要点を掴み、簡潔な回答をしていく必要があります。出題範囲はサービスマネジメント、サービスの設計・移行、サービスマネジメントプロセス、サービスの運用、情報セキュリティの運用・管理、ファシリティマネジメントの6分野でこの中のいずれかより3問出題され、うち2問を選択して回答することになります。

普段文章を書く習慣がない場合に苦労しやすいのが午後IIの問題です。解答は1問のみで問題内容自体は特別難易度が高いものではなく時間も120分とたっぷりとられていますが、ITサービスマネージャに関する深い理解ができていることを前提として1,000文字前後での長文回答が必要となるため、読解力や論理的に文章をまとめる作文能力も問われることとなります。また午後IIは点数ではなく独自の評価基準で合否が決まるので、問題の特徴を捉えてあらかじめ過去問等で慣れておく必要もあると言えます。なお評価基準はIPAによると「設問で要求した項目の充足度」「内容の妥当性」「論理の一貫性」「見識に基づく主張」という4項目で、これらの総合評価でAを獲得すると午後IIに合格となります。午後IIに関しては特定のエンジニアの視点や意見に偏らず、総合的な見解をもって論述することを心がけましょう。

ITサービスマネージャの試験日程と受験料

ベンダーが実施する試験と違ってIPAの試験は1年のうち決まった日程でのみ受験が可能です。またITサービスマネージャは年1回、10月の第三日曜日のみの実施となるため、受験の予定を立てる際はご注意ください。なお願書の受付は7月上旬から8月中旬となり、受験料は5,700円(税込)です。

ITサービスマネージャ資格を取得するメリットは?

ITサービスマネージャの資格を取得した際のメリットは、資格が実力の証明になりやすいこと、ITILの知識が得られること、国家資格の一部免除が受けられることの3点が挙げられます。

IT関連の資格に関して、例えばIPAのITパスポートやITILファンデーション、MOS(マイクロソフトオフィススペシャリスト)等のエントリー資格は難易度が低く、該当するスキルを持っていて当然と見られることが多くアピール材料にはなりづらいです。対してITサービスマネージャのような難易度が高い資格は、取得するのにある程度の経験も必要と認識されていることもあり、転職活動等で有利になる可能性があります。

またITサービスマネージャで学習する内容はITILに基づいたものとなっているので共通のワードや概念等が多く出てきます。そのためITサービスマネージャの資格取得に向けて勉強することで自ずとITILの知識が身につきます。ITILは今はITサービス運用において欠かせない要素となっているので、知識があるのとないのではエンジニアとしての活躍の幅がわかってくる可能性があります。

そして受験する人は限られてきますが、ITサービスマネージャの資格を持っている場合、特定の国家資格の一部を免除できます。対象の資格は「中小企業診断士」の1次試験科目の一部、「弁理士試験」の論文式筆記試験選択科目の理工V、「技術士試験」の第一次試験の情報工学部門で、「ITコーディネータ試験」では「専門スキル特別認定試験」の受験が可能となります。

まとめ

ITサービスマネージャは難易度の高い試験で、学習時間も試験時間も長時間必要となります。しかしエントリー系の資格と違って合格することでそれだけのマネジメントに関する知識を保有していることをアピールでき、転職活動等も有利に進められる可能性が高くなります。ぜひPeopleCertの実施するITILファンデーション等のITIL系資格も同時に習得して近年ITサービスの運用において必須とされているITILの知識を万全の状態としておき、高度IT人材として様々な現場で活躍できるエンジニアを目指してみてはいかがでしょうか。