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はじめに

IT関連の試験は、ベンダー試験や国家試験を合わせると種類がたくさんあります。IT業界の職種において教師や医師のように資格・免許が必須となることはありませんが、企業によっては募集している職種にふさわしい特定の資格を応募条件としていることもあります。今回は独立行政法人として国家資格を複数認定しているIPAの情報処理安全確保支援士試験(SC)について紹介していきます。すでにIT業界に身を置いていて次にどの方面の知識を広めようか迷っている方、情報処理安全確保支援士を受験しようと思っているものの詳細がわからないという方はぜひご覧ください。

IPA試験の中の情報処理安全確保支援士試験(SC)の位置づけ

IPAはITを利用して動く社会の動向を常に調査・分析しながらその時代の流れにあったITの指針を示し続けている団体で、いまや欠かすことのできない情報セキュリティ対策に関する制度の運用や、重要でありながら今後不足が見込まれているIT人材の育成、IT人材同士のネットワーク拡大を推進しています。

そのうちの一つが資格試験ですが、基本情報技術者試験(FE)や応用情報技術者試験(AP)等はIT業界にいなくても、名称を聞く機会が多い試験ではないでしょうか。IPAには上記2つを基礎とその応用試験と位置付けている他、ITの職種でなくても必要となるような一般的なIT知識を問う「ITパスポート試験(IP)」、情報セキュリティに特化した基礎知識を問う「情報セキュリティマネジメント試験(SG)」、そして高度で専門的な知識を問われる各分野の試験が9種類と、全部で13種類の資格試験があります。

今回取り上げる情報処理安全確保支援士試験(SC)はこのうち高度で専門的な知識を問われる試験に区分されており、試験に合格して登録手続きを行うことで情報処理安全確保支援士(登録セキスペ)としての国家資格が取得できる仕組みとなっています。

情報処理安全確保支援士試験の合格率と学習に必要な時間

情報処理安全確保支援士の合格率は当初10%前半であったものが令和3年に20%程度と徐々に上がってきてはいますが、依然としてIPAの試験としては難易度の高い試験となります。なおこの合格率の上昇は、情報セキュリティ関連の人材不足を補うための試験内容の修正が影響しているという見方があります。その他試験の詳細については、後の実施概要で紹介します。

試験に対応できる知識を身につけるまでは500時間程の学習時間を要すると言われています。すでに勤めている方で、仕事後に毎日2時間程度の勉強時間が取れたとして250日(およそ9ヶ月弱)は必要という計算になります。ただしこれは全く知識のない初心者に近い状態から始めた場合であって、応用情報技術者試験程度の知識がある場合は、学習時間の目安が200時間程になります。200時間であれば、1日2時間程度勉強できたとして4ヶ月弱で受験に必要な知識が身につけられる計算です。

情報処理安全確保支援士試験の対象像については、専門的なサイバーセキュリティの知識・技能を有効活用してシステムの設計・開発・運用を支援する立場、サイバーセキュリティにおける調査・分析・評価を行って指導や助言を行う立場の者ということが、IPAのサイトで記載されています。自分自身で情報セキュリティを満たしたシステムの開発、インシデントへの対応・解決ができるだけではなく、専門的な立場として指導ができる程度のスキルも必要とされていると言えるでしょう。またセキュリティに関する知識だけではなく、ネットワークやデータベースといった分野についての知識も必要となる旨も記載されていました。

情報セキュリティスペシャリスト試験(旧制度)と何が違う?

情報処理安全確保支援士試験の実施は2017年4月から開始されており、歴史の浅い試験ですが、旧制度である情報セキュリティスペシャリスト試験の内容を基として運用されています。IPAの難易度レベルとしては新旧共に4が設定されていますが、情報処理安全確保支援士試験は合格して登録を済ませることで情報処理安全確保支援士という士業が認められるようになったという点で旧制度と異なります。士業とは資格を持っていないとその職種を名乗れないというものなので、試験合格後に登録手続きを行うことで初めて情報処理安全確保支援士を名乗って仕事ができるようになります。

また、すでに情報セキュリティスペシャリストを取得していた場合は、登録さえ行えばそのまま資格の有効性が情報処理安全確保支援士に引き継がれます。しかし情報処理安全確保支援士は資格の有効性を維持するための講習等があるので、これらは引き続き受講する必要があり、定められている守秘義務に違反した場合に登録の取り消しが行われる可能性があることには注意が必要です。資格の更新が必要なこと、保持義務があることも情報セキュリティスペシャリストとは異なる点となります。さらに情報処理安全確保支援士は企業が資格を保有している人材を活用できるように登録簿がIPAのサイトにて一般公開していることも覚えておきましょう。

情報処理安全確保支援士試験の実施概要

情報処理安全確保支援士試験は4月と10月の日曜日に実施(年2回)され、申し込みは試験日の3ヶ月前〜2ヶ月前くらいまでインターネット上から可能です。会場は47都道府県にそれぞれ最低一つずつはあり、申し込み時に受験を希望した都道府県の中でIPA側が振り分けます。

受験料は7,500円(非課税)で、その他の情報処理系試験と同額となっています。なお試験に合格した後に情報処理安全確保支援士として登録する場合は別途、登録免許税の収入印紙9,000円と登録手数料10,700円が必要となります。

また情報処理安全確保支援士試験を含めた応用情報技術者、ITストラテジスト、システムアーキテクト、プロジェクトマネージャ、ネットワークスペシャリスト、データベーススペシャリスト、エンベデッドシステムスペシャリスト、ITサービスマネージャ、システム監査技術者の試験に合格、または高度試験の午前Iで基準以上の点数となった場合は、その他試験を受験する際に午前Iが免除されます。

試験は午前I(50分)・午前II(40分)、午後I(90分)・午後II(120分)の4つに分かれていて、9:30〜16:30の途中に30分または60分の休憩を挟みながら実施されるので、試験にほぼ一日使うと考えておいた方が良いでしょう。出題数は午前Iが四肢択一式30問、午前IIが四肢択一式25問、午後Iは大問3問うち2問に記述での回答が必要、午後IIは大問2問うち1問に記述での回答が必要となっています。合格率は60%以上ですが、全体で60%ではなく、各科目それぞれ60%以上とならなければいけないことにご注意ください。

各科目で扱われる内容について

午前Iでは非常に幅広い知識が問われます。離散数学、応用数学、アルゴリズム、プログラミング等の「テクノロジ系」、システム構成、オペレーティングシステム、ミドルウェア・ハードウェア等の「コンピュータシステム」、各種設計、ネットワーク系、情報セキュリティ等の「技術要素」、各種要件定義、開発プロセス、構成管理・変更管理等の「開発技術」、プロジェクトマネジメント関連の「マネジメント系」、運用設計、システム監査、内部統制等の「サービスマネジメント」、情報システム戦略、ソリューションビジネス等の「システム戦略」、経営戦略手法、マーケティング等の「経営戦略」、経営・組織論、OR・IE、労働関連・取引関連法規等の「企業と法務」等です。

午前IIはデータベース、ネットワーク、セキュリティといった技術要素、システム開発技術、ソフトウェア開発管理技術といった開発技術、サービスマネジメント、システム監査の知識が問われます。

午後I・IIでは情報セキュリティシステムの各工程、技術、開発管理、関連した法的要求事項に関する内容が問われ、記述式で回答する必要があります。

資格を維持するために必要なこと

情報処理安全確保支援士は登録から3年経過すると更新が必要となります。更新するためには登録免許税・登録手数料の支払いが必要となる他、集合講習を受講しなければなりません。また別途オンライン講習も年1回受講する必要があります。オンライン講習で20,000円、集合研修で80,000円の講習費用も発生しするため、試験料の他に3年間で合計159,700円の支払いが発生します。もし会社で資格取得を推奨されている場合は、試験料だけではなくその後の維持費も負担してもらえるかを忘れず確認しましょう。なお登録免許税・登録手数料は初期登録費用であるため、支払いは1年目のみとなります。

さらに情報処理安全確保支援士は守秘義務があるため、違反した場合は登録の取り消しだけではなく「秘密保持義務違反(親告罪)」「名称詐称」等によって懲役や罰金を受ける可能性もあります。

情報処理安全確保支援士を取得するメリットや役立つ職業

もし転職を考えている場合は、情報処理安全確保支援士の資格を取得することで、情報セキュリティに精通した専門的な知識を保有していることを客観的に示せる状況となります。スキルの証明はもちろんですが、情報処理安全確保支援士としての登録・維持も一般的な社会人として問題のない人物と判断されない限りできない仕組みになっているため、間接的に人柄や性格の証明にもなっていると言えます。また弁護士や公認会計士のように「情報処理安全確保支援士」という士業を名乗れるようになるため、個人事業等を始める場合は名刺やホームページ、SNS上等に明記できるので一つのメリットになることでしょう。

IT関連の資格に関して、初級レベルの資格であると大前提の知識と認識されて持っていてもあまりアピールにならない場合がありますが、情報処理安全確保支援士は難易度が高いという共通認識のうえに国家資格であるため評価はされやすい資格となります。特に政府関連のシステム開発を受けている企業等では情報処理安全確保支援士を含めたIPAの高度試験の合格者を優遇する傾向にあります。なお情報処理安全確保支援士試験に合格することで、同じIPAの実施する試験の一部が免除になることは前述しましたが、他にも中小企業診断士の一次試験の一部免除、便利し試験での論文式筆記試験の一部免除、技術士試験の第一次試験のうち「情報工学部門」の免除や、ITコーディネータの専門スキル特別認定試験の受験資格を得られる等のメリットもあります。

まとめ

IT業界において資格は必須ではないですが、情報処理安全確保支援士に関しては士業となり、合格後に情報処理安全確保支援士として登録することで取得者一覧として名前も公開されるため、キャリアアップできるチャンスを広げられる資格となります。また情報セキュリティに精通しているエンジニアの需要は今後も継続する可能性が高いため、どの資格を取得しようか迷っている方はぜひ今回の記事を参考に情報処理安全確保支援士試験を受験してみてはいかがでしょうか。なお難易度が高く、学習時間や当日の試験時間も長時間必要となるため、全く知識のない状態で情報処理安全確保支援士の資格を取得したい場合は、高度試験に属さない応用情報技術者試験へ合格して午前Iの試験が免除可能な状態としたうえで情報処理安全確保支援士に望むことをおすすめします。