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はじめに

コンピュータネットワーク機器を開発・販売しているシスコシステムズ社は、アメリカのカリフォルニア州サンノゼに本社を置く企業です。ルーターやスイッチ、ブレードサーバーの他、ビデオ会議端末、電話システム、セキュリティソリューション、プロバイダー等、ITインフラには欠かせない多くのサービスを網羅しているため、IT業界に勤めている方のであれば一度はシスコシステムズ社のマークを見かけたことのある方も多いのではないでしょうか。そんなシスコシステムズ社は独自の資格を認定していて、ネットワーク関連の資格試験としては世界的に有名であり、就職・転職活動において有利となるものもあります。今回はシスコシステムズ社の資格の概要や種類、取得するメリット、特に有名な資格「CCNA」について詳しく紹介していきます。ネットワーク関連の知識を習得したいと思っている方、シスコの資格は聞いたことがあって気になっているものの詳しく知らないという方はぜひ読み進めてみてください。

シスコシステムズ社の認定する資格の概要

シスコの資格はいわゆるベンダー資格です。ベンダー資格とはコンピュータ機器やソフトウェア等を開発・販売することをメインとしている企業が独自に認定する資格試験であり、基本的にはその企業が販売している製品に関する知識を問われる内容となっています。シスコの資格ももちろんシスコシステムズ社が販売するルーターやスイッチに関する知識を問われる内容となっており、それら機器を利用したシミュレーション問題や実技試験も含まれていますが、ネットワーク全般に関する知識が問われる部分も多く、シスコシステムズ社の製品を利用していない場合であってもネットワークを理解するための資格試験として取得を推奨する企業があります。日本だけではなく世界的に有名な資格であり、試験によっては英文でしか受験できないものもあります。

なおシスコの資格は2020年2月に試験の構成が大きく改訂されており、出題範囲も近年のIT技術の進歩に伴って拡大、あるいは内容の変更がされています。この改訂の際に統合された試験、廃止された試験等があるため、今回は改訂後の内容に沿って紹介していきます。

資格の種類について

シスコの資格は大きくエントリー、アソシエイト、プロフェッショナル、エキスパート、アーキテクトの5種類に分かれており、その中にさらに複数の試験が存在します。また各区分は、DevNet(ソフトウェア・自動化)、CyberOps(サイバーセキュリティ)、Design(ネットワークデザイン)、Enterprise(ネットワーク技術)、Wireless(無線通信)、DataCenter(データセンター管理)、Security(ネットワークセキュリティ)、Collaboration(IP電話・WEB会議、コミュニケーションツール)、Service Provider(インターネットサービス提供)といった9つの分野で構成されています。

エントリーに該当する資格は「CCT( Cisco Certified Technician)」であり、こちらは区分の通り初心者に適したエントリー資格となっています。エンジニア未経験でも勉強することが受験可能な内容となっていますが、2022年時点では英語の試験しかないことには注意が必要です。また改定前はCCTという試験が存在せず、CCENTという名称であったため、CCTの参考書を探してもほとんど見つからない可能性があります。なおCCENTの参考書はありますが、専用のものはほとんどなくCCNAと一緒になったものが目立ちます。試験の種類はCCT Data CenterとCCT Routing & Switchingの2種類があります。

アソシエイトに該当する資格は「CCNA(Cisco Certified Network Associate)」と「DevNet Associate」で、これらはエンジニアとしての経験が3年以下の人が対象となる試験内容となっています。特にCCNAはシスコの資格の中でも有名な資格で、多くの人が受験して、情報も豊富です。CCTを抜かした中で一番初級のレベルに該当する試験ではありますが、ネットワークに関する幅広い知識が問われるため学習は欠かせません。またシスコ製品のシミュレーション問題も出題されるため、実務経験があると有利です。経験がない場合は実機を用意するのは難しいと思われるため、インターネット上でシミュレーションできるサイトや、参考書を購入すると専用のソフトウェアが付いているものがあるのでそれらを利用して学ぶこととなります。

なお改定前はCCNA Routing & Switching、CCNA Cloud、CCNA Collaboration等、全部で9つの試験区分がありましたが、現在は一つの試験にまとめられています。その分CCNAで問われる範囲はさらに広がり、難易度も上がっていると言えます。また改定前はCCENTと合わせて合格することで初めてCCNAが認定される仕組みでしたが、現在はCCNAを受験するためにあらかじめCCTをしなければいけないという決まりはありません。そのため基本的なネットワーク知識を持っている状態でシスコの資格に挑戦したいと言う場合は、CCNAの受験から始めてみても問題ないでしょう。

プロフェッショナルに該当する試験は「CCNP(Cisco Certified Network Professional)」「DevNet Professional」「CyberOps Professional」で、これらはエンジニアとしての経験が3〜5年以下の人が対象となる試験内容となっています。CCNPはCCNAの上位資格であり、大規模ネットワークの導入・運用・保守が行える程度のスキルや、ネットワークインフラに関する知識が問われる内容となっています。CCNP EnterpriseとCCNP Securityは日本語での試験がありますが、その他は英語試験となることに注意しましょう。試験の種類は全部で7つで、他にはData Center、Collaboration、Service Provider、Cisco Certified CyberOps Professional、CCNP Certified DevNet Professionalがあります。

エキスパートに該当する試験は「CCIE(Cisco Certified Internet Expert)」「CCDE(Cisco Certified Design Expert)」で、これらはエンジニアとしての経験が5〜7年以下の人が対象となる試験内容となっています。CCIEはCCNPの上位資格で、筆記試験に合格することで実技試験を受けられるという仕組みになっており、両方に合格することで資格を認められます。なお筆記試験合格後、実技試験は18ヶ月以内に受けないと無効になってしまうので注意が必要です。また再受験の仕組みがやや複雑なため、実際に受験する際は公式サイト等であらかじめ確認しておくことをおすすめします。試験の種類としてはCollaboration、Data Center、Routing and Switching、Security、Service Provider、Wirelessの6種類あります。

もう一つのCCDEは、ネットワーク設計に関する上級レベルの専門的な知識が問われる試験です。CCDEの資格が取得できるとネットワーク設計エンジニアやITインフラストラクチャチームのリーダー、アーキテクチャチームのネットワークリーダーに相当する実力が認められます。CCIE、CCDEのいずれも英語試験のみであるため、英語能力も必要となります。

最後のアーキテクトに該当する試験はシスコ資格の最上位レベルとなる「CCAr(Cisco Certified Architect)」です。かつてはCCIEが最上位資格でしたが、2010年以降にさらに上位にCCArが新設されました。なおCCArも英語の試験しかないので英語力も身につけておく必要があります。CCDEの資格を取得していることが受験条件となり、指定されたアーキテクチャボードチームメンバーによるインタビュー(面接)が行われる他、アーキテクトに関する課題が与えられ対応していくといった試験内容になります。

シスコ資格を取得するメリットとは?

ベンダー試験であるため受験料は高額ですが、下位レベルのCCNAであっても取得すればネットワークスキルの保有者として国内外でアピール可能な資格なので、さらに上位のCCNPやCCIEを取得すれば尚更アピールできる可能性が上がります。またネットワークはIT業界にいる限り避けては通れない分野なので、ネットワークエンジニアに役立つのはもちろん、サーバーエンジニアやクラウドエンジニア、SE、ITコンサルタントと様々な職種で役立つ知識を身につけられることでしょう。またその他有名なネットワーク関連の資格としては、情報処理技術者試験等を実施するIPA(独立行政法人 情報処理推進機構)によるネットワークスペシャリスト試験(NW)があります。こちらはシスコ製品に関わらず、情報通信インフラにおけるネットワークシステムの計画・構築・運用全般の知識が問われる内容となっているため、特にシスコの知識習得にこだわる必要がないもののネットワーク関連の資格を取得したいという方は、ネットワークスペシャリスト試験を検討してみてはいかがでしょうか。

シスコ試験の共通事項

シスコ試験はIPAの試験のように試験日は決まっていないため、申し込み時に自分が受験したい日(月〜土曜日)を決めます。また試験地は全国にあるピアソンVUE等のテストセンターか、一部(CCENT、Cisco Certified Design Expert Practical Exam、Cisco Certified Design Expert Qualification Exam)を除く筆記試験に関しては自宅でオンライン受験が可能です。受験料はCCTが一番安く15,400円で、CCNAが36,960円ですが、上位レベルのCCIEになると20万円程、CCArでは40万円近くかかります。

シスコの資格は一度取得したら永続的に有効なわけではなく、有効期限があります。有効期限は3年で、それまでに同試験を受験して合格するか上位資格の試験に合格することで期限を更新できる仕組みになっています。有効期限を過ぎてしまうと資格失効となりますので運転免許等と同様に期限を把握しておきましょう。なおシスコのサイトの「認定トラッキングシステム」で自身の有効期限やこれまでの受験履歴が確認できるので、もし忘れてしまったらぜひ活用してみてください。

シスコ資格の中で有名なCCNAについて

ここまでシスコ資格の全体を紹介してきましたが、シスコの試験を受けようとインターネット上で情報を探している人の多くがCCNAである可能性が高いため、最後にCCNAに関してさらに掘り下げて紹介しておきます。

CCNAの資格を取得するために必要な学習時間は160時間程度と見られていますが、実務経験がある場合は縮小できる可能性があります。なお推奨されるレベルとして、1年以上のシスコソリューションの実装・管理経験、基本的なIPアドレス指定の知識、ネットワークの基礎に関する深い知識が必要ということがシスコの公式サイトに記載されています。また2022年5月時点でシスコが公表しているCCNA 試験 v1.0(200-301)の試験範囲は、ネットワークの基礎、ネットワークアクセス、IPコネクティビティ、IPサービス、セキュリティの基礎、自動化とプログラマビリティと6つの大カテゴリーとなっていました。

試験時間は120分で、出題形式は複数の選択肢から1つの正解を選ぶ択一選択、複数の選択肢から複数の正解を選ぶ複数選択問題、正しい選択肢をドラッグアンドドロップする問題、空欄を埋める問題、長文を読んで回答する問題、シスコ機器のシミュレーション環境でコマンド入力等を行うシミュレーション問題と様々です。なお出題される問題数や合格率、合格目安についてはいずれも非公開となっていますが、問題数に関しては多めであることをイメージしておいた方が間違いないです。

コンピュータ試験となるため、合否は終了後にすぐ確認できます。認定証はその場ではもらえず発行まで1ヶ月以上かかります。自分で発行の手続きが必要となるので、会社等で必要になる場合には忘れずに手続きを行いましょう。

まとめ

IT関連の資格は国家試験、ベンダー試験を含めるとたくさんあり、自分がどの資格の取得を目指せば良いか分からないという方もいることでしょう。またIT業界では免許のように必須の資格はないため、本当に資格の保有が必要なのか疑問に思っている方もいるのではないでしょうか。実際資格は必須ではないですが、転職・就職する際に自分の持つスキルをアピールする要素の一つにすることが可能です。また企業によっては取得することで報酬や年収アップ、昇格に繋がるところがあるだけではなく、求人の応募条件に特定資格の取得を記載しているところもあります。特に今回紹介したシスコの資格はより上位の資格を取得することでIT業界において有効活用できる可能性の高い資格となるため、これからエンジニアとして働くためにどの資格を取得しようか迷っている方はぜひ取得を検討してみてはいかがでしょうか。またもしネットワークエンジニアを目指しているのであれば、シスコの試験は必須となる知識がたくさん含まれているため、ぜひ事前に学習しておくべき事項としてチェックしておくことをおすすめします。