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  • 組み込みエンジニア転職市場は活況?転

システム・ソフトウェアを開発するという点では共通するものの、一般的なITエンジニアとは異なった知識・スキルも求められるのが組み込みエンジニアです。そんな組み込みエンジニアの需要は近年になって大きく拡大しており、転職市場に現れた優秀な人材は引く手あまたの状況だともいわれています。現在の待遇に不満を持っている、ステップアップを果たしたいと考える組み込みエンジニアの方はもちろん、組み込み系ではないエンジニアの方も転職を検討したことがあるのではないでしょうか?

それでは、組み込みエンジニアの転職市場は本当に活況を呈しているのか?どんなスキルがあれば転職活動を有利に進められるのか?組み込みエンジニアへの需要はこれから先も拡大するのか?組み込み系への転職を検討している方であれば、気になる市場の動向を詳しく解説していきます。

組み込みエンジニアの仕事

組み込み系とは、家電・通信・産業機器など、汎用コンピューターではない独立した機器に「組み込まれた」コンピューター・マイコンなどを制御するシステムの総称です。つまり、モノである機器が動作する仕組み・コンピューターシステムを開発するのが組み込みエンジニアの仕事です。身近なところでは、スマート家電を思い浮かべる方も多いかもしれませんが、組み込み系技術は非常に幅広い産業・分野で活用されているのも特徴です。ただし1社に長く勤めている組み込みエンジニアの方であれば、ほかの分野はまったく知らないということも考えられるでしょう。

小型機器型組み込み系

AV機器、洗濯機・空調をはじめとした家電製品、ナビゲーションを含む車載機器など、独立した小型機器を制御するシステムを開発する仕事です。組み込みエンジニアがもっともイメージしやすい分野であり、それぞれの機器をユーザーが直感的かつ確実に操作できるようにシステムを開発するとともに、センサーを活用して機器を自動制御する仕組みが盛り込まれるケースも少なくありません。

通信型組み込み系

プライベート・パブリックを問わずにインターネットの活用が欠かせなくなっています。こうしたインターネットに接続する通信機器の高速化を担うのが、通信型組み込み系エンジニアの仕事です。5Gなどを含む通信規格高速化への対応はもちろん、IoT機器への需要も高まっており、安定・確実な通信を実現するための信頼性も求められます。

プラント型組み込み系

工場や発電所などで活用される産業機器・ロボットは、オートメーション化への対応が必須です。こうした産業機器・ロボットを制御するための組み込みシステムを開発するのが、プラント型組み込み系エンジニアの仕事です。製造する製品の品質を担保するため、供給するエネルギーの安定化を図るためにも、汎用性・堅牢性の高さが求められる分野です。

組み込みエンジニアの特徴

幅広い領域をカバーする組み込みエンジニアですが、特定の機能を制御するのに特化したシステムを開発するのが特徴です。また、小型機器型組み込み系に代表されるように、システムのコンパクト化・低コスト化と同時に、誤作動・エラー発生を絶対に避けなければならないのも見逃せない特徴だといえるでしょう。一般的なITエンジニアとは異なる知識・スキルが求められるのはこのためです。では具体的に、組み込みエンジニアにはどのような知識・スキルが必要なのか?どのような特徴があるのか?簡単に解説していきます。

ハードウェア・電子回路の知識が必要

ここまでで解説してきたように、組み込みシステムの開発にはハードウェアとの関わりが欠かせません。上流工程を担当するエンジニアであればハードウェアの設計・開発を担当することもあります。つまり、コンパクト化・低コスト化が命題の組み込みシステム開発では、限られたリソースを最大限活用するためのハードウェアの知識、およびハードウェアを構成する電子回路の知識が必要なのです。開発する組み込み機器に応じて利用するマイコン・基板も異なるため、汎用的に対応できる基本的な電子回路の知識は必ず備えておく必要があるでしょう。

リアルタイムOSの知識が必要

コンパクト化・低コスト化が命題の組み込み機器では、Windowsなどの汎用OSが使われる機会は多くありません。短時間で確実な処理が求められる組み込みシステム開発では、ITRON、VxWorksなどのリアルタイムOSが利用されるケースが多く、組み込みエンジニアにもリアルタイムOSの知識・スキルが求められます。組み込み系の実務経験がない一般的なITエンジニアの場合、ハードウェア・電子回路の知識とあわせ、ハードルの高さを感じる要因になるかもしれません。

C言語・アセンブリ言語の知識が必要

コンパクト化・低コスト化と同時に、高速・確実なリアルタイム動作が求められる組み込み機器では、ハードウェアの制御に長けたC言語のほか、C++、機械語に近い低水準のアセンブリ言語の知識・スキルが求められます。近年では、開発言語としてJavaが利用されることも増えていますが、PythonやRubyなどのいわゆる軽量言語が使われることはほとんどありません。学習コストが高いといわれるC言語が主流であることも、組み込みエンジニアの絶対数が少なくなる要因だといえるでしょう。

若手の組み込みエンジニアは慢性的な人手不足

幅広い知識が必要とされ、スキル習得の難易度も高いといえる組み込みエンジニアは、優秀な人材が圧倒的に不足している現状に加え、参入障壁の高さから若手が不足しているのも特徴です。一般的なITエンジニアと比較した場合、1社に長く努める傾向があるのも組み込みエンジニアに多く見られる傾向です。このため、優秀な人材が転職市場に現れることは多くありません。

組み込みエンジニアの不満は待遇

一方、組み込みエンジニアへのアンケート結果によれば、潜在層も含めた約7割が転職を検討しているともいわれており、その理由の筆頭は「収入面の不満」が大多数を占め、次いで「自分の能力が活かせていない」「会社の将来性」となっています。つまり、自身の知識・スキルを活かせる環境があり、正当な評価・待遇が得られる将来有望な企業があれば、転職してもいいと考える組み込みエンジニアが相当数存在するといえます。

組み込みエンジニアの転職市場

転職市場に目を転じれば、こうした組み込みエンジニアのニーズを受け止めてあまりあるほど、市場規模は拡大しているといえるでしょう。もともと幅広い領域をカバーする組み込み系へのニーズは高かったともいえますが、近年ではIoT化への流れにともなう需要も拡大しており、収集したデータの分析に欠かせないAIとともに、組み込みエンジニアの需要は旺盛です。自動車・金融・メーカー・IT系と、組み込みエンジニアを求める業界・業種が幅広いのも特徴です。

組み込みエンジニアの年収は?

もちろん、組み込みエンジニアだからといって無条件に高年収が狙えるわけではありません。実務経験やスキルのほか、業界や企業の事情によって異なりますが、組み込み系の会社員SE・プログラマー平均年収は約600万円程度だといわれています。これは一般的な会社員ITエンジニアの平均年収といわれる約570万円と近い数字であり、組み込みエンジニアの待遇が飛び抜けて高いわけではないことを示しています。

転職を有利に進めるスキル・資格

ただし、これもほかのITエンジニアと同様ですが、実務経験・スキルによっては高年収が狙えるのも事実であり、必要とされる知識・スキルの幅が広い組み込みエンジニアは、努力次第で能力を高く買ってくれる企業が多いともいえるでしょう。それでは、組み込みエンジニアに求められる必須の知識・スキルのほかに、どのようなスキルを身に付けていれば転職活動を有利に進められるのでしょうか?取得しておくと有利な資格とともに簡単に解説していきます。

AI・IoTの知識

モノのインターネットであるIoT、そして収集したデータを分析・活用するAIは、組み込み系の技術と切っても切れない関係にあるといえます。組み込みエンジニアへの需要が拡大している要因のひとつには、進化途上ともいえるIoT・AIへのニーズが高まっていることも挙げられます。つまり組み込み系だけでなく、IoT・AIの知識を含め、包括的なデータ活用の仕組み作りに携われるエンジニアは、あらゆる企業にアピールできる可能性が高まります。付加価値を提供できる組み込みエンジニアであれば、より幅広い領域で活躍できるようになるでしょう。

英語力

コンパクト化・低コスト化が求められる組み込み系開発では、汎用パーツを活用するケースも多くなります。こうしたケースで求められる意外なスキルが「英語力」です。低コストを実現するためには海外の汎用マイコンを多用する場合もあり、ドライバの組み込み・インストールを含め、正確な動作を担保するには英語マニュアルの読解力が必要だからです。低コスト開発に欠かせない、オフショア開発をスムーズに進めるためにも英語力は必要です。

エンベデッドシステムスペシャリスト試験

独立行政法人である情報処理推進機構が行っているIT系の国家資格試験が、エンベデッドシステムスペシャリスト試験です。組み込みシステムの設計・構築・製造を主導的に行うエンジニアを対象としており、実務経験10年以上の中級〜上級者向けです。組み込み系技術を包括的に理解している証明になるため、キャリアアップを目指した転職にも最適の資格です。

ETEC

組み込みエンジニアとしての実務経験が乏しい、あるいは組み込み未経験のエンジニアが転職活動するのに有利な資格が、JASA(組み込みシステム技術協会)が主催するETEC(組み込み技術者試験制度)です。組み込みエンジニアのプログラミング能力を判定する試験であり、合格・不合格という判定ではなく、試験結果に応じてグレードCからAまででレベル判定されるのが特徴です。グレードB以上であれば現場リーダーとしての知識を証明できるほか、未経験者が意欲をアピールするのにも役立ちます。

OCRES

世界標準のグローバル資格として知られているのが、OCRES(組み込み技術者認定資格試験)です。ファンダメンタル・インターミディエート・アドバンスの3つの資格があり、それぞれ基礎・応用・発展資格として認定されます。アドバンスを取得すれば現場リーダーとしての知識を証明できるほか、英語での受験が必須となっているため英語力をアピールすることもできます。

組み込みエンジニアのキャリアパス・将来性

ここまでで解説してきたように、IoTやAIなど、これからさらに重要度の増してくる技術と密接に関わっているのが組み込み技術であり、組み込みエンジニアの将来は大きく開けていると言っても過言ではありません。ソフトウェア開発を担当するSE・プログラマーがPMを目指す、テスターを担当するエンジニアがテストアーキテクトを目指すなど、専門分野に絞ったキャリアパスも考えられる一方、IoT・AIを含む関連技術を習得し、キャリアパスの幅を広げられるのも組み込みエンジニアの魅力でしょう。

まとめ

需要の拡大に対して組み込みエンジニアの絶対数が不足しているのは事実であり、実際の転職市場も活況だと言っていい状況なのは間違いありません。ただし、一般的なITエンジニアと比較して飛び抜けた高待遇ではないのも事実であり、高年収を狙うには実務経験と幅広いスキルが必要です。エンジニアとして自身の将来性を担保していくためにも、新たな技術を吸収していく姿勢が求められますが、その分の見返りも期待できるのが組み込みエンジニアの魅力でもあるのです。