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情報化が高度に進んだ現代では、有益なデータの収集と活用が、経済市場における企業の競争力を高めていくためのキーポイントになります。その重要な要素となるのがデータベースであり、それを扱うデータベースエンジニアです。肥大化する一方のデータを最大限活用したいという企業ニーズが高まるのに伴い、データベースエンジニアへの需要も拡大しているといえるでしょう。

しかし、データベースエンジニア転職市場の状況は近年大きく変化しています。キャリアアップに向けて転職を検討していたデータベースエンジニアの方はもちろん、データベース業界への転職を考えていたエンジニアの方は戸惑いを隠せないのではないでしょうか?転職市場の状況が変化しているのはなぜなのか?データベースエンジニアの将来性は有望なのか?生き残っていくにはなにをすべきなのか?データベースエンジニアが知りたい、転職市場の現状を解説していきます。

データベースエンジニアの定義

WordPressなどのCMSにも搭載されているデータベースは、今やあらゆる業務システムやWebシステムに欠かせない存在です。これらのデータベースを専門に扱うのがデータベースエンジニアです。一方、WindowsやmacOSなどの汎用サーバOSを利用する、AccessやFileMakerなどのデータベースソフトウェアも存在します。本記事では、これらのパッケージソフトウェアを除き、パブリッククラウド型・オンプレミス型の業務システム・Webシステムで利用されるデータベースを扱うエンジニアを、データベースエンジニアとして解説を進めていきます。

データベースエンジニアの仕事

データベースエンジニアの役割は、膨大な量におよぶ情報をデータベースに適切な形で格納・保管し、必要なデータを素早く検索・取り出して活用できるよう管理することです。これを実現するため、データベースエンジニアの仕事は大きく3つに分類できます。簡単に解説していきましょう。

データベース設計・構築

管理・活用したいデータの種類・方法は企業・組織によって大きく異なります。こうしたクライアントのニーズを汲み取り、意図通りの最適なデータベースを設計・構築していくのがデータベースエンジニアの仕事のひとつです。サーバエンジニアと連携しながら適切なデータベースアプリケーションを選定し、テーブル・フィールドなどの構造を含めて構築していきます。

データベース管理

データベースが構築されたら、それで仕事が終わりというわけではありません。データが追加されていくに従って動作が重くなるデータベースを、適切に管理していくのもデータベースエンジニアの仕事です。具体的には、データベースを含むサーバの最適化、効率的にデータ活用するためのチューニングなどが挙げられます。

データベース運用

データは今や企業・組織の成長を左右する資産です。資産が保管されているデータベースを適切に運用していくのもデータベースエンジニアの重要な仕事です。データ消失などの万一の事態に備えたバックアップはもちろん、機密情報の漏えいに備えたセキュリティ設計・対策、障害時の対応などが運用業務では重要になります。

エンジニアが扱うデータベースとは?

もちろん、データベースにもさまざまなタイプがあり、アプリケーションも様々なものが存在します。タイプやアプリケーションが異なれば、データベースごとに専門の知識・スキルが求められるのは当然であり、どんなデータベースを扱えるかによってエンジニアの市場価値も異なってくると言えるでしょう。以下からは、現在主流になっているデータベースタイプを簡単に解説していきます。

リレーショナルデータベース

現在主流として活用されているのが、行と列で構成された表形式でデータを格納する「リレーショナルデータベース」です。Oracle、Microsoft SQL Server、PostgreSQL、MySQLなどがリレーショナルタイプの代表であり、AccessやFileMakerなどのパッケージソフトウェアもリレーショナルタイプです。「表=テーブル」に含まれる「列=フィールド」という概念を持ち、データを行として追加していくことでデータベースを構成します。複数のテーブルを関連付けられることから関係データベースとも呼ばれ、SQL(構造化クエリ言語)を使って操作するのが特徴です。

NoSQLデータベース

リレーショナルデータベースに対して、SQLを使わずにデータにアクセスするタイプのデータベースが「NoSQL(Not only SQL)」です。NoSQLにもいくつかのタイプがありますが、代表的なKey-Value Store(KVS)を例にすると、保存したい「データ=Value」に対して「一意の標識=Key」を付与することで、1Key=1データの関係性を保つのが特徴です。データの肥大化がパフォーマンスに影響を与えやすいリレーショナルタイプと異なり、パフォーマンスが落ちにくい、簡単にスケールアウトできる、SQLを習得する必要がないのがNoSQLのメリットです。

データベースエンジニアの年収

経済産業省の基準によれば、データベースエンジニアは「IT技術スペシャリスト」に分類されており、2017年に実施された同省の調査では平均年収758.2万円とされています。一般的なITエンジニアが分類される「IT運用・管理」の608.6万円と比較しても、データベースエンジニアは高収入であることがわかります。もちろん、担当する役割・知識・スキル、雇用される企業の事情によって年収が変動するのは当然です。データベースエンジニアとして転職を検討している方の参考になるよう、簡単に解説していきましょう。

運用・保守オペレーター

実務経験1〜3年程度、もしくはITスクールなどで資格を取得した未経験者などは、データベースの運用・保守オペレーターとして、年収300〜400万円程度で勤務するケースが多くなります。データベースの基礎知識を持ち、指示を受けながら復旧・調査を含む運用・保守スキルが最低限求められます。障害原因を推測するなど、ある程度自発的に業務を遂行できるスキルを身につけるのが収入アップへのポイントです。

データベース構築エンジニア

実務経験3年以上で、仕様書・設計書にもとづいてデータベースを構築するエンジニアになると、年収400〜500万円程度で勤務する場合が多くなるでしょう。このクラスになるとSQLはもちろん、ストアドプロシージャの知識、プログラミングスキルも求められます。Web系の開発ではサーバサイドエンジニアと連携することも多くなるため、コミュニケーション能力も重視されます。

データベース設計・構築エンジニア

設計・構築・保守・運用など、データベース全般に関する業務を独力でこなせるようになると、年収500万円以上で採用される可能性が高まります。中規模から大規模システムの経験、AWSをはじめとしたパブリッククラウドの経験、プロジェクトマネジメント経験など、より高いスキルとマネジメント能力が認められれば、700万円程度の高年収を狙うのも可能です。

変化するデータベースエンジニア転職市場

ここまでで、データベースエンジニアを役割ごとに分類し、それぞれで一般的といわれている年収事情を紹介してきました。しかし、それぞれの役割ごとの上限額を考慮に入れても、経済産業省が発表する平均年収に遠く及ばないのを不思議に感じる方がいるかもしれません。これは、データベースエンジニアを取り巻く転職市場が、時代の移り変わりとともに大きく変化していることが要因です。参考までに、データベースエンジニア向けのフリーランス案件をいくつか紹介しておきましょう。

MySQLデータベース業務
・必須要件:MySQL、SQL、ターミナルの実務経験
・歓迎要件:PostgreSQLの実務経験
・待遇:インフラ・データベースエンジニア、〜50万円/月

代理店システム更新
・必須要件:SQLの知識、コード解析力、ETLの知識
・歓迎要件:C言語の経験
・待遇:データサイエンティスト・データベースエンジニア、〜65万円/月

AWS大規模システム設計・運用
・必須要件:AWSの導入経験、運用経験
・歓迎要件:プロジェクトマネジメント経験
・待遇:インフラ・データベースエンジニア、〜95万円/月

案件例を見てもわかるように、単純なデータベース構築・運用業務ではそれほど高収入が望めないのがわかります。しかし、注目すべきは案件数が約290件しか見当たらなかったことでしょう。この案件数は、稀少言語といわれるGolangとほぼ同じであり、需要があるはずのデータベース案件が予想以上に少ないことがわかります。これは、クラウドへの移行が加速するのに伴い、データベースのみの案件が減っていることを示しており、データベースエンジニアには、インフラ・サーバ関連、データサイエンス関連を絡めた複合的な知識・スキルが求められている現状が見えてきます。この状況は正社員を対象にした転職市場でも同様です。

データベースエンジニアがキャリアアップ転職するには?

それでは、データベースエンジニアが転職によってキャリアアップ・年収アップを果たすにはどうしたらいいのでしょうか?求人例を見てもわかるように、データベースエンジニア向けの案件すべての報酬が低いわけではありません。サーバを含めたインフラのスキル、プロジェクトマネジメント経験など、キーポイントになる要素はいくつかあるのがわかります。簡単に解説していきましょう。

NoSQLデータベースの知識・スキル

Oracle、MySQLをはじめとしたリレーショナルデータベースは、開発の現場ではまだまだ主流であり、それぞれの機能改善も継続して実施されています。基本としてリレーショナルデータベース全般の知識を押さえておくのは重要ですが、今後の将来性を含め、NoSQLデータベースの知識・スキルを習得しておくのが肝心です。パフォーマンスが低下しくい、簡単にスケールアウトできるNoSQLは、SQLを学ぶ必要もないため学習コストも低く、適材適所で使い分けられるスキルがあれば大きなアピールポイントになります。

分散処理・ビッグデータの知識・スキル

今後ますます重要視されるビッグデータの取り扱いに備え、Apache Hadoop、Sparkなどの分散処理フレームワークの知識・スキルを習得しておくのがおすすめです。気象・災害予測、遺伝子分析、SNSのリアルタイム解析など、ビッグデータが重要視される場面はまだまだ多く、分散処理はそのために欠かせない技術です。Hadoop、Sparkを共存させての処理も可能なため、どちらも習得しておけば重宝されるでしょう。

フルスタックエンジニアとしての知識・スキル

求人内容を見てもわかるように、高年収データベースエンジニアにはサーバ・インフラのスキル、データサイエンスのスキル、プロジェクトマネジメント経験といった、フルスタックエンジニアとしての資質が求められています。特に現代では、AWSをはじめとしたパブリッククラウド設計・構築のスキル・経験は、キャリアアップ転職に必須だと言えるでしょう。

まとめ

純粋なデータベースエンジニアの需要が減りつつあるのは事実ですが、あらゆるシステムにデータベースが必須である状況は変わったわけではありません。本記事でも紹介してきたように、データベースエンジニアに求められる要素・技術が時代とともに変化しているだけなのです。将来的に求められている技術はなにかをしっかり見極め、新たな技術や関連技術の習得を怠らなければ、データベースエンジニアにも転職によるキャリアアップへの道は大きく開かれているのです。