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はじめに

IT業界には様々な仕事や職種、企業の形態があり、それぞれに得意とする分野があります。そして各業態を表すのにプロバイダーやITコンサルティング、ハードウェア系、ソフトウェア系といった呼称等が使われますが、これらはなんとなくITに関わると想像が付くものの、具体的にどんなことが行われているのかイメージしづらいというものも少なくない可能性があります。また就活や転職活動をしている方の中には、実際に入社してみてその企業の役割を実感できたということもあるのではないでしょうか。今回紹介するSIやSI企業ですが、こちらも自分が関わっていないと実態がわかり辛い分野と言えます。今回はSIとは何かを解説した上で、SI企業の代表例やメリット・デメリットについて紹介していきます。

SI(システムインテグレーター)とは何か?

たとえIT業界で働いたことがなくても、システムインテグレーション、システムインテグレーターという言葉をこれまでどこかで耳にしたことがあるという人もいると思われますが、それが何であるかは実際に関わってみないと分からないものです。「SI」はそのシステムインテグレーターの略であり、SI企業はシステムインテグレーションを行う企業です。和製英語で「Sler(エスアイヤー)」という表記や呼ばれ方をする場合もありますがその場合もSIと同義です。また「情報処理サービス業界」という業界の分類がされる場合も、それが示すのはSIであることを覚えておきましょう。

それではシステムインテグレーションとは具体的に何かということですが、本来は様々なIT機器を連携して利便性の向上や、効率化、新たなサービスを生み出すことを意味します。そのためにシステム設計から開発、稼働後の運用・保守を代わりに請け負う企業のことをSI企業と言います。一昔前のドラマで表現される一般的な会社での仕事風景は、山積みの書類を脇に業務に励んでいるというものがスタンダードでしたが、2022年現在はIT業界ではなくても、誰もが当たり前のようにパソコンやタブレット・スマホに向き合って仕事をしています。それだけIT機器が仕事の現場に普及している状況ではありますが、IT以外の業界において自らシステムの開発をすることはいまだに難しく、外部に依頼することがほとんどです。例えばアパレルやコンビニといったサービス業界の企業がマーケティングを効率的に行うシステムが欲しいとなった場合や、IT業界であっても、AI等の自社に全くナレッジの無いシステムを導入したいといった場合に開発を依頼することになるでしょう。この依頼先が主にSI企業になるということです。

建築業界にゼネコン(ゼネラルコンストラクター)と呼ばれる総合建築業者の存在がありますが、SIはIT業界でのゼネコンに近いポジションと言い表すことができます。アパレル業者等から発注を受けたら、SI企業は自社エンジニアや下請け企業を含めて仕事を分担し、進捗を管理しながら納品に導きます。SI企業によっては設計だけ、あるいは開発だけを受け持つ等、専門分野が限定されている場合もありますが、いずれもIT技術で顧客の課題を解決に導くことを目的とした企業です。なお、「SIer」と「er」を付けて 人のように表現されることもあるSIですが、SIerは職業ではなく、SIを専門とする企業の形態であると覚えておいくことをおすすめします。対してSIerと似たような業務内容が紹介されることのあるSE(システムエンジニア)は、基本的に職業の一つを表します。

SI企業は分類できる

一口にSI企業といっても体系が異なり、その体系はメーカー系、外資系、ユーザー系、独立系の4つに大きくカテゴライズされることが多いです。必ずこの4つに当てはまるというわけではなく、NTTデータにおいてはこれらどこにも属さないことが公式ホームページ上で解説されているくらいです。それでも代表的なものはこの4つに該当すると思ってもらって問題ないです。

一つ目のメーカー系は、自らがハードウェア製品やサービスを展開している企業で、自社製品を取り入れながらSIを行います。多くのグループや子会社を連ねている大企業という特徴があり、企業名も一般的に知れ渡っている有名なところである場合が多いです。

二つ目の外資系は、グローバルにSI事業を展開する企業で、アメリカ系企業やインド系企業が多く見られます。外資系ならではの実力主義的なところもありますが、給料水準も高い傾向にあります。

三つ目のユーザー系は、大企業からSIを担当する部門等が独立し、自社のSIはもちろん、他社のSIを受注するようになった企業を表します。例えば商社系、金融系、通信系等と親会社の業務形態を引き継いだ特定の得意分野におけるSIを展開していることが特徴です。

最後の独立系は上記三つのいずれにも属さず、また親会社も存在せず、SI業を専門とした企業です。自社製品を開発することは少ないですが、その分メーカーやベンダーに縛られることのない自由度の高い提案やシステムの導入をしてクライアントの課題解決を行えるという特徴を持っています。SI企業における4つの分類を紹介したところで、次に各カテゴリーに対応する企業を見ていきましょう。

有名なSI企業の例は?

メーカー系で有名なSI企業としてはパソコンやサーバー機器等の販売も重なっているNECのソリューションイノベータ、ネッツエスアイ、富士通のエフサス、エフ・アイ・ピー、日立のソリューションズ、システムズが挙げられ、これらはメーカー系の3強となっています。またキャノンや日本ユニシス等も該当します。

外資系としてはIBM、オラクル、ヒューレッド・パッカード等が挙げられます。なお給料水準が高いと前述しましたが、外資系がどこでも高いというわけではない点には注意が必要です。それでも実力次第では高給となる可能性があり、労働環境は良い企業が多いという特徴があります。

ユーザー系としてはNTTデータ、野村総合研究所(NRI)が有名です。その他にもみずほ情報総研、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)、三菱UFJインフォメーションテクノロジー等、普段も耳にすることの多い有名企業名が含まれるものが多いです。

独立系は、街中や野球場の看板で良く企業名やロゴを見かけるような企業が多く、また当初アウトソーシングであったところがSIerになったという経緯を持つ企業が多いです。トランスコスモス、大塚商会、富士ソフト、オービック等の企業が該当します。

なお以上のSI企業のうち売上や営業利益のランキングを見ていくと上位を占めているのが富士通やNEC、NTTデータ、日立、IBMといったメーカー系、外資系であるのに対して、年収のランキングを見ると野村総合研究所(NRI)や伊藤忠テクノソリューションズ、大塚商会といった独立系、ユーザー系も上位に入ってくるという傾向が見られました。

課題点が目立つもののメリットもある?

マーケティングにITシステムが使われたり、アパレルや量販店、百貨店であってもECサイトの展開が当然のように行われたり、社内に業務効率化システムを導入したりと、現代のビジネスにITは欠かせません。そのためSI企業の需要が途絶えないという状況がありますが、その分人手も多数必要であり、慢性的な人手不足が継続しているという実情もあります。人手不足を解消できない企業は既存の社員に負担がかかり、残業の増加や常に納期に追われている状態が発生した結果、ブラック企業のイメージが付きまとってしまう可能性があります。また何重にも渡る請負の多層構造も問題となっていて、元請けのSI企業は妥当な報酬がもらえたとしても、二次、三次受けと連なるに従って報酬が下がっていき、水準を下回ってしまうという状況も発生しています。もちろんそれを解消するために確保する報酬を上げる動きは当然ながら行われるため、システム開発を依頼するに当たって発注元は、多額の費用を払わなければいけないという問題も発生しています。

以上に挙げた課題は長年SI企業間に蔓延っているものではありますが、そんんな中でもSI企業で働くメリットはあります。メリットの一つは需要の安定です。様々な業務やサービスのIT化が加速しているため、それだけSI企業への開発依頼は増加しており、特に政府機関や金融、医療関係のシステムを受け持っているSI企業は長期に渡って需要が無くなり辛く継続すると言われています。

またあらゆる分野のプロジェクトに携わる可能性が高いこともメリットの一つです。自社サービスを提供している場合は余程のことがない限り同じ開発を繰り返すことが多くなりますが、請負の場合は発注元の要望によってプロジェクトの内容が大きく異なってくるため、例えばプログラマーであれば、利用する言語が頻繁に変わるという状況が発生し、その結果として幅広い知識やスキルが身につくこととなります。またプロジェクト毎に新たな企業と関わりを持つことも多く、自ずと人脈も広がっていくことでしょう。通常では関わることのない大企業との人脈ができ、独立する際に役立つなんていうこともSI企業ならではの魅力と言えます。

さらにITの知識だけではなく、管理スキルが身につくというメリットもあります。これは、SI企業の社員の業務内容が開発に関わる直接的な作業より、プロジェクトの計画や進捗管理といったマネジメント系に比重が置かれるためです。マネジメントスキルはあらゆる分野で役立つものであるため、転職をする場合には選択肢が広がる、採用の確率が上がるという可能性が出てきます。

SI企業への就職・転職という面では未経験や異業種からの転職もしやすいというメリットも挙げられます。慢性的な人手不足を抱えているという状況もあり、年齢や経験による制限はあったとしても幅広く募集していることが多いです。企業や自身の知識状態によっては入社後に苦労をする可能性もありますが、何の経験もないもののどうしてもIT企業に転職したいという場合において、SI企業の求人はチャンスと捉えることができます。

まとめ

今回の記事でどういったものがSIやSI企業に該当するのかわかっていただけたことでしょう。SI企業は多忙である、一人一人の業務負担が多い等のデメリットが取り沙汰されることもある一方で、IT業界において豊富な経験を得られるチャンスがあり、独立のきっかけや今後のキャリア形成を考える上で役立つ可能性も持ち合わせています。また働き方改革等によって抱えている課題の解決にも目を向けられており、様々な分野でIT化が加速している現状においてSI企業の将来性はあると言えます。専門分野は決めずITスキルや知識を幅広く蓄えたい、異業種からの転職、年齢を重ねてからIT業界へ挑戦してみたいという方はぜひSI企業も検討してみてはいかがでしょうか。ただし働くのであればもちろんブラック企業ではなく、給料も多くもらえるところに入社したいのが当然だと思いますので、就職・転職活動する際は求人情報はもちろん、企業の下調べも入念に行うことをおすすめします。