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ロボット、あるいはデジタルレイバーと呼ばれるソフトウェアを使い、定型事務業務を自動化・代替できる、RPA(Robotic Process Automation)ツールの導入が急速に拡大しています。当然のことながら、RPAの導入・運用に携わるRPAエンジニアへの需要も高まっており、転職市場では年収1,000万円以上の求人を目にすることも珍しくありません。比較的チャレンジしやすい職種ということもあり、RPAエンジニアへの転職を検討している方も多いのではないでしょうか?

しかし、RPAの技術はまだまだ発展途上であるのも事実です。将来的に市場がどう成熟していくのかは議論の余地があるでしょう。そこで本記事では、本当にRPAエンジニアへの転職はおすすめできるのか?転職市場の現状を紹介するとともに、RPAエンジニアの仕事内容やキャリアパスの考え方、業界としてのRPAの将来性を詳しく紹介していきます。

なぜRPAが注目されているのか?

RPAとは、人間が行うPCの処理手順をルールとして登録し、自動処理を実行させることで業務効率化を実現させる取り組みです。自動処理という意味ではマクロに近いものがありますが、ブラウザやクラウドなど多様なアプリケーションを横断的に自動化できるのがRPAの特徴です。定型業務を自動化することで、余裕のできたリソースを生産性向上に割り当てるのがRPAの趣旨だといえるでしょう。

こうしたRPAの特徴は、少子高齢化による生産年齢人口の減少、OECD加盟36か国中21位に低迷する生産性という、日本が抱える課題を解決するのに最適だといえます。これが2016年あたりからRPAの注目が急速に高まってきた理由です。一方、定型業務の自動化で余裕の出来たリソースを削減する=人件費の削減に使えるのもRPAの特徴です。ERPなどと比べて比較的イニシャルコストの低いRPAは、人件費削減との費用対効果(ROI)がわかりやすく、投資に踏み切る日本企業が多いのかもしれません。

RPAエンジニアの仕事

RPAツールにはエンドユーザーコンピューティングという考え方があり、プログラミングの知識がない現場ユーザーでも自ら使える工夫がなされているのも特徴です。しかし実際には、複雑な業務手順を登録するためにプログラミングが必要となることも少なくありません。RPA導入やデジタルレイバー開発に、SIerやITベンダーの力を借りるケースが多くなるのはこのためであり、こうした場面で活躍するのがRPAエンジニアというわけです。具体的に解説していきます。

業務分析・導入フェーズ

RPAの導入効果を最大化するためには、自動化すべき定型業務を洗い出したうえで、効果的に自動化できる適切なツールを選定しなければなりません。つまり、クライアントから業務プロセスにおける課題を含めた情報を引き出して分析し、導入すべきRPAツールの選定までを行うのが業務分析・導入フェーズです。一般的なシステム開発での上流工程にあたるフェーズであり、このフェーズを担当するエンジニアをRPAコンサルタントと呼ぶ場合もあります。このフェーズでは、自動化する業務をフロー化するなど、要件定義・基本設計といった部分までを含む場合がほとんどです。

デジタルレイバー開発フェーズ

要件定義をもとに、業務を自動化するロボットを開発し、RPAを構築していくのがデジタルレイバー開発フェーズです。RPA導入で本当に業務効率化が実現できたのか、どの程度業務負担を軽減できたのかは、デジタルレイバー=シナリオ開発次第です。RPAエンジニアはパーツを組み合わせながら、ときにはプログラミングしながら、誤作動を起こさないように開発を進めていきます。

保守・運用フェーズ

運用が開始された後に、エラー対応やメンテナンスなどが必要になるのはRPAも同様です。これが保守・運用フェーズであり、このフェーズを担当するエンジニアをRPAサポートエンジニアと呼ぶ場合もあります。リモートを含めたエラー・問い合わせ対応や、オンサイトによるバージョンアップ対応・シナリオ修正などが中心になりますが、クライアント企業でのレクチャー・説明会、誤作動時の対応を含めたマニュアル作成などの業務を担当する場合もあります。

RPAエンジニアに求められる知識・スキル

ここまでの解説でおわかりのように、RPAエンジニアの仕事は一般的なシステム開発と大きく違わない一方、高度なプログラミングスキルは必要とされません。SE経験者であれば、比較的簡単にRPAエンジニアに転職できるといわれているのはこのためですが、RPAならでの知識・スキルが求められるのも確かです。特に、RPAコンサルタントとして上流工程を担当したい方が、身に付けておきたい知識・スキルを簡単に紹介しておきましょう。

幅広い業務知識・経験

一般的な業務システム開発においては、方向性を定めるための要件定義・基本設計が非常に重要ですが、バックオフィス業務の自動化が中心になるRPAでもそれは同様です。さらにRPAの場合は、業務効率化に向けて具体的なフローをシナリオに落とし込む必要もあります。つまりRPAエンジニアには、クライアントの課題を正確に把握して具体的な解決策を提案するため、経理・財務・人事・営業などの一般事務作業を含む、幅広い業務知識・経験が求められます。理想的な業務手順を提案するための「創造力」も必要とされるでしょう。

システム開発の経験・スキル

RPA導入から運用までのプロセスは、一般的なシステム開発の手順と大きな違いはありません。要件定義・設計・コーディング・テスト・保守といったシステム開発の経験・スキルは、RPAエンジニアにも求められる要素です。特にRPAコンサルタントとして仕事をしていくのであれば、プロジェクトマネジメント経験の有無が重視されます。

プログラミングの知識・スキル

RPAはエンドユーザーコンピューティングの考え方に基づいたツールではありますが、プログラミングの基礎知識があることを前提にして作られているのも事実です。高度なスキルが必要になる場面は多くありませんが、RPAエンジニアであれば、必要なときに対応できる程度のプログラミング知識・スキルは身に付けておかなければなりません。これがSE・PG経験者がRPAエンジニアへ転職しやすい理由でもあります。

また、実際のRPA開発現場では、Excelを併用した自動化も頻繁に行われます。VBAやExcelマクロの知識・スキルもRPAエンジニアに求められる必要要件だといえるでしょう。

RPAツールの知識・スキル

RPA開発が一般的なシステム開発と大きく異なる点は、RPAツールの導入が大前提となることです。RPAエンジニアであれば、WinActor、UiPath、BizRobo!といったRPAツールの知識・スキル習得が絶対条件になります。RPAツールは大きく「クライアント(デスクトップ)型」「サーバ型」「クラウド型」に分類でき、それぞれに特徴や得意とする自動化業務も異なります。RPAエンジニアとしてツール・タイプの特徴を把握し、適材適所で提案できるようにしておく必要があります。

RPAエンジニアの転職市場

それでは、RPAエンジニアの転職市場は、活況といえる状況なのでしょうか?RPAエンジニアを目指す方が転職のイメージを描きやすいように、公開されている正社員求人情報をいくつかご紹介しましょう。ある転職エージェントでRPAをキーワードに持つ求人数は、検索時で約300件ありました。

新規事業のRPAコンサルタント求人
・必須要件:要件定義・業務フロー作成を主導できること、システム開発の上流工程経験
・歓迎要件:RPA事業に携わった経験、RPAツールの構築・導入経験
・待遇:正社員、年収500万円〜

受託開発のRPA・AIテクニカルリード求人
・必須要件:システム開発におけるPM経験2年以上、ネットワークの基本的な知識
・歓迎要件:RPA・AIプロジェクトの実装経験、統計学・数学の知識
・待遇:正社員、年収600〜900万円

転職市場の中心はどんな企業?

本記事冒頭でも触れたように、多くの企業がRPA導入・運用をSIerやITベンダーに頼っています。それを反映するように、RPAエンジニア転職市場を形成する求人企業は、Sier、ITベンダー、コンサルティングファームが中心だといえるでしょう。RPAメーカー、一般企業の求人も無くはありませんが多くはありません。フリーランス向けの案件もありますが、同じエージェントの検索結果が100件以下と、決して多くはありません。

RPAエンジニアの年収

ただし、まだまだ新しい技術ともいえるRPAは、エンジニアの絶対数も不足しており、転職市場での年収が比較的高めに推移しているのも特徴です。経験者であれば年収は500〜1,200万円程度といわれており、最高3,000万円の年収を提示する企業もあります。未経験者でも400万円前後の年収が見込めるといわれており、素養のある人材を囲い込んで育成したいという、求人企業の思惑が明確に感じられる状況だといえるでしょう。

RPA業界の将来性は?

生産性の向上・人件費の削減が命題ともいえる現代日本では、RPAの導入企業はまだまだ拡大すると見込まれています。一方、RPAが発展途上のシステム・ツールであることを理由に、業界の将来性を杞憂する声があるのも事実です。これらの相反する声を丁寧に拾っていくことで、RPA業界の将来性がある程度予想できるかもしれません。簡単に解説していきます。

現在のRPAはクラス1が中心

バックオフィスの事務業務を中心に、定型業務を自動化する現在のRPAツールは、3段階に分類される進化ステージの第1段階「クラス1」であることがほとんどです。その先の進化には、マシンラーニングを活用したクラス2の「EPA(Enhanced Process Automation)」自立型AIを活用したクラス3の「CA(Cognitive Automation)」が控えており、現在のRPAがそのまま正常進化していくかどうかは不透明です。クラスが進化すればRPAの活用場面も大きく変わるはずであり、不確定要素は少なくないといえます。

ツールではなくサービス市場が拡大する

一方、ツールが進化すればするほど、RPA導入・運用に関連するハードルは高くなるともいえるでしょう。ツールが進化しても業務自動化というRPAの本質が変わらない限り、業務を分析して適切なツールを導入するというRPAエンジニアの価値は下がりません。つまり、RPA業界の将来は、ツール自体の市場ではなく、導入・運用に関連するRPAサービス市場が大きく拡大するという見方があります。進化に向けたRPAツールの開発ステップという不確定要素を考慮に入れても、RPAエンジニアには将来性があると考えられます。

RPAエンジニアが目指すべきキャリアパス

ただし、転職に成功してもスキルセットがそのままであれば、RPAエンジニアとして生き残っていくのは難しいかもしれません。クライアントの業務を正確に把握して適切な解決策を提案できる業務知識・スキルを磨き、RPAコンサルタントとしての道を目指すだけでなく、AIとの融合を見据えたRPAツールの進化もフォローしていく必要があります。これを実行できれば、RPAだけではないシステム開発全般にも役立つ経験が得られるでしょう。つまり、RPAエンジニアの行き着く先は「ITコンサルタント」です。キャリアパスをしっかり描いて、必要な知識・スキルを磨いていくのが重要です。