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定型業務の自動化に特化したITツール、RPA(Robotic Process Automation)の市場規模が拡大しています。比較的導入コストを抑えられ、生産性向上という喫緊の企業課題を解決しやすいのがその理由ですが、なかでも大きくシェアを伸ばしているのが純国産RPA「WinActor」です。そのシェアの高さから、現場担当者としてWinActorの自動化シナリオを作成した経験を持つ方も多いのではないでしょうか?なかには、WinActorのスキルを活かして、成長著しいRPA業界への転職を検討している方もいるかもしれません。

それでは、WinActorのスキル・知識さえ備えていれば、RPA業界への転職を有利に進められるのでしょうか?WinActorエンジニアの転職事情とは?RPA業界で存在感を示すにはどのようなスキルが求められるのか?WinActorを軸にしたRPA業界の転職市場を解説していきます。

WinActorの特徴

WinActorは、NTTアドバンステクノロジが開発・提供する純国産RPAツールです。もともと、NTTグループの設備管理業務改善を目的に研究・開発され、自社グループ内で活用されていたものを一般向けに商品化したRPAツールです。それでは、WinActorとはどんな特徴を持つRPAツールなのでしょうか?前提となる概要を簡単に解説しておきましょう。

PC1台からのスモールスタートが可能

WinActorには、端末ごとにインストールできるクライアント型「ノードロックライセンス版」が用意されており、シナリオ作成可能な「フル機能版」ライセンスを用意すればPC1台からのスモールスタートが可能です。作成したシナリオをほかの端末で処理させる「実行版」も用意されているため、複数端末を活用した業務自動化環境をリーズナブルに構築できるのもポイントです。一部の部署、チームからRPA導入をスタートする、中小企業の業務自動化をリーズナブルに実現する、といった使い方が可能です。

集中管理・大規模運用可能な管理統制ロボ

WinActorには、サーバ設置型のオンプレミス管理統制ロボ「WinDirector」クラウド型管理統制ロボ「WinActor Manager on Cloud」が用意されており、端末にインストールされたWinActorの集中管理が可能です。端末を限定せずに、利用するライセンス数分のシナリオを実行できる「フローティングライセンス版」も用意されているため、大規模なRPA運用環境をリーズナブルに構築するのも可能です。企業規模にあわせた柔軟性の高い運用を実現できます。

サンプルライブラリも付属する簡単操作

画面キャプチャ・オブジェクトタイプが採用されたWinActorは、業務操作の手順を記録し、ドラッグ&ドロップで編集するだけの簡単操作でシナリオを作成できます。日本企業の商習慣を考慮した、シナリオサンプルライブラリが400以上付属しているのは純国産RPAならではの特徴です。マクロの知識・変数の概念さえ理解できれば、 シナリオ作成するのに高度なプログラミングスキルをほとんど必要としません。

国内シェアNo.1の純国産RPA

2020年9月現在で5,300社の企業が導入するなど、WinActorは国内RPA市場でシェアNo.1を誇る純国産RPAツールです。そのため、国内すべてと海外の一部をカバーする、充実したサポートネットワークが構築されているのもポイントです。代理店のひとつであるNTTコミュニケーションズがSalesforceとのAPI連携サービスを提供するなど、代理店独自のサービスが提供されているのも特徴です。

WinActorのスキルを証明するRPA技術者検定

WinActor導入企業数の拡大、代理店であるSIerの拡大に応じ、WinActor技術習得レベルを客観的に評価する制度を求める機運が高まりました。その声に応える形で2018年に登場したのが「RPA技術者検定」です。もともとはSIer向けに実施していたスキル評価・認定制度を一般向けに見直したものであるのが特徴です。RPAの名称が冠されていますが、あくまでもWinActorのスキルを評価・認定する制度です。

入門講座

WinActorの概要や基本を理解したいと考える、エンドユーザー向けの入門講座です。動画講座を受講した後に、20問が出題されるテストが実施され、80%以上の正答率で合格認定されます。インターネット接続可能な日本国内であれば随時受講でき、受験料も無料です。

アソシエイト

WinActorのシナリオ作成経験者を対象にした、独力で複雑なシナリオを作成できるスキルを持つことを証明するための検定です。50問からなる多肢選択方式テストが実施され、70%以上の正答率で合格認定されます。CBT試験会場で随時受験できますが、7,150円の受験料が必要です。

エキスパート

WinActorの機能を深く理解している方を対象にした検定となり、障害時に原因を見つけてシナリオを再構築できるスキルを持つ技術者であることを証明できます。選択問題30問に加え、3問からなる実技試験も実施され、合格の基準は試験ごとの難易度によって異なります。年数回、主要都市の会場で不定期実施されていますが、2万7,500円の受講料が必要です。

プロフェッショナル

エキスパートの合格者を対象にした最高レベルの検定です。既存シナリオの解析や修正、ライブラリ開発のできるスキルを持つ技術者であることを証明できます。年1回程度の不定期開催となっており、実技+面談形式になっているのが特徴です。詳細は検定の都度発表されます。

エキスパート以上の資格を有していれば、名刺などにロゴマークを記載できるため、WinActorを取り扱うSIerへ転職するには非常に有効な資格だといえるでしょう。ただし、RPAの名が付いてはいるものの、実態はWinActorに特化したものだということも忘れてはなりません。資格が邪魔になることはありませんが、RPAツール全般のスキルを証明するものではないため、転職先によってはアピール材料にならないかもしれません。

WinActorエンジニアの転職市場

それではRPAエンジニア、なかでもWinActorエンジニアに限定した場合の転職市場は、どのような状況なのでしょうか?WinActorエンジニアを目指す方が転職のイメージを描きやすいように、公開されている正社員求人情報をいくつか紹介します。ある転職エージェントでは、WinActorをキーワードに持つ求人数は検索時で約20件ありました。

SIerのAIチャット・RPA導入支援エンジニア求人
・必須要件:WinActorもしくはUiPathのシナリオ開発経験者、VBA開発経験者
・歓迎要件:業務自動化に伴うアセスメント・要件整理経験者
・待遇:正社員、年収400〜750万円

AI・RPA・SaaS導入に向けたDX・データ分析・コンサルタント求人
・必須要件:WinActorもしくはUiPathの導入・運用経験、ERP導入・運用経験
・歓迎要件:SASなどを用いたデータ分析経験、クラウドサーバ構築・運用経験
・待遇:正社員、月給25〜80万円

BPO企業のRPAトレーナー求人
・必須要件:3年以上のプログラミング経験、WinActor、UiPath、BizRobo!などの操作経験
・歓迎要件:ITシステム開発、もしくは運用のプロジェクトマネジメント経験
・待遇:正社員、年収450〜750万円

転職市場における求人企業の傾向

同じ転職エージェントでRPAをキーワードに検索すると、約630件がヒットすることを考えれば、WinActorエンジニアを求めている企業はそれほど多くないことがわかります。また、RPAを活用するエンドユーザー企業からの求人はほとんど見当たらず、SIerをはじめとしたサービス提供側の求人が多いのも転職市場の特徴です。WinActorスキルを求めている企業でも、主要ツール全般の知識・スキルが要求されるケースが多く、WinActorエンジニアだから転職を有利に進められるとはいい難い状況だといえるでしょう。

RPAエンジニアに求められているスキル

つまり、転職市場の状況から判断する限り、WinActorエンジニアが転職活動を有利に進めるためには、RPAエンジニアとしての幅広い知識・スキルを身に付ける必要がありそうです。それでは、求められるRPAエンジニアになるためには、どのような知識・スキルを身に付ければいいのか?具体的に解説していきます。

幅広い業務知識に裏付けられた提案力

導入自体はそれほど難しくないのがRPAの特徴ですが、それだけでは導入効果を最大化できません。業務全体を把握してRPAに置き換える定型業務を見極め、投入している人的リソースを効果的に削減するシナリオを作成する必要があります。そのためには、RPAの特性を知り抜いたうえで、適切な解決策を提案できる幅広い業務知識が求められます。この点、社内担当者としてWinActorのシナリオ作成に携わった経験は転職に有利に働くかもしれません。

プログラミングの知識・システム開発の経験

WinActorにも管理統制ロボが存在することからもわかるように、RPAの大規模運用を主導するにはシステム開発の経験が役立ちます。複雑な業務自動化シナリオを作成するためのプログラミング知識もRPAエンジニアに求められる重要な要素です。こうした知識・経験・スキルは、現役エンジニアであれば習得している可能性が高いため、マクロの知識・業務手順の知識さえあればRPAエンジニアに転職するのは比較的容易だといえるでしょう。

プロジェクトマネジメント経験

RPA業界に限ったことではありませんが、年収アップを視野に入れた転職を狙うのであればマネジメント経験は必須です。設計に従ったシナリオを開発する知識・スキルも重要ですが、RPA導入・運用では、なによりも業務改善を実現するための業務把握・要件定義が重要になるからです。システム開発時のプロジェクトマネジメント経験のある現役エンジニアであれば、RPA業界への転職も有利に進められる可能性が高まります。

RPAツールの幅広い知識

RPAツールの提供形式にはクライアント型・クラウド型・サーバ型などがあり、ツールごとに特徴や操作方法も異なります。RPAエンジニアには、高度なプログラミングスキルは要求されない一方、顧客に最適なツールを選定するためにも、RPAツールに関する幅広い知識が求められます。この点、WinActorの操作経験しか持たない方は不利かもしれません。まずはSIer所属のRPAエンジニアなどに転職し、シナリオ開発を中心に各ツールの知識・スキルを磨いていくのがおすすめです。

RPAコンサルタントを目指そう!

RPAは今後の需要拡大がもっとも期待されている分野ではありますが、成長途上のテクノロジーであるのも事実です。国内No.1のシェアを誇るWinActorといえども、革新的なツールが登場すれば勢力図が一気に変わってしまう可能性もあるのです。あるツールに特化したスキルに頼っているだけでは、将来的に仕事を失ってしまうことも考えられるでしょう。RPA業界で存在感を保ちながら活躍していくには、ツールの存在に左右されないポジションを確保するのが重要です。つまり、プロジェクトの上流工程を担当し、業務改善・自動化による生産性向上というRPAの存在価値を提供できる「RPAコンサルタント」こそ、WinActorエンジニアが目指すべきポジションなのです。