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  • システムエンジニアが起業するには?成

会社に所属するシステムエンジニアとして上流工程の経験を積んだ方なら、独立・起業を検討しているのではないでしょうか?起業へのハードルが大幅に下がった現代においても、利益率が高く手元資金をそれほど必要としないIT業界は、起業するのにピッタリの業界だといえるからです。業界事情に詳しく、クライアントのニーズを把握しているシステムエンジニアなら、まだまだ成長の余地があるITの将来性も起業への後押しとなるでしょう。

ただし、起業したシステムエンジニアのすべてが成功できるとは限らないのも事実です。設立した会社を清算し、従業員として再就職したという事例を知っている方も少なくないかもしれません。それでは、起業したシステムエンジニアの成功、失敗を分ける要素とはなにか?システムエンジニアが起業を成功へ導くためのポイント、会社設立に向けたステップなどを紹介していきます。

システムエンジニアの起業とは?

起業とは、新しく事業を起こす=開始することです。個人で事業を開始する場合は開業という言葉が使われますが、起業といった場合は法人を設立して事業を開始する場合を含め、より幅広い意味で使われます。つまり、システムエンジニアの起業といった場合、個人事業として起業する、法人を設立して起業する両方の意味を含むと考えていいでしょう。

個人事業として起業する

「個人事業の開業・廃業等届出書」を所轄税務署に提出し、個人として独立した事業を営んでいく起業方法です。ビジネスモデルとしては、フリーランスのシステムエンジニアとして、クライアントから開発案件を受注する、エージェントに登録して開発案件を紹介してもらうパターンが多いでしょう。この場合、開発案件を選ぶ自由度はありますが、働き方としては会社員時代と大きく変わりません。これまでの経験・スキルを活かしながら、もっとも手軽に実行に移せる起業方法だといえます。

システムエンジニアからステップアップして、ITコンサルタントとして個人事業を起業するパターンも考えられます。上流工程の経験を活かしてプロジェクトマネジメントを担当できれば、フリーランスSEとして活動するよりも高収入を得やすくなります。

法人を設立して起業する

法務局への登記申請を経て株式会社・合同会社を設立し、法人として事業を営んでいく起業方法です。数人のシステムエンジニアが集まって共同創業することが多くなりますが、ビジネスモデルとしては、法人としてクライアントの開発案件を一括受注する、もしくはベンチャー・スタートアップとして、新たなアイデアに基づいたサービスやシステムを開発・拡販していくというパターンが考えられます。個人では限界のある事業規模を大きく拡大していけるという魅力があり、個人事業主の次なるステップとして法人設立を実行に移す方も少なくありません。

システムエンジニアが起業するメリット・デメリット

システムエンジニアが起業を検討する動機・目的はさまざまですが、本当に目的を達成するための最適の手段が起業なのか?起業方法によって異なるメリット・デメリットを踏まえたうえで再考しておく必要があります。

個人事業で起業するケース

個人事業として起業する最大のメリットは、簡単な手続きですぐにはじめられること、実力次第で年収アップが狙えることでしょう。仕事を自由に選べるため、ライフスタイルにあわせた働き方を実現できるのも魅力です。自分の裁量で仕事量や収入をコントロールしたいシステムエンジニアには、最適の起業方法だといえます。

一方、会社が代行してくれていた保険・税金・経理・営業面は、すべて自分で行う必要があります。本業以外の業務が増え、すべての責任が自分に降り掛かってくるのはデメリット面だといえるかもしれません。ただし、自身を律してコントロールできる能力さえあれば、起業を成功させるのは難しくありません。

法人設立で起業するケース

法人を設立して起業する最大のメリットは、クライアントからの信用を得やすく、成長に応じて事業規模を拡大していけることでしょう。新たな価値を提供するサービスを開発するなど、やりがいのある事業を手がけやすく、IPOによって大きな利益を手にできる可能性も生まれます。独創的なアイデアを形にしたい、事業を大きく成長させたいといった、上昇志向の強いシステムエンジニアには最適の起業方法です。

一方、会社設立の段階を含め、それなりの資金や手続きの手間が必要なのはデメリットです。従業員を雇用すれば給与や保険・税金の支払が必要であり、開発が軌道に乗るまでの運転資金も必要です。法人税はもちろん、どんなに赤字でも毎年7万円程度の住民税も支払わなければなりません。起業するにはしっかりとした資金計画が重要です。

システムエンジニアが起業を成功に導くには

個人事業として起業する場合は、報酬・保険・税金・経費などの収支、営業を含む経営面にも気を配る必要はありますが、基本的な働き方は会社員システムエンジニアの延長上にあるといえます。事業を営むうえで必要な知識は習得する必要がありますが、比較的起業しやすく成功しやすいのも事実です。しかし、会社を設立しての起業はそう簡単ではありません。以下からは、会社設立を前提に、システムエンジニアが起業を成功に導くため、押さえておくべきポイントを紹介していきましょう。

起業する目的・目標を明確にする

どのような理由・動機で起業を決断したのか、起業する目的・達成すべき目標とともに、会社が果たすべきミッションを明確にしておく必要があります。なんのために会社を設立したのか、どんな目標を達成すべきかがわからなければ、筋の通った事業計画を立案できないからです。組織のパフォーマンスを最大化するためにも、全員が同じ方向を目指せる明確な目的・目標が必要です。

経営者であることを忘れない

自分のことだけを考えればいい個人事業と異なり、会社組織になれば代表自らがやらなければならないことが飛躍的に増大します。特に起業したばかりでメンバーが少なければ、雑用をすべてこなしながらも、会社の方向性を的確に判断する経営者としての役割も果たさなければなりません。開発を含む技術的なことには、一切関わる暇がなくなる可能性もあります。なによりも開発現場が好きというシステムエンジニアの方は、起業に向いているとはいえないないかもしれません。

専門家の協力を仰ぐ

会社設立時の手続きはもちろん、税金の申告・支払、各種保険の加入手続き・支払などは、経営者自ら行えば余計な手数料がかからないのは事実です。しかし、複雑な各種手続きを自ら行っていたのでは、会社を成長させるという経営者の本業に支障が出てしまいます。素直に専門分野の各士業に協力を仰ぐのが得策です。たとえば、株式会社設立には26万円前後の費用がかかりますが、顧問契約締結を前提に20万円程度で会社設立を代行してくれる税理士法人もあります。起業初年度は顧問料を割引してくれるケースもあるため、うまく活用して本業に集中できる時間を作るのが重要です。

営業力を強化する

いくら起業しても仕事がないのでは経営は成り立ちません。できるだけ早い段階から経営を安定させていくためにも、営業力を強化しておく必要があるでしょう。システムエンジニアとして上流工程を担当していたのであれば、人脈を頼りにある程度の案件は獲得できるかもしれませんが、それがいつまでも続くとは限りません。もちろん、自社サービスを売り込むのにも営業力は必要です。信用を得やすい法人の立場を利用して足で案件を稼ぐ、コーポレートサイト立ち上げを含めたマーケティング活動を展開するなど、やれることはなんでもやる努力が必要です。

メンバー探しが重要

株式会社、合同会社などは一人でも設立可能であり、個人事業を法人化した一人役員の会社も存在します。しかし、成長に伴って事業規模を拡大していける法人のメリットを活かすには、共同創業者を含めた一緒に働くメンバー探しが重要です。もちろん、事業規模を考慮せずに多くのメンバーを引き入れたのでは経営が破綻してしまいます。少人数から成長にあわせて徐々にメンバーを増やしていくのがポイントであり、会社が向かうべき方向性を共有でき、お互いを尊重しながらも有意義な意見交換のできるメンバーを探すのが重要です。起業の準備段階として、客先常駐のフリーランスでさまざまな現場を経験するのは、人脈づくり、メンバー探しにも有効な方法かもしれません。

法人設立までのステップ

最後に、法人設立までのステップを簡単に紹介しておきましょう。日本では株式会社が圧倒的多数を占めていますが、近年ではアップルジャパンに代表される合同会社も増えています。合同会社には決算公告が不要、定款認証が不要、登録費用が安いなどのメリットがありますが、信用度という点では株式会社に劣ります。経営ビジョンに沿った会社形態を選定するのが重要です。

会社の概要を決める

まずは設立する会社の概要ともいうべき基本事項を決定します。特に重要な5項目を挙げておきます。

・商号(会社名):他社の権利を侵害する恐れがないか、事前に調査する。
・本店(会社住所):法人として登記される正確な住所が必要。
・目的:定款や会社登記簿謄本に記載される事業内容
・資本金:株式会社・合同会社ともに1円以上で設立が可能
・決算日:事業の実情にあわせて会社設立後でも自由に変更可能

資本金を準備する

上述したように、株式会社・合同会社の場合は資本金が1円以上あれば設立は可能です。ただし、会社登記簿謄本に記載された資本金が1円であれば、クライアントや銀行からの信用を得るのは難しいといわざるを得ません。一般的に、資本金は多いに越したことはありませんが、少なくとも事業が軌道に乗るまでの期間、会社が持ちこたえられる程度の金額は必要だといわれています。会社員よりも高収入を得やすい個人事業期間を準備期間に充てることで、資本金の準備もスムーズになるかもしれません。

定款を含む必要書類の準備・作成

会社の設立に必要な書類を準備・作成していくステップです。

・発起人・取締役の印鑑証明書
・会社実印
・定款
・発起人の決定書
・就任承諾書
・資本金の払込証書
・印鑑届出書
・印鑑カード交付申請書

資本金の払込は、定款作成日以降に発起人の個人口座に発起人名義で振込みます。紙の定款を使う場合は4万円の収入印紙が必要ですが、電子定款に対応する司法書士なら収入印紙は不要です。

定款認証手続き

作成した定款を、公証役場の公証人に認証してもらう手続きです。株式会社であれば必須の手続きで、約5万2,000円ほどの認証手数料がかかりますが、合同会社であれば定款自体が必要ありません。

法務局への登記申請

設立する法人の本店所在地を所轄する法務局に、登記の申請を行う手続きです。株式会社の場合は15万円、合同会社の場合は6万円の登録免許税が必要です。

各種届出

法人設立後には、各種の届出を速やかに行わなければなりません。税務署・都道府県・市区町村への税金関係届出はもちろん、社会保険加入手続き、従業員を雇用した場合の労働基準監督署・公共職業安定所への届出も必要です。

起業には実行力と計画性が大切

起業は、会社員にはないメリットとやりがいを得られる一方、やるべきこと、考えるべきことが山積みされた大きなチャレンジであるのも事実です。しかし、ただ思い悩んでいるだけではいつまで経っても独立できません。システムエンジニアであれば、経営の基礎も学べる個人事業期間を各種の準備期間に充てるのも可能です。実際の行動に移す実行力とともに、将来のビジョンを含めた計画性を持つことが起業には大切です。