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一般的に、システムエンジニア(SE)の平均年収は、国内全給与所得者の平均を上回るといわれています。しかし、所属する組織や働き方によって年収が異なるのはもちろん、なによりも、主にどのような業界の開発案件に携わるかによってもSEの年収は大きく異なります。なかでも、もっとも高年収が期待できるといわれているのが金融業界です。1,000万円プレイヤーも珍しくないといわれる、金融系SEにチャレンジしてみたいと考える方も多いのではないでしょうか?

それでは、本当に金融系SEになれば高額年収を狙えるのでしょうか?金融系SEの年収が高い理由とは?金融系SEならではの仕事内容、働き方、必要とされるスキルや素養を含め、金融業界で働くSEの実態を紹介していきます。

金融系SEの仕事

金融系SEとは、金融業界で活用される業務システムの開発・構築・改修・保守などを担当するシステムエンジニアのことです。もちろん、金融業界といっても銀行、保険会社、証券会社などの分野があり、それぞれで利用される業務システムもまたさまざまです。インターネットバンキング、株・FX取引の電子化など、近年IT化が著しい業界でもあり、事務業務を支援するシステム開発なども金融系SEの仕事に含まれます。まずは、それぞれの金融分野でどのようなシステム開発を担当するのか、金融系SEの仕事を整理しておきましょう。

銀行

・勘定系システム:預金や融資などの残高管理、利息計算などの勘定処理を担当する業務システム。主にATMトランザクションで利用されるオンラインシステム、クレジットカード・公共料金のバッチ処理で利用されるオフラインシステムに分類できます。

・情報系システム:勘定系システムの取引情報を含む、日々の銀行業務で蓄積されたデータを加工して提供するシステム。収益管理だけではなく、営業支援や商品開発などにも活用されるシステムです。

・その他システム:国内外の送金決済を行う内国為替・外国為替システム、海外金融機関とのやり取りに使われる国際系・市場系システム、営業店同士の円滑なネットーワークを構築する営業店端末システムなどがあります。

保険会社

・業務系システム:保険料の入出金、顧客管理、契約管理などを司る基幹系システム。新契約をサポートする新契約システム、保険料率の高度な計算を行う数理システム、預かった保険金の運用を司る資産運用系システムなどがあります。

・情報系システム:顧客・契約情報を一元管理し、効率的な保険販売や収益強化を支援するシステム。CRM、提案支援システム、ビジネスインテリジェンスツールなどで構成されています。

証券会社

・業務系システム:顧客・口座情報を一元管理し、注文・決済・約定を処理する基幹系システム。不正取引を監視・検知するコンプライアンスシステム、オンライントレードシステム、外部センターとの接続を含む外部接続システムなども含まれます。

・情報系システム:経済・投資・銘柄情報などを提供する情報提供システム、顧客情報を管理してマーケティングに活用するCRMシステムなどが挙げられます。

・その他システム:営業店・コールセンター経由で注文受付・各種照会を行うチャネルシステム、海外法人との約定処理を行う国際系システム、市場リスクを計量・管理するリスク管理システムなどがあります。

SEの平均年収トップは金融系

金融系SEがどのような業務システム開発を手がけているのか、具体的に理解できたところで、気になる年収の方を紹介していきましょう。ある転職エージェントの調査によれば、30代SEの業界別年収ランキングは、以下の結果になっています。

・1位 金融系:平均年収744万円
・2位 外資系SIer/コンサルティングファーム:平均年収689万円
・3位 総合電機メーカー:平均年収660万円
・4位 専門コンサルティングファーム:平均年収656万円
・5位 大手SIer:平均年収650万円
・6位 医薬品・化粧品メーカー:平均年収622万円
・7位 大手SIerの子会社・関連会社:平均年収572万円
・8位 通信系:平均年収571万円

もちろん、調査方法などによって差異はあるかもしれませんが、全SEの平均年収約600万円に対し、約1,200万円の金融系SEが年収1位という、別の転職エージェントによる調査結果もあります。業界別に見る限り、金融系SEがもっとも年収が高いというのは事実だといえるかもしれません。

金融系SEの求人例

それでは、本当に高額年収の金融系SE求人があるのか?年収アップを狙うSEの方がイメージを描きやすいように、公開されている正社員求人情報をいくつかご紹介します。ある転職エージェントで公開されていた金融系SEの求人は、検索時点で68件ありました。

金融グループ企業のフロントエンドエンジニア求人
・必須要件:モダンなフロントエンドでの開発実務経験
・歓迎要件:プロジェクトをゼロベースから主体的に進められる方
・待遇:正社員、年収400〜1,000万円

金融グループ企業のフィンテックアプリ開発エンジニア求人
・必須要件:オープン系での開発実務経験
・歓迎要件:BtoC向けのWebサービス開発経験
・待遇:正社員、年収400〜1,000万円

金融系SEの年収はなぜ高い?

年収幅の大きい求人例が多めではありますが、確かに金融系SEであれば、知識やスキルを深めていけば高額年収が期待できそうだとはいえるでしょう。それでは、金融系SEの年収が高いのなぜなのか?ほかの業界との比較を含め、高額年収を得やすい金融系ならではの特徴を簡単に紹介していきます。

クリティカルなシステム要件

金融系で求められるシステムは公共性が高く、社会インフラとも呼べるものばかりです。当然、金融系システムにはエラーの許されないクリティカルな要件と同時に、アクセスが集中してもダウンしないパフォーマンスの高さも求められます。金利計算、市場リスク評価、シミュレーションなどの高度な計算システムが必要なのと相まって、優秀なSEを高年収で確保しているのだと考えられます。

金融系はIT投資額が大きい

インターネットバンキングやオンライントレードに代表されるように、もはや金融系とITは切っても切れない関係にあるといえます。東証の株売買システム「arrowhead」の処理速度が0.2m/secを記録するなど、信頼性・パフォーマンスへの追求にも貪欲なものがあります。当然、それを両立させるには莫大な投資が必要であり、投資先となるSEの年収が高くなるのも当たり前だといえるでしょう。実際、IT投資への意欲を示すDI値は、全産業平均が37.4ptだったところ、金融業界は51.4ptともっとも高い結果が出ています。

金融・ITの平均年収が高い

2017年の国税庁調査によれば、全給与所得者の平均年収が432万円のところ、IT業界の平均年収が599万円、金融業界の平均年収が614万円という結果が出ています。つまり、もともと平均年収の高い業界同士が仕事をすることによって、金融系SEの年収が押し上げられているという考え方もできます。平均年収の高い金融業界のベースにあわせ、SEの年収が底上げされているという見方もあるでしょう。

フィンテックを含む新たなニーズがある

既存システムに関するだけでも、金融法改正にあわせたシステム改変、新サービスの立ち上げなどのニーズがありますが、モバイル決済、AI与信判断、ブロックチェーンを含むフィンテックなどの新しいニーズがあるのも金融業界の特徴です。もちろんフィンテックの知識・スキルがあることが大前提ですが、潤沢な予算をもとに優秀なSEを確保する動きが金融業界で強まっており、将来性に関しても金融系SEは有望だといえます。

金融系SEに求められるスキル・素養

それでは、高額年収が期待できる金融系SEになるには、どのようなスキル・素養を備えておくべきなのか?代表的な要素を簡単に紹介しておきましょう。

プログラミングスキル

実際のプログラミングに携わることがなくても、金融系SEにとって必須のスキルがプログラミングです。今なお、ほとんどのATMトランザクションを担い、金融系レガシーシステムで使われている「COBOL」はもちろん、COBOLからのリプレイス案件で使われる「Java」「C#」などの知識・スキルは必須だといえるかもしれません。

ただし、プログラミングができるだけでは金融系SEとしての活躍は限定されてしまいます。現場では、金融・経済の仕組みを含めた金融業界の知識が重視される傾向にもあるため、銀行業務検定、日商簿記、ネットーワーク情報セキュリティマネージャー、AFP資格などを取得する金融系SEも少なくありません。

正確性・柔軟性

金融系システムの不具合は多くの人に影響を与えます。つまり、重大な責任のかかる仕事を確実にこなしていく正確性、万一のトラブルにも冷静に対処できる柔軟性が金融系SEに求められる資質です。また、納期への遵守意識が高く、保守的な雰囲気があるのも金融業界の特徴です。コツコツとやるべきことをこなせる忍耐力も必要かもしれません。

コミュニケーション能力

金融系SEに限ったことではありませんが、コミュニケーション能力も求められる資質のひとつです。ヒアリング・要件定義を含めた打ち合わせ時には、相手の意図を汲んで適切に対応する必要があるのはもちろん、チームメンバーとのタスク・スケジュール調整を含め、正確さが要求される金融業界ならではの綿密なコミュニケーションが必要です。

金融系SEの働き方

最後に、金融系SEがどのような働き方をしているのか、金融系企業で働くSEの一般的な事例を紹介しておきましょう。男性社会といわれるIT業界のなかでも、金融系は比較的能力主義が徹底されており、コンプライアンスの徹底も含めて女性SEでも活躍しやすいといわれています。

残業が多くて過酷?

金融系SEは高年収である代わりに過酷だ、というイメージを持っている方もいるかもしれません。たしかにリーマンショック以前は、残業100時間、毎日終電といった働き方が常態化していた事実もあります。しかし現在では、残業は極力減らす方向に進んでおり、残業代もキッチリ支払われる企業が多いようです。ある銀行系のSEの場合、繁忙期でこそ残業時間が月80時間に及ぶようですが、通常期は30時間程度の残業で済んでいるようです。効率面でも残業は得策ではないという認識も広まり、充分な人員と納期で取り組む企業が増えています。

リモート案件はある?

SEの働き方は常駐が大半を占めますが、金融系SEであってもそれは同様です。むしろ、金融系SEの方がほかのSEよりも常駐が多いかもしれません。これは、金融システムが個人情報を含む大量の機密情報を扱うからであり、社外にデータを持ち出すのがほぼ不可能だという理由によります。金融業界ならではのコンプライアンス徹底も、SEが常駐中心になる理由でしょう。

まとめ

金融系SEは、責任の重い仕事をやり切ったという充実感・やりがいを感じられるとともに、高年収も期待できる魅力的な職種だといえます。その一方で、金融・経済への理解や正確性が重視される独特の業界でもあり、新たな技術を積極的に採用するよりは、信頼性の高い技術を重んじる保守的な一面もあります。しかし、高い技術力が要求される分、スキルアップにつながるのも事実です。1,000万円プレイヤーの金融系SEを目指すためにも、業界に飛び込んで経験を積んでみてはいかがでしょうか?