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C言語よりも古い歴史を持ちながら、今でも高い需要を保つ高級プログラミング言語、それが「COBOL(Common Business Oriented Language)」です。組織に所属するCOBOLエンジニアの方であれば、安定した需要を背景にフリーランスへの転身を検討しているかもしれません。あるいは、仕事の幅を広げるために、COBOL習得を視野に入れている若手エンジニアの方も少なくないでしょう。

一方、最新のプログラミング言語が次々と登場するなか、もはやCOBOLは時代遅れだという論調もないわけではありません。フリーランスに転身すべきか?新たに習得すべきか?COBOLの需要や将来性が気になっている方も少なくないでしょう。そんな方に向け、本記事ではCOBOL案件の特徴・傾向や将来性を含めた、COBOLフリーランス市場の現状を紹介していきます。

COBOLの特徴

1959年にアメリカでリリースされたCOBOLは、世界最古といわれる「Fortran」の次に国際標準化された、60年以上の歴史を持つ高級プログラミング言語です。インターネットのない時代に登場したCOBOLは、大規模な電子計算処理を実現する目的で開発されており、理系の素養がない事務員や公務員でも扱えることを目標に、英文を操る感覚で記述できるような工夫が施されています。これだけでも、COBOLがほかのプログラミング言語と異なった成り立ちを持つのがわかりますが、それがCOBOLにどのような特徴をもたらしているのか?簡単に解説していきましょう。

金融業界に強い

電子計算処理を目的に開発されたCOBOLは、科学技術計算、給与計算といった大規模の数値計算、事務処理に最適な十進演算機能が実装されています。誤差の少ない大規模数値計算というCOBOLの特徴は、銀行・証券をはじめとした金融業界で受け入れられ、大規模企業の業務システムにも採用されました。現在でも、世界中のATMトランザクションのほぼすべて、業務システムの2/3でCOBOLが稼働しているといわれています。2018年の調査では、1位のJavaに次ぎ、国内SIerの案件使用言語2位に位置するほどCOBOLの需要は高いのです。

オブジェクト指向・静的型付き

プログラムをロードする際にメモリ領域を静的に確保する、静的型付きプログラミング言語であるCOBOLは、大量のバッチ処理に向いている特徴があり、金融業界で幅広く使われる根拠になっています。単に歴史が古いだけでなく、時代のニーズにあわせて進化しているのも特徴だといえるでしょう。汎用プログラミング言語としてスタートしたCOBOLは、2000年代にオブジェクト指向にも対応し、クラスメソッドの定義や動的なインスタンス化も可能です。オープン環境で使われるOPENCOBOL、あるいはUNIX-COBOLと呼ばれるものもあります。

信頼性・保守性が高い

ほとんどのATMトランザクションで使われていることからもわかるように、COBOLは信頼性の高いプログラミング言語です。また、構文が英語に似ているCOBOLはプログラマーによる記述の違いが出にくく、記述してあるコードの可読性が高いため、保守性に優れているのも特徴です。メインフレームのOSに影響を受けにくいのもポイントであり、OSを変更する際にわずかな修正で対応できるのも基幹システムに向いている特徴だといえるでしょう。

若手エンジニアが少ない

日本でも1960年代から使われてきた歴史を持つCOBOLですが、COBOL / Cを学んで現場に配属された当時と異なり、現在ではPHP / JavaなどのWeb系言語が人気です。そのため、COBOLを扱えるエンジニアにはベテランが多く、40代以下のCOBOLエンジニアが圧倒的に不足しているといわれています。実際、リタイアを含めたCOBOLエンジニアの減少数が、新たにCOBOLを学ぶエンジニア数を上回っており、年々扱えるエンジニアの絶対数は減ってきているのが現状です。

COBOLのフリーランス案件例

それでは、現在でも高い需要があるといわれるCOBOLのフリーランス市場は活況なのか?COBOLエンジニア、またはCOBOLの習得を検討するエンジニアの方がイメージを描きやすいように、公開されているフリーランス案件情報をいくつかご紹介します。あるフリーランスエージェントで公開されていたCOBOLフリーランス案件は、検索時点で72件ありました。

基幹システムマイグレーションのエンジニア求人
・必須要件:COBOL / Javaを使った開発経験、アセンブラソースを読んで設計できる方
・歓迎要件:マイグレーションの経験
・待遇:SE、PG、月/〜65万円

部品表管理システム開発のエンジニア求人
・必須要件:COBOL / Javaを使った開発経験
・歓迎要件:JP1の経験
・待遇:SE、PG、月/〜60万円

生保業界向けシステム改修のエンジニア求人
・必須要件:COBOLを使った開発実務経験1年以上
・歓迎要件:生保業界での開発実務経験
・待遇:SE、PG、月/〜51万円

共済年金システム改修のエンジニア求人
・必須要件:COBOL / UNIX / SQL / シェルを使った開発経験
・歓迎要件:年金業界の知識、VB.NETの開発経験
・待遇:SE、PG、月/〜70万円

COBOLのフリーランス案件事情

エージェントの得意分野によっても異なりますが、フリーランス案件例を見る限り、需要が高いといわれるCOBOLのイメージとは違う、フリーランスならではの案件事情が浮かび上がってきます。一般的な見解も交えながら、COBOLフリーランスエンジニアの案件事情について簡単に解説していきましょう。

フリーランス案件数が少ない理由

72件という検索結果だったCOBOLフリーランス案件に対し、プログラミング言語を限定しないフリーランス案件の総数は同じエージェントでも6120件ありました。これはCOBOL案件が全体の約1.2%しか存在していないことを意味し、15%以上を占めるといわれるSIerのCOBOLシェアとは大きく離れています。なぜこれほどまでにCOBOLフリーランス案件は少ないのでしょうか?

ATMトランザクション・業務システムで活用されることからもわかるように、COBOLは正確性と機密保持を重視する案件が多く、不具合による金額的損失が発生しやすい側面があります。結果的に、責任の所在を明らかにしやすい会社組織への依頼が多くなると考えられます。ただし、業務システム案件が相対的に多い地方都市、特に愛知県などでは、COBOLフリーランス案件が比較的多いのも特徴です。

COBOLのフリーランス報酬相場は?

上述したCOBOLフリーランス案件例の月平均報酬額は約62万円でした。案件によって報酬額が37〜95万円と幅広いのも特徴ですが、JavaやPHPなどのWeb系プログラミング言語に比べると、報酬相場はやや低めの水準だといわれています。一般的にもCOBOLフリーランスの報酬相場はプログラマーで約40〜60万円、システムエンジニアで60〜80万円程度だといわれており、案件例とも整合性が取れているように感じられます。もちろん、上流工程を含むマネジメント経験があれば、高額報酬を獲得しやすくなるでしょう。

大規模基幹システムの保守案件が多い

ただし、COBOLを活用した新規システム開発案件は、残念ながらそれほど多くはありません。COBOLは金融系・流通系などで古くから活用されており、どちらかといえば、こうした大規模基幹システムの保守案件が多いのが実情です。とはいえ、金融・業務システムで大きなシェアを持つCOBOLは、追加開発、改修、障害対応を含めた相当数の保守案件があるのも事実です。クライアントとの信頼関係を築ければ、COBOLエンジニアが仕事で困ることはないかもしれません。

COBOLからのリプレイス案件が多い

保守案件に比べれば多いとはいえませんが、既存のCOBOLシステムを他言語をベースにしたシステムに置き換える、リプレイス案件もあります。多額の予算が投入されるプロジェクトも多く、高額報酬を得やすい開発案件ではありますが、COBOLのスキルだけでは参画できないのも事実です。逆に、こうした開発案件ではCOBOLの知識・スキルが必須になるため、業界の流れを読みながら必要なスキルを習得していくのがポイントとなるでしょう。

年齢不問の案件が多い

特徴の項目でも紹介したように、COBOLエンジニアには40代以上のベテランが多く、若手エンジニアは圧倒的に少ない状況です。このため、COBOLフリーランス案件には年齢不問というケースが多々見られます。上述したように、リプレイス案件であってもCOBOLの知識・スキルは必須のため、リプレイス先のプログラミング言語スキルを持ってさえいれば、50代、60代のエンジニアでもフリーランス案件を獲得できる可能性は充分にあるといえます。

COBOLの将来性は?

世界的なリサーチ&アドバイス企業の調査によれば、COBOLはレガシーシステム全プログラム3,100億行のうち、約65%を占める約2,000億行で利用されており、いまなお、年間約50億行のペースで増えているといわれています。新規のシステム開発に活用されることは少ないものの、追加開発・改修でCOBOLはまだまだ活用されているのがわかります。それに反してエンジニアの絶対数は減少する傾向にあるため、今後しばらくの間はCOBOLの需要が衰えることは考えにくいといえるでしょう。

安定してフリーランス案件を獲得するには?

それではフリーランス案件事情を踏まえ、COBOLの知識・スキルを持つフリーランスエンジニアが安定的に案件を獲得するにはどうしたらいいでしょう?これからCOBOLを習得したいエンジニアの方の参考にもなるよう、簡単に解説していきます。

Java・サーバ系の知識・スキル

追加開発・改修を含めたCOBOL保守案件が多数あるのは紹介しましたが、保守案件という特性も相まって、比較的報酬水準は低めです。より高額報酬を狙うため、仕事の幅を広げるためにも、リプレイス案件を獲得できるような知識・スキルを習得しておくべきです。案件例を見ても、COBOLからJavaへのリプレイスが特に多いことがわかります。Javaの知識・スキルはもちろん、UNIX / Linuxを含めたサーバOS、SQLデータベース、シェルなどの知識・スキルの習得が有効です。

派遣・フリーランスエージェントを活用する

COBOLエンジニアに限らず、フリーランスとして成功するには好条件の案件を継続して獲得するのが絶対条件です。業界内に幅広い人脈を持つ方でなければ、COBOL案件に強いフリーランスエージェントの活用がおすすめです。また、フリーランス向けの案件数が比較的少ないCOBOLの状況を考え合わせれば、クライアントとの信頼関係を築く前段階として派遣会社を利用するという手もあります。ちょっとしたミスが致命傷に発展しかねないCOBOLでは、チームワークが重視される傾向にあるのも覚えておくといいでしょう。

まとめ

若手エンジニアからの人気は今ひとつのCOBOLではありますが、そのシェアの高さから「習得しておけば仕事の幅が広がる」プログラミング言語であるのも間違いありません。構文が英語に似ているCOBOLは、記述されているコードが読みやすく文法を覚えやすいのも特徴であり、プログラミングの素養があれば比較的習得しやすいともいえるでしょう。エンジニアの絶対数が減りつつある現在、高級プログラミング言語であるCOBOLに今一度注目してみてはいかがでしょうか?