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一昔前であれば、機密情報を扱うシステムはオンプレミスで構築されるのが一般的でしたが、近年になってパブリッククラウドを採用するケースが急速に拡大しています。セキュリティ・信頼性の担保を含め、クラウドならではの数々のメリットを得られるのがその理由ですが、普及の原動力として大きな役割を果たしているのが、AWS(Amazon Web Service)の存在であるのは間違いありません。AWS絡みの案件が年々増加しているのを肌で感じる現役エンジニアの方であれば、フリーランスとしての独立を視野に入れているのではないでしょうか?

そんなときに気になるのが、AWSフリーランス案件単価の相場です。市場にはフリーランスとして活動していけるほどの案件数があるのか?AWSエンジニアの案件単価はどのような基準で決まるのか?単価の高いAWS案件を獲得するのに有効なスキルを紹介するとともに、AWSフリーランス案件市場の現在を解説していきます。

AWSの特徴

AWSは、Amazonが運営するクラウドプラットフォームサービスです。もともとAWSは、自社サービスの拡大に応じて高まるサービス側の要求に、インフラ側が対応し切れていない状況を打開するための社内サービスとして開発されました。ところが、インフラのAPI化というコンセプトが好評だったため、2006年に「EC2」「S3」を一般公開してクラウドビジネスをスタート。またたくまに業界標準ともいえるパブリッククラウドサービスとして定着したのです。その特徴を簡単に解説しておきましょう。

シェアNo.1のパブリッククラウド

米調査会社ガートナーによると、2019年に約440億ドルまで拡大したIaaS型クラウド市場のうち、45%にも及ぶ圧倒的なシェアを確保しているのがAWSです。これは日本市場においても同様の状況であり、成長率という点ではMicrosoft Azureに劣るものの、AWSは日本国内でもNo.1となる32%のシェアを誇っています。

豊富なサービス・スケーラビリティ

一般公開当時のAWSは、仮想コンピューティングサービスの「EC2」、オンラインストレージサービスの「S3」のみでしたが、現在では100を超える豊富なサービスが提供されています。以下はその一例です。

・RDS:Aurora / PostgreSQL / MySQL / Oracleなどに対応するリレーショナルDBサービス
・Lambda:サーバレスアーキテクチャのFaaS(Function as a Service)
・ElastiCache:インメモリ環境の構築・管理・スケーリングを可能にするサービス
・Redshift:クラウド型データウェアハウス(DWH)サービス

各種サービスに柔軟なスケーラビリティが確保されているのもAWSの大きな特徴です。運用開始時はもちろん、稼働中のサーバでもCPUやメモリ・ストレージを自在に拡張可能。稼働時間帯によってサーバスペックを変更するのも可能です。

低価格・管理負担の軽減

クラウドサービスであるAWSは、ハードウェアなどの初期投資が必要ないのに加え、ほとんどのサービスがインスタンス・起動時間などに応じた従量制を採用しているため、低価格・運用コストの最適化を実現できます。ハードウェアのメンテナンス、ソフトウェアアップデートが不要なのはもちろん、設定変更もブラウザから実行できるなど、管理面の負担も軽減できます。

AWSエンジニアとは?

一般的に、インフラ設計・構築ではハードウェアを含めた幅広い知識が求められますが、クラウドならではの特徴を持つAWSであれば、仮想サーバを構築するのも比較的簡単です。AWSの扱いに長けているアプリケーションエンジニアが珍しくないのはこのためだといえるでしょう。当然、増加中のAWS案件のなかにはアプリ開発がメインというケースも珍しくなく、単価相場は開発するアプリに左右されがちです。よって本記事では、以下の仕事を担当するエンジニアをAWSエンジニアとして定義します。

AWS設計

要件定義をもとに、どのようなAWSインフラが最適なのかを提案しながら、基本設計・詳細設計する仕事です。豊富なサービスを持つAWSの特徴を把握したうえで、ストレージの選定、キャパシティの管理、障害監視、冗長構成を決定していくスキルはもちろん、オートスケーリングや「CloudWatch」を活用した死活監視など、AWSならではのメリットを活かしていくスキルも必要です。

AWS実装・テスト

AWSマネジメントコンソールを使い、設計書をもとにAWSインフラを構築・実装・テストしていく仕事です。オンプレミスと異なり、コンソールによる各種設定作業が中心になるため、負荷テスト、セキュリティテスト、バックアップ・復元プロセスなどのテスト工程が重要になります。

AWS運用・管理

死活管理、キャパシティ・リソース管理などを自動化できるAWSでも、安定的に運用・管理していくための仕事は欠かせません。オンプレミスのように24時間365日監視する、といった必要はありませんが、定期的に運用状況を確認し、リソースの追加や設定変更を実施する、障害の発生状況やクライアントのニーズを分析し、インシデントが発生しないようなインフラ設計の見直しなどを行います。

AWSエンジニアのフリーランス案件例

それでは、AWSエンジニアの定義を踏まえたうえで、フリーランス案件市場はどのような状況になっているのか?フリーランスへの転身を検討するAWSエンジニアの方がイメージを描きやすいように、公開されているフリーランス案件情報・案件単価をいくつか紹介します。あるフリーランスエージェントで公開されていたAWSエンジニア求人は、検索時点で526件ありました。

ネットワークサービス設計・構築のAWSエンジニア求人
・必須要件:AWSクラウド基盤の設計・構築経験、ネットワークの経験
・歓迎要件:クラウドの監視設計・構築経験、自動化の経験
・待遇:サーバエンジニア、月/〜70万円

保険業界向けDWH構築のAWSエンジニア求人
・必須要件:AWSの設計・構築経験、DWHの経験
・歓迎要件:プレゼン資料作成・提案書作成経験
・待遇:インフラエンジニア、月/〜90万円

AWS案件の単価相場は?

気になるAWSエンジニアの案件単価は、平均単価で約77万円、単価の中央値が約70万円といったところです。もっとも多い案件価格帯は60〜70万円台ですが、最低単価が20万円台、最高単価が110万円と単価相場は幅広く、DWHなどAWSならではのスキルを持つ人材であれば高単価の案件を獲得しやすい傾向があるようです。本記事では対象外とした、AWSのスキルを持つフロントエンドエンジニア、データサイエンティストのニーズも高く、案件数をみてもAWSエンジニアへの需要が非常に大きいのもわかります。

案件単価はAWS実務経験に比例

AWS案件の特徴としては、設計・構築が運用・保守よりも高単価になる傾向があるほか、実務経験が長いほど高単価になる傾向もあります。1年未満の実務経験であれば、運用・保守中心で月単価20〜30万円からという案件が多い一方、5年以上の実務経験にPM経験が加われば月単価100万円という案件もあります。

高単価のAWS案件を獲得するには?

上述したように、さまざまなクライアントの多様なニーズに応えるため、AWSには100を超えるさまざまなサービスが用意されています。当然のことながら、AWSエンジニアには豊富に用意された各サービスの内容と特徴への理解・スキルが求められますが、それはあくまでもAWSエンジニアとしての出発点に過ぎません。高単価のAWS案件を獲得するには、AWSにプラスアルファの価値をもたらす知識・スキルの習得が欠かせないといえるでしょう。

インフラエンジニアとしての知識・スキル

アプリケーションエンジニアもよく扱うAWSですが、高単価のAWS案件を獲得するには、インフラエンジニアとしての知識・スキルが欠かせません。AWS案件は、現在でもオンプレミスからのマイグレーションニーズが非常に高いからです。インフラエンジニアとしての知識・スキルがあれば、既存システムの現状と課題を把握して最適なAWSインフラを提案できるのはもちろん、これまでの経験を活かした新規システムの提案・設計・構築も可能になります。

コンサルタントとしての視点を持つ

AWSエンジニアに限らず、高単価の案件を獲得するにはPM、あるいはコンサルタントとしての役割を果たすのが重要です。単にAWSに詳しい人というだけでなく、どのように活用したらAWSのメリットを最大化できるのか、コンサルタントの視点で提案できる知識・スキルが必要でしょう。機械学習を実装できるサービス「SageMaker」をはじめ、時代のニーズに則って次々と追加されるサービスを含め、AWSを取り巻く最新情報をウォッチしていく必要もあります。

DevOpsへの対応

設計・構築と運用・保守の役割が明確になりがちなオンプレミスと異なり、設計と運用を一体化して継続的に改善していく「DevOps」の考え方がAWSエンジニアには求められます。実際、上述した「CloudWatch」や、本番反映を自動化する「CodePipeline」など、AWSにはDevOpsを実現するサービスが多数存在します。こうした状況に対応できるAWSエンジニアなら、高額単価の案件を獲得しやすくなります。フロントエンド開発の知識もあれば、的確な改善提案もしやすいため、重宝される存在になれるでしょう。

幅広いパブリッククラウドへの対応

多数のフリーランス案件が存在するAWSですが、すべての企業・組織がAWSを選択するわけではありません。別のクラウドプラットフォームが選定される場合もあるでしょう。AzureやGCPなど、幅広いパブリッククラウドへの知識・スキルを身に付ければ、市場動向が変化した場合でも選択できる案件の幅が広がります。AWSよりも成長率の高いAzureなどは、是非スキル獲得を視野に入れておきたいサービスです。

AWSエンジニアが取得すべき認定資格

スキルの高さに応じて報酬単価が異なる傾向にあるAWSエンジニアの場合、認定資格の取得が案件獲得に有利に働く場合があります。「ベーシック」「アソシエイト」「プロフェッショナル」というAWS認定資格が用意されていますが、高単価案件を獲得するためにもプロフェッショナルの取得がおすすめです。

・クラウドプラクティショナー(ベーシック):クラウドの概念、AWS全般のセキュリティ・テクノロジー・料金の知識を問う資格
・ソリューションアーキテクト(アソシエイト):AWS構築・デプロイ、可用性、耐障害性、スケーラビリティの知識を問う資格
・ソリューションアーキテクト(プロフェッショナル):アソシエイトに加え、分散アプリケーション・システム設計の知識を問う資格
・デベロッパー(アソシエイト):AWSを活用したアプリ開発の技術知識を問う資格
・SysOpsアドミニストレーター(アソシエイト):安定性・スケーラビリティの実現、セキュリティ確保、運用自動化の知識を問う資格
・DevOpsエンジニア(プロフェッショナル):デベロッパーとSysOpsアドミニストレーター双方に関する知識を問う資格

まとめ

本記事では、AWSエンジニアのフリーランス案件市場の現状を解説してきました。案件数を含めたAWSの将来性が非常に有望であることが理解できたのではないでしょうか?インフラエンジニアに限らず、AWSの知識を身に付けるのは今後のトレンドを考え合わせてもキャリアアップに有効です。もちろん、高単価で獲得できるフリーランス案件の選択肢も大きく広がるでしょう。この機会に、フリーランスのAWSエンジニアにチャレンジしてみてはいかがでしょうか?