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特定の組織に所属しないフリーランスという働き方が広がっています。特にエンジニアへの需要が高く、報酬が高額になりがちなIT業界ではその傾向が顕著です。事実、希少な存在のAIエンジニア、フルスタックエンジニアなどは、フリーランスへ転身することで100万円を超える月収を得ている方も珍しくありません。それでは、ITエンジニアのなかでも縁の下の力持ちというイメージがあるインフラエンジニアは、フリーランスへの転身でどのくらいの収入アップが期待できるのでしょうか?報酬相場を独立への判断材料にしたいと考える方なら気になっているでしょう。

そこで本記事では、独立のタイミングを見計らうインフラエンジニアの方に向け、フリーランス向け案件の傾向、スキルに応じた報酬相場、高額案件に参画するために必要なスキルなどを含めた、インフラエンジニアのフリーランス事情を紹介していきます。

インフラエンジニアが扱う領域

インフラエンジニアとは、業務システム、Webアプリケーション・サービスなどのシステム基盤=インフラストラクチャー領域の開発・構築・運用・保守を担うエンジニアの総称です。システム基盤であるインフラ領域は、大きくネットワーク、サーバに分類できますが、それぞれを専門に担当するネットワークエンジニア、サーバエンジニア双方の知識・スキルを持つエンジニアがインフラエンジニアなのだといえるでしょう。

当然のことながら、インフラエンジニアが扱うソフトウェア・ハードウェアは幅広く、特に以下の領域の知識・スキルは高い頻度で要求される要素です。

・サーバ機器
・サーバOS
・ストレージ
・ミドルウェア
・ネットワーク機器

インフラエンジニアの仕事

インフラエンジニアの仕事は、大きく以下の3つに分類できます。仕事内容としてはネットワークエンジニア、サーバエンジニアと近いものがありますが、ネットワーク・サーバを含めたインフラ全般に携わるのがインフラエンジニアの仕事の特徴です。

・インフラ設計
クライアントの要求に沿ったインフラシステムを設計する。要求・要件を定義するための顧客折衝が含まれるケースもある。

・インフラ構築
要件定義・詳細設計に従ってインフラシステムを構築し、各種設定・テストを実施する。ドキュメント類の作成が含まれるケースもある。

・インフラ運用・保守
サービススタートしたインフラシステムが正常に動作するか監視・運用し、障害対応やメンテナンス・アップデートを実施する。

変化するインフラエンジニアの役割

領域・仕事内容を見てもわかるように、これまでインフラエンジニアの役割として重要視されてきたのは「オンプレミス」のシステム基盤=インフラ開発・設計です。しかし、システム基盤のクラウドへの移行が加速している現代では、オンプレミスの需要はなくなっていないものの、確実に減少しているのも事実です。インフラエンジニアの将来性を不安視する声があるのはこのためだといえるでしょう。

しかし、ハードウェアの選定・取り扱いが不要のクラウド環境でも、サーバ・ネットワークに関する深い知識・スキルは必要です。運用・監視オペレーターの働き方は変化するかもしれませんが、インフラエンジニアへのニーズはむしろ高まっていくと考えられます。クラウドならではの知識・スキルが必須になるなど、インフラエンジニアが担うべき役割が時代とともに変化しているだけなのです。

インフラエンジニアに求められる知識・スキル

もちろん、運用・保守・改修などの既存システム案件が多数あるため、オンプレミス関連の仕事がなくなるわけではありませんが、高額報酬が見込める新規オンプレミス構築案件が大幅に増加することは考えにくいでしょう。つまり、インフラエンジニアがフリーランスとして安定的に案件獲得するには、市場から求められている知識・スキルを身に付けておく必要があります。案件によっても異なりますが、フリーランスのインフラエンジニアに求められるベーススキルともいえる要素を紹介しておきましょう。

・ストレージを含むサーバ機器の知識・スキル
・Linux / WindowsなどのサーバOSの知識・スキル
・SQL / Oracleなどのデータベースの知識・スキル
・VMware / Dockerなどの仮想化・コンテナの知識・スキル
・ファイアウォールをはじめとしたセキュリティの知識・スキル
・shellプログラミングの知識・スキル
・AWS / Azure / GCPなどのパブリッククラウドの経験・知識

インフラエンジニアに求められる知識・スキルが幅広いことに驚かされますが、特徴的なのは、数年前まで歓迎要件だったクラウドの知識が近年では必須要件になりつつあることです。インフラエンジニアが担うべき役割の変化が現れている一例だといえます。

インフラエンジニアのフリーランス案件例

それでは、インフラエンジニアのフリーランス市場は、現在どのような状況になっているのか?フリーランスへの転身を検討するインフラエンジニアの方がイメージを描きやすいように、公開されているフリーランス案件情報をいくつかご紹介しましょう。あるフリーランスエージェントのインフラエンジニア求人は、検索時点で2,083件ありました。

公共系システムの統合・運用・保守エンジニア求人
・必須要件:Windowsサーバで動作するプログラム開発経験、Java / SQLの経験4年以上
・歓迎要件:JP1 / AJSの経験、住基ネット関連の知識
・待遇:インフラエンジニア、月/〜55万円

クラウドインフラ開発エンジニア求人
・必須要件:パブリッククラウドの構築経験3年以上
・歓迎要件:ゲームなどのリクエストが集中するインフラの構築・運用経験
・待遇:インフラエンジニア、月/〜95万円

外資系金融企業向けのインフラ運用・管理エンジニア求人
・必須要件:ITインフラストラクチャーの知識、SOX監査関連の知識
・歓迎要件:外部との折衝能力、L2 / L3スイッチの実務経験、英語スキル
・待遇:インフラエンジニア、月/〜60万円

自動車販売会社向けオンプレミスシステム構築エンジニア求人
・必須要件:インフラシステム導入の経験、UNIX系システムの経験
・歓迎要件:DBA担当の経験
・待遇:インフラエンジニア、月/〜95万円

インフラエンジニアのフリーランス事情とは?

非常にバラエティに富んだ案件が多数存在する、インフラエンジニアのフリーランス案件イメージがある程度は掴めたでしょうか?これらの実際の案件例や、一般的な市場の動向も含め、インフラエンジニアのフリーランス事情が、現在どのような状況にあるのかを検証してみましょう。

フリーランス案件数

まずはフリーランスへの需要がどのくらいあるのかを端的に示す案件数ですが、約1万件あるフリーランス案件のうち、インフラエンジニアをキーワードにする求人が全体の約20%を占めていることがわかります。この数字は、もっとも需要が高いと思われるプログラミング言語、Javaの求人数にも匹敵するものであり、一般的にいわれている「インフラエンジニアへの需要は増加している」ことを証明しているといえます。求められるスキルによっても異なりますが、インフラエンジニアが参画できるフリーランス案件は市場に十分存在するといっても間違いではありません。

参画できる案件の傾向

フリーランス向けのプロジェクト案件が非常にバラエティに富んでいるのも、インフラエンジニア市場の特徴です。パブリッククラウド・オンプレミスの開発・設計はもちろん、運用・保守案件も多数存在し、実務経験・スキルに応じて参画できる案件を選べる選択肢の豊富さも魅力だといえるでしょう。ただし、インフラエンジニアとしての経験年数というよりは、どのような実務経験を重ねてきたか、という点が重視される傾向にあるのは覚えておくべきです。

納期がシビア・緊急性が高い

一方、案件例には現れにくい、インフラエンジニアならではの働き方の特徴があるのも事実です。これは、システム基盤の整備が完了しないとほかの業務が進まない、サービスの公開ができない、運用開始後のトラブル対応に緊急性を要するというインフラの性質に起因するものです。

たとえば、サービス公開から逆算していくため、設計・構築フェーズではシビアな納期が求められることが挙げられます。そのため、インフラ構築時には夜勤や残業が発生する可能性が高くなるといえるでしょう。また、24時間365日の運用・保守案件ではシフト勤務になる場合もあり、復旧に向けた迅速な対応が求められます。ただし、フリーランスの場合は休日・夜間に呼び出されるといったケースはあまり多くないのようです。

インフラエンジニアの報酬相場

それでは、インフラエンジニアのフリーランス報酬相場はどの程度なのでしょうか?案件例で取り上げたエージェントでの平均報酬額は約64万円となっており、一般的なSE / PGと比べてもやや相場は低めです。しかし、32万円の最低単価がある一方、最大単価は135万円となっており、一概にインフラエンジニアの報酬相場が低いとはいえない現状があるようです。

フリーランス案件の報酬相場が変動する要因

まず、インフラエンジニアの報酬相場の変動が大きい要因としては、案件の業務内容、そして求められるスキルレベルが挙げられます。つまり運用・保守案件よりも設計・構築案件の方が、定型業務よりも非定型業務の方が高額報酬になりやすいといえます。業界によっても報酬レベルが異なる傾向があり、同じ業務であっても金融系・ゲーム系が高額になるといえるでしょう。この要素の組み合わせによって、インフラエンジニアの報酬は決まります。

経験別のインフラエンジニア報酬相場

たとえば、リーダー・PM経験のないメンバークラスであっても、豊富なスキルを持っていれば比較的高額な報酬が期待できます。逆に、PM経験のあるインフラエンジニアであっても、案件によっては報酬が抑えられてしまう場合もあります。以下からは、スキルの有無がどの程度報酬に影響をおよぼすのか、経験別のインフラエンジニア報酬相場を紹介しておきましょう。

・メンバー:月額35〜70万円
・リーダー経験者:月額50〜80万円
・PM経験者:月額60〜90万円

2,083案件中、半数以上の1,055案件の報酬が60万円台ということを考えれば、スキルレベルによって変化する報酬相場は納得できるレベルだといえるかもしれません。

プラスαで求められるスキルとは?

それでは、インフラエンジニアが高額報酬の案件を獲得するためには、ベーススキルにどのようなプラスαを加えていけばいいのでしょうか?近年インフラエンジニアに求められるようになった、高額案件獲得に有効なスキルを簡単に紹介しておきます。

・外部折衝を含む上流工程の経験・PM経験
・CISCO製品の知識・経験(CCNPの資格など)
・プロビジョニングツールなどの自動構築経験
・JP1の知識・スキル
・Java / Ruby / C# / Pythonなどのプログラミング知識
・バージョン管理の知識・スキル
・英語スキル

まとめ

安定・高速なシステム基盤に対するニーズが高まるなか、それを支えるインフラエンジニアの需要も大きく拡大しています。それは、Javaに引けを取らないフリーランス案件数という数字を見ても明らかです。ただし、フリーランス案件の平均報酬額を見てもわかるように、設計・構築案件ばかりではないインフラ業界で高報酬案件を獲得するには、時代の流れとともに変化する顧客ニーズを的確に捉え、常に求められるスキルを習得していく貪欲さが欠かせません。インフラエンジニアとして常に学び続ける姿勢さえ忘れなければ、将来にわたって案件獲得に困るということもなくなるでしょう。