支援対象地域:札幌、仙台、関東、愛知、関西、広島、福岡


学校教育の変化

IT化された社会で生きていく準備はできていますか。

私は5年間中学校と高等学校の保健体育科の教員として働いていましたが、ICTの導入が始まり、学校運営の内容が私が学生だった頃とはすっかり変わってしまいました。私が身を持って感じた変化は大きくまとめると5つです。

  • 高校生は一人一台のiPadを入学時に購入する。
  • 教科によってはインターネット上でレポートの課題の提出がある。
  • 学校からの連絡がアプリを通じて生徒たちに届く。
  • プロジェクターを使用した授業方法の展開。
  • アプリを使用して生徒が学校紹介の動画を作る。
  • 私だけでなく、このような変化にはついていくのがやっとという教員はたくさんいました。しかし、ご存知のように2020年に学習指導要領が改定され、小学校、中学校、高等学校で順次プログラミングの授業が必修化されます。

    よって、プログラミング教育の実施にあたりダブレットの所持やICTの導入は、必要不可欠であるので、上記の変化は必然でしょう。 そしてこれから始まるプログラミング教育の目的は、論理的に考える力「プログラミング的思考」だと言われています。

    プログラミングとは何なのか

    今回はプログラミングについての説明は割愛いたしますが、そもそもプログラミングとは何なのかと問われると、説明できない人の方が多いのではないでしょうか。

    かく言う私も、教員の頃は一切知識がありませんでした。調べると、簡単なゲーム作成をしてみようという動画があったり、ローマ字や記号が並んでいる画面が出てきました。

    「こんな難しそうなことはわからない。理解できなさそう。」これが率直な感想でした。もちろん、技術、家庭科や情報といった授業は以前からありましたが、ローマ字や記号の羅列は馴染みがありません。そしてこれを教えなければならないと言われたところで、プログラミングを専門的に知識として持っている教員は全国に一体どれだけいるのでしょうか。

    ほとんどの教員がプログラミングの指導を実施するには難しいと考えているでしょうし、生徒はもちろん、大人でさえ先ほど私が感じたのと同じように、プログラミングを学習することに抵抗を感じるでしょう。そしてプログラマーやエンジニアは指導内容を懸念しているのではないでしょうか。

    身近なところにあるプログラミング

    とはいえ、普段はあまり意識しませんが、考えてみると今や私たちの生活の身近なところにもプログラミングされたものがたくさんあります。学習指導要領に記載されている主な改定内容には、総合的な学習の時間において「プログラミングが社会でどう活用されているか」に焦点を当てるとあります。これはプログラミングに興味を持つきっかけとしてはとてもいいことではないでしょうか。

    また、近年ではスマートフォンが普及し、若い世代を中心に

  • 加工した写真を撮るためのアプリ
  • TwitterやInstagramやLINEなどのSNS
  • 全世界の人と繋がることのできるオンラインゲーム
  • YouTubeなどの動画サイト
  • などがよく利用されています。また、インターネット上で買い物もできます。 また、様々な場所でAIの導入などが開始しており、これからの時代はおおよそスマートフォンやAIなどなしでは、世の中は成り立たないでしょう。つまりプログラミングは今後欠かすことができないものです。

    自分達が、普段何気なく使っているアプリやサイトといった物は誰かが作った物であり、私たちはそれを利用させてもらっているという観点から、プログラミングに興味を持たせることができます。

    生徒たちの心理

    しかし、学校の授業の中で生徒たちが望むようなアプリケーションの開発を展開しようとしても、素人ができるような内容ではありません。難しすぎてプログラミング自体に興味を無くすでしょうし、何も作らず、言語だけを学ぶだけでも興味を持てません。子どもの教育においては、成功体験を与え、自己肯定感を与えてあげる必要があります。そのように考えると、やはりとても簡単なゲーム作成を課題とすることがいいのではないでしょうか。

    ゲーム作成であれば、プログラミングというものが苦手だという生徒は教材を見ながら最低限の内容のものを作れば良いし、反対にプログラミングが好きであったり、将来はこのような仕事に就きたいと考える生徒は、より難しい内容のゲームを作れば良いのです。また評価の方法は指定した通りにゲームの内容が動作するのかを確認することで評価できます。

    ゲーム作成は簡単なのか

    簡単にゲーム作成と言ってしまいましたが、そもそもゲーム作成は簡単にできるのか?ということが問題に挙がるでしょう。もちろん簡単にできるとは考えておりません。そして何より、教員が勉強しなければならないという問題は解決していません。都道府県や学校がお金を出して現役のエンジニアの方々を講師として招き、勉強会をする必要があります。しかし、これはエンジニアの方にとっても良い仕事になるのではないでしょうか。

    これからを担うのは若い世代である

    大人になって仕事をしていく上では、プログラミングやゲーム作成よりも、WordやExcelをしっかりと使えるようにするための授業の方が優先するべき事項だとも思いますし、現役のエンジニアからすれば、学校の授業でゲームを作ったからといって何の意味もないという意見もあるかもしれません。 また、プログラミングの授業は選択科目にした方が、関心の高い生徒が集まり、意味のある授業内容になるという考えもあるでしょう。

    しかし、プログラミングが必修とされるという事実は変わりません。国によって授業内容は様々ですが、海外ではもっと早くからプログラミングの授業が取り入れられており、日本よりも進んだ教育であることは確かです。この遅れをネガティブに考えるのではなく、諸外国の教育の良い部分や失敗を参考にして、効率よく、質の良い教育を作ることができるというポジティブな捉え方をすることができます。

    将来、生徒全員がエンジニアやそれに関連する仕事に就くという訳ではありませんが、それはどの授業でも同じです。ゲーム作成という授業あったとしても、その中で学んだことが、長い人生における何かのきっかけとなればいいのではないかという気持ちを持ち、大人たちは試行錯誤しながら、未来の日本のために取り組んでいければ良いのではないでしょうか。