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はじめに

エンジニアにおける「運用」という部門はインフラの一部となり、保守と併せて担当することも多い仕事です。サーバの監視、障害や不具合、深夜のメンテナンス対応など、24時間休むことなく誰かしらが稼働している必要があります。長丁場になることもあり体力も問われます。現在携わっている方も体力がきつくなって転職を考えているということもあるかと思います。もちろんネガティブな理由だけではなく新たな分野に挑戦してみたい、ステップアップしたいという理由で転職を考えている方もいると思いますので、今回は「運用」の経験がある人の転職について紹介していきます。

運用エンジニアの業務内容

決してお客さんの前などで表立って行う仕事ではないので派手さはありません。どちらかというとコツコツとルーチンの仕事をこなしながら、急なトラブルにも対応していくという縁の下の力持ち的な存在です。そのため自分のペースで常に仕事ができるわけではなく、臨機応変な対応力が求められます。24時間稼働し続けているシステムを止めてしまわないように日々注力していくという非常に重要なポジションが「運用」のエンジニアです。

エンジニアという業種にもシステムエンジニア、プログラマーなどと大別できます。その1つであるインフラエンジニアという職種はさらに大きく3つに分けることができます。

中にはしっかりと役割分担の意識がなく、その工程も行なっていて転職に生かせるということもあるかもしれないため、今一度おさらいのためにもご紹介します。

まず1つ目は、どのようなシステムを導入して運用していくかという概要から、利用する機器の詳細までを決めていく「設計」です。次にサーバやネットワークの「構築」を担当する人たちがいて、最後に「運用・保守」です。

最後と言ってもシステム導入のプロジェクトを締めくくる役割ではなく、システムが稼働してから主な仕事となるのが「運用・保守」です。あらかじめ決められた終了日というのはなく、担当している限り、あるいはシステムの稼働が不要となるまで長期に渡って携わっていくことになります。大抵の場合は現在運用・保守をしている顧客のシステムの他に次々と運用・保守する対象が加えられていきます。もちろん個々の業務量は分散されますが、面倒を見る子供が多くなっていくイメージです。

大企業のIT部門であれば各担当部門が細分化されていて「運用・保守」のみを担当するという場合もあるかもしれませんが、設計から構築、運用・保守というインフラエンジニアとしての一連の業務を分けずに全てを担当することも少なくありません。サーバ系、ネットワーク系、データベース系と担当が枠組みでチーム分けされている場合もあります。

運用・保守のみを担当していた場合の転職先はとても限定されてしまいます。インフラエンジニアの業務の中で、運用・保守以外の役割を兼任していた場合は、業務内容が多ければ多いほど転職先の選択肢も広がってきます。

体得しているスキルや能力

運用・保守を含めたインフラ系の業種はプログラマーのようにわかりやすいスキルがあまり存在しないため、長年働いていてもスキルが身についていないのではないかと心配する声も聞かれます。確かにJavaプログラマー、PHPプログラマーといったようにはっきりと表せるスキルは少ないです。

「インフラ」という言葉の意味は「基盤(インフラストラクチャ)」ですが、インフラエンジニアは実際にソフトウェアやサーバ、ネットワークそれぞれを連結可能にするパイプラインの役割も担っています。連結するための整備を行うには各方面の知識が必要となります。そのため、気付くとIT業界の知識はどの部門の人たちよりも習得していることがあります。またどの部門に配属が変わってもシステム運用の大枠をすでに理解しているため、すんなり入っていけるところが利点です。

もう一つ身についていることは忍耐力です。運用・保守ではシステムの監視の他、不具合や障害の対応を行うことがあります。

監視は24時間と言ってもずっと一人で対応するわけではありませんし、じっとパソコンを見つめているわけではありません。また頻繁に起こる不具合に関してはマニュアル化されていることが多いため、深く考えずに対応できます。

しかし一度障害が起こると、障害の原因確認、実対応、復旧後の見守りと数時間〜1日単位でその件に張り付きになることは頻繁にあります。またその間は無機質で人気のないデータセンターに缶詰めになることもあります。

勤務時間の時短や効率化を求められている昨今では、障害中でもシフトのローテーションで途中交代することもありますが、それでも人手不足でまだまだ長時間勤務になることが多いのも事実です。これを長年続けると自ずと忍耐力がつき、長丁場の仕事も受け入れやすくなります。一長一短ではありますが忍耐力も身についている能力の一つです。

同時に臨機応変さも身につきます。システムは24時間稼働しているため、勤務時間外でも当番制などの方法をとり障害や不具合の緊急時対応を行う必要も出てきます。また業務時間内でも自分の仕事をこなしている最中に障害が起こったら、優先して障害対応を行わなければなりません。ただこのようにいつ何が起こるかわからないという状況下にいると瞬時の判断力や臨機応変な動き、考え方が身についているはずです。

他にも要件定義等のミーティングや、システム導入時、保守に関するお客様窓口になっている場合はお客さんとの関係性を作っていく必要性があるためコミュニケーション力がついていきます。

また様々な手順のマニュアル化、設計書の作成を行うのもインフラエンジニアの業務の一つなので、書類、文章の作成能力も向上しているかもしれません。

単体・結合テストを実施していたり、プログラマーの担当部分に介入する機会が多かったりしていればプログラムの基礎的な知識を習得できている可能性もあります。

障害を解決する対応を頻繁に行なっていれば、システムの全体把握はもちろん、ロジック的な考え方が身につく可能性もあります。

転職するにあたって

さて、みなさんの転職したい理由は何でしょうか。定時で帰れるようになりたい、夜勤のない仕事が良い、部署異動したいが今の会社だと叶わない、思い切って他業種にいきたい、年収アップと様々あると思います。

これまで担当していた業務内容によって、それぞれ転職に成功する可能性が変わってきます。特に30代以降でIT関連の別職種で転職を考えている場合は、運用・保守の業務にプラスアルファで何ができるかというところが重要になってきます。
他にできることが何もないのであれば、現在の職場で別業務も経験してオールマイティなインフラエンジニアになった上で転職をするという選択肢も頭に入れておくことをお勧めします。インフラエンジニア全般を経験している場合はシステムに関する汎用性のある知識を持っているとみなされ、別業種への転職であっても採用される可能性は高くなります。

20代中盤など第2新卒の年齢で転職を考えているのであれば、IT関連のスキルや知識と直接関係なく、体得したコミュニケーション能力や文章作成能力などを活かし、別業種を選ぶという手もあります。意外とそういった能力の方が汎用性があり、個々の経験となるため生涯役に立つものです。

また独立を考えている場合は、運用・保守だけを外注するという傾向はあまり見られません。しかし設定、開発、導入、運用・保守とインフラ業務全般の知識を習得していれば、システムインテグレーターやITコンサルタントの事業としてやっていける可能性が出てきます。

運用・保守だけを担当している人の話を聞くとキャリアの先が見えない、拘束時間だけ長く成長しない、つまらないというような意見を聞くことがあります。業務のほとんどがマニュアルに沿った対応であることが多いからです。

しかしどんな職種であっても携わっているのであれば多少なりとも実りのあるものにしたいものです。それぞれの経験をどう生かしていくかが大切になってきます。そのためには業務の他に自分で勉強しなければいけない部分も出てきます。

もし他業種から運用・保守エンジニアへの転職を考えていてこの記事にたどり着いた方がいたら、運用・保守の業務のみに特化したところではなく、その他の業務も幅広く行える仕事内容があるところで働くことをおすすめします。そうすればその後のキャリアパスも描きやすくなるでしょう。

運用の将来性

インフラエンジニアの需要というものはシステムが存在する限りなくなるものではありません。特に運用はその名の通り、システムを運用し続けるために必要不可欠な部門です。

単純な監視対応やルーチン業務などは徐々に自動処理化、AI化していく可能性が高いですが、自動化やAIの学習を進めるのは人間のため、24時間365日手放しで稼働させておける時代は現状としてはまだまだ考えられません。

確かにSaaS、PaaS、laaSというクラウド上にある既存サービスを不特定多数の人が取捨選択して契約するというシステムのあり方が台頭してきているため、各社で独自システムを新たに導入していくという機会は少なくなります。そのため開発・導入部分に携わるようなエンジニアの需要は比例して減っていく可能性はあります。しかしそういったクラウドサービスを運用していくのは運用・保守の仕事です。そう言った意味では運用・保守は極めて存続の可能性が高い職種となります。安定した業務に就いていたいということであれば運用であり続けるという手も選択肢の一つではあります。

運用の仕方や業務内容も時代のトレンドや進化によって形を変えていくかもしれませんが、それでもシステムインテグレーターや「Sler」と呼ばれるシステムの開発から運用までを手がける専門事業があるということからも需要の続く可能性をうかがい知ることができます。

まとめ

運用・保守はシステムを運用していく上でなくてはならない存在であるにもかかわらず、目立つ存在でもなくどちらかというと地味です。それでもインフラエンジニアとしてインフラ業務全般に目を向け知っていくことで、IT業界の中でもとりわけ幅広い知識を持ち重宝される存在になる可能性を秘めています。そのため転職時の選択肢も増やすことができます。自ら学ぶことも必要になってくるかもしれませんが、まだ運用・保守の知識しかない場合はキャリアアップのために、いろんな知識の習得に励むことをおすすめします。そして自信を持ってアピールできるスキルや能力を備えて転職に臨んでみてはいかがでしょうか。