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はじめに

画家もイラストレーターも絵を描くことが仕事であることに変わりはないですが、イラストレーターと聞くとなんとなく画家よりも職業性が強いイメージを持っている方が多いのではないでしょうか。その漠然としたイメージは間違いではなく、画家はアーティストの部類であり、自分の価値観で意のままに絵を描いてその絵が評価され、購入されれば収入が得られという人がほとんどです。一方のイラストレーターはクライアントが存在することが大前提で、クライアントの要望に沿ったイラストを書き上げることで収入を得る職業です。そうは言ってもイラストレーターは企業に所属しなければなれないのか、フリーランスでできるのであればどのように仕事を得られるのかという疑問が湧いている方もいることでしょう。この記事ではそんな疑問について、またイラストレーターになるにはどのようなスキルが必要かを紹介していきます。

イラストレーターという職業のあり方は様々

イラストレーターはクライアントの要望に沿ったイラストを作成して納品する職業ですがその依頼内容は様々で、紙媒体のポスターや商品のパッケージ、エディトリアルデザイナーに提供する本や雑誌の挿絵、ゲームキャラクターのデザイン等があります。さらには法定画という裁判の様子を描く専門のイラストレーター、技術的なマニュアル内の図や挿絵を担当するテクニカルイラストレーター、医療系の論文や書籍の内容をわかりやすくするためのイラストを専門にするメディカルイラストレーターという職業も、多くはないですが存在します。特にテクニカルやメディカルのイラストレーターは絵が描けるというだけではなく、専門知識を必要とされる場合もあります。観光地の路上やショッピングモールの一角などで良く見かける似顔絵師もイラストレーターという職業の一つの形です。

またイラストレーターは個人のフリーランスとして仕事を受けている方もいれば、制作会社、プロダクション等にアルバイトや派遣、正社員として専属のイラストレーターとして業務する方法もあります。中には制作会社、プロダクションで経験を積んだ後に独立するという方もいます。なお雇用形態は様々で、正社員、契約社員、派遣、アルバイト・パートとどの形態でもイラストレーターになれるチャンスがありますが、一般的に異業種から未経験での転職は難しい職業という見方がされています。近年はSNSやクラウドソーシングのサービスが活発なこともあり、SNSで公開していたイラストをきっかけに企業から依頼をもらえることもあるので、未経験からイラストレーターを目指すのであれば、無理に就職することを考えず、SNSに作品を公開したり、クラウドソーシングや公募サイトのコンペに応募することに注力したりという方法も一つの手段となります。

イラストレーターの平均年収は350万程で、全業種の平均年収で見ると決して多くはありませんが、独立して実力が認められた場合は高収入となる可能性も秘めています。イラストレーターの報酬は、作品を仕上げて納品したことに対してのみ報酬をもらう「買い切り型」の他、イラストのグッズ化等その先の展開がある場合に、売り上げに応じて発生する歩合給+イラストの料金という場合があります。またクラウドソーシングの場合は、依頼側が独自に設定した報酬が掲示されており、応募者と双方が合意に達した場合に契約が成立するという流れになりますが、相場が平均よりも低いことも多いので注意が必要です。自分のスキルを販売する形態のクラウドソーシングであれば自身で料金設定が可能ですが、ポートフォリオのような作品例が必要となるので、この場合もSNS等で普段から作品を公開しておくことが重要となります。

イラストレーターの仕事内容

イラストレーターの仕事はもちろんイラストを描くことがメインとなりますが、制作会社、プロダクション、広告会社等に勤めている場合は制作チーム内のミーティングやクライアントの対応、雑務と他にも多くの業務をこなすことになります。フリーランスになるとこれらに加えて案件の獲得や事務処理も自分で行う必要が出てきますが、この点はその他の職種と同様と言えるでしょう。イラストレーターとして働くに当たってあらかじめ一番に心得ておきたいことは、どんなに自分で傑作と思った作品が出来上がったとしても、クライアントに認められなければボツになる可能性もあるということです。絵を描くのが好き、絵で仕事をしたいと思っている人ほど個性を出していきたいと思うものですが、画家と違ってイラストレーターの場合は個性を前面に出すことが困難、クライアントに認められなければ仕事にならないということを頭に入れておけば、すぐに挫折してしまうことを避けられます。絵が好きなことは大前提として、さらに相手の要望に答える作品づくりをして依頼者に喜んでもらえたり、それによって報酬がもらえることにやりがいを感じる方は向いている職業と言えます。またグッズになるほど有名なイラストレーターになれば、個性を前面に出すチャンスも巡ってきます。

求められるスキルを紹介

イラストレーターになるために学歴は必須ではありませんが、美大や美術系の専門学校を卒業した人がとる進路の一つになることの多い傾向があります。イラストが認められれば成立する職業ではありますが、まだ大学や専門学校に通う前で自分のスキルに自信がないという方は、基礎を身に着けることができる学校に通うことを検討しても良いでしょう。なお卒業するまでに数年間必要となる学校とは別に、デジタルハリウッドやバンタンデザイン研究所のように、短期や休日のみで技術や知識を身につけられるデザイン系全般の学校もあるので、社会人になってから自分のペースで通うことも可能です。

なおイラストレーターは資格の保有も必須ではありませんが、デザインに関する資格はいくつか存在します。またイラストレーターという職業柄、資格が重宝されるような職業ではありませんが、企業への就職を希望している場合に関連資格を保有していることで、書類選考や面接時において基礎知識を持っていることをアピールできます。

また近年のイラストレーターは、紙やペン、絵具等を使って仕上げた作品を納品するようなアナログな方法よりも、コンピュータ上でイラストを作成しての納品を要求されることの方が多くなってきています。8割近くがデジタルなデータでの納品が必要とも言われているため、絵を描くスキルだけではなく、パソコンやタブレット端末上でイラストを仕上げるスキルを身に着ける必要があります。パソコン等で利用することの多いデザイン系ツールで代表的なものとしては、IllustratorやPhotoshopがあります。Illustratorはイラスト等のグラフィックデザインを作成する際に欠かせないソフトであり、Photoshopは主に画像データを加工するためのソフトで、いずれもアドビ株式会社が長年に渡って提供しているデザイン系のソフトです。これらは昔からデザインの現場で広く利用されていますが、かつてはマウス操作だけでイラストを描いていたために、ペンや鉛筆で紙に描くような繊細で精巧なイラストを表現することが難しい面がありました。しかしタッチペン等の登場により、近年はコンピュータ上に直接描けてより便利になっています。画面を見ながらペンを動かして描いていくソフト、タブレットやパソコンの画面に直接ペンで書き込めるソフトなど様々ですが、これらを扱える技術や知識を持っているとイラストレーターになった場合に役立つのはもちろん、自信の作業もスムーズに行えます。またアナログな作品と違い、データの納品時には保存形式(拡張子)を指定されることや、サーバー上への保存を依頼されることもあるため、デジタルデータの取り扱い方等のIT系の基礎知識、パソコンの操作スキルも必要となります。

持っていると役立つ資格について

改めて最後に、イラストレーターになるに当たって持っていると役に立つ資格を紹介します。一つは「Illustratorクリエイター能力認定試験」で、Adobeのソフトである「Illustrator」の実技や操作知識が問われます。レベルは「スタンダード」「エキスパート」の2段階あります。もう一つは同じくAdobeの「Photoshop」に関する実技や操作知識が問われる「Photoshopクリエイター能力認定試験」です。こちらもレベルが「スタンダード」「エキスパート」の2段階あります。募集要項にllustratorやPhotoshopのスキルが必須となっている場合に、これらの資格を持っていると有利になる可能性があります。

また美術系の大学を卒業している人は持っていることの多い「色彩検定」や「カラーコーディネーター検定試験」も、デザイン全般の知識を学ぶために有用と言えます。なお色彩検定は色彩学に関する知識が問われる試験となっており、カラーコーディネーター検定試験は色彩に関する専門知識が問われる試験です。一般的にカラーコーディネーター検定試験の方が難易度が高いと言われていますが、いずれの試験も元々センスを持ち合わせていなかったとしても、色彩の感覚を後天的に身につけられる有用な資格と言えます。

まとめ

以上紹介してきたように、イラストレーターは決して自分の思い通りに好きな絵だけを描き続けて成り立つ職業ではありませんが、それぞれの媒体に合ったイラストを提供してそれを見た人に影響を与えることや、クライアントに喜んでもらえるといった違う魅力を持っています。また個人フリーランスという働き方だけではなく、企業専属のイラストレーターも存在するので、安定した収入を得ることも可能な職業です。絵を描くことを仕事にしたいと考えている方はぜひ選択肢の一つとしてイラストレーターを検討してみてはいかがでしょうか。