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はじめに

IT企業でシステムを開発する際には大抵の場合プロジェクトが発足され、プロジェクトリーダー(PL)やプロジェクトマネージャーが(PM)、同システムの開発に携わるメンバーを率いてプロジェクトを成功に導いていきます。その中でPMは全メンバーの管理・調整をしていきますが、管理範囲は自社のプロジェクトメンバーだけではなく、ベンダーがいる場合はベンダーの管理も必要とされます。またPMで一元管理することが困難な場合は、VMOという専門組織を別に設置してベンダー管理をしていく現場もあります。この記事ではベンダー管理とは何か、どうして必要かという点と、ベンダー管理と結び付けて論じられることの多いVMOやDXという言葉に関しても紹介していきます。

ベンダーとは

ベンダーという言葉は日常的に聞くようなものではないので、聞いたことはあるものの何を示しているのか曖昧な方もいることでしょう。ベンダーは英語で「vendor」と書き、販売業者、製造元を意味します。英語が堪能な方は、販売機のことを英語で「vending machine」と言うのを聞いたことがあるのではないでしょうか。なおベンダーの対照は、一般的に聞きなれた言葉である「ユーザー」となります。ベンダーは特にIT業界で良く使われる言葉であり、IT業界でベンダーと言った場合は、サーバーやストレージといったハードウェアやセキュリティソフト、業務用ソフト等のソフトウェア、システム開発、サーバーサービス等を提供している企業を表します。その他業界の「サプライヤー」に近い意味と言えます。なおIT業界では資格の種類に関して「ベンダー資格」と分類することがありますが、これはOracleやAWS、LPIC、Cisco等なんらかの製品やサービスを提供している企業が実施・認定している資格のことを表しています。

ベンダー管理とその重要性について

ベンダー管理(ベンダーマネジメント)は「ベンダーコントロール」と呼ばれることもあり、外部システムの導入や、開発プロジェクトにおいてシステムの一部の開発を外部委託する場合に良質な契約を結べるように調整・交渉したり、ベンダーと良好な関係を築きながら、プロジェクト開始後のベンダー側の進捗管理をしてプロジェクトを成功に導く業務です。ベンダー管理はPMやSE(システムエンジニア)が担当することが多く、プロジェクトチームをまとめるのと同様に、リーダーシップのスキルや責任感が必要となります。また実際の作業はベンダーに任せるものの、自社の要望を正確に伝えることや、依頼通りの開発が進んでいるかを判断することも必要となるため、総合的な作業内容や仕組みを把握できるだけのインフラを中心とした幅広いIT知識が求められます。

近年はIT技術の進歩と共にシステムが複雑化してきていることに伴って、複数のベンダー製品を導入して開発が行われる場合もあります。そういった状況下ではベンダー管理も複雑になってくるため、一人の管理者だけでは管理しきれない状況が発生します。そのような事態を解決するために、VMO(Vender Management Office)というベンダー管理専門の組織を社内に立ち上げ、業務を委任することもあります。

VMOとは

VMOはOfficeと付くので一つの企業のような名称ですが、基本的には社内に複数人の組織として設置し、ベンダーがパフォーマンスを最大限に発揮できるよう管理します。PM等の立場の人が1人で管理していると管理しきれないばかりではなく、属人化して代わりが利かない状態にもなりかねません。その点VMOを設置してベンダー管理を組織的に実施することで、ベンダーの選定や契約詳細、パフォーマンス、SLA(Service Level Agreement)、ライセンス管理等、各項目を細分化して綿密に管理できるようになり、情報を集約することで社内全体のナレッジ化にもしやすくなります。

VMOが担う業務を大きく分類するとベンダー選定、契約管理、リスク管理、パフォーマンス管理、モチベーション管理の5つとなります。ベンダー選定では、数あるベンダーの中から希望しているシステムの開発を得意としている適切なベンダーを選んで契約交渉に移ります。契約管理では予算や設定した納期、責任範囲、提示されたSLA等、ベンダーと結んだ契約内容を管理します。リスク管理は、仮にベンダーが納期を守れなかった場合、希望通りのシステムが開発できなかった場合、経営不振でベンダーが会社を畳むことになった場合等、発生し得るリスクを事前にピックアップしたうえで、発生時の対処方法を考えて備えておくことです。パフォーマンス管理では、PDCA(Plan、Do、Check、Action)を元にベンダーの進捗状況を定期的に把握し、ベンダーに対する評価に関してベンダーごとにブレが発生しないように基準を設定することが求められます。また案件を丸投げしたまま放置していては思わぬ問題を招く可能性も出てくるので、ベンダー側の進捗管理はリスク管理にも繋がります。モチベーション管理は、管理というよりは頻繁にコミュニケーションをとってベンダーとの良好な関係を保つことを指しています。厳しい納期や無理な予算ばかりを提示したり、常に上から命令するような態度で接していたりすれば、ベンダーも人間なので気持ち良く仕事ができなくなります。自社に不利にならないような状態を保ちつつ、ベンダーにも気持ち良く仕事を進めてもらってパフォーマンスを遺憾なく発揮した結果、高品質なシステムを納期通りに完成させることを目指します。

DXとは

DXはデジタルトランスインフォメーションのことです。デジタルトランスインフォメーションとは、AIやIoTのように皆さんの生活や仕事の中にIT技術が浸透していくことを表しています。例えば映像作品のオンライン配信化や顧客管理システムの導入、業務の自動化等が該当します。なおただのIT化のように思えますが、本来IT技術は手段の一つであり、ITが導入されることによって生活や仕事のあり方が変わっていくことがDXと定義されています。「ベンダー管理とその重要性について」の項目で述べた「近年のシステムの複雑化」は主にこのDXを指しており、現在ITが活用されていない部分にITを浸透させていくためには安全に利用できるためのセキュリティやシステムの管理が欠かせません。ベンダー管理もその中の一つで、これまで以上に細かく、厳密で高度な管理が求められるようになりました。PMは自社プロジェクトメンバーの管理や他部門との連携等の業務があるうえでベンダー管理を行うため、どうしてもこれまで以上の管理を行うことが難しい部分がありますが、それを補えるのがVMOの存在となります。企業によっては「ハイブリッドVMO」と命名して、ベンダー管理をアウトソースするという考えを提唱しているところもあるぐらい、DXにおけるVMOの存在は重要視されています。

まとめ

ベンダーは自社の組織でこそないものの、自社プロジェクトチームのメンバーと同様に、一緒にシステムの完成を目指す大切な仕事仲間となります。開発の一役を担ってもらっているからには進捗等の管理が必要となり、両者の関係性も良好でなければ高品質なシステムは開発できません。特に近年のシステムは複雑化していく傾向にあるため、複数のベンダーと共に開発を行うことも珍しくありません。そのような状況の中で、専門的にベンダー管理をするVMOは非常に重要な存在であり、プロジェクト全体を管理しなければならないPMの業務をサポートできる立場となります。ぜひベンダー管理の行われていない企業に転職した際には、今回の記事を参考にVMOの設置等を提案してみてはいかがでしょうか。