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内定者研修とは?実施内容は?

「内定者研修」という言葉は聞いたことがあっても、実際にどのようなことが行われるのかについてはあまり詳細に知られていないのが現状です。内定者しか研修の内容を知らされないということもありますし、会社によっては内定者研修の内容を外部へ口外しないように通達していることもあります。

内定者に対する研修内容は、入社後の業務にも関係することが多いため、内定者研修の内容が外部に漏れるということは企業にとっての機密情報を漏らしてしまうことにもなるからです。そのため、例えば有名企業で行われている内定者研修の代表的な実施内容などは、あまり公にされないことも多いのです。

このようにあまり公に知られることが多いとは言えない内定者研修の内情ではありますが、一般的には「行われているであろう」と考えられている内定者研修の内容はある程度知られています。この記事ではそういった内容について解説・紹介していきます。

内定者研修を行う目的とは?

そもそも、なぜ内定者研修が行われるのでしょうか?「内定者」研修と名がついていることからわかるとおり、内定者研修は入社後に行われる「新入社員研修」とは全く別のものです。「内定者」つまり、日本で言えば来春に入社する入社予定者に対して行われる研修ということなのですが、入社前に研修を行う目的とはどのようなものなのでしょうか?

(1)「社会人になる」自覚を促すための意識改革

当たり前のことではありますが、学生時代の行うアルバイトと社会人=正社員として行う業務では与えられた役割に対する課題や責任が大きく異なります。社会人としての方が責任も大きく、ちょっとした気の緩みが会社にとって大きな損害になってしまうこともあり得るというリスクが存在します。

近年SNSなどを通じてアルバイト勤務者による騒動が起きた事例もあるため、各企業は正社員として入社予定の内定者に対しては軽率な行動を内定以降は控えるようにと通達を出したりすることもあるようです。入社後はもちろんですが、内定が出された状態であっても不祥事が起きてしまった場合は成人であれば氏名などが公表されてしまいます。それだけではなく、SNSなどを通じて今後どの企業で働く予定か、などの個人情報が流出・特定されてしまう可能性も否定できません。その際に入社予定の社名などが公開されてしまうと、現時点では入社していなかったとしても会社も批判されてしまったり、最悪の場合は内定取り消しなどの重大な事態にもなりかねません。内定者研修では社会人としてのモラルやマナーなどを教育し、内定者の意識を改革することも目的になります。

(2)社会人として必要最低限のスキル習得

オフィスワークなどではWordやExcel、PowerPointのようなオフィス系アプリケーションや、経理ソフトなどを使って仕事をするケースが多くなります。スマホやタブレットの普及によって、大学生であっても個人用のPCを持っていない層が増えており、ネットの閲覧やメール、メッセージのやり取りまで全て含めてスマホやタブレットで行う学生も多いようです。

そのような場合は、例えばMicrosoft Officeのような社会人としての必須ツールに触れる機会が入社後まで訪れないことになってしまい、実際に業務が始まってから周囲にツールの使用方法を教えてもらうところからスタートしなければならなくなります。

このような事態は職場の他メンバーにとっては少なからず業務効率を下げる状況になってしまいますし、ソフトやツールの使い方を教えている間は他のメンバーの時間を奪ってしまうことにもなってしまいます。そのため、基本的なスキルの習得としてPCの操作やオフィス系アプリケーションを使ったレポートなどを課す企業もあるようです。

(3)入社後に必要となる協調性の確認と醸成

会社で働く際には、基本的に組織やチームで動くことが多くなります。経験のない新入社員のうちはなおさら先輩や上司のサポート役として動くことが多くなり、相手と自分の関係性や求められていることをこなす協調性が必要になります。多くの内定者研修ではこの協調性の確認と醸成が行われると言われています。

グループディスカッションを行うケースもありますが、これはディスカッションの中身もさることながら、会話の中で与えられた役割に従い、周囲に気を配った進行が実現できるかどうかを確認されていると考えたほうが良いでしょう。例えば相手が間違った認識で会話を進めようとした時に、衆目の中で間違いを指摘するよりも、確認をする体で全体の会話の流れを修正するほうが角が立ちません。

このように、相手の立場も考えながら、場合によって自分と相手の立場両方を守ったりするチームワークも必要だということを教育することも目的とされます。

(4)内定辞退の防止

内定者研修の大きな目的の一つに「内定辞退の防止」があります。入社まで数ヶ月先という状況では、内定者の心境や環境に変化が起きることも十分に考えられます。

入社までの間に別の目標や夢ができたり、人生設計に変化が発生してしまったとしても、自社への入社の意思が変わらないように、入社後の生活をイメージしてもらったり入社して勤務することそのものを楽しみだと思ってもらい、他のことに意識が向かないように繋ぎ止めておくことも内定者研修の目的になります。

内定者研修におけるポイント4つ

そもそも、内定者研修はなぜ必要とされているのでしょうか?

「内定者研修を行う目的とは?」の項で上げた4つのことが目的とされていますが、その中でも特徴的なのが「内定辞退の防止」という点です。日本の場合は新卒一括採用が行われており、大学4年制の場合は例年6月頃には内定者が出始めます。しかし実際に入社し勤務が始まるのは翌年の4月からです。そのため、時間がかなりあいてしまうことが内定辞退の防止という目的を生むことにもなり、内定者研修の課題にもなっています。

それでは、内定者研修を成功させるためにはどのようなことが必要だと考えられているのでしょうか?内定者研修のポイントを4つご説明します。

(1)内定者研修の目的とゴールを明確にし、共通認識にする

1つ目のポイントは内定者研修に限らず、何らかの研修を行う場合に重要なのは「目的と目指すべき着地点(ゴール)を明確にする」ということです。研修は受講者にとって有益な結果を生むために行われるべきですが、場合によっては実施する側が「研修を行った」という結果を手にすることが無意識に目的化してしまうことがあります。

そのような場合には研修の受講者はその研修が何を目的としていて、どこを目指せばいいのかということがわからなかったり疑問を持ってしまったりして、せっかく時間をかけて研修を実施しても経験として後に残らないということにもなりかねません。

そうならないためには受講者側、実施側の共通認識として「何のために研修を行い」「研修終了後にどうなっているのが良いか」ということを明確にしておくべきです。

(2)内定者研修のスケジュールを立てる

2つ目のポイントは、研修全体のスケジュールを綿密に立てるということです。また、そのスケジュールは受講者に対して明確に提示するのがベストです。

内定者研修には様々な形態があり、自社に招いてオフィスや会議室で行われることもありますが、場合によっては内定者長期休暇などを活用して数日の宿泊研修が実施されることもあります。いずれの場合でも日程やタイムスケジュール、その中でどのような研修が行われるのかについて明確にし、前もって受講者に伝えおくと研修に向けた準備や意識も高まり効果的な研修が実施できるでしょう。

(3)内定者の特性とスキルを見える化する

3つ目のポイントとして、内定者研修に参加した内定者それぞれの特性や、その時点で持っているスキルを可視化することがあげられます。

研修に参加する内定者は翌年の4月にそれぞれの配属先で実際の業務に従事することになりますが、各部署の状況によって求められる人材や求められるスキルは異なりますし変化します。採用活動を行っている時点で必要とされる人材やスキル、人員の補充が必要だと考えられる部門はありますが、翌年の4月までは時間もあるため状況が変化した時のために、内定者達がそれぞれどのような人材なのかを把握しておくことは人員配置を柔軟に行うために大切なことです。

(4)現場の声を反映させた内定者教育を行う

4つ目のポイントは、内定者研修の内容に「現場の声を反映させる」ということです。内定者研修に限らず、企業が実施する研修は、終了後に「現場のニーズと合っていない」という批判を受けることがあります。

総務・人事系の部門が主導して内容を決めた研修は、場合によっては「研修のための研修」ではないかと疑問を呈されてしまうことにもなりかねません。このような事態は「どういった部門にどのような効果を生むための研修か」ということが突き詰めて定義されていないから起きることだと考えられています。

そのため、内定者研修の場合は「来年の4月に新入社員を配属する予定の部署」の各現場と話し合い、どのような特徴を持った人材が必要か?そのためにはどのような内容の研修が必要なのかについて明確にしておくことが重要です。

内定者が研修までに準備しておくべきこととは?

内定者研修を行う側が考えるべきこともありますが、逆の視点で見た場合に内定者は研修に対してどのような準備をしておくのが良いのでしょうか?

内定者研修は基本的に「入社前の研修」なので、できる準備に限界があるのは事実です。しかし、内定を辞退するつもりがないのであれば、研修に参加する企業で翌年の4月から働くことになるわけですから、軽い気持ちよりもしっかりと腰を据えた準備をして取り組むことで入社前にアピールすることも可能になります。

完璧になっておく必要はありませんが、文書作成のスキルは磨いておくと良いでしょう。ビジネスの場面では必要な情報を必要な分量だけで伝えるスキルが重要になります。伝達事項の要点をまとめ、第三者が見てひと目で分かるような簡潔な文章を書くスキルというは、入社後に必ず必要になります。

最低限のビジネスマナーについて覚えておくことも大切です。最近ではあまり気にされなくなりつつあるとも言われますが、取引先の上層部クラスの年代においては「上座」や「下座」の概念を重要視する方はまだまだ多くいます。面談時の作法や、挨拶時の言葉遣いなど、日常レベルのビジネスマナーについては一通り知識として学習し、頭に入れておくのが良いでしょう。

話している相手が理解しやすい話し方を身につけることも大切です。文書作成のスキルと合わせて「コミュニケーションスキル」だと言い換えることもできますが、文字を書いて伝えること、目の前で話して伝えることは少し異なります。実際に話して伝えるスキルの場合は相手の表情や目の動きなどを見て、状況に応じて言葉遣いや速さなどを変える必要もあります。このような会話のリズムを読み取り、必要な情報を的確に相手に伝えられるように練習しておくと、研修中にも役に立つでしょう。

可能であれば個人用のPCを購入し、WordやExcel、PowerPointなどのオフィス系アプリケーションを一通り使えるようにしておくと良いでしょう。入社後の業務では必ずこうしたオフィス系アプリケーションを使うことになりますし、内定研修中も日々のレポートを書くことになるかもしれません。そのような時のためにオフィス系アプリケーションの操作方法を習得しておくと、研修にも入社後の業務にも役に立つでしょう。

まとめ

内定者研修とはどんなもので、何を目的として行われるのか、について解説してきました。入社前にまとまった時間を拘束して行うことになる内定者研修には現在でも賛否両論はありますが、上手に実施できれば内定者にとっても企業にとってもお互いにプラスになる結果を導くことができます。内定者にとっては近い将来一緒に働く仲間と実際に触れ合ってモチベーションを高めることにもなりますし、企業側から見れば入社後に戦力になりそうな人材を早く発掘することができるチャンスでもあります。それぞれの立場で内定者研修を有効に活用してみましょう。