業界におけるテストエンジニアの将来性と需要
1.概要
1.テストエンジニアとは
「テストエンジニア」とは、ソフトウェアの品質を保つためにテスト計画や実施、結果の分析、品質改善の立案等を行うエンジニアです。
また、複数のテストケースを実施していく上でプログラムやデータベースの設計ミス、エラーを見つけて品質向上を目的としています。今回はテストエンジニアに求められるスキル・将来性について簡単に解説していきます。
2.業務内容・求められるスキルや資格
1.業務内容
- 1.分析・設計
- 2.テスト設計
- 3.テストケースの実行
- 4.結果の文書化
製品に対する、テストの目的、実施期間、作業者の配置からモジュールの分担、テスト完了の基準など、テストを実施していくうえでの工程を計画、検討していきます。
テストの技法をどのように用いて、どのようなテストケースを実施するか、テストを行うまでの手順を決定していきます。実行前の手順があやふやであると手戻りすることがありますので、実行前にテストケースの洗い出しを行う必要があります。
2で設計したテストケースを実行します。実行後のDBダンプやテストの証跡を記録して、想定通りのプログラムが動いているか、動作チェックを行います。
終了したテストの結果とチェックリストの基準から結果を文書にしてまとめます。また、近年はテストの「自動化」が進んでおり、導入サポートや自動化の高速化等が求められるようになってきているので、エンジニアの需要が高まりつつあります。
2.求められるスキル
- 1.開発スキル
- 2.テスト技法に関するスキル
- 3.集中力と問題提案スキル
- 4.文書作成スキル
テストを実行していくうえで、ソフトウェアに関係する開発スキルは必要になります。テストを実行していくうえで実装手順の把握しておくことで、如何様なテストケースが必要かの検討がしやすくなります。また、プログラミングの知識があればバグ発見時にソースコードに修正を加えることができ、業務の幅が広がります。
システムに沿った適切なテスト環境を構築して実施するため、ソフトウェアテストの概念やテスト実行の工程や技法について知っておく必要があります。
担当するフェーズにより、ひたすらテストし続けることになりますので、継続して細かい作業を行うことに対する集中力が求められます。
また、テストリーダー等、責任のある立場となった場合、メンバーのマネジメントや、テスト環境や作業の問題点を替え、改善していく問題提案が求められます。
テストケースそれぞれに対して、証跡となるエビデンスを残す必要があります。画面やデータの実行前後の変化が分かるように文書を整えて、結果報告をプレゼンの資料作成も行います。
3.取得しておきたい資格
- 1.基本情報処理技術者試験
- 2.JSTQB認定テスト技術者資格 [
- ・Foundation Level
- ・Advanced Level テストマネージャ
- ・Advanced Level テストアナリスト
- 3.IT検証技術者認定試験(IVEC)
IPA主催の国家試験になります。ITの知識のほか、プログラミングの知識も必要となる資格なので、実務でソースをみながらバグ修正の役に立ちます。
JSTQB(Japan Software Testing Qualifications Board:日本ソフトウェアテスト資格認定委員会)が実施している資格です。レベルは以下の3つがあります。
ソフトウェアテストについての基本的な理解が問われます。テスト技法やテストマネジメント、テストツールなどの基礎的な知識を証明することができます。
テスト設計やテストマネジメント、テスト自動化、結果の分析等、幅広い知識を証明することができます。
テスト設計やテストマネジメント、テスト自動化、結果の分析等、幅広い知識を証明することができることや、テスト分析技法に関する深い知識を証明することができます。
一般社団法人IT検証産業協会(IVIA)が主催するテストエンジニア向けの資格になります。レベルは7段階に分かれています。レベル3以上の資格は、下位資格の取得が必須となります。将来性を見越すのであれば、字レベル3以上の試験を受験できるよう勉強を進めるのがよいでしょう。
2.テストエンジニアの将来性
1.業界の変化
IT業界において、現在先端技術である「AI」や「IoT」の需要が高まりつつあります。
例えば「IoT」であれば従来の製品がインターネットを通じてサーバーやクラウドサービスと接続をすることにより、在庫数の把握や品質の管理、不具合をリアルタイムで把握する等ができるようになりました。それらの発展の拡大のおかげで、開発範囲の拡大もしています。
また「AI」技術の発展により、デザインやコーディング、製品のテスト実施など、これまでエンドニアが携わってきた業務のすべてを「機械」が行う傾向になりつつあります。ほかにもAI搭載型のソフトウェアの開発など「AI活用」を前提とした開発が進んできています。AIが業務に加われば「テストの実施」や「デザイン設計」など、あらゆることが「自動化」によってエンジニアの需要が薄くなっていく一方にあります。とはいえ、急にすべてが「自動化」していくというわけではありません。長いスパンを経て「自動化」が実装されていく可能性があります。
2.テストエンジニアとしての仕事の変化
業界の変革は、テストエンジニアの仕事にも影響を与えます。その一つが上段でも挙げた「AI技術を用いたテストの自動化」です。従来の業務はテストケースの組み合わせによって何十、何万ケースと膨大になるため、重要なケースのみを取捨選択して実施していました。しかし、自動化が進めば労働コストの削減や網羅的ケースの実施により品質向上が可能になります。
とはいえ、自動化の動きが本格的に動き出したとしてもテストエンジニアの需要がなくなることはありません。自動化ツール自体を使いこなすためにもエンジニアの手が必要不可欠です。自動化ツールを導入して効率的に運用していくか、設計して実行するのはエンジニアです。場合によっては、自動化の導入によってエンジニアに求められるスキルが変わってくる可能性があります。
3.需要
現在、IT業界は慢性的な人材不足が続いており、特にエンジニアやプログラマーの不足が深刻化しております。原因しては技術の発展とともにそれらを応用できる技術者がいないというのが、1つの原因とされています。
当然のことながら開発系のエンジニアやプログラマーは売り手市場の状態にあります。また、開発された製品テストを行うテストエンジニアの需要も同じように高まりつつあります。
テストエンジニアは、未経験や初心者がテスト業務に携わる事が多い上、仕事も獲得しやすい面があります。そのうえ、業務知識において、スキル言語を必要としないものもあります。しかし、テスト業務を行う際は「報告・連絡・相談」ができること。テスト結果をまとめる際に「Word・Excel」といったOA機器の基本操作ができること。そして高いモチベーションやコミュニケーション能力に長けている事が未経験者では評価されます。
業界理解を深める意味でも「テスト業務」から関わることで、スキル言語やテスト工程、開発の流れに触れられるメリットがあり、将来性もあるといえるでしょう。
4.将来性
IT業界が売り手市場かつ需要が高まりつつある中で、将来的には仕事を、AIに奪われる可能性があります。その一方で、機械による業務効率化によるテスト設計等の、上流設計に関わるエンジニアの需要が高まりつつあります。
テスト技術を軸に、分析や設計といった専門的技術を高めることで、エンジニアとしての市場も将来性も高めることができます。
3.キャリアパス
- 1.テストマネージャー
- 2.テストアナリスト
- 3.プログラマー
テストエンジニアのチームとしてまとめる存在であり、様々な業務をこなす存在です。1つの案件やチームを請け負うのではなく、複数の複数の案件を同時進行で指揮をする必要性があります。どのプログラムにもテスト工程は必要であることから、将来性を見込めるキャリアになります。
テストマネージャーのような役割を担う面もありますが、テスト設計書の作成やテストの結果を報告することが業務内容になります。ついてはバグの修正だけでなく、プログラムの改善策を打ち出す事も行います。
テストエンジニアの上位の職種になります。テストエンジニアよりもやりがいのある仕事が多く、目指している方も多くいます。しかし、その分、高いスキルが求められます。
4.まとめ
テストエンジニアの需要は、テストからのスキルアップできる道が多く存在します。地味な作業とはいえ、現場で得られるモノは多く存在し、エンジニアとしてのスキルの幅を広げられる可能性を秘めています。
仕事は「縁の下の力持ち」のような存在ですが、業界においてはいなくてはならない、必要不可欠な存在であり、将来性も見込める仕事です。これからエンジニアを目指す方に、こちらの記事が参考になれば幸いです。