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みなさんがフリーランスになったとき、まずなにをしますか。クライアントへのフリーランスになった報告でしょうか、それとも事務所探しでしょうか。そんなとき思い浮かべるものの1つに開業というものがあります。自分が会社を作って仕事を始めることは、社会的責任と信頼を得るための手段かもしれませんし、自身のモチベーションアップのためかもしれません。そこで今回は、フリーランスが開業するときに必要な開業届についての基本的な内容と開業届を出すことのメリットとデメリットをご紹介します。

〈フリーランスの開業とは〉

いざフリーランスになると開業しなくてはならないと考えるかもしれませんが、率直に言えば、フリーランスになったからといって開業の「義務」はありません。しかし開業届を出し開業することによってフリーランスで仕事をしていくときに受けられるメリットが増えることになります。

開業のメリットとは

それではまず、フリーランスが開業した場合のメリットをご紹介します。

屋号が持てる

フリーランスになり開業に伴って開業届を提出すると、自分の会社の屋号を持つことができます。会社の名前なんて必要なの?とお考えのかたもいるかもしれませんが、この屋号があることによって、屋号で領収書を書いたりもらったりすることができますし、個人名義の銀行口座ではなく、屋号で銀行口座を持つことが可能です。フリーランスであれば、自分名義の口座をいくつも持ち1つを仕事用として使うこともできますが、屋号で口座をもつと個人口座と会社としての口座の公私をしっかり分けて管理することができます。

青色申告ができる

開業届を提出する最大のメリットになるポイントは、青色申告を行うことによる節税になります。フリーランスが確定申告をする際には、通常の白色申告と書類提出をすることで行うことができる青色申告の2つがあります。この青色申告を行うためには、開業し事業を行っている要件が必要です。青色申告をすることで、青色申告特別控除という所得税の控除を受けることができます。普通の白色申告では控除額がありませんが、青色申告をすると、最高65万円が控除額として控除されます。

開業のデメリット

次に開業のデメリットをご紹介します。

・失業手当がもらえなくなる

もし、会社で働いて退職しフリーランスになる場合には、失業手当がデメリットとしてあげられます。失業手当とは、会社を辞めた人に対して次の仕事が見つかるまでの間の生活維持や就活を容易にするためにもらえる手当になっています。 ただし、失業手当を受け取るためには一定の要件と手続きがあります。自己都合の退職(家族の介護や病気による就労困難など)か、会社都合退職(倒産、解雇など)に分かれており、該当した場合は、雇用保険被保険者離職票やマイナンバーカード、身元確認書類等を準備し、ハローワークで手続きをしなくてはなりません。また、その後の保険説明会や月2回以上の求職活動などの認定条件もあります。意外と手間と時間がかかるので、もしフリーランスや個人事業主として独り立ちし、もう会社に所属することはしないと強くお考えなら、失業手当を捨ててしまえば、デメリットにはなりません。

正規の簿記原則にそった会計処理が必要

青色申告の控除を受けるためには、事業所得にかかる取引などを正規の簿記原則(複式簿記)により記帳することが義務づけられています。この記帳をもとに、賃借対照表(バランスシートとも呼ばれ、会社のプラスの財産とマイナスの財産がわかる表)と損益計算書(収益と費用から利益を計算した経営成績がわかる表)を確定申告書に添付して提出しなくてはなりません。この記帳や提出表の作成することが面倒に感じる場合にはデメリットとなります。ちなみに、帳簿書類や決算書類、領収証などは7年間、請求書、見積書、納品書などは、5年の保管義務があります。

申告しないと税務署から連絡がくる

そもそもフリーランスかどうかに関わらず、所得が一定以上ある場合や副業で収入を得ていれば、確定申告することが義務になっています。確定申告しなければ、税務署から連絡があり、追徴課税されることで多くの税金を支払うことになります。ただし個人で確定申告に不備があることと開業し会社として確定申告に不備があることでは、信用の問題が関わってくるので、注意するポイントです。

〈開業の手続〉

ここまででフリーランスが開業届を出すメリット・デメリットを知っていただけたでしょうか。それではメリット・デメリットを知った上で開業しようと決めた時、どういった手続きが必要なのでしょうか。ここからは開業届の書き方から提出までをご説明します。

・必要書類の準備

まず開業手続きに必要な書類と準備しておくとよい書類をご紹介します。

必要書類

・開業届   個人事業として事業をスタートしたときに税務署に提出しなくてはならない書類です。これは開業する際には必須の書類です。開業届を提出することで、事業としての納税が開始されることになります。正式名称は「個人事業開業・廃止等の届出書」となり、以下のような書類になります。開業届は国税庁のホームページからダウンロードするか、最寄りの税務署に行けばもらうことができます。 出典:個人事業の開業届出・廃業届出等手続(国税庁)

準備しておくとよい書類

・青色申告承認書 開業のメリットとしてあげた、青色申告を行うために必要な書類です。開業届と一緒に準備しておくとスムーズに手続きができます。1月15日までに新規事業をスタートした場合には、その年の3月15日まで、1月16日以降に新規事業をスタートした場合には、開業した日から2ヶ月以内が提出期限です。

・青色事業専従者給与に関する届出書 この届を提出していると、もし15歳以上の配偶者や家族を雇って事業の手伝いを頼む場合、届出書を提出しておけば、その配偶者や家族の給与については必要経費として扱うことができます。必要経費として扱うことができれば、その分だけ所得を減らすことになるので、税金対策にもなります。

・源泉所得税の納期の特例の承認に関する申告書類 もし個人事業主だけでなく従業員を雇用するのであれば、提出することをおすすめします。この書類を提出しておくと、従業員が10人以下であれば、源泉徴収した所得税を年に2回半年分をまとめて納入することができる特例を受けることができます。わざわざ毎月納入する必要がなくなるので手間が省けます。

・書類の記入 それでは、ダウンロードした書類に必要事項を記入していきましょう。 必要項目は以下になります。

①個人事業の開業・廃業等届出書の開業に〇をつける

②税務署を記入する  納税する税務署と提出日を記入します。

③納税地を記入する  納税地は、住所地、居所地、事業所等から選び〇をつけます。  郵便番号、住所、電話番号を記入します

④個人情報を記入する  氏名、生年月日を記入します。

⑤職業を記入する  特に決まりはなく、仕事内容が伝わればよいとされています。もし不安であれば、「日本標準職業分類」を参考にしましょう。自分の職業はこれかな?と思うものを書いてみましょう。  ※所得が290万円以上あると、記入する職業によっては個人事業税という税金がかかる場合がありますので、事前に調べるか税務署に問い合わせておくと安心です。

⑥屋号を記入する 個人事業主が開業したときに考えるものの1つである屋号を記入します。他の会社名とかぶったりすることを気にして独創的な名前を付ける場合もありますが、まずはその名前でご自身が行う事業内容が伝わるかを考えてみるのがよいでしょう。個人の名前で仕事をすることもできますが、プライベートと仕事をしっかりと分けることができたり、社会的に信頼されるといったメリットもありますので、ぜひ考えてみてください。すぐ決められない場合は空欄で提出すこともできます。

⑦届け出の区分を記入 ここでは開業に〇をつけます。

⑧開業・廃業等日を記入 開業の日付にこれといった定義はありませんので、ご自身で今日から仕事はじめだと決めた日でかまいません。ただ、この開業日によって青色申告の承認申請書を提出する期限が決まってきますので、そちらとの整合性が取れるように注意しましょう。

⑨開業・廃業に伴う届出書の提出の有無 「青色申告承認申請書」と「消費税に関する課税事業者選択届出書」を提出していれば有、していなければ無に〇をしましょう。一般的な個人事業主やフリーランスの場合は、青色申告承認申請書は有、消費税に関する課税事業者選択届出書は無となります。

※消費税に関する課税事業者選択届出書とは? 事業者になると、消費税が課税される事業者と免税される業者に分かれます。 例えば、課税事業者は前々事業年度の課税売上が1,000万円を超える場合や資本金1,000万円以上で設立した法人などがあてはまり、免税事業者は開業初年度の個人事業主、資本金1,000万円未満で設立した法人の第1期目などにあてはまる事業者となります。消費税の還付が期待されるなど利益が想定される場合に、課税事業者選択届出書を提出し課税事業者になる場合があります。

⑩事業の概要を記入する 職業欄に記入した内容について、具体的にどんな事業を行うかを記入します。それほど長文で書く必要はなく、例えば、「アプリケーションの開発、デザイン及びそれに付随する業務」、といった書き方でもかまいません。

⑪給与等の支払の状況を記入 従業員を雇う場合には人数、給与の定め方記入してください。 専従者とは青色事業専従者のことを指し、使用人とはその他の従業員を指します。

⑫源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書の提出の有無 従業員がいて源泉徴収を納入に関する特例申請をする場合には有に〇をつけてください。

簡単に作成するには?

書かなくてはならない項目は多くないですが、どうやって記入するか悩む方もいるかもしれません。その際には「開業freee」という開業手続きをサポートするソフトがありますので、こちらを使用することもおすすめです。質問に回答を入力することで、届出書の作成ができます。 出典:会計ソフト freee (フリー) | 無料から使えるクラウド会計ソフト

URL: https://www.freee.co.jp/

提出場所

必要書類が準備出来たら、提出に行きましょう。提出方法は税務署までもっていくか郵送することができます。手数料はかかりません。また、提出の前に書類をコピーしておきましょう。提出した書類は戻ってきませんので、コピーがないと今後、銀行口座を作ったり融資を受けたりする際に事業を行っている証明がなくなるため困ることになります。

まとめ

いかがだったでしょうか。フリーランスが開業する際に参考になるメリット・デメリット、実際に開業するときの手順や書類についてご紹介しました。実際にフリーランスになってすぐ開業する義務はありません。不安なときはまずフリーランスを始めてみて、これならやっていけそうだと感じることができたら開業届を出すとよいのではないでしょうか。もし開業を選択する際には、今回ご紹介した内容をぜひ参考にしてみてください。