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情報処理安全確保支援士とは?資格の概要

みなさんは「情報処理安全確保支援士」という資格について聞いたことがあるでしょうか?もしかしたらまだご存知無い方もいらっしゃるかもしれません。情報処理安全確保支援士は2017年から資格取得試験が始まった国家資格で、その名の通り、情報処理に関する安全確保を支援するための公的資格です。

2017年に開始された資格ではあるものの、実はこの情報処理安全確保支援士というのは廃止された「情報セキュリティスペシャリスト試験」を引き継ぐ意味で作られた資格になっています。

実態は「情報セキュリティスペシャリスト」の後継資格

もともとあった「情報セキュリティスペシャリスト」は、情報セキュリティに関する技術的な専門性を有することを認める資格でした。開始されたのは2009年からとなっていて、主に想定された資格者の業務は情報システムの開発や運用における技術的な支援というものでした。

しかし2009年から時が経つにつれ、世界のITは大きく変化し動き続けています。中でも情報セキュリティに関しては日々変化と動きが止まらない状態で、サイバー空間での犯罪行為なども増加しているのが現実です。日本においても情報漏洩から始まり企業のサーバーへのサイバー攻撃が増加して社会問題になっている一面があります。情報セキュリティ=サイバーセキュリティに関する備えは常にされておくべきと考えられるようになり、そのための方策を的確で迅速に決める必要性が出てきているのです。

そのためには「システムの開発や運用に対する支援」だけではなく、具体的に情報の安全性を担保したり確保することを促進させられる人材が必要であると考えられるようになった結果生まれたのが、「情報処理安全確保支援士」という国家資格なのです。

情報セキュリティスペシャリストの資格試験は廃止されてしまいましたが、合格者は2019年までの2年間に渡り、後継資格である情報処理安全確保支援士への引き継ぎが可能という制度が用意されていました。いわゆる「経過措置期間」が適用されたため、すでに合格していた情報セキュリティスペシャリストの資格を無駄にすること無く新たな国家資格を得ることができる体制が準備されたのです。

両者の間で異なる点として挙げられるのは、情報処理安全確保支援士の場合は定期的に情報セキュリティに関する講習会を受講する必要があるという点です。オンラインで年1回。対面講習を3年に1回受講することが義務付けられており、これらの講習を未受講の場合は情報処理安全確保支援士の資格を失効してしまうことになります。

情報処理安全確保支援士の受験条件は?

いくつかの国家資格は資格試験の受験にあたって年齢制限や一定の職務経験など、受験に条件を課しているものもありますが、情報処理安全確保支援士についてはどうでしょうか?

結論から言えば、情報処理安全確保支援士の試験に受験資格や条件などは設定されていません。前述の通り国家資格には多種多様なものがありますが、その中には前提となる別の類似資格を事前に取得してあることが受験条件に設定されているものもあります。特に情報系の資格では複数の資格において前提資格の取得が義務付けられているのですが、情報処理安全確保支援士の場合にはそれがありません。また、実務経験も要求されていないため、万が一情報系の実務経験が皆無だったとしても情報処理安全確保支援士の試験を受験し、合格すれば資格を得ることができるのが特徴の一つです。

国家資格は取得すれば就職も含めて様々なチャンスを狙うことができるものですが、それだけに取得の難易度が高いものもあります。事前資格の取得が義務付けられている資格などはその最たるものですが、情報処理安全確保支援士は情報セキュリティという現代では必須となっている事柄に関する資格であるにも関わらず、要求されるハードルが低いため、今からでも十分目指せる資格だと言えるのではないでしょうか。

情報処理安全確保支援士は情報・IT系では初の「士業」登録が可能

情報処理安全確保支援士のもう一つの大きな特徴は、情報系・IT系資格では初めて「士業」としての登録が可能だということです。

士業は公認会計士や税理士、弁護士のように「○○士」という肩書とともに独立開業することができます。士業の仕事の仕方は様々で、一部の士業ではまず既存の事務所に就職し、一定期間の実務経験を積まなければ一人前として認められないものあれば、行政書士のように資格取得直後から独立開業して自分の事務所を開いて業務を開始することが当たり前のものもあります。

情報処理安全確保支援士の場合はどうでしょうか?情報セキュリティに関する業務がメインとなる情報処理安全確保支援士の場合、独立開業することも可能であり、資格保持者であることをアピールして企業で働くことも可能です。近年は日本国内でも情報セキュリティに対する企業の取り組みが注目されています。「会社PCの紛失」「USBメモリの紛失」といったものから、「海外からの大規模サーバー攻撃」のようなものまで、幅広い対応策が求められているのが現代の情報セキュリティ界隈における現状です。

今後も情報セキュリティに対する注目度は、上がることはあっても下がることは無いと考えて良いでしょう。その中で、専門知識を持つ士業である情報処理安全確保支援士情報セキュリティ対策はもはや社会全体の課題は社会的ニーズが上昇する資格であると考えられています。

情報処理安全確保支援士の将来性は?

現代は有名企業だけではなく、世間的にはさほど知名度がない企業であっても情報セキュリティ対策に力を入れる必要があります。

2021年度に日本情報システムユーザー協会(JUAS)が行った調査では、IT関連予算のうち15%以上を情報セキュリティ関連に投じている企業が全体の32%に達していることがわかりました。しかも、売上高が数千億円以上ある大企業よりも100億円規模の売上の企業でこの予算が増加しているという特徴が見られるようになっています。

このことからわかるのは、情報セキュリティ対策はもはや社会全体の課題であるということです。そして、このように情報セキュリティに対する社会的な意識が高まるということは、情報処理安全確保支援士の資格と資格保有者の需要が高まるということを意味します。

日本のIT業界では数年前から2030年までにITエンジニアが70万人規模で不足すると言われています。そのためプログラミングスクールやエンジニア養成コースなどが増えていますが、エンジニアやプログラマーが増加したとしても、その人達が直接情報セキュリティ対策を行えるわけではありません。

情報セキュリティには一定レベル以上の専門知識が必要であり、そのために情報処理安全確保支援士という資格が生まれたという背景があります。そのため、日本におけるITエンジニア数の増加は情報セキュリティ対策への需要を妨げるものではなく、むしろIT業界が拡大すればするほど情報処理安全確保支援士への需要は拡大していくと考えられます。

情報処理安全確保支援士はどのような人を想定しているか?

ここまでご紹介しているように、情報処理安全確保支援士は情報・IT系資格の中では目指すためのハードルが比較的低めの条件設定となっています。では、実際に受験するのはどのような人だと想定されているのでしょうか?

まず第一に想定されているのは、情報セキュリティに携わる業務に現時点で携わっている人です。情報処理安全確保支援士は情報セキュリティに関する専門知識を、その実現のために活用することを目的とした資格なので、資格を取得する人も情報セキュリティの専門家であることは想定されています。

情報セキュリティに関わる業務と言っても様々なケースが考えられますが、情報処理安全確保支援士の場合に想定されるのは情報セキュリティシステムの構築や設計、あるいは企画を行う立場の人が挙げられるでしょう。話題になることが増えたとはいえ、情報セキュリティは日本においては比較的新しい分野だと考えられています。完璧な情報セキュリティシステムを運用できている企業や団体の方が少ないというのが現状であるため、情報処理安全確保支援士を必要としている企業や団体は、情報セキュリティシステムを立ち上げることそのものが最初の目標であることも多いのです。

このような状況の中で、情報処理安全確保支援士の役割や行う業務として想定されるものは何でしょうか?まず、既存のセキュリティシステムがある場合はその分析と検証が想定されます。現在の情報セキュリティシステムは問題なく機能しているかどうか?セキュリティホールは存在しないか?などを分析し、課題の抽出を行うことは期待されるでしょう。

また、課題の抽出だけではなく、顕在化した課題を解決する手法の提案や提示も求められることになります。既存システムの課題を発見することができ、解決手法を提案できるという専門知識を活かし、情報セキュリティ部門全体の人材育成や教育カリキュラムの作成を期待されることもあると考えられます。

実際に作業者としてプレーヤー的な役割を求められるよりも、専門知識を周囲に伝え、伝えた知識や経験をどのように運用し活用していくかというアカデミックな役割が求められる場面も多いでしょう。

したがって、技術知識の活かしどころとしては他業種のエンジニアで言う「基礎設計」の分野に近いかもしれません。システム全体のコンセプトや狙い。それを実現するための必要技術や構築の方法論などを提示し、必要な人材を集めてプロジェクトとして成立させるような動き方がメインになると想定されます。

試験の難易度

ところで、情報処理安全確保支援士試験の難易度はどのくらいだと考えておくべきなのでしょうか?資格に関するWebサイトなどを調査してみると、必要な知識の種類や分量では若干の変化や増加は見られますが、根本的な試験の難易度は情報セキュリティスペシャリスト試験と大きな違いはないように見受けられます。

これは情報処理安全確保支援士が情報セキュリティスペシャリストの後継資格であることが影響していると考えて良いでしょう。後継資格とそれ以前の資格で試験内容や必要知識が大きく変わってしまっては本末転倒です。ただし、今後長く継続していく中で、これらは徐々に変化していく可能性もあります。現在の内容であればチャンスだと思う方は早めに受験して資格を取得するのがオススメです。

まとめ

ここまで、情報処理安全確保支援士について解説してきました。サイバークライムや情報漏洩など、情報の安全性に関する話題が増えている現代においては社会全体から必要とされる知識を活かす国家資格です。独立開業も視野に入れられる、将来性のある資格なので、これを機会に是非検討してみるのが良いのではないでしょうか?