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専門職のイメージが強いSE(システムエンジニア)ですが、SEになるために必要な資格というものはありません。では、SEになるために学歴は必要なのでしょうか?高卒や専門学校卒(専門卒)でSEになれても年収は上がりにくいのでしょうか?SEを目指すため、専門学校への進学を検討している方はもちろん、専門卒でSEになった現役エンジニアの方であれば、SEの年収と学歴との関係性が気になっているのではないでしょうか?

そこで本記事では、会社員SEの一般的な例をもとにして、専門卒という学歴が年収とどのような関係性を持つのかを紹介していくとともに、学歴に関係なく、SEが実力とスキルで年収アップを勝ち取っていく方法を解説していきます。

SE(システムエンジニア)の定義

まずは、SE(システムエンジニア)の定義を明確にしておきましょう。一般的なシステム開発には「要件定義」「基本設計」「詳細設計」「実装(プログラミング)」「テスト」「運用・保守」というプロセスがあります。ウォーターフォール型開発であれば、チームを統括するプロジェクトマネージャー(PM)や、下流工程である実装・テストを担当するプログラマー(PG)が配置されます。この開発プロセスのうち、要件定義〜詳細設計という上流工程を担当するのが「SE」です。

しかし、上流工程を担当するSEは、あくまでも狭義の意味での「SE」です。多くの企業・現場では、PM / PGなどの職種を含め、開発に携わるすべてのエンジニアを「SE」という呼称で統一しています。これが広義の意味での「SE」です。つまり、上流工程を担当できない新卒採用のエンジニアも「SE」と呼ばれることがあるのです。

会社員SEの仕事

それでは、新卒で入社したSEが、狭義のSEとして活躍していくまでに、どのような仕事を手がけていくのか、役割がどのように変化していくのか、一般的な会社員としてIT企業に就職したケースを例に紹介してみましょう。

入社〜2年目

入社したばかりの新人SEは、上司・先輩SEの指導を受けながら、現場でOJT(On the Job Training)を進めていきます。具体的な業務内容はテスト、プログラミング、設計書の元になる資料作成などが中心です。企業によっては新人研修などを経てから現場に配属されることもあり、主に下流工程を担当するのがこの時期です。

2〜5年目

入社から2〜3年を経て実務経験・スキルが身に付き、SEとして徐々に仕事の幅が広がってくるのがこの時期です。基本設計・詳細設計といった上流工程にも参加するようになり、クライアントとの折衝、要件定義の作成なども任されるようになるでしょう。新たに入社してきた新人SEの指導なども任されるようになり、コミュニケーション能力、チーム間の調整力などが重視されるようになります。

5年目以降

狭義のSEとして実績を積み重ねた入社5〜6年目以降は、会社内でより重要なポジションを期待される時期になります。この時期になると、特定領域のスペシャリストとして、スキルをより一層磨いていくか、あるいはPMとして管理職の立場を目指すかでキャリアパスが分かれていくことが多くなります。ゼネラリストとしてのPMを目指すのであれば、プログラミングスキルを磨くよりは、チームをまとめていくマネジメント能力、経営の視点に立った営業力などが期待されるでしょう。

SEの平均年収は550万円

それでは、システム・アプリケーション開発を担う存在のSEは、どのくらいの年収を受け取っているのでしょうか?厚生労働省の統計調査によれば、SEの平均年収は550万円とされています。同調査ではPGの年収も公表されているため、対象はPG / PMを含まない狭義のSEだと思われますが、年代別の調査結果は興味深いものです。20代前半が340万円、20代後半が440万円であるのに対し、年収のピークとなる50代では630万円となっており、実績・スキルを積み重ねても、SEのままでは年収が頭打ちになってしまう傾向が見られます。

一方、同じ業務であっても、年齢を重ねるごとに年収が高額なっているのもSEの特徴であり、一般企業ほどではないものの、日本独特の文化ともいえる年功序列の傾向も見られます。ということは、年齢とともに高額になる傾向のあるSEの年収は、学歴も関係するのでしょうか?

専門卒の年収は低い?

SEに限定したものではありませんが、同じ厚生労働省の賃金調査では、全産業を通じた学歴別の年収推移も公表されています。かいつまんで紹介しておきましょう。

・専門卒の年収
25〜29歳:約370万円
35〜39歳:約500万円
45〜49歳:約700万円
50〜54歳:約770万円

・大卒の年収
25〜29歳:約410万円
35〜39歳:約660万円
45〜49歳:約900万円
50〜54歳:約970万円

新卒入社時でも約40万円の年収差があるのがわかりますが、年齢を重ねるごとにその差が大きくなっており、年収のピークを迎える50代前半では専門卒よりも大卒の方が200万円も高くなっています。おおむね2年間早く働ける専門卒の有利という見方もできますが、生涯賃金で見ても専門卒が約2億4,000万円なのに対し、大卒は約2億8,600万円と、4,600万円もの差がついているのです。一般的には年収・生涯賃金ともに、専門卒は大卒よりも低いといわざるを得ません。

IT業界は学歴不問なのか?

とはいえ、一般的な企業と比較しても、IT業界は実力主義だといわれており、学歴を問わない企業が多いというイメージがあるでしょう。もちろん、それはある意味で事実ですが、アメリカのように実力主義・成果主義が徹底されている日本企業ばかりではありません。そもそもアメリカでも、大前提として学歴が必要な企業も多いのです。

大手企業の新卒採用は大卒対象が多い

エンジニアの採用時に学歴が重視されるかどうか、といった調査は見当たらなかったため、明確な数値で示せるわけではありませんが、エンジニアの新卒採用を実施する企業の規模が大きくなればなるほど、学歴が重視される傾向にあるようです。エントリーの条件に4大卒を挙げている企業も多く、専門卒ではエントリーすらできないというケースも少なくありません。また、中途採用の場合でも、AIエンジニアのように研究者としての側面を要求される職種であれば、大卒・大学院卒の学歴が要求される場合もあります。

中小企業は年収水準が低い

一方、中小のIT企業、スタートアップ・ベンチャー企業などでは、学歴はそれほど重視されない傾向が見られます。学歴に応じて初任給に差が付けられる可能性もありますが、なによりも企業規模が小さくなるほど従業員の年収は低くなる傾向にある点に注意が必要です。SEの企業規模別平均年収を調査した、厚生労働省の情報を紹介しておきましょう。

・企業規模10〜99名:平均年収483万円
・企業規模100〜999名:平均年収529万円
・企業規模1,000名以上:平均年収597万円

企業規模99名以下と1,000名以上では、平均年収で100万円以上の差があることがわかります。これは年齢を問わないSEの平均年収でもあるため、実績・スキル・役割に応じた昇給という点でも、大企業の方が有利だといえるかもしれません。

専門卒のSEが実力で年収アップを勝ち取るには?

それでは、SEを目指すために専門学校への進学を考えている方、すでに専門学校で学んでいる方、専門卒で中小のIT企業に入社済みの方が、実力で年収アップを勝ち取るにはどうしたらいいでしょうか?

まず、専門学校への進学を検討している学生の方は、4年制大学への進学を含めて、今一度進路を見直すのがおすすめです。学ぶ期間が長くなるといっても、大卒であれば生涯賃金面でも有利であり、将来的な選択肢も広げられます。では、すでに専門学校で学んでいる、専門卒で中小IT企業に入社済みの方はどうするか?常套手段として考えられる、2つの方法を紹介していきます。

キャリアアップ転職

新卒採用時は学歴の関係でエントリーできない企業があるかもしれませんが、即戦力が求められる中途採用では学歴が問題になることはほとんどありません。上述したAIエンジニアのような例外はありますが、エンジニアの中途採用ではなによりも実績・スキルが重視されます。中小IT企業に所属していて、なかなか昇給しないようであれば、スキルを高く買ってくれる企業へとキャリアアップ転職するのが一番でしょう。アメリカを含む海外ではキャリアアップ転職が当たり前であり、日本のIT業界でもその傾向が強まってきています。

フリーランス転身

SEの人材不足が進行する現代では、キャリアアップ転職も比較的年収アップに有効な方法ではありますが、会社員のままで年収1,000万円以上を稼ぐ方は多くありません。しかし、学歴を問われることのない実力主義のフリーランスに転身すれば、大幅年収アップを実現しやすいうえに年収1,000万円も現実的な数値として見えてきます。会社員としてのメリットと引き換えに、フリーランスのメリットを享受する面があるため、しっかりと検討する必要はありますが、魅力的な働き方であるのは間違いありません。

専門卒SEが転職・独立を成功させるには?

それでは、専門卒SEがキャリアアップ転職、あるいはフリーランス転身を成功させるには、どのような実力・スキルを身に付ければいいのでしょうか?学歴ではなく、実力を高く買ってもらうために、身につけておきたい知識・スキルを紹介していきましょう。

プログラミングスキルを磨く

狭義のSEとして活動するため、高度なプログラミングスキルは必ずしも必要とはされませんが、幅広く対応できるスキルを身に付けておくのに超したことはありません。流行り廃りのあるプログラミング言語のトレンドを見極め、常に最新情報をキャッチアップしておく姿勢も必要でしょう。Java / PHP / C系言語などのスタンダードなものはもちろん、AI分野で強いPython、報酬単価の高いR / Go、アプリ開発で人気のKotlin / Swiftなど、学ぶべきプログラミング言語は少なくありません。

マネジメント経験を積む

世界的に活躍できるSEともなれば、スペシャリストとしての高年収が期待できますが、一般的にはSEよりもPMなどの管理職の方が高年収を得やすいのも確かです。マネジメント経験を積んで、PMもこなせるSEとして転職・独立すれば、高額年収を得やすくなるのは間違いありません。フリーランス案件でも、SEよりPMの方が高報酬になる傾向にあります。

コミュニケーション能力

開発現場で高度なマネジメント能力を発揮するためには、コミュニケーション能力が欠かせません。上流工程を担当するSEとしてだけでなく、クライアントともスムーズなコミュニケーションのできるPMとして実力を発揮できれば、どのような現場でも重宝される存在になれるでしょう。コミュニケーション能力があれば、フリーランス転身時の営業にも役立つだけでなく、転職時の面接にも有効です。

さいごに

転職するにしても、フリーランスとして営業するにしても、個人の人脈・営業力では限界があります。転職・フリーランスエージェントをうまく活用し、労力を抑えながら最大限の効果を得るのがおすすめです。本記事では、専門卒という学歴がSEの年収に与える影響を検証しましたが、IT化の加速に伴った需要の高まりに、エンジニアの供給がまったく追い付いていないのが現状です。実力さえあれば学歴のハンデは乗り越えられます。本記事の内容も参考にしながら、年収アップにチャレンジしてみてください。