日本のIT業界における人材とIT教育の現状。2030年までに70万人以上が不足?
日本にはIT人材が足りない?
経済産業省の発表によれば、日本においては2030年の時点で最大79万人のIT人材が不足すると言われています。具体的に「IT人材」とはどのような人材のことを言うのでしょうか?
IT人材とはプログラマーやシステムエンジニアなど、いわゆる「ITエンジニア」「エンジニア」と呼ばれるようなITスキルを持つ人々のことです。現代の私達の生活にはITを使った様々なツールが浸透しており、日常生活とITは切っても切り離せない関係にあると言っても過言ではありません。
現代において必要不可欠となっているIT機器やIT関連技術を扱うことができるIT人材ですが、日本においてはなんと不足している状況が長く続いています。IT技術を扱える人材が不足するということは、例えば私達が日常的に使っているインターネットのメンテナンスなどができなくなったり、銀行や官公庁のWebサイトを運用する人材が足りなくなり日常生活に支障が出る可能性も出てきてしまいます。
そのため、IT人材が不足している状況はできる限り早く解消されるべきだと考えられており、政府も対策に乗り出しています。
なぜ日本ではIT人材が不足しているのか?
ではなぜ今の日本ではIT人材が不足しているのでしょうか?1つ言えるのは、どの業界でも当てはまることですが人材不足はいくつかの原因が重なって起きるということです。IT人材不足の場合は次のような原因が重なっていると考えられます。
少子高齢化
日本社会全体で言われていることですが、現代は少子高齢化が進んでいます。日本の全人口の多くが60代以上の高齢者になりつつあると言われていますから、40代以下の若年層人口は数年〜十数年前と比べて相対的に減少しています。20代〜40代の人口が労働力人口としてはメインの年代だと考えられていますので、この年代の人口が相対的に減少しているということはIT業界・IT人材だけでなく日本の労働力人口が減少しているということだとも言えるのです。
IT技術の急速な進歩
西暦2000年以降、世界における様々なIT技術は急速に発展・発達し進歩してきました。それまでの既存業界が数十年かけて行ってきたような技術的な革新が、IT業界においてはたった数年で成し遂げられることもあったほどです。
そのため、急速な技術の発展に技術者の育成が間に合っていないという現状があります。現在主流となっているIT関連技術の多くはアメリカなど海外で発展し日本に入ってきているものも多く、このような状況では日本のIT人材育成は他国よりも後発という状況にならざるを得ません。
IT業界の急拡大
IT技術が発達することにより、ITを活用したビジネスの場も急速に広がりました。既存の製造業などのように大規模な設備投資を必要としないケースも多いIT産業は、その特徴を活かして全世界レベルで急速に広がっています。
これまで世界的に市場競争力を持つ企業が存在しなかった国であっても、技術者の育成と通信環境が一定レベル整ってさえいれば、IT産業を起こして発展させることで世界的な競争力を手に入れることが可能になります。国家レベルでの動きでなく個人レベルでも「机とPCさえあれば世界に出ていける」という状況が生まれたのです。
業界が拡大していく過程では必ず人材が必要になります。組織やチームの生産性をあげようとすればするほど人材は必要になりますが、業界全体が拡大している場合は必然的に人材の取り合いになってしまうため人材不足の状況が起こりやすくなるのです。
労働環境に対する先入観
20年ほど前まで、IT技術者の労働環境は「長時間労働、深夜までの残業、相対的に低賃金」という状況がしばしば取りざたされることもありました。そのため、現在でもIT技術者の労働環境が良くないという先入観を持つ人が一定数存在します。しかし実際にはかつて存在していたような劣悪な労働環境は減少しています。
深夜残業が当たり前のように言われていた「システムエンジニア」や「サーバーエンジニア」の場合は、シフト制が組まれていることが多いため、1人で何十時間もの長時間労働を行って深夜まで業務が及ぶようなことはあまりありません。プログラマーやWebエンジニアなどの職種においても、現在の各開発案件ではほとんどの場合プロジェクトマネージャーという立場の人がいます。プロジェクトマネージャーにより各エンジニアの作業範囲や作業時間は細かく管理されていることが多いため、1人に業務が集中して長時間労働になってしまうケースは減っています。
このように、日本におけるIT人材の不足には様々な要因が絡まりあっており「これ」という一つの原因を指摘するのが正しいこととは限りません。しかし状況を正しく理解することでこのような現状は改善できる可能性が高いでしょう。
IT人材を育成するスクールや教材が増えた理由とは?
ここ数年でIT人材を育成するためのスクールや教材が増えています。いわゆるプログラミングスクールや、オンライン教材、オンラインサロンなどが代表的なものですが、このような動きが活発になっているのはなぜなのでしょうか?
1つは「人材紹介業」と合わせた事業展開をしているスクールも多いということが理由にあります。人材紹介業とは、企業に社員候補となる人材を紹介し報酬を得る事業のことです。プログラミングスクールを主催してIT人材を育成し、育った人材を企業へ紹介します。技術を身につけた人にとっては就職の機会を斡旋してもらえますし、企業は不足するIT人材を紹介してもらえます。そしてスクール側はそのマッチングによっても報酬を得られるという優れたビジネスモデルです。
もう1つの理由としてスクールの主催者や教材の作成者が自ら育てた人材を囲い込み、自分達のチームを作って事業展開を狙うケースもあるという点です。
新たなITサービスなどの開発を行う場合、必ずIT人材が必要です。しかしここまでご紹介してきたように、現在の日本ではただでさえIT人材が不足していると言われていますので、自分達でスクールを運営し人材を育成し、そのまま自分達と一緒に働いてもらおうというケースもあるようです。
IT人材になればチャンスはあるのか?
IT人材が全体的に不足しているということは、IT人材になればチャンスがあると考えてもいいのでしょうか?
基本的にはその答えとしては「YES」だと言えそうです。インターネットへの常時接続が当たり前となり、スマートフォンやタブレット、PCなどのデバイスで様々な機能が必要とされる現代ではIT人材はいくらいても困りません。アプリケーションやシステムなど、IT人材が必要とされる開発案件は減るどころか日々増えていると考えていいでしょう。そのような状況では技術を持った人材の確保に企業は必死です。IT人材として自分を売り込むことで様々なチャンスを得られる可能性は高いと言えるでしょう。
IT人材として評価されるためには何が必要なのか?
ただし企業から見た場合、IT人材なら誰でもいいというわけではありません。
企業が欲しいIT人材というのは「しっかりとした技術力があり」「開発現場に対する理解が早く」「期日までに作業をしてくれる」「コミュニケーション能力が高い」人材です。技術力が高いだけでは職場で求められる作業がこなせるとはかぎりませんし、現場の状況を理解できなければ適切な作業を行えるとは思えません。開発現場には納期があるため、納期に間に合うように作業してもらうことも必要ですし、職場の仲間といい関係が築けない人材は扱いづらいので敬遠されてしまいます。
まとめ
ここまで、日本のIT人材が不足している現状や日本にIT人材が不足している理由、最終的にIT人材として評価されるために必要なポイントについて紹介してきました。IT人材は確かに不足しており各方面で求められていますが、本当に評価されてチャンスをものにするためにはIT技術だけでなく社会人としての常識も身につけることが必要になりそうです。知識や技術だけではなく、社会人としての魅力も身につけ、IT業界でのチャンスを狙ってみるのがいいでしょう。