支援対象地域:札幌、仙台、関東、愛知、関西、広島、福岡


一般的に、エンジニアをはじめとしたIT人材の給与・年収は、日本人の平均といわれる約420万円を大幅に上回っているといわれています。「しかし、本当にそうなのか?」確信の持てないエンジニアの方も少なくないのではないでしょうか?IT人材に限らず、所属する企業や業界、年齢・経験、担当する業務や職種によって給与水準は大きく異なるからです。「自身の評価が正当なのか?」さまざまなIT人材の給与水準が気になっている人も多いでしょう。

そこで本記事では、エンジニアを含むさまざまなIT人材の給与・年収水準の実態や、世界のIT人材と比較した日本の給与レベルや位置付けを紹介するとともに、IT人材が平均を上回る給与を得るにはどうすべきかも解説していきます。

IT人材を代表するエンジニアの給与

ソフトウェア/ハードウェア/情報処理サービス/インターネット・Webの大きく4つに分類されるといわれるIT業界には、さまざまな職種の人材が属しています。ある意味では、これらの業界で働く営業職もIT人材といえるかもしれませんが、もっとも多いのが技術職=ITエンジニアだといえるでしょう。まずはIT人材を代表するともいえる、エンジニアの給与水準から見ていきましょう。

PG(プログラマー)の給与

詳細設計書をもとに、ソフトウェア・システムのプログラミングを行うのがPG(プログラマー)です。金融・物流システム、Webサイト、アプリケーションなど、どのような開発業務に携わるのか、どのようなプログラミング言語が使われるのかによっても変わりますが、PG全体の平均給与・年収は約400万円といわれています。給与変化の大きい年代をピックアップしたうえで、おおよその平均水準を紹介しておきます。

・20代前半:約300万円
・20代後半:約390万円
・30代後半:約450万円
・40代後半:約500万円
・50代:約540万円

PGの給与に影響する要素

PGの給与は、年齢を重ねるごとに高くなる傾向にありますが、これは年齢というよりは実務経験および、それに伴うスキルの高さが給与に反映されている結果だと考えられます。ただし、どんなに経験・スキルを持つPGでも、一定の金額で給与は頭打ちになってしまう傾向があるのも事実です。また、Web系よりも受託開発、PHP / Javaなどの人気言語よりもGo / Rなどの稀少言語、所属する企業規模が大きいほど給与が高くなる傾向もあります。

SE(システムエンジニア)の給与

ソフトウェア・システムの要件定義、基本設計、詳細設計といった、開発業務の上流工程を担当するのがSE(システムエンジニア)です。PG同様、どのような開発業務に携わるのか、どのようなプログラミング言語が使われるのかによっても変わりますが、SE全体の平均給与・年収は約550万円といわれています。給与変化の大きい年代をピックアップしたうえで、おおよその平均水準を紹介しておきます。

・20代前半:約340万円
・20代後半:約440万円
・30代後半:約540万円
・40代後半:約600万円
・50代:約630万円

SEの給与に影響する要素

PG同様、SEの給与も年齢とともに高額になっていますが、実務経験・スキルのほかに、マネジメント能力が給与に反映されやすいのが異なる点です。PGよりは給与水準の高いSEですが、一定の金額で給与が頭打ちになる傾向になるのはPGと同様です。給与を左右する要素という点でも、SEとPGは同じ傾向にあるといえるでしょう。

職種ごとに異なるIT人材の給与事情

IT技術者人材=エンジニアとして仮定するなら、PGとSEの単純な平均年収は約475万円です。たしかに日本人の平均年収と比較すれば高額かもしれませんが「はるかに」とはほど遠いようにも思えます。一方、もう少し細かく分類した経済産業省の調査結果を見ると、違った形でのIT人材給与事情が明らかになってきます。主立った職種の平均年収を紹介しておきます。

・ITコンサルタント:約929万円
・プロジェクトマネージャー:約891万円
・高度基盤設計・ITアーキテクト:約778万円
・ネットワークスペシャリスト:約758万円
・組み込み系SE:約603万円
・ソフトウェアSE:約568万円
・Webデザイナー:約411万円

IT人材の給与は年功序列?

次に、同じ経済産業省の調査による、年代別のIT人材平均給与・年収をご紹介しましょう。

・20代:約413万円
・30代:約526万円
・40代:約646万円
・50代:約754万円

年代別にほぼ100万円程度の開きがあり、一見、年功序列が採用されているようにも思えますが、どちらかというと年代に応じて期待される役割が変わってくる、経験に応じてキャリアアップするエンジニアが多い、といった要素の方が強いといえるでしょう。もちろん、実務経験が重視されるという意味では、年功序列の要素もないわけではありません。

給与の高いIT人材の傾向は?

それは経済産業省のアンケート結果からも明らかです。給与に影響を与える要素として「年功」が非常に大きいと答えた企業は全体の僅か3.8%、大きいと答えた企業をあわせても約28%にとどまっているのです。

では、給与の高いIT人材はなにが評価されているのか?20〜30代では「高い技術力・実績」を重視する企業が約70%あるのに対し、40代以降では「高いマネジメント能力・実績」を重視する企業が約60%を超えています。つまり、若いうちはエンジニアとしてのスキルが重視され、40代以降はマネージャーとしての役割が期待されているといえるでしょう。コンサルタント・マネージャー職の給与が高く、年代に応じて高年収になる傾向にあるのはこのためだといえます。

世界と比較した日本のITエンジニア給与事情

職種・実績・スキルなどによって差異があるとはいえ、やはりIT人材の給与は日本人の平均を大幅に上回るといって間違いありません。それでは、給与が高いといわれる日本のIT人材は、世界で見た場合にどの程度の水準だといえるのでしょうか?

日本のIT人材給与は世界18位

ある人材サービス会社が、世界92か国を対象にIT人材の給与実態を調査しています。前提となるのは「IT技術者」であり、日本の平均年収が「42,464USドル(約458万円)」とされていることから、PG・SE=IT技術者だと考えて間違いないでしょう。気になる日本の順位は、92か国中の18位。92,500ドルで1位のスイス、83,389ドルで2位のアメリカから大きく引き離されており、アジアトップ・世界10位のシンガポールよりも9,000ドル低い水準でした。

日本のIT人材給与伸び率は世界20位

続いてIT技術者の給与伸び率を見てみましょう。この分野では、IT産業が急速に発展している国が上位につけており、なかでも飛び抜けて伸び率が高かったのがタイの38.8%です。2位につけたラトビアのほか、上位を東・北ヨーロッパの国が占めるなか、5.9%の日本も20位にランキングされています。先進国のなかでは比較的高い伸び率を示した日本ですが、給与水準から考えれば充分な伸び率とはいえないかもしれません。

日本のIT人材スキルレベルは世界7位

ほぼ横ばいの日本人の給与に比べ、IT人材の給与の伸びは大きいという見方もできますが、世界4位の技術者数を擁するといわれる日本のIT人材給与が、世界18位というのは妥当なのでしょうか?参考までに、経済産業省による「世界のIT人材のスキルレベル」の調査結果を紹介しておきましょう。

調査方法は、最低限の基礎知識を持つ「レベル1」から、国内ハイエンドかつ世界で通用する知識を持つ「レベル7」までIT人材を割り振り、各国の平均を比較する形です。応用的な技能を有する「レベル3」人材がもっと多かった日本の平均値は「レベル3.17」となり、調査対象となった8か国中7位という結果でした。1位のアメリカの平均値4.05に及ばないのはもちろん、インド、中国、インドネシア、ベトナム、タイにも及びませんでした。

変わりつつある日本のIT人材給与事情

ただし、スキルレベルの平均が低いから、日本のIT人材平均給与が低いと考えるのは早計です。どんなに高いスキルセットを持つIT人材でも、日本の雇用形態ではそれに見合った給与を支払うのは難しい一面があるからです。

しかし、その状況も変化してきているといえます。たとえば、ある日系企業は、優秀な新卒IT人材に年収1,000万円以上を支払う用意があることを表明しています。これは、優秀なIT人材に対する争奪戦が世界規模で広がっていることが関係しているでしょう。年々不足するIT人材の確保に向け、この傾向は加速すると思われます。

日本のIT人材が給与レベルを上げるには?

それでは、まだまだ給与水準の低い日本のIT人材は、どのようにして給与レベルを上げていけばいいのでしょうか?簡単に解説していきます。

コンサルタント・マネジメント職を目指す

PG / SEであれば、給与レベルを上げるのにもっとも一般的な方法だといえるのが、プロジェクトマネージャー、ITコンサルタントを目指すというキャリアパスです。下流から上流へと、プロセスを踏みながら順序立ててスキルを高められるのもメリットであり、積み重ねた経験・実績をそのまま活かせる職種なのも魅力です。ゼネラリストとして、金融業界のビジネス知識も身に付ければ、さらに高い給与も期待できます。

成長分野のスキルを身に付ける

IT化へのニーズは加速する一方だといえますが、なかでも今後の成長が見込まれている分野が「AI」「IoT」「クラウド」などの最先端技術です。日進月歩で進化する最先端技術では、優秀なIT人材の確保が最優先課題でもあるため、これらの成長分野のスキルを身に付ければ給与レベルが大きく上がる可能性があります。特に、世界的な人材不足が懸念されているAIエンジニアは、現在進行形で給与水準が切り上がってきている職種です。

海外で働く・外資系IT企業に転職する

スキルに自信のあるITエンジニアの方であれば、英語を習得して海外で働く、日系よりも給与水準の高い外資系IT企業に転職するという方法があります。アメリカの外資系IT企業であれば、本国に準じた実力主義が徹底されているケースが多く、もともとの給与水準が高いうえ、成果を根拠にした給与交渉も可能です。また、レベル5の「企業内ハイエンドプレーヤー」であれば、アメリカの平均スキルレベルを上回れます。アメリカで働けば年収1,000万円以上も現実的です。

フリーランスに転身する

SE、あるいはプロジェクトマネージャーとして現場に携わっていたいITエンジニアの方であれば、フリーランスに転身するのがおすすめです。個人事業主として税金・保険の納付・管理はもちろん、スケジュールなどの自己管理も必要になりますが、その分、実力・スキルに見合った報酬を獲得できるでしょう。クライアントから直接案件を獲得できる方に特におすすめではありますが、営業力に自信のない方でも、フリーランスエージェントを活用するという方法があります。

まとめ

日本のIT人材が挙げる転職理由でもっとも多いのが「新しい挑戦がしたい」であるのに対し、アジア各国やアメリカでは「給与」がもっとも多く、次いで「キャリアアップ」だといわれています。雇用形態や文化の違いが表れているともいえますが、同じ仕事をするなら給与が高い方がいいのは日本も同じです。給与を上げるにはどんなスキルを身に付けるべきか?自身のスキルや貢献が正当に評価されているのか?正当に評価してもらえる業界はどこなのか?まわりを見渡してみることも重要だといえるでしょう。