支援対象地域:札幌、仙台、関東、愛知、関西、広島、福岡

  • TOP
  •   
  • コラム
  •   
  • ITサービスマネージャの転職事情とは

現代のITサービスは、スイッチを入れれば電気が点く、あるいは蛇口をひねれば水道の水が出てくるのと同じように、当たり前の社会インフラとして利用できる環境が整えられています。これはサービスマネジメントの概念に従って、ITシステムが適切に運用管理されているからであり、その中核を担う存在なのが「ITサービスマネージャ」です。ITサービス部門の重要度が高まるとともに、スペシャリストであるITサービスマネージャの業務領域も拡大しており、やりがいを求めて転職を検討している方も多いのではないでしょうか?

それでは、ITサービスマネージャとして活躍するには、どのようなスキルが必要なのか?難易度が高いといわれるITサービスマネージャ試験は転職に役立つのか?気になる平均年収やサービスマネジメントの概要とともに、ITサービスマネージャの転職事情を紹介していきます。

ITサービスマネジメントとは?

ITサービスマネージャとは、ITサービスにおける運用管理のスペシャリストですが、その概要や仕事内容を把握するためには、ITIL(Infomation Technology Infrastructure Library)の代表的なフレームワーク「ITサービスマネジメント」を理解するのが早道です。IT運用管理のグローバルスタンダードとして活用される「ITIL(アイティル)」は、ITサービスマネージャ試験の根幹を成しているともいえるからです。簡単に解説していきます。

サービスストラテジー(戦略)

ITサービスマネジメントとは、ITシステムを活用したサービスの運用を適切な「コスト」「リソース」「クオリティ」で提供するためのITILフレームワークです。それを実現するための5段階のサイクルが定められ、適切にライフサイクルを回すことで目的を達成させていきます。その最初のサイクルとなるのが「サービスストラテジー(戦略)」です。

サービスストラテジーとは、ITシステムを活用したビジネス戦略・達成すべきゴールの整合性が取れた運用サービスを提供するため、適切な運営体制・投資計画を策定する戦略サイクルです。このサイクルではシステム運用に向けた「戦略策定」「サービス管理」「需要管理」「財務管理」が重視されます。

サービスデザイン(設計)

サービスデザイン(設計)とは、運用項目・監視項目・サービスレベルの決定など、その名の通り運用サービスをデザインするための設計サイクルです。サービスストラテジーとの整合性を考慮に入れ、確認しながらデザインすることが求められます。このサイクルでは「サービスカタログ管理」「サービスレベル管理」「可用性管理」「キャパシティ管理」「サービス継続性管理」「情報セキュリティ管理」「サプライヤー管理」が重視されます。

サービストランジション(運用準備・移行)

サービストランジション(運用準備・移行)とは、設計されたサービスの準備や、既存サービスからのデータ移行など、運用開始に向けた準備・移行サイクルです。設計されたサービスデザインに変更が生じた際にも、サービストランジションのプロセスが適用されます。このサイクルでは「サービス資産管理」「変更管理」「ナレッジ管理」「リリース管理」が重視されます。

サービスオペレーション(運用)

サービスオペレーション(運用)とは、運用開始後にデザインされた通りのサービスをデザインされた通りに提供するために、トラブル・エラー・メンテナンスを含めた各種管理をしていくサイクルです。このサイクルでは「要求実現」「インシデント管理」「問題管理」「イベント管理」「アクセス管理」「サービスデスク」が重視されます。

継続的サービス改善(測定・報告・改善)

継続的サービス改善(測定・報告・改善)とは、提供するITサービスの価値を高めていくために、測定対象を定義して情報を収集し、報告・共有してサービスの改善に活かしていくためのサイクルです。このサイクルでは「7ステップの改善」「サービス測定」「サービス報告」「文書化」が重視されます。ここまでのサイクルで収集されたデータ、改善項目は、サービスストラテジーに戻ってライフサイクル化することになり、いわゆる「PDCAサイクル」化に近い流れがあるといっていいでしょう。

ITサービスマネージャに求められるスキル

ITサービスマネージャの仕事は、ITサービスのサービスマネジメント全体を見据え、マネジメントしていくことです。つまり、ITサービスマネージャには、ITサービス運用の戦略策定から改善提案にいたるまでのサービスマネジメント全体を理解したうえで、適切にサービスを運用・改善していくと同時に、運用チームスタッフとの指示・連携体制を構築していく経験・知識・スキルが求められます。

しかし、ITサービスマネージャに求められるもっとも重要なスキルは、サービスマネジメントの知識・経験・スキルを踏まえたうえでのコミュニケーション力です。ITサービスに関するニーズ・課題を把握して、タイムリーに改善提案するには、クライアントと情報を共有して提案に耳を傾けてもらえるよう、良好な関係性を構築しなければならないからです。発生したインシデントの再発防止策を講じる場合にも、チーム間でナレッジを共有するコミュニケーション力が重要になります。

ITサービスマネージャのやりがい

ITサービスマネージャは、新たなシステムのサービスインに際してハードウェア・ソフトウェアの選定や構築に携わることもあるなど、まさにインフラも含めたITサービスの要ともいえる存在です。大きな裁量権が与えられるのはもちろん、コストを最適化しつつ最高の品質を維持し、クライアントに価値を提供できるようになれば、大きな満足感を得られるでしょう。ITサービスの戦略策定・改善提案などは、クライアントの経営にも直結する要素でもあり、ビジネスを成長させていくための経営戦略にも携われるのは、ITサービスマネージャのやりがいにもなり得ます。

ITサービスマネージャの働き方

それでは、ITサービスマネージャには具体的にどのような働き方があるのでしょうか?SIerやコンサルティングファームに所属してクライアント先を担当する、社内ITサービスマネージャとして特定の企業に所属する、フリーランスで業務委託契約を締結するなどが考えられますが、いずれにしてもITサービスマネージャの働き方は大きく3つに分類できます。それぞれを簡単に解説します。

専任ITサービスマネージャ

専任ITサービスマネージャとは、クライアントごと、もしくはプロジェクトごとの専任担当として配置されるITサービスマネージャです。戦略策定を含むITサービス運用設計の初期段階から参加するのが一般的であり、サービスマネジメントのライフサイクルを通じた改善活動の中核を担います。専任担当となるため、クライアントのビジネスや企業文化にも精通したきめ細かいサービスを提供できるのが特徴です。社内ITサービスマネージャがこれに該当するほか、フリーランスや、SIer・コンサルティングファーム所属の専任ITサービスマネージャも存在します。

共通ITサービスマネージャ

共通ITサービスマネージャとは、複数のクライアント・プロジェクトのITサービス運用管理を同時に担当するITサービスマネージャのことです。担当するクライアント・プロジェクトは、金融、製造などの特定業界に絞られているのが一般的であり、担当する業界事情に精通したITサービスマネージャがアサインされるのが特徴です。コストを抑えながら運用品質を確保したいニーズに対応できます。このケースで該当するのは、SIer・コンサルティングファームに所属するITサービスマネージャです。

統括ITサービスマネージャ

統括ITサービスマネージャとは、複数人のITサービスマネージャをまとめて、全体を統括することを目的に配置されるITサービスマネージャのことです。ITサービスが複数の国・地域にまたがる、大規模ITサービスで分野ごとのマネージャが必要などのケースで配置されるのが一般的です。このレベルになると、フリーランスや小規模SIerでは対応できない可能性が大きいため、自社採用もしくは大規模SIerのITサービスマネージャが多くなります。

ITサービスマネージャの転職事情

それでは、ITサービスマネージャの転職事情はどのような状況なのか?ITサービスマネージャを目指す方が転職のイメージを描きやすいように、公開されている正社員求人情報をいくつかご紹介します。ある転職エージェントでのITサービスマネージャ求人数は、検索時で39件ありました。

士業法人社内向けシステムのITサービスマネージャ求人
・必須要件:ITサービスマネジメントの知識・経験、ITシステムの開発・構築・運用経験
・歓迎要件:英語中級
・待遇:正社員、年収650〜1,500万円

大手SIerのITサービスマネージャ求人
・必須要件:ITILベースのサービスマネジメント推進スキル、サーバ・NWの運用経験
・歓迎要件:ITサービスマネージャ資格、クラウド・データベース構築スキル
・待遇:正社員、年収500〜1,200万円

ITサービスマネージャの年収

IT関連全体の求人数が約1万2,000件あることを考えると、ITサービスマネージャの求人数は少ないといわざるを得ないでしょう。ただし、転職市場が停滞しているというわけではないのは求人例の報酬を見ても明らかです。一般的には、ITサービスマネージャの平均年収は550〜800万円程度だといわれており、ピックアップした求人例とも整合性が取れているのがわかります。システム開発経験を持つITサービスマネージャであれば、年収1,500万円も視野に入ってくるでしょう。

ITサービスマネージャ試験とは?

高度な知識・経験・スキルが求められるITサービスマネージャは絶対数が不足しており、それが転職市場に公開求人が現れにくいことと関係しているかもしれません。それは、ITサービスマネージャとしての知識・技能を有している証明ともいえる、ITサービスマネージャ試験の難易度が高いことからもわかります。

ITサービスマネージャ試験の難易度

ITサービスマネージャ試験とは、応用情報技術者試験の上位に位置する、9つの専門分野試験のひとつで、運用管理スペシャリストであることを証明する国家試験です。年に1回、10月の第3日曜日に試験が行われており、だれでも受験可能ですが難易度レベルは最高位の「4」であり、合格率は約13%にとどまっています。ITILをベースにしているといわれますが、より深い理解度が求められること、午後Ⅱの試験で3,000字の論文試験があるのが特徴であり、運用経験を積んだエンジニアの方でも100〜600時間の学習が必要だともいわれています。

ITサービスマネージャの資格は転職に有利

ITエンジニアが転職する場合、資格よりも実務経験が重視される傾向にあるのは事実ですが、ITサービスマネージャにとっての資格は有利に働くことはあっても邪魔になることはありません。責任ある立場を任せたいクライアントや求人企業にとっては、実務経験を補足する意味でも資格は重要な担保になるからです。実際、ITサービスマネージャ資格保持者であれば、年収1,000万円超えが狙えるといわれています。難易度が高い分だけ転職時にも有利に働くITサービスマネージャ試験、運用のスペシャリストを目指す方は取得を目指してみてはいかがでしょうか。