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誰もが日常的に使う言葉にも関わらず、非常に抽象的で曖昧な意味を持つのが「デザイン」であり、デザインという抽象的なものを形にする仕事を担うのが「デザイナー」です。AIで代替することがもっとも困難な職種に挙げられるデザイナーは、様々な業界で需要が高まっていますが、IT業界であってもそれは例外ではありません。デザイナーとして活躍する方も、将来有望なIT業界への転職を検討しているのではないでしょうか。

今回は、IT業界におけるデザインの持つ意味、デザイナーが担うべき役割や具体的な仕事内容、求人企業の傾向や年収事情、抽象的で曖昧なITデザインの仕事について、わかりやすく紹介していきます。

ITにおけるデザインとは?

一般的には、デザイン=視覚的な表現=ビジュアルデザインと認識されることが多いでしょう。IT業界でいえば、Webサイトやデジタルサービスのユーザーインターフェース(UI)が思い浮かぶかもしれません。しかし、それがすべてではありません。

人生をデザインする、仕事をデザインするといった使い方をするように、IT業界におけるデザインは、どちらかといえば「目的を達成するための道筋を設計する」意味合いの方が強いといえます。IT業界におけるデザインは、自己を表現することを目的とするアートとは大きく異なります。

IT業界で求められているデザイナー

それでは、デザイナーへの採用需要が高まるIT業界では、どのような職種のデザイナーが求められているのでしょうか。あるデザイナー特化型キャリア支援サービスの調査によると、IT企業が直近で採用を検討しているデザイナーのトップは「UIデザイナー」でした。

求められるデザイナーの職種が細分化される中、全体の18%に及ぶ企業がUIデザイナーを採用したいと考えており、15%のUXデザイナーと合わせて需要が高まっていることが伺えます。興味深いのは、グラフィックデザイナーを採用したい企業が5%にとどまっている一方、10%の企業がWebデザイナーの採用を検討している点です。この調査からは、IT業界で高い需要があるのが、UI / UX / Webデザイナーであることがわかります。

IT業界が求めているデザイナーの役割

IT業界で、UI / UX / Webデザインが重視されているのはなぜでしょうか。上述の調査では、IT企業がデザイナーに求める役割についてもアンケートを採っており、それでトップだったのは「機能・コンセプトの整理」、次いで「ユーザーの声をプロダクトに反映させる」といった内容でした。

つまり、IT企業がデザイナーに求めているのは「新規プロダクトに価値を持たせるための構造化」「既存プロダクトの改善活動」であることがわかります。これはまさに「目的達成に向けたプロダクトの設計」であり、そのために重視されているのがUI / UX / Webデザインだといえます。それぞれを簡単に解説していきましょう。

UI / UXデザイン・デザイナー

UIデザインとは、その名の通り、プロダクト・サービスとユーザーとの接点であるUIをデザインすることであり、UIデザインを担当するのがUIデザイナーです。一方のUXデザインとは、ユーザーに特別な体験=User eXperienceを与えることを念頭に、プロダクト・サービス全体を設計=デザインすることです。

UIデザイナーは単にUIを使いやすくデザインするのが仕事ではなく、UXデザインをもとにしたプロダクト・サービスのコンセプト・設計をUIに具現化することが仕事です。UIと密接に関わるUXは、UXデザイナーとUIデザイナーが協働・連携して仕事することもありますが、UI / UXデザインを一人のデザイナーが担当することもあります。

Webデザイン・デザイナー

Webデザインとは、自社もしくは顧客のWebサイト全体をデザインすることであり、Webデザインを担当するのがWebデザイナーです。ここでいうデザインとは、クライアントがWebサイト運営でどのような目的を達成したいのかを把握した上で、適切なWebサイトを企画・設計し、ビジュアルデザインを制作してコーディングするまでを指します。

Webデザイナーが企画・設計などの上流工程から参加し、コーディングまでを担当することもありますが、Webディレクターが上流工程を、コーダーがコーディングを担当するなど、分業体制が整えられているケースもあります。その場合のWebデザイナーの仕事は、設計書に従ったUIデザインが中心になります。

UI / UXデザインの仕事

UI / UX / Webデザイナー、それぞれの職種概要が理解できたところで、それぞれが具体的にどのような仕事をしているのか簡単に紹介していきます。まずは、UI / UXデザインの仕事内容です。

UX5段階モデルとは?

UXの概念がIT業界で重視されるようになったのは、サービスの差別化が増々困難になる中、自らが活用すべきサービスをユーザーが能動的に選択するようになったからです。つまり、ユーザーから選ばれるために、企業はプロダクト・サービスをユーザー中心で設計する必要があるのです。これを実現するのがUXデザインであり、UXを具現化するのがUIデザインです。

世界的なデザイナー、ジェームズ・ギャレット氏によると、ユーザーニーズという抽象的なものから、UIのビジュアルデザインという具体的なものまで、UXを実現するための「UX5段階モデル」が定義付けられています。このうち、サービスの目的・ユーザーニーズを拾う「戦略」、機能仕様・コンテンツ要求を定める「要件」、インタラクション・インフォメーションを定める「構造」までがUXデザイナーの領域です。

一方のUIデザイナーの領域は「構造」をもとにインフォメーション・ナビゲーション・インターフェースをデザインする「骨格」、見た目の美しさ・使いやすさであるビジュアルをデザインする「表層」です。

マーケティング・リサーチ・分析

UXデザインの仕事は、サービスの「要件」「構造」を決定するための「戦略」、つまり情報設計がメインになります。具体的には「ユーザー調査」「マーケティング」によってユーザーニーズを掴み「SEO施策」を念頭に置きながらサービス全体を設計していきます。

UIデザインの仕事は、UXデザインで決定した「構造」をもとに、具体的な「骨格」と「表層」をデザインすることです。UIデザインでは見た目の美しさというよりは、UXを実現するため、いかにシンプルかつユーザーフレンドリーにデザインするかが重視されます。Adobe XD / Sketch / Figmaといったツールが多用されることも特徴です。

ユーザビリティの改善

プロダクトがサービスインして、UI / UXデザインの仕事は終わりではありません。IT業界がデザイナーに求める役割に「既存プロダクトの改善活動」がある限り、ユーザーニーズを汲み取ったプロダクト改善作業が欠かせないのです。

具体的には、UXデザイナーによる「ユーザー調査」「ABテスト」「サイト解析」を経て、よりユーザーニーズを具現化し、PDCAサイクルを回していく活動を継続的に実施します。この点において、UI / UXデザイナーには「グロースハッカー」としての要素が求められるといえるでしょう。

Webデザインの仕事

Webデザインの仕事は、上述したように設計からコーディングまでを含む、Webサイト全体のデザインです。具体的な仕事内容は、大きく以下のように分類できます。

・クライアントの目的・ニーズをもとにWebサイトの企画・要件定義を作成
・ワイヤーフレームを活用してWebサイトを設計
・Webサイトのビジュアルデザイン
・Webサイトのコーディング

完成までのプロセスでもっとも重要なのは、Webサイトの目的・ターゲット像の明確化です。Webデザイナーは、どのようなユーザーにアクセスしてもらいたいのか、最終的にどのようなアクションを起こして欲しいのかを念頭に、目的を達成できるWebサイトを「設計」する必要があるからです。インハウスデザイナーであれば、自社サイトの改善に向けた「サイト解析」「ABテスト」などを実施して修正を加えるなど、継続的な改善活動を展開していきます。

UI / UXデザインとWebデザインの違いとは?

ここまで、UI / UXデザインとWebデザインを分類して、それぞれの仕事内容を紹介してきましたが、両者にはどのような違いがあるのでしょうか。UI / UXデザイナー、Webデザイナーともに、職種として必要な資格があるわけではなく、最終的にUIをデザインする点では同じです。しかし、採用する企業側としては、デジタルプロダクトに携わる「UI / UXデザイナー」、Webサイト・LPに携わる「Webデザイナー」という認識が強いでしょう。

また、UI / UXデザイナーがユーザーニーズを分析して課題を解決するグロースハックで経営面に深く関与することに対し、Webデザイナーはクライアントニーズに基づいたユーザーマーケティングでWebサイトを設計するという違いもあります。デジタルプロダクト、Webサイト、それぞれの設計・構築に必要な知識・スキルも異なるため、WebデザイナーがそのままUI / UXデザイナーとして活躍できるとは限らないのです。

UI / UXデザイナーの正社員求人例

具体的な仕事内容が把握できたところで、UI / UXデザイナーの正社員求人情報をいくつか紹介します。

自社金融系サービスのUI / UXデザイナー求人
・必須要件:UXを体系的に学んだ方、ユーザーテスト・デザイン経験3年以上
・歓迎要件:ユーザーの価値を本質的に考えられる方
・待遇:正社員、年収600万円〜

自社クラウドサービスのUI / UXデザイナー求人
・必須要件:UI / UXデザイナーとしての実務経験、UIデザインの経験
・歓迎要件:デザインが好きで最新の技術トレンドをキャッチアップできる方
・待遇:正社員、年収500〜1,200万円

Webデザイナーの正社員求人例

次に、Webデザイナーの正社員求人情報もいくつか紹介します。

大手人材サービス会社のWebデザイナー求人
・必須要件:Webデザインの実務経験2年以上、コーディング経験
・歓迎要件:レスポンシブデザインの経験
・待遇:正社員、年収330万円〜

自社Webサイト・LP企画・開発のWebデザイナー求人
・必須要件:Webデザインの実務経験2年以上、コーディング経験
・歓迎要件:ロジカルな思考のできる方
・待遇:正社員、年収300〜700万円

ITデザイナーの年収事情

最後に、UI / UX / Webを含む、ITエンジニアの年収事情について解説いたします。ITデザイナーに限らず、一般的にデザイナーの年収はやや低めといわれており、会社員として働くWebデザイナーの場合、平均年収は約350万円だといわれています。もちろん、ディレクターを兼ねるなどの経験・スキルを積めば、求人例のように年収700万円も可能ですが、平均年収約600万円といわれるUI / UXデザイナーを目指せば、さらに高額な年収も期待できます。求められる知識・スキルのハードルは高くなりますが、デザイナーとしての基礎がある方であえば、UI / UXデザインにチャレンジしてみる価値はあるのではないでしょうか。