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SEの将来性について

SE(システムエンジニア)とは、プログラミング言語という命令文を用いてコンピューターに命令を出し、Webサイトやアプリケーション、業務システムなど、様々なシステムの開発を行う人のことを言います。
近年SEの人気は高まっており、プログラミングの学習支援やプログラミングスクール、フリーランスエンジニアのエージェントなど、多くのSE関係企業が広告を打ち出しています。電車やyoutubeなど多くの場面でSE関係の広告を目にして、SEについて興味を持った人も多いでしょう。「SEってフリーランスエンジニアになれば年収1000万を越えるって聞いた」「SEって将来性があるって聞いた」などの声もよく耳にしますが、広告の言う通り、SEは本当に将来性があって稼げる職業なのでしょうか。
そのことを知るためには「IT人材の需要と供給」という視点と、「No-codeが奪うIT業界」という視点で考察していきます。難しい専門用語を解説しながら考察していきますので、SEに興味があってプログラミングを勉強してみようか迷っているという方でもきっとスムーズにお読みいただけるでしょう。

IT人材の需要と供給

将来性を知る上で需要と供給についての考え方を知ることは避けては通れないもので、経済学などの勉強をするときに初めに習うこの考え方は、あらゆる場面で役に立ちます。需要と供給が存在する市場は様々な種類がありますが、その中でも今回は労働市場の需要と供給について考えていきます。
労働市場においての需要者は、人を雇いたいと思っている会社です。そして供給者は労働力を提供する働く人です。「一般的な経済学での市場」は需要者が自分たちで供給者がサービスや財を提供する企業なので、「一般的な市場」と逆になります。ここを混合しないように気を付けて考えましょう。

アルバイトで考える労働市場

労働市場をよく理解するために、アルバイトを募集するコンビニのオーナー(需要者)の立場になって考えてみましょう。あなたは時給700円でアルバイトを募集したいと考えていたとします。しかし、時給700円では応募する人(供給者)は全くいませんでした。あなたは人を集める為に時給1000円で新しく募集をかけたところ、5人の応募がありました。
この様に、労働市場においてコンビニのオーナー(需要者)はより安い金額で人を雇いたいと思い、アルバイトの応募者(供給者)はより高い金額で雇用されたいと思っています。これらの需要と供給が一致する価格を均衡価格と呼びます。時給700円では、雇いたいと思う人は多くいても雇われたいと思う人が少ないという状態です。逆に時給2000円にしていたら雇われたいという人(供給者)は大量にいて、雇いたいという人(需要者)は少ない状態になるでしょう。
これを見ると需要者の支払う金額で供給者が決まるのか?と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、必ずしもそういうわけではありません。逆に時給700円でもいいから働きたいという人(供給者)の数が多ければ、コンビニのオーナーはわざわざ高い時給2000円で人を雇おうとは思いません。需要者の設定金額だけで均衡価格が決まるのではなく、供給者の数でも均衡価格は決まるのです。このことを頭に入れたうえで次の解説を見ていきましょう。

労働市場の考え方を通してIT市場を考察する

さきほど解説した労働市場の考え方をIT市場に当てはめながら考えていきましょう。IT市場については、みずほ情報総研が作成し総務省が発表した資料で、2030年までもIT人材の供給人数と人材不足人数の予測資料があるので、この資料を元にSE(システムエンジニア)の将来性について考察していきます。

この資料によると2020年時点で1,059,876人のIT人材の供給がなされており、人材不足は303,680人となっています。そして、2020年以降もIT需要は高まり続けて、必要なIT人材の数は増えていきます。しかし、日本は少子高齢化社会の為、IT人材の増加は見込めず、不足人数が増えていきます。
2021年が314,439人、2022年が325,714人…と徐々に増えていき、2030年には448,596人の人材不足が起きると言われています。しかもこれは、IT需要の伸びを低位、中位、高位に分けて考えたときの低位の予測です。IT需要が高位で伸び続けた場合の予測では、IT人材不足が2020年で412,400人であるのに対し、2030年には787,105人まで増加すると予測されています。

ここまでの話を聞いて「人が足りないんだな」で終わるのはもったいないです。ここに先ほど解説した労働市場の考え方を当てはめてみましょう。先ほどの復習となりますが、労働市場は需要者の設定金額だけで均衡価格が決まるのではなく、供給者の数でも均衡価格は決まる、とお伝えしました。つまり企業(労働市場においての需要者)が「月20万で働いてください」と人を募集しても、なかなか人が集まらないという状態になるのです。人が集まらないとなると企業は募集する金額を上げざるを得ないため「月30万で働いてください」という募集が増えるわけです。
つまり労働市場の観点でIT市場を考察すると、これからもIT人材不足の数は大きく増えていき、不足が増えていくということは、より良い待遇での募集が多くなる可能性が高い、という結論にいたります。つまり、人材不足と労働市場の観点でみるとSEの将来性はあると言えるでしょう。

相対的にみるSEの将来性

これまではSEの将来性をSEの労働市場単体で見て考察をしてきました。しかし、将来性や豊かさを測るときにはそのほかの職種と比べてみなければなりません。
例えば、年収100万円は日本では豊かとは言えず、日本の平均年収や中央値を考えると低い額と言えます。しかし、海外の貧しい国からみればとても裕福な暮らしが出来る金額です。このように100万円という数字だけではそれが豊かなのか貧しいのかの判断ができませんが、これはSEの将来性についても同じことが言えます。SE以外の職業はこれからどの様になっていくのかについて解説していきます。

まずSEの将来性の面を結果からお伝えすると、他の人手が足りている職種に比べて良い待遇で募集がかけられるので、相対的にみて豊かな生活を送ることができるでしょう。
次にSE以外の職種についてですが、AIの導入やIT化により必要とされる人数が減っていく事が予想されます。例えば、事務の仕事や経理の仕事のほとんどをAIによって行う事ができるようになったとします。そうなると事務や経理を行う人がほしいという企業(需要者)は減り、事務や経理で働きたいという人(供給者)の方が多くなります。この状態を供給過多と言います。供給過多になると企業はより安い賃金で働いてほしいので、より安い金額で働いてくれる人を採用するため、事務や経理の仕事全体の待遇が悪くなっていくということになります。

このような状況に陥るというのはただの例え話では無く、これからは多くの仕事がAIによって奪われると予想されています。オックスフォード大学のマイケルオズボーン博士の雇用の未来という論文では、今後20年の間に47%の仕事がAIに奪われるという予測が出ています。特に自動化される可能性の高い職業としてあげられるのはレストランの案内、レジ、ホテルの受付、オペレーター、クレーム処理担当、銀行の融資担当、スポーツの審判などです。その他にも多数の仕事がAIに奪われる可能性が高いという予測が出ています。このように今後数十年で世界は大きく変わり、人手がいらなくなる業界が増えていきます。そういった中で、人手不足が続くことが予想されているSEは将来性のある仕事と言えるでしょう。

No-codeが奪うIT業界

これまで労働市場の視点を用いてSEの将来性を考察してきました。そして需要と供給、人材不足の観点からSEは将来性があるという結論にたどり着きました。ではSEは将来性があって未来永劫安泰なのか?と聞かれると、必ずしもそうではないかもしれません。上で述べていた需要と供給の大前提をひっくり返すような可能性を秘めているものがあるのです。

IT業界を根底から覆すような可能性を秘めているものが「No-code」というものです。No-codeとは名前の通りプログラミングが必要なく、コードも書く必要もなくアプリやサービスを作れるプラットフォームのことです。Webサイトの分野で考えると分かりやすいのですが、ワードプレスのアプリケーションバージョンのようなもの、という風に考えても問題ないでしょう。つまりNo-codeが進化していくと、プログラミングの必要がなく、誰でも簡単に思いついたイメージのアプリを作成できるため、わざわざ高い賃金でSEを雇ってシステムの開発を行う企業は減っていくでしょう。労働市場の考え方に当てはめると、そもそもSEを雇いたいという需要者の数が減っていくというわけです。
これだけを聞くと「どれだけ人材不足が起きるという予測がされていても、その前提が覆る可能性があり、SEの需要がなくなる可能性があるというのなら将来性はないのではないか?」と考える人もいるでしょう。確かに、そうなる可能性もありますが、現時点ではまだNo-codeは一部のマニアックな人が使うもの程度の認知度であって、一般的に広く使われる物ではありません。また、技術が進化して作ることができるアプリも多くなっていますが、複雑なプログラムなどはまだ作れない状態です。

つまり今後10年程度の予測でいくと、簡単なアプリなどはNo-codeで作り、複雑なアプリや本格的なアプリはSEが作成するという流れに向かっていくでしょう。No-code業界の会社は現在googleやamazonも参入しており、今後もより便利になっていくと予測されますが、だからといってSEの仕事がすぐに完全に奪われるのかというとそうでも無いでしょう。未だ改善点は多く存在しますし、SEでないと作れないものも多いです。コンビニ弁当がおいしく進化してもシェフという職業があるように、手軽なアプリはNo-code、本格的なアプリはSEという風に棲み分けされる時代がある程度は続くと予想されます。

それでも将来はNo-codeに代替されるのでは?

現状、そしてしばらくはNo-codeとSEで棲み分けがされるであろうという予測を述べてきましたが、「それでも将来的にSE全体がNo-code業界に飲まれるのではないか?」と疑問を持つ人も出てくるでしょう。確かにNo-codeの技術が飛躍的に良くなり、どんな複雑なアプリやサービスもコードを書くことなく作成できる日がくるかもしれません。そういった点では、超長期的にみればSEの将来性は約束できません。

しかし、超長期視点でみたときに絶対的に将来安泰な職業などあるのでしょうか?技術の進化は直線的に進化するのではなく、指数関数的に進化するといわれています。その中で2020年~2030年にはAIが人間の知能を越えると予測されており、2045年には人類全体の知能を凌駕する技術的特異点(シンギュラリティ)が起きるといわれています。そのような中で死ぬまで一生安泰な職業などは存在しませんし、超長期的にみれば全ての仕事はAIに代替される可能性はありますが、だからといって収入がなくなって生きていけなくなるという可能性は低いでしょう。より低コストでより良いサービスを提供できるようになるということなので、生きる為にお金が殆ど必要なくなる可能性もあります。また、ロボットやAIが生み出した利益を国が徴収して国民全体に再分配するベーシックインカムという制度も実現されるかもしれません。ベーシックインカムについては既に実験を始めている国もあるようです。
このように、未来は私たちが思うよりも早いスピードで進化していくので、超長期視点で考えると一生安泰な仕事などはないということをおわかりいただけたのではないでしょうか。

まとめ

いかがだったでしょうか。今回の記事では、人材不足が加速して過少供給が起きるので、SEはより良い待遇で働けるのではないかという予測、もう一方でNo-codeが普及してSEを雇いたいという需要が減るのではないかという予測の、異なった2つの観点からお伝えさせていただきました。
実際の所未来がどうなるのかは誰にも分かりません。ただ、これから世界の技術は目まぐるしく変化していくということは確実です。どの職業においても現代社会において一生安泰である、という考え方ではなく、新しい技術が普及したらそれに興味を持って変化に対応しつづけることができる人間がより豊に生活できるでしょう。そういった点ではSEは新しい技術にふれる機会も他の職業と比べて多いでしょうし、変化しやすいという利点もあるでしょう。最後までお読みいただき、有難うございました。