Microsoft社のクラウドサービス・Azureでのディスク追加方法
はじめに
Microsoft AzureはAmazonのAWSやGoogleのGCPと並んで主力となっているパブリッククラウドサービスの一つです。世界に50以上のリージョンを持ち、140カ国以上で利用できるMicrosoft社の提供するサービスで、SaaS、PaaS、IaaSの形態から利用方法を選択できる他、その他のMicrosoft社製品との連携や、オンプレミスのWindows Serverとの連携に優れています。またパブリッククラウド環境においてどうしても気になるセキュリティについても、様々な国際基準をクリアしていることや、コンプライアンスを確保していることが公式サイトに記載されています。この記事ではMicrosoft Azureでのディスク追加の方法について紹介していきます。日々稼働しているサーバーにおいてディクス追加は発生する可能性が高い作業となるので、社内でMicrosoft Azureが導入されたものの使い方がわからない、これからMicrosoft Azureが扱えるクラウドエンジニアを目指しているという方はぜひご覧ください。
クラウドサービスとディスク追加の関係について
一般的にクラウドサービスはオンプレミスと比べてコスト削減ができる、物理スペースを必要としない、容易にディスク追加できる、保守の一部をサービス提供元に任せられるなど様々なメリットがあります。その中でクラウドサービスのメリットとして忘れてはならないのは、拡張が容易という点です。拡張はスケールアップとも呼ばれ、今回取り上げるディスクの追加やメモリ、CPUの追加などを施してサーバーの性能を上げることです。
自社で運用しているオンプレミスのサーバーの場合、ディスクなどを追加するとなるとサーバーを停止しなければいけない場面が発生するため、システムを利用している人が限られる深夜にメンテナンスを組んで作業をしなければなりません。そこには労力はもちろん、人件費、サーバー停止に当たってのリスクなどが発生するので安易にはできず、実施するまでにミーティングの場を設けなければならない場合もあります。だからと言ってコストを考えるとあらかじめ今後必要となりそうな分のディスクを実装しておくというわけにもいきません。その点クラウドサービスはシステムを稼働し始めた段階ではその時に必要となる最小限のスペックで契約し、後から必要となったタイミングで必要な分だけのメモリやディスクを購入して追加することが簡単にできます。またクラウドサービスであるため、わざわざ作業のためデータセンターに出向かなくても、インターネット環境さえあればどこででも追加作業が可能です。Microsoft Azureでもこのクラウドサービスの利点を生かしてディスク追加ができるようになっています。
Microsoft Azureで追加できるディスクの種類を紹介
ディスク追加方法を紹介する前に、Microsoft Azureで利用可能なディスクの種類について紹介していきます。
Microsoft Azureの単位表示について
Microsoft Azureではディスク容量の単位に良く目にするようなGB、TBという単位は使わずGIB、TIBが使われているので、この単位表記についてはじめに簡単に触れておきます。GIB、TIBはTBよりも大きい単位なのではと考えがちですがそうではなく、全く別軸の計算方法における単位です。
具体的に言うと、KB、MB、GB、TBは全て10のX乗で計算した際の単位であるのに対して、KiB、MiB、GiB、TiBは2のX乗で計算されます。そのため1KBが1,000byteに対して1KiBは1,024byteとなり多少の違いが出る程度で大きく状況は変わらないと思っていただいて問題ありません。ただし1TBと1TiBと大きな単位で比較するとその差は約100GBと無視できない容量となってくることには、特にコスト面での注意が必要です。
Microsoft Azureで利用できるディスクはHDDとSSD
Microsoft Azureで利用できるディスクは大きく分けるとHDDとSSDの2種類です。HDDは長い間ハードウェアで利用されてきたディスクで、SSDと比べるとパフォーマンスレベルが劣りますが費用が安く済むため、現在でもパフォーマンス性を求められないシステムを運用するサーバーで利用されます。一方のSSDは高パフォーマンスで処理の高速化を実現したディスクで、高速なデータの読み書きが頻繁に発生するシステムに向いています。また消費電力も抑えられると言われています。
Microsoft AzureのHDDは「Standard HDD」の一種類のみが提供されています。SSDは「Standard SSD」「Premium SSD」「Ultra ディスク」の3種類があります。「Standard HDD」は最大ディスクサイズが32.7GiBで、バックアップ用のサーバーや、利用頻度の少ないシステムへの利用が想定されています。
「Standard SSD」は最大ディスクサイズが32.7GiBで、Webサーバーや利用頻度の少ないアプリケーションサーバー、開発・テスト環境、「Premium SSD」は最大ディスクサイズが32.7GiBで、パフォーマンスの重要性が求められる運用環境での利用がそれぞれ想定されています。
「Ultra ディスク」はHDDやSDDとは全く別のディスクであるような名称ですが、2021年時点ではMicrosoft Azureでだけ使われている名称で、SDDの一つとなっています。大量なデータを高速に処理できる処理できるデータベース「SAP HANA」や、SQL、Oracleといったトップレベルのデータベースとの連携、処理が継続的に発生するシステムでの利用が想定されており、最大ディスクサイズも状況によって65.5GiBとその他ディスクの倍の利用が可能です。なおUltraディスクはマシンを再起動せずとも各種パラメーターを変更できるというメリットがありますが、空ディスクとしての作成のみ可能なため、OSディスクとしてはSSDを利用することが推奨されています。
基本的なディスクの追加方法
今回の本題となるディスクの追加方法について紹介していきますが、一つ前提としてMicrosoft Azureの特徴を紹介しておきます。Microsoft AzureはMicrosoft社の製品であるため、OSはWindowsのみが対応可能と思っている方も多いことでしょう。しかしMicrosoft AzureではLinux系のOSも導入できます。対応しているLinux系OSについては公式サイトにも「Azureで動作保証済みのLinuxディストリビューション」として公表されており、CentOS、CoreOS、Debian、Container Linux、Oracle Linux、Red Hat Enterprise Linux、Linux Enterprise、openSUSE、Ubuntuとほとんどのディストリビューションが挙げられていました。そのためディスクの追加方法に関しては方法がいくつかありますが、今回はWindowsOSでGUIを使った方法に絞って紹介していきます。
なおMicrosoft Azureでは、Windowsパソコン同様に、目的によって3つのディスクに分けられることが基本となります。「C:」ドライブ(Linuxの場合は”/”に該当)にOSデータ一式が格納され、「D:」は一時的な保存領域、その他ディスクはデータ保存用ストレージとして使われます。「D:」はメンテナンスで再起動などを行った場合にデータが失われるドライブであるのに対し、データ保存用のストレージは再起動が発生してもデータの維持が可能なので、重要なデータを「D:」には保存しないようご注意ください。
ディスクの追加方法
ディスクを実際に利用できるようにするには追加作業以外に、OS側で認識されるようにマウント作業も行う必要があることを覚えておきましょう。またバージョンによって多少項目名が異なることはあらかじめご了承ください。
ディスク追加についてはAzure Portalの画面からできます。左側メニューの「Virtual Machines」をクリックしてディスク追加を行いたい仮想マシン(VM)を選択します。次に「ディスク」という項目を選択し、「+データディスクの追加」または「新しいディスクの接続」をクリックします。ディスクの名前、種類、サイズなどの項目の入力、選択が必要な画面が表示されますが、基本的に画面内の指示通りに指定していけば問題ありません。最後に「Create」「作成」「OK」などと表示されているボタンをクリックすると作成されます。Azure Portal内から行う作業は以上となります。ここまでの作業はオンプレミスのサーバーに例えると、物理的にサーバーへハードディスクを追加で取り付けた状態となります。
次に使用している仮想マシン(VM)へログインして、実際に追加したディスクを利用できるようコンピュータに認識させる設定をしていきましょう。VMへ接続できたらコントロールパネル内の「システムとセキュリティ」をクリックし、さらに管理ツールの項目にある「ハードディスクパーティションの作成とフォーマット」をクリックすると「ディスク管理」のウィンドウが表示されます。なお「ディスク管理」は、Windowsのデスクトップにあるスタートメニューから直接アクセス可能な場合もあります。
「ディスク管理」を開くとディスク初期化のウィンドウも表示されるため、対象となるディスクを選択して「OK」をクリックします。「選択したディスクに次のパーティションスタイルを使用する」については「MBR(マスターブートレコード)」が選択されたままで問題ありません。画面下部に未フォーマットのディスクが表示されているので右クリックして「新しいシンプルボリューム」を選択します。
「新しいシンプルボリュームウィザードの開始」が表示されるので「次へ」をクリックします。シンプルボリュームサイズの項目に最大値が表示されていますが、特別必要がない限りはそのまま「次へ」をクリックして進みます。「次のドライブ文字を割り当てる」を選択して「次へ」をクイックします。割り当てる文字については任意で変更可能です。最後にフォーマットの内容を設定する画面が表示されます。「このボリュームを次の設定でフォーマットする」を選択した状態で「ボリュームラベル」を任意で入力し、「次へ」をクリックします。「完了」をクリックするとディスクのフォーマットが開始され、完了すると指定した文字のドライブとボリューム名が表示されます。この状態が確認できたらWindowsのエクスプローラーでも追加したドライブが表示されるようになり、対象ドライブにデータの保存などができるようになります。
まとめ
Microsoft Azureでのディスク追加方法は今回見てきたように非常に簡単です。クラウドサービスであるためオンプレミス のように物理的にディスクを追加したり、サーバーを再起動したりという作業も不要となるので資源やコストの削減も実現できます。なおLinux系OSで追加する場合はOS側にてコマンドでの操作が必要となりますが、Azure Portalからの操作内容は同様となります。すでにAzureの環境をお持ちの方は今回の記事を参考にディスク追加を試してみていただけると幸いです。