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  • 【2022年版】「データベーススペシ

はじめに

データベースはこれまでWebサイトやアプリ、業務システム等においてデータを必要な時に適切に参照できる利用方法がメインでしたが、ビッグデータの幅広い活用により、その重要性がさらに増しています。ビッグデータは、言葉の響きからは単なる大量のデータの集まりとイメージしがちで、それも間違いではないのですが、収集するデータの緻密さにも驚かされます。AIやIoTといった2022年時点で最新とされるIT技術においても、ビッグデータは切っても切り離せない存在であり、膨大なデータのおかげで顔認証や購買傾向、医療診断のアシスト、スマート農業を実現しています。言わば、現時点で人類のテクノロジーで実現できる、人間の脳に最も近い存在と言っても良いのではないでしょうか。今回は、そんなデータベースを扱うデータベースエンジニアという職業について触れた上で、データベース関連の資格の一つ「データベーススペシャリスト試験(DB)」の概要、おすすめの参考書について紹介していきます。これからデータベースエンジニアを目指そうと思っている方、すでに「データベーススペシャリスト試験」の資格取得を検討していて学習方法を検討しているという方、参考書選びに迷っているという方はぜひご覧ください。

データベースエンジニアという職業について

ネットワークを専門とするエンジニア、サーバーを専門とするエンジニアをそれぞれネットワークエンジニア、サーバーエンジニアと呼ぶのと同じく、データベースの設計から構築、管理(運用・保守)を専門に行うエンジニアのことを一般的にデータベースエンジニアと呼びます。設計では、どのようなデータをデータベースで管理するか(エンティティ)、エンティティに従属する項目(属性)、エンティティ同士を結びつけるもの(リレーション)、関連の多重度といった4大要素を、概念設計、論理設計、物理設計の3段階を経て設定します。システム全体の仕様把握はもちろん、論理的な思考や正規化のスキル、将来の運用までイメージできる能力等が要求されます。

構築では、あらかじめ選定されたMySQLやPostgreSQLといったDBMS(データベース管理システム)上でSQL文を実行して、データベース、テーブル等を作成します。作成後はサンプルデータをインポートし、意図した動作が行えるかをテストします。テストはデータベースの部分だけではなく、データベースのデータを参照するソフトウェアやプログラムを通しても行われます。なお、データベースは階層型、ネットワーク型、リレーショナル型と大きく3種類に分けることができますが、このうちMySQLやPostgreSQL、Oracle Database、SQL Serverはいずれもリレーショナル型であり、これらを管理するシステムのことをRDBMSと呼びます。なお2022年時点で主流となっているデータベースはRDBMSですが、処理速度が高速で大規模なデータに適している「NoSQL」という種類のデータベースも少しずつ利用され始めています。

管理(運用・保守)では、データベースのチューニングや設定の見直し、ユーザー権限の適切な付与や変更、負荷状況の監視等を行ってシステムに最適な状態を維持します。またシステム障害が発生した場合は、復旧に向けた対応、原因の調査・分析、再発防止策の策定も行う必要があります。

以上がデータベースエンジニアの主な仕事内容となりますが、データベースでは個人情報を扱うことが当然のようになっています。セキュリティへの深い理解、責任感はもちろんのこと、設計具合によってシステムの利便性は大きく作用されるため、システムの全体像が把握できる幅広いIT知識が必要とされる重要な職種と言えます。また、プログラム言語と同じように、利用されるデータベースの種類はシステムによって異なるため、各データベースの仕様や特徴を少しでも多く知っていることで、より多くのプロジェクトで活躍できる可能性が高くなることでしょう。次に、データベースエンジニアを目指す際に必要な知識を習得できる資格について紹介していきます。

データベースエンジニアに役立つ資格「データベーススペシャリスト試験(DB)」

基本情報技術者試験(FE)、応用情報技術者試験(AP)といった国家試験を運営しているIPA(独立行政法人 情報処理推進機構)の、高度な知識・技能を要するレベルに分類されている試験です。

同レベルの試験には、ネットワークスペシャリスト試験(NW、情報処理安全確保支援士試験(SC)等、全部で9種類があります。IPAの試験は春・秋の年2回実施されるものもありますが、データベーススペシャリスト試験は年に1回、秋のみ実施されます。また、IPAの試験はいずれも、住居地によって指定された試験会場に出向いて受けることとなり、受験料は一律7,500円(税込)となっています。なお、ITパスポートを除く各試験はどれも1年に1、2回の実施なので再受験に関する規定は特になく、不合格となってしまっても次の実施日には受験可能です。

ここまではIPAの試験に共通する事項を紹介しましたが、ここからはデータベーススペシャリスト試験の詳細を紹介します。試験の構成は午前Ⅰ(50分)、Ⅱ(40分)、午後Ⅰ(90分)、Ⅱ(120分)となっており、午前と午後の試験の間には1時間の休憩があります。出題形式は午前が四肢択一式で午前Ⅰは30問、午前Ⅱは25問、午後が記述式で午後Ⅰは3問、午後Ⅱは2問となっています。

合格点は100点満点中60点以上、また全ての試験で正答率60%を達成している必要があり、例えば午前Ⅰで60%未満の正答率となった場合、午後の試験は採点されないという仕組みがあります。合格率は15%前後で推移している状況です。非常に時間の長い試験となりますが、「応用情報技術者試験に合格している」「情報処理技術者試験の高度試験、情報処理安全確保支援士試験のいずれかに合格している」「情報処理技術者試験の高度試験、情報処理安全確保支援士試験の午前Ⅰ試験で基準点以上の成績をあげている」という3つのうちいずれかを満たしている場合は午前Ⅰの試験が免除されるため、試験時間を50分短くできます。

なお、データベーススペシャリスト試験に合格すると就職・転職時のアピール材料となるだけではなく、「中小企業診断士」「弁理士試験」「技術士試験」「ITコーディネータ試験」といったその他の国家試験の一部が免除されます。

各試験の出題内容について

午前Ⅰは応用情報技術者試験の内容と同様のテクノロジ系・マネジメント系・ストラテジ系が出題されます。また、過去問から出題されることが多いため、過去数年分まで遡って過去問を繰り返し解いておきましょう。

午前Ⅱは過去問から出題される可能性が高い傾向にあるため、午前Ⅰと同じく過去問を繰り返し解きましょう。なお出題内容は、SQL文を含めたデータベースに特化した内容が多くなります。

午後Ⅰはデータベースエンジニアが良く経験するトラブルに関する内容が「データベース基礎理論」「データベース設計」「データベース運用、SQL、物理設計、パフォーマンスチューニング」という項目に関連けて出題されます。そのためすでに実務経験がある人は、過去の経験から答えを導き出せる部分もあるので有利と言えます。3問あるうちの2問に回答すれば良いので、得意なものを選択することをおすすめしますが、特にエンジニア未経験の方は、基礎を固めておかないと回答することが難しい内容となります。

午後Ⅱも午後Ⅰと同様、トラブル事例に関する記述式問題で、2問のうち1問を選択して回答することとなりますが、問題文が10ページ前後と非常に長い文章となるので、読解力も求められます。 120分という時間が与えられているものの集中力も必要です。データベースの物理設計、データベースの概念設計どちらかのテーマに沿った問題となるので、得意な方を選択して回答しましょう。

資格取得のためにおすすめの参考書3冊を厳選

参考書を使っての独学は、通信講座等を利用するよりは費用がかからないことがほとんどです。しかしながら、片っ端から参考書や問題集を購入していては本末転倒となりかねません。そのため今回は、おすすめの参考書・問題集を厳選した上で紹介していきます。

なお、書籍に関してはどうしても市場に並ぶまでに時間がかかるため、試験傾向や内容に変更があった場合、最新の内容が反映されていない可能性もあります。そのため、たとえ古本等で同じ参考書の古いバージョンが安く売られていたとしても、出版年月日が最新の方を選んで購入することをおすすめします。今回はインターネット上で購入できる、比較的新しい参考書に絞っています。また、データベーススペシャリスト試験の参考書・問題集は試験範囲全てを網羅しているもの、部分的に取り扱っているものと様々なのでご注意ください。値段は2022年9月時点の各公式ページに掲載されている情報であることにご注意ください。

情報処理教科書 データベーススペシャリスト 2022年版(翔泳社) 税込3,168円

この参考書の特徴は、学習方法とテクニックに100ページ程割かれているため、データベーススペシャリスト試験がどういったものかを早い段階から抑えることができる点です。また、午後Ⅰと午後Ⅱにおける考え方の手順が解説されていて、合格できる解答方法も掴めるようになっています。データベースの学習に欠かせないSQLの解説が充実している点も大きな特徴で、WebにてSQL暗記シートも提供されています。午前、午後Ⅰ、午後Ⅱ全ての過去20年分の問題も掲載されているので、この一冊でデータベーススペシャリスト試験の学習を完結することもできます。

2022 データベーススペシャリスト「専門知識+午後問題」の重点対策 (重点対策シリーズ)(アイテック) 税込4,070円

午前IIの専門知識が、解説付きの演習問題で効率的に学習でき、午後問題においてはテーマごとの解法ポイントを押さえた解説がついています。特に午後試験の解説に焦点を当てている参考書の一つで、つまずきやすい点に関しての解説が充実している他、誤りの選択肢に対しての解説もあります。また、第1部の「本書の使い方」ではデータベーススペシャリスト試験の出題ポイントや、午後I・II試験での表記ルールについても解説されているので、初めて受験する際も安心です。次の「おすすめの問題集」でも紹介していますが、同社が出版する問題集もあるので、合わせて利用すれば矛盾点も生じづらく、効率的に学習できる可能性があります。

(全文PDF・単語帳アプリ付)徹底攻略 データベーススペシャリスト教科書 令和4年度(インプレス) 税込2,838円

こちらはAmazonでKindle版の提供もありますが、Amazonで購入しなかったとしてもPDFにてテキスト全体のダウンロードが可能です。パソコンやスマホの他に参考書まで持ち歩くとそれなりの重さがあるので、出先で勉強したい場合はダウンロードしておいたPDFで学習するのもおすすめです。内容としては、基礎知識はもちろん、AIやビッグデータといった最新技術、試験に良く出るセキュリティに関する解説が充実している点が特徴となっています。また独自のAIシステムを利用して過去の出題傾向を分析した上での、試験対策の重点ポイントがまとめられています。2022年版では令和3年の過去問・解説が掲載されている他、平成25〜令和2年の過去問・解説がPDFにて提供されているとのことです。なお、弱点を把握するためのチェックリスト、スマホで学べる単語帳「でる語句200」といったツールも付いています。

おすすめの問題集

問題集についても1冊紹介します。今回おすすめの問題集は、参考書でも紹介したアイテックの出版している「2022 データベーススペシャリスト 総仕上げ問題集 (総仕上げ問題集シリーズ)(税込4,070円)」です。アイテックは、情報処理技術者試験関連の書籍を40年近く出版し続けている他、学校の教材も手掛けているので安心できる出版社の一つです。この問題集は、分野別のWeb確認テストを行った後に、直近3期分の本試験過去問題を解いて傾向と解法で理解を深め、最後に実力診断テストを解く流れとなっています。参考書を十分に理解したら、こちらの問題集に挑戦してみてはいかがでしょうか。問題集でありながら解説も充実しているため、知識が不足している部分を把握したら解説で補ってみてください。

その他学習方法について

最後に、書籍の参考書・問題集以外の学習方法についても紹介しておきます。一つは「データベーススペシャリスト試験過去問道場」の利用です。こちらはWebサイト上の過去問サイトで、平成21年春期以降の午前Ⅱの過去問・回答・解説が掲載されています。無料で利用可能でスマートフォン・タブレットからの学習もできるので、空き時間での勉強もしやすいことでしょう。同じく「応用情報技術者試験過去問道場」もあるので、午後Ⅰの過去問を解きたい場合はこちらをご利用ください。IPAの公式サイトにも過去問はあるものの解説がないため、Web上で勉強したい場合は道場系のサイトを利用することをおすすめします。

他にもお金をかけずに勉強したい、空き時間で気軽に勉強したいという場合は、アプリを利用する方法もあります。iPhone対応、Android対応のアプリがそれぞれあり、App StoreやGoogle Play等で「データベーススペシャリスト」というキーワードで検索するとたくさんのアプリが表示されます。中には有料のものや、午前Ⅱの内容のみといったものもあるので、レビューを見ながら自分に見合ったものを見つけてみましょう。

独学を継続する自信がない、誰かに質問できないと不安という方は、通信講座を利用する方法もおすすめです。どうしても独学と比べると費用が高く付きますが、ノウハウを持っている運営側からのアドバイスを聞いて、効率的に学習を進めることが可能です。わからないことを質問できるサービスが多いのも安心できます。

まとめ

データベーススペシャリスト試験は、参考書・問題集を利用しての独学でも取得が不可能ではない資格であるものの、不明点が出てきた時には自己解決をしなければいけないというデメリットがあります。しかし自分のペースで学習を進められるので、自分で地道に勉強していきたいという人には適した学習方法でもあります。また、書籍は自分で情報をまとめなくても必要な情報が初めからまとまっているというメリットもあります。今回紹介したように、書籍自体を持ち歩かなくても電子書籍化されていたり、PDFのダウンロードが可能であったりと便利になっているため、ぜひデメリットの部分は、解説がわかりやすく充実したものを選んで補った上で、資格の取得を目指してみてはいかがでしょうか。