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はじめに

WindoswOSの使用率は日本国内、世界いずれで見ても非常に多く、特にパソコンOSでの使用率は圧倒的です。日本ではモバイル端末こそiOSの占有率が高いものの、会社で配給されるパソコンは、特別Macが適している業務でなければほとんどがWindowsではないでしょうか。一方でサーバーで利用されるOSに関しては、Windows Serverもあるものの、2022年時点ではなおUNIX・Linux系の利用が多く見受けられます。近年積極的に企業でも採用されるようになってきているクラウドサービスも同様です。そのためサーバーエンジニア等の職種に就く場合は、普段使うパソコンの操作以外にUNIX・Linux系の操作方法を覚えなければなりません。

かつてのパソコンはCUI(キャラクターユーザーインターフェース)で、コマンド操作することが当然でしたが、Windowsが普及し始めてからは、今度はGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)が当たり前となりました。そのおかげで多くの人が気軽にパソコンを利用できるようになったものの、コマンド操作ができるのはエンジニア等のごく一部の人に限られるという状況になっています。業務や資格取得のために学習しようとしても、環境をまともに用意することができずに困ったという経験をお持ちの方もいるのではないでしょうか。今回は、普段利用しているパソコンがWindowsであるもののUNIXにも慣れておきたい、UNIX環境の方が慣れているので簡単に切り替える方法を探しているといった方へ向けて、Cygwinを紹介します。インストール方法がメインとなりますが、Cygwinの概要についても紹介しているので、初めてCygwinを利用するという方もぜひご覧ください。

Cygwinは何のために利用するか

Cygwinは、Windows環境でUNIXのような操作ができるようになるオープンソースのソフトウェアです。ライセンスは、GPLによる無償利用の他、ソースコードを開示せずに再配布したい場合に利用する商用の2つといったデュアルライセンスのソフトウェアであり、Windows64bitバージョンと32bitバージョンの両方があります。かつては日本語での利用に向いていない部分がありましたが、徐々に改善されています。

VMwareやVirtualBoxといった仮想マシンのように、一つのコンピュータ内に複数のOSを共存させるマルチブートとは異なり、Cygwinの場合は、WindowsOS上で動作するソフトウェアなので、Cygwinを使って操作した内容は直接Windowsに反映されます。そのためCygwinの用途としては、UNIX向けのソフトウェアを利用したい場合や、業務や資格取得のためのコマンド学習等が考えられます。また通常のUNIX系OSのように、メモリーやCPUといったリソースの使用量を減らせるため、コンピュータを軽量化したい場合にも活用できます。

Windowsでも「コマンドプロンプ(cmd.exe)」というツールがありコマンド操作が可能ですが、Cygwinを利用した場合は、UNIXに準拠したコマンドを使用することとなる点に注意が必要です。例えばWindowsで利用される「dir」は「ls」というコマンドに変わります。なお「dir」と「ls」はいずれも、指定したディレクトリ内にあるファイルやディレクトリを一覧で表示させるコマンドです。

なお、Cygwinは当初Cygnus Solutions社にて1995年にリリースされましたが2000年に買収されたため、2022年現在はRed Hat社が開発を引き継いでいます。Red Hat社は、Linuxのディストリビューションをはじめとしたオープンソースソフトウェアを提供する企業です。Red Hat社のディストリビューションには、Fedora、CentOS(2021年に開発終了をアナウンス済)、RHEL等があります。以上がCygwinの概要となります。それでは次にインストール方法、日本語化、アンインストール方法について見ていきましょう。

Cygwinのインストール方法

はじめにCygwinの公式ページ(cygwin.com)からインストーラーをダウンロードしましょう。アクセスするとトップページの「Installing Cygwin」という欄に「setup-x86_64.exe」というリンクがあるので、こちらからダウンロードします。なお「setup-x86_64.exe」は64bit版となりますが、もし32bit版をダウンロードしたい場合は、「32 bit Cygwin」という別の欄に「setup-x86.exe」というリンクがあるのでそちらから実行してください。なおWindows 10以降は基本的に64bitのOSとなっているので、Windows 10 以降のOSを利用している方は迷わず「setup-x86_64.exe」を選択しましょう。Cygwinの公式ページは全て英語ですが、インストール箇所を覚えておけば特に迷わず実施できます。

インストーラーがダウンロードできたらファイルをダブルクリックで実行し、「次へ」ボタンをクリックします。次にソースファイルの取得先を選択する画面(Chose A Download Source)が表示されますが、今回はそのまま「次へ」をクリックしてください。続いてrootディレクトリをどこにするかの指定、インストール先のユーザー全てにするか、インストールを実施している自分の環境のみとするかの選択ができる画面(Select Root install Directory)が表示されます。特に変更する必要がない場合は、この画面もそのまま「次へ」ボタンを押して進みます。

続いてCygwin上でパッケージを置く場所を指定する画面(Select Local Package Directory)が表示されますが、特にこだわりがない場合は変更せず「次へ」をクリックしてください。次に、インストールする際の環境を選択する画面(Select Your internet Connection)になりますが、通常のインターネット環境で接続している場合は変更せず「次へ」をクリックして進みましょう。ソースファイルをダウンロードするサイトが一覧で表示(Chose A Download Site)されるため、いずれかを選択して「次へ」をクリックするとダウンロードが開始されます。基本的にどれを選択しても問題ないですが、URLの末尾が「.jp」で終わっているものは日本のサイトとなりダウンロード速度が早い可能性があります。あまりにも遅すぎてダウンロードが遅い場合は、一旦インストーラーを閉じて選択し直しましょう。その後、インストールしたいパッケージの選択画面が表示されますが、特にインストールしたいパッケージが決まっていない場合は、インストールを早く完了させるためにも選択せずに「次へ」をクリックしてインストールを開始させましょう。パッケージを複数選択した状態でインストールし始めると30分程度の時間がかかる場合もあるので、あらかじめご注意ください。

なおインストーラーで選択可能なパッケージとしては、圧縮系の unzip、zip、bzip2、エディター系のvim、emacs、ネット系のcurl、openssh、Web系のwget、プログラミング言語のpython、ruby、perl等があります。パッケージは、Cygwin自体のインストール完了後に後から追加でインストールすることも可能なので、ご安心ください。

インストールが完了すると、アイコンの作成、スタートメニューへの登録に関して必要の有無を問われる画面(Create Icons)が表示されるので、希望するものにチェックを入れて「完了」をクリックしましょう。以上でCygwinのインストール作業は完了となります。

日本語化する方法

Cygwinは日本語表示とすることが可能ですがそのためには各種設定ファイルの変更作業が必要となります。最初はCygwinの画面内からの設定となります。左上にあるCygwinのアイコンをクリックし、「Options」を選択しましょう。左側メニューから「Text」を選択して、フォントは「MS ゴシック」等を選択し、「Locale」で「ja_JP」を、「Character set」で「UTF-8」をそれぞれ選択します。

続いて直接「.bashrc」というファイルの変更が必要となるため、この時点で早くもコマンド操作が必要となります。viエディタ等を使ってなお「.bashrc」に以下記述を加えてください。なお「.bashrc」は、Cygwinを起動した際に一番最初に実行されるファイルです。

export LANG=ja_JP.UTF-8
export OUTPUT_CHARSET=utf8
export TZ=JST-9
alias ls='ls --show-control-chars'

また「.vimrc」ファイルに以下記述を加えることで、vimエディタにも日本語を設定することが可能となります。

let $LANG='ja'
set encoding=utf-8

さらに、キーボードマップを定める「.inputrc」というファイルがありますが、こちらも以下記述で日本語の設定が可能です。

set kanji-code utf8
set convert-meta off
set meta-flag on
set output-meta on

いずれの設定変更を行った際も、Cygwinの再起動を実施しないと反映されないのでご注意ください。

Cygwinのアンインストール方法

最後にアンインストール方法の紹介です。ソフトウェアによってはアンインストーラーが付いていて、実行するだけできれいに取り除いてくれるものもありますが、Cygwinの場合は手動で一つずつ削除作業が必要となります。

作業は、ディレクトリの削除、ショートカットの削除、レジストリの削除の3つです。ディレクトリの削除は、Cygwinのインストール先として指定した場所でCygwinを探し出し削除するだけであり、ショートカットも単純に画面上に表示されているアイコンを削除するだけなので簡単です。なお、もしインストール先を忘れてしまった場合は、ショートカットアイコンを右クリックして「プロパティ」をクリックし、「ショートカット」タブ内の「ファイルの場所を開く」をクリックすることで、インストールされている場所のエクスプローラーを開いてくれます。開いたエクスプローラーの一つ上のディレクトリ「Cygwin」で削除しましょう。

レジストリの削除は、普段パソコンを使っている際に触れることのない部分なので、Windowsにレジストリという項目が存在していること自体知らない人も多いのではないでしょうか。

レジストリとは、Windowsのあらゆる設定が格納されているデータベースのようなもので、Cygwinの設定もインストールするとこの中に格納されます。レジストリは「レジストリエディタ」によって編集が可能ですが、このエディタを呼び出すためには、Windowsの「ファイル名を指定して実行」に「regedit」と入力してエンターキーを押します。しばらくするとレジストリエディタが起動するので、左側の階層構造の中から、順に「コンピュータ¥HKEY_CURRENT_USER¥Software¥cygwin」「コンピュータ¥HKEY_LOCAL_MACHINE¥SOFTWARE¥cygwin」を探し出し、それぞれ右クリックして「削除」を実施します。削除後は「×」印で閉じ、アンインストールの作業は完了となります。

まとめ

今回の記事で、Cygwinを利用すると、簡単にUNIXライクな環境に変更できることがわかっていただけたことでしょう。別途端末を用意する必要がなく、仮想マシンのようにインストールや構築に手間がかからないため非常に便利です。現在はすでに日本語での利用にも特に支障がない状況となっており、不要になった際のアンインストールも特に難しい操作は必要としないため、UNIX環境を希望している場合は、ぜひインストールしてみてはいかがでしょうか。