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ITエンジニアに限らず、業務システムに携わったことのある方なら、ドイツに本社を持つソフトウェアベンダー「SAP SE」の名を聞いたことがあるでしょう。大手企業向け基幹システム=ERP分野で世界一のシェアを誇るといわれるSAPは、2,000社を超える国内企業に導入されるなど、近年、日本での存在感を急速に高めています。それを支えているのがSAPコンサルタントです。将来有望なSAPコンサルタントへの転職を目指し、認定資格の取得を視野に入れている方も多いのではないでしょうか。

それでは、SAP認定資格さえ取得できれば、SAPコンサルタントとして有利に転職活動を進められるのか?認定資格を取得するとどんな仕事ができるのか?多岐にわたるSAPの仕事と年収を含めた転職状況を紹介するとともに、現役SAPコンサルタントなら気になる、2027年問題やSAPの将来性も解説していきます。

多様なSAP業務ソリューション

SAPコンサルタントとはなにかを把握する前に、まずはSAPの業務領域を理解しておく必要があります。一般的にはSAP=ERPというイメージがあるかもしれませんが、それでは必ずしも正解だとはいえません。エネルギー・消費材・製造・公共・金融・サービスなど、SAPはあらゆる業種に対応する多様な業務ソリューションを提供しているのです。簡単に解説していきましょう。

ERPソリューション

多様な業務ソリューションを持つなかでも、SAPの主力といえるのはやはりERPです。現在では、大手企業向けオンプレミス型ERP「SAP S/4 HANA」のほか、そのクラウド型といえる「SAP S/4 HANA Cloud」、中堅・中小企業向けの「SAP Business ByDesign」「SAP Business One」がラインナップされています。財務会計・販売管理・生産管理などの各モジュールで構成されており、オンプレミス型・クラウド型を問わず、クライアント企業に最適化システムを導入・拡張していけるのが特徴です。

ERP以外のソリューション

自社開発やM&Aで拡充された、ERP以外の豊富な業務ソリューションをラインナップするのもSAPの特徴です。代表的なサービス・ソリューションを簡単に紹介しておきます。

・SAP C/4 HANA・・・「SAP Customer Data Cloud」をベースに「Marketing Cloud」「Commerce Cloud」「Sales Cloud」「Service Cloud」で構成されるCRMスイート
・SAP Ariba・・・間接材購買業務をサポートする調達管理サービス
・SAP Concur・・・経費精算サービス
・SAP SuccessFactors・・・グローバル対応人事管理システム
・SAP Business Objects・・・BI・アナリティクスシステム

SAPコンサルタントの仕事・働き方

多様なソリューションを持つSAPシステム・パッケージを、個々のクライアント企業に最適化して導入するためには、要件定義から設計・構築・カスタマイズ・運用にいたるまでの適切なサポートが必要です。この一連の業務を担当する、それぞれのSAPソリューションスペシャリストがSAPコンサルタントです。当然のことながら、職種・専門分野の異なる多様なSAPコンサルタントが存在し、働き方も大きく2つに分類できます。

多様な職種・専門分野・働き方が特徴

SAPコンサルタントの職種は、大きく「業務」「アプリケーション」「アナリティクス」「テクノロジー」「プロジェクトマネジメント」の5つに分類できますが、さらにそれぞれの職種は「財務会計」「販売管理」「生産管理」といった専門分野に細分化されます。それぞれのSAPコンサルタントは、コンサルティングファーム・SIerに所属する、フリーランスとして活動する働き方があるため、職種・専門分野・働き方が多様なのが特徴だといえるでしょう。ひとつの職種・専門分野に精通してれば活躍のフィールドが広がるため、フリーランスで活動する方が多いのもSAPコンサルタントの特徴です。アドオン・プラグインなどの開発担当者をSAPエンジニアと呼ぶこともあります。

SAPコンサルタントに必要な知識・スキル

多岐にわたる業務ソリューションの導入から運用までをサポートするSAPコンサルタントには、システムを構築する、カスタマイズ・コーディングするだけではない、さまざまな知識・スキルが求められます。これはSAPの導入・活用が、クライアント企業の業務効率を実現するのとイコールでなければならないからです。

各分野の業務知識

SAPコンサルタントには、財務会計・生産管理など、担当する分野に関連する深い業務知識が求められます。たとえば、財務会計はどのような企業であっても重要な経営要素ではありますが、業界・業種による違いがあるのはもちろん、個々のクライアント企業でも最適なあり方は異なります。SAPコンサルタントには、クライアント企業の経営状態を把握したうえで、業務改善や効率化に向けた適切な解決策を提案できる業務知識が必要なのです。

SAPモジュール・ABAPの知識・スキル

担当する分野の課題を解決できる業務知識があっても、それをシステムで実現できないのでは意味がありません。つまりSAPコンサルタントは、解決策を実現するためのSAPモジュールに関連する知識・スキルを身に付けなければなりません。SAP製品は、基本となるERPだけでも複数のモジュールから成り立っているため、ERP導入・運用をトータルサポートするには、複数のモジュール・業務の知識・スキルも必要となります。そのほかにも、SAPモジュールをカスタマイズ・コーディングするための専用プログラミング言語「ABAP」の知識・スキルも身に付ける必要があります。

SAP認定コンサルタント資格とは?

こうしたSAPシステムの導入・運用に必要な知識・スキルを有するコンサルタントであることを証明する認定資格制度が「SAP認定コンサルタント資格」です。ここまで解説してきたことからもわかるように、職種・専門分野が細分化されたSAP認定資格は、2020年9月現在で約150種類が存在していますが、主に以下の3つのカテゴリーに分類されています。

・アプリケーションコンサルタント・・・業務プロセスを効率化する技術を持つ業務コンサルタントを対象にした資格
・デベロップメントコンサルタント・・・SAPアプリケーション開発技術を持つプログラマーを対象にした資格
・テクノロジーコンサルタント・・・SAPシステム導入・管理技術を持つインフラエンジニアを対象にした資格

SAP認定資格を取得すれば、公式にSAPコンサルタントを名乗れるようになり、デジタルバッジをSNSで表示するのも可能になります。SAP認定資格はグローバルで通用するため、海外企業への転職を検討する際に実力を証明するのにも有効です。

SAPコンサルタントになるには?

しかし、SAP認定資格はSAPコンサルタントの必須条件ではありません。SEとして業務システムの導入・構築・運用経験がある、企業の業務プロセスに関する深い知識・理解がある方であれば、認定資格がなくてもSAPエンジニアとして転職するのは可能です。ただし、認定資格を取得してれば、転職活動を有利に進められるのは事実であり、業務領域を広げられるメリットもあります。SAPコンサルタントとして活躍したいなら、認定資格の取得は検討しておくべきでしょう。

SAP認定資格を取得するには?

とはいえ、SAP認定資格の取得が簡単ではないのも事実です。独学で試験対策するのは困難であり、すべての試験はオンラインで受験する必要もあります。SAPラーニングハブを活用したオンライン学習、アカデミーに入校して学習する方法がありますが、それぞれ30万円・100万円以上の費用が必要といわれており、受験費用もも1回5万円程度がかかります。もっとも現実的なのは、サポート制度のあるコンサルティングファーム・SIerに入社し、実務経験を積みながら資格取得を目指す方法でしょう。

SAP認定資格者の転職市場

それでは、認定資格を持つSAPコンサルタントは、転職を有利に進められるのでしょうか?SAPコンサルタントを目指す方が転職のイメージを描きやすいように、公開されている正社員求人情報をいくつか紹介してみましょう。ある転職エージェントでのSAP経験ありの求人数は、検索時で約240件ありました。

SAP BIシステム導入のPM・コンサルタント求人
・必須要件:上流工程を主体的に実施した経験、プロジェクトマネジメント経験
・歓迎要件:SAP ERPまたはSAP BW導入プロジェクトの経験、日商簿記2級同等の知識
・待遇:正社員、年収500万円〜

SAPを含む製造業システム設計シニアコンサルタント求人
・必須要件:製造業の業務経験、コンサルティング・システム開発経験
・歓迎要件:製造業のシステム設計・導入経験
・待遇:正社員、年収700万円〜

SAPコンサルタントの年収

SAP認定資格を必須要件とする転職情報は現状ほとんどなかったため、実態の把握が難しい面はありますが、資格取得者が転職活動を有利に進められるのは間違いありません。ただし、資格の種類や業務領域によって、年収が大きく変わるのもSAPコンサルタントの特徴です。SAP認定資格を保有していれば年収500万円以上というのが一般的であり、チームリーダーとして活躍できれば700万円以上、PMを担当できれば900万円以上、+αのスキルがあれば1,000〜1.500万円が狙えるといわれています。

高年収SAPコンサルタントに必要な知識・スキル

それでは、高年収のSAPコンサルタントとして転職するために必要な+αとはなんでしょうか?まずは、SAPシステム導入・運用の実務経験、プロジェクトマネジメント経験があることを前提に、業務コンサルタントとしてクライアントの課題を解決できる幅広い業務知識が求められます。こうした業務知識は、SAPシステムが絡まない現場でも有効なスキルとなるからです。クラウド・AI・IoTといったこれからますます普及の進む分野に取り組むのもいいでしょう。

SAPの2027年問題とは?

一方、現役SAPコンサルタントの方は、いわゆる「2027年問題」といわれる、SAP ERPのサポート期限が気になっているのではないでしょうか?当初の2025年から2年間の延長が発表されたとはいえ、メインストリームメンテナンスが終了するSAP ERP R/3からの移行がスムーズに進むのか、移行に伴ってSAPがERPのシェアを維持できるのか、将来性が不安視されているからです。

SAPの将来性は?

しかし、日本におけるSAPの事業は、グローバルで比較しても大きく成長していることを見逃してはいけません。2017年には、グローバルで1%台にとどまったERPの成長率が日本で14%を超えたのをはじめ、クラウドの新規受注は139%の成長率を示すなど、6年連続売上最高額を更新する勢いで推移しているのです。あらゆる業種をカバーすべく注力するSAPの勢いは、しばらくの間は持続すると考えるのが自然でしょう。

SAP +αでキャリアパスを描くのが重要

ただし、限られた領域だけを見据えていると、足下をすくわれることになりかねないのは、SAPコンサルタントも同様です。SAPのスペシャリストとして、あらゆる領域で活躍できるように知識・スキルの幅を広げるとともに、どのような時代でも求められる存在となるべく、+αとなる普遍的なスキルを身につけ、自身のキャリアパスを描いていくのが重要です。