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24時間365日、さまざまなサービスが利用できる現代では、それを支えるインフラエンジニアの重要度が高まっています。それは企業のビジネスを支える業務システムも同様ですが、安定稼働を大前提にした業務自動化、情報漏えい防止を含むコンプライアンス強化など、インフラ・システム運用に関連するニーズはさらに多様化しているといえるでしょう。大企業を中心に、システム運用・ジョブ管理ミドルウェアシリーズ「JP1」の導入が進んでいるのは、多様化するニーズへの対応が必須だからだといえます。

それでは、JP1のニーズの高まりとともに、JP1のスキルを持つインフラエンジニア求人も増えているのでしょうか?転職を有利に進めるためにも、JP1のスキルは身に付けておいた方がいいのか?JP1の概要や技術者資格認定制度を解説するとともに、正社員・フリーランスの求人例もあわせたJP1求人市場を紹介していきます。

JP1統合システム運用管理の基本

JP1とは、日立製作所が開発・提供している業務システム向け「統合システム運用管理ソフトウェアシリーズ」です。情報システムの稼働状況を可視化・監視できるのはもちろん、バックアップを含む定型業務の自動化、IT資産管理・セキュリティ対策を統合的に運用管理できるのが特徴。数千台規模にも対応できる、ライセンス購入・サブスクリプションのオンプレミス型のほか、AWSを活用したクラウド型、日立のサービスを活用するSaaS型が用意されています。大規模企業を中心に導入されているJP1は、運用ツールとして27%の国内シェアを獲得しています。

JP1が持つ3つのサービス

ミドルウェアとしてのソフトウェアシリーズであるJP1は、認証機能・ログファイル監視・イベントログ監視・イベント管理などの機能を持つ「JP1/Base」を核に、3つのサービスを実現させるためのさまざまなソフトウェアが用意されています。サービス分野ごとに分類されたソフトウェアは、必要に応じた組み合わせ・機能の追加が可能な柔軟性も確保されています。それぞれを簡単に解説していきましょう。

オートメーション

オートメーションは、信頼性の高いシステム運用を実現させるため、業務・運用自動化などの「システム全体を動かす」機能を集めたサービスです。定型業務や手動で行っていた複雑なオペレーションも自動化可能、人為的なミスを低減させながら業務運用の効率化を実現できます。

・JP1/AO(JP1/Automation Operation):運用オペレーションを自動化
・JP1/VERITAS NetBackup:マルチプラットフォーム対応バックアップソフトウェア
・JP1/AJS3(JP1/Automation Job Management System 3):スケジューリング機能を搭載したジョブ管理ソフトウェア

モニタリング

モニタリングは、ネットワークを含むインフラ・システム・サービス全体の監視や、安定稼働に向けた「システムを止めない」ための機能を集めたサービスです。

・JP1/IM(JP1/Integrated Management):JP1/Baseをもとにしたシステムの集中監視
・JP1/OA(JP1/Operations Analytics):障害の発見・関係者への一報・障害分析
・JP1/SS(JP1/Service Support):インシデントの登録・作業順序の統制
・JP1/PFM(JP1/Performance Management):統合パフォーマンス管理
・JP1/Cm2シリーズ:ネットワーク全体の一元管理・集中監視ソフトウェア

コンプライアンス

コンプライアンスは、インベントリ情報を収集したコンプライアンスの徹底、セキュリティリスク対応など「資産を守る」ための機能を集めたサービスです。ライセンス超過はもちろん、不正アクセス・ウイルス感染・情報漏えい対策などの機能を持ち、仮想デスクトップやモバイルデバイスにも対応します。

・JP1/Audit-Manager:ソフト・ハードの資産情報、セキュリティ対策情報を一元管理
・JP1/ITDM-Manager(JP1/IT Desktop Management):PC・サーバの操作ログ取得
・JP1/秘文:機密情報の持ち出しを防止・データの暗号化・アクセス制御

ジョブ管理を中心に進化を続けるJP1

1994年に発売されたJP1は、2020年10月現在で最新バージョン「Ver.12」がリリースされており、その過程でクラウド対応、SaaS提供などを含む時代のニーズに沿った継続的な進化を遂げてきています。なかでも、もっとも利用されているのがジョブ管理「JP1/AJS3」です。SAP R/3やSAP BWなどのERPシステムと連携した業務自動化は、大企業での導入が進んだ原動力ともいえるでしょう。2019年9月には、RPAツール「Automation Anywhere」をJP1/AJS3と連携できる機能強化も発表されており、今後さらに導入が加速することになるかもしれません。

JP1エンジニアの仕事

統合システム運用管理ソフトウェアであるJP1の場合、担当するエンジニアの仕事はインフラエンジニアに準じた形が考えられるでしょう。JP1を導入するエンドユーザー企業が、運用保守担当を求人する、というケースはあるかもしれませんが、多くのJP1エンジニア求人は「サーバ構築から運用保守をカバーするSIer」だと思われます。エンドユーザー企業、もしくはSIerがフリーランスのJP1エンジニアを求人する、というパターンもあるかもしれません。その際の具体的な仕事例を挙げてみましょう。

コンサルティング・設計

バラエティに富むサービスを実現する多彩なソフトウェアで構成されるJP1では、クライアントの課題をヒアリングして解決策を提案する、コンサルティング・設計フェーズが欠かせません。このフェーズを担当するJP1エンジニアを「JP1コンサルタント」と呼ぶ場合もあり、プロジェクトマネージャークラスの知識・スキルが要求されます。

JP1導入・構築

クライアントのニーズ・要件定義・設計に従って、JP1を導入・インストールし、構築していくフェーズです。各ツールの設定・スケジュールを含めた環境構築もこのフェーズに含まれるでしょう。このフェーズを担当するJP1エンジニアを「JP1プロフェッショナル」と呼ぶ場合もあり、インフラエンジニアとしての知識・スキルが要求されます。

運用管理

導入・構築したJP1を安定稼働させるため、運用・保守管理を継続的に実施していくフェーズです。高度な自動化を実現できるJP1とはいえ、ネットワーク・サーバを含めたインフラの障害対応は必要であり、JP1全般を理解した現場リーダークラスの知識・スキルが必要とされます。

JP1エンジニアの正社員求人例

それでは、需要の高まるJP1に対して、JP1エンジニアの求人は増えているのでしょうか?転職を目指すJP1エンジニアの方がイメージを描きやすいように、公開されている正社員求人情報をいくつかご紹介します。

SIerのインフラエンジニア求人
・必須要件:インフラの設計・構築・運用・監視経験
・歓迎要件:VMware、JP1の経験
・待遇:正社員、年収300〜700万円

SIerのインフラエンジニア求人
・必須要件:ネットワーク・インフラの設計・構築・運用経験半年以上
・歓迎要件:VMware、JP1の経験
・待遇:正社員、年収360〜700万円

SIerのインフラエンジニア・コンサルタント求人
・必須要件:インフラの提案、プロジェクトマネジメント経験
・歓迎要件:JP1、Hadoop、Zabbix、Hiveの経験
・待遇:正社員、年収500〜1,200万円

JP1エンジニアのフリーランス求人例

正社員求人以外のフリーランス案件の状況はどうなのか?スキルを活かしてフリーランス転身を目指すJP1エンジニアの方がイメージを描きやすいように、公開されているフリーランス求人情報をいくつかご紹介します。

システム運用・基本設計のインフラエンジニア求人
・必須要件:システム運用設計の経験、JP1/AJS3の設計・構築経験
・歓迎要件:JP1/AJS3のジョブ運用経験
・待遇:インフラエンジニア、月/〜70万円

インフラ運用チームリーダー求人
・必須要件:JP1プロダクトの運用・構築経験
・歓迎要件:Dockerの経験
・待遇:インフラエンジニア、PL、月/〜65万円

クライアントサーバシステム更新の求人
・必須要件:C#での要件定義から一貫した開発経験
・歓迎要件:JP1の経験
・待遇:SE、PM、月/〜85万円

インフラエンジニアにJP1のスキルは役立つ?

上述した求人例は、あるエージェントで公開されているインフラエンジニアの正社員求人、フリーランス求人からピックアップしたものですが、インフラエンジニア全体で約800件ある正社員求人は、JP1をキーワードにすると41件、フリーランスのインフラエンジニア求人が全体で約2,000件あったのに対し、JP1は183件という結果でした。

興味深いのは、正社員ではJP1を必須要件とする求人がほとんどないのに対し、フリーランスではJP1のスキルを持つエンジニアを積極的に探している傾向があることです。全体に対するJP1求人の割合もフリーランス案件の方が圧倒的に多いのがわかります。このことから、正社員として転職する際にはあまり重視されないものの、JP1スキルへの市場からのニーズは比較的高いといえます。

JP1技術者資格認定制度

市場からのニーズが高いとはいえ、多彩なサービスを持つJP1の設計・構築・運用は、信頼できるエンジニアに任せたいと考える企業がほとんどでしょう。そんなときに、JP1の知識・スキルを証明できる資格が、日立アカデミーが実施する「JP1技術者資格認定」です。レベル・分野で分類されたさまざまな資格が存在する、その概要を簡単に紹介しておきましょう。

JP1認定エンジニア

JP1全般を理解したうえで、運用に必要なテクニカルスキルを持つエンジニアであることを証明する試験です。

JP1認定プロフェッショナル

JP1の各サービスカテゴリーの、導入・構築に必要なテクニカルスキルを持つエンジニアであることを証明する試験です。カテゴリーごとに以下の7つの試験があります。

・JP1認定プロフェッショナル統合管理
・JP1認定プロフェッショナルパフォーマンス管理
・JP1認定プロフェッショナルジョブ管理
・JP1認定プロフェッショナル資産・配布管理
・JP1認定プロフェッショナルネットワーク管理
・JP1認定プロフェッショナルバックアップ管理
・JP1認定プロフェッショナルセキュリティ管理

JP1認定コンサルタント

JP1の各サービスカテゴリーに関して、最適なコンサルテーションができるテクニカルスキルを持つエンジニアであることを証明する試験です。カテゴリーごとに以下の5つの試験があります。

・JP1認定コンサルタント統合管理
・JP1認定コンサルタントパフォーマンス管理
・JP1認定コンサルタントジョブ管理
・JP1認定コンサルタント資産・配布管理
・JP1認定コンサルタントネットワーク管理

まとめ

JP1のスキルを求める企業は多いのか?という観点でインフラエンジニアの求人市場を紹介してきましたが、正社員を求める企業ではJP1に特化したスキルというよりも、インフラ全般の知識・スキルを求める傾向が強そうです。しかし、フリーランス市場には充分な案件数があるのも事実です。インフラエンジニアとして仕事の幅を広げていくためにも、JP1のスキルを身に付けるのはおすすめだといえるでしょう。