ネットワークスペシャリストなら転職活動もスムーズ?市場評価を検証!
ネットワークスペシャリストを直訳すれば「ネットワーク分野の専門家」といった意味になりますが、文字通り、情報ネットワークに関する高度な技能を有することを証明する国家資格が「ネットワークスペシャリスト試験」です。より重要なポジションへのキャリアアップ、年収アップを狙うネットワークエンジニアの方であれば、転職活動を有利に進めるためにも、ネットワークスペシャリストの資格取得を視野に入れているのではないでしょうか?
それでは、ネットワークスペシャリストの資格は本当に転職時に有利に働くのでしょうか?資格の有無は年収に反映されるのでしょうか?ネットワークスペシャリストに対する市場の評価、転職求人例、年収アップの方法などとともに、ネットワークスペシャリストの転職市場を検証していきます。
需要の高まるネットワークエンジニア
ITエンジニアの人材不足が年々顕著になるなかでも、特に需要が高まっているのがネットワークエンジニアを含むインフラ系の人材です。今やローカルアプリケーションであってもインフラの存在は欠かせないものとなっており、高速かつ安定的にインフラを支えるためのネットワークの重要度が高まっているからです。
一方、ハードウェアの知識・スキルを含め、高度なネットワーク設計・構築のできる人材を育成するには、数年単位の実務経験が必要だといわれています。結果的に、需要の高まりに対する供給が追い付かない売り手有利の転職市場が形成されており、ネットワークエンジニアの平均年収はアプリケーションエンジニアよりも高額になる傾向があります。
ネットワークエンジニアの仕事
もちろん、ネットワークエンジニアとひとことにいっても、上流工程から運用監視まで、その業務範囲は多岐に渡ります。一般的には運用監視を担当するポジションはオペレーターと呼ばれ、管理・保守以上を担当するネットワークエンジニアとは明確に区別する場合が多いようです。以下からは、ネットワークエンジニアが担当する仕事を、業務別に簡単におさらいしていきます。
ネットワーク設計
クライアントのニーズをヒアリングしたうえで「目的・目標を達成するためにどのようなネットワークシステムを構築するべきか」を計画・設計するフェーズです。目的・コスト・納期といった要求仕様をもとに、最適なバランスのシステムを計画する知識・スキルが求められ、ニーズを的確に読み取るコミュニケーション能力も欠かせません。設計段階では、IPアドレス・ルーティングなどの論理構成はもちろん、ネットワーク機器・配線・接続などの物理構成、セキュリティ、サーバの知識・スキルも必要です。PM・コンサルタントクラスなど、もっとも上位ポジションのネットワークエンジニアが担当する業務です。
ネットワーク構築
ネットワークシステムの詳細な設計図をもとに、機器のラッキング・接続・設定・テストを行い、実態としてのネットワークシステムを形にしていくフェーズです。実際の現場でシステム構築する前に、テスト環境で要求仕様を満たしているか事前チェックするのが一般的です。回線接続だけでなく、スイッチ・ルータのコンフィグ設定などもこのフェーズで実施されるため、ネットワークの知識はもちろん最新のハードウェアの知識も必要です。リーダークラスのネットワークエンジニアが担当する業務だといえるでしょう。
ネットワーク管理・保守
構築されたネットワークシステムは、24時間365日、要求仕様を満たしながら安全に運用されなければなりません。そのために、システム異常を監視するための計画を策定して実行し、インシデント時の報告・対応体制、万一に備えたバックアップ体制を構築するフェーズがネットワーク管理・保守です。各種アップデートを含む管理・保守業務はネットワークエンジニアが担当しますが、接続される機器の多様化により、幅広い知識が求められる傾向が強まっています。
ネットワーク評価
ネットワークエンジニアの仕事は設計・構築・運用・管理といった業務だけではありません。既存ネットワークシステムを評価・検証し、安全性を高めていくためのアドバイスを行うのもネットワークエンジニアの仕事です。最新の通信環境への対応はもちろん、ネットワーク機器のバージョン違いによる脅威・脆弱性への対応などが業務の中心になりますが、ネットワークエンジニアには業界の動向や最新の技術トレンドなど、常に新しい情報・知識を吸収していく貪欲な姿勢が求められます。
ネットワークスペシャリストとはどんな資格?
ここまでで、ネットワークエンジニアが担当する幅広い仕事内容を紹介してきましたが、これらすべてに対する理解・知識・専門性を有する技術者であることを証明する国家資格といえるのが「ネットワークスペシャリスト試験」です。出題範囲となるのは以下の7項目です。
・ネットワークシステムの要件定義 ・ネットワークシステムの設計 ・ネットワークシステムの構築とテスト ・ネットワークシステムの運用・保守 ・ネットワークシステムの管理 ・ネットワークシステムの評価 ・個別業務システム開発のコンサルティング
文字通り、ネットワークスペシャリストとして、ネットワークシステム全般に関する幅広く深い知識を有することを証明する試験であることがわかります。IT系資格試験を主催する情報処理推進機構が実施する国家資格であることから、業界の認知度は非常に高いといえるでしょう。
ネットワークスペシャリストの転職求人例
それでは、ネットワークスペシャリストの資格を有していれば、転職活動を有利に進められるのでしょうか?資格保有者、資格取得を検討しているエンジニアの方がイメージを描きやすいように、公開されている正社員求人情報をいくつかご紹介しましょう。ある転職エージェントで公開されていたネットワークスペシャリストの求人は、検索時点で118件ありました。
通信会社のネットワークエンジニア求人 ・必須要件:IP、ネットワークの知識・経験 ・歓迎要件:ネットワークスペシャリスト、電気通信主任技術者の資格 ・待遇:正社員、年収550〜1,000万円
ITサービス事業会社のネットワークエンジニア求人 ・必須要件:インフラ構築・保守・運用経験、サーバOSの基礎知識 ・歓迎要件:ネットワークスペシャリスト、シスコ技術者認定の資格 ・待遇:正社員、年収360〜840万円
大手企業IT推進部のネットワークエンジニア求人 ・必須要件:インフラエンジニアとしての実務経験 ・歓迎要件:ネットワークスペシャリストの資格、720点以上のTOEICスコア ・待遇:正社員、年収500〜900万円
ネットワークスペシャリストの転職事情
上述した転職求人例からも、転職市場におけるネットワークスペシャリストの位置付け、評価などがおぼろげながら見えてきます。一般的にいわれている見解、評価などとともに、ネットワークスペシャリストの転職事情を検証していきましょう。
ネットワークスペシャリストの年収
ネットワークスペシャリスト資格保持者の年収ボリュームゾーンは、約450〜800万円程度だといわれています。これはネットワークエンジニアの年収ボリュームゾーン、約350〜800万円程度とそれほど変わりません。この数字は転職求人例と比較しても納得できる範囲であり、PG・SE・Webエンジニアのボリュームゾーンと比較すれば高額ではありますが、ネットワークスペシャリストの資格が大幅年収アップにつながるわけではないことを示唆しています。ネットワークエンジニアの年収が高めなのは、資格というよりも需要の増加に応じた結果だと考えられます。
ネットワークエンジニアへの転職には有利
だからといって、ネットワークスペシャリストの資格が転職に有利に働かないわけではありません。ネットワークシステム全般に関する専門的な知識を持つことを証明できる資格でもあるため、実務経験のない、あるいは少ない新卒者・第二新卒者でも、資格保持者であればネットワークエンジニアとして転職できるケースもあります。
ポジションは実務経験次第
ただし、ネットワークスペシャリストの資格よりも実務経験が重視される傾向にあるのも、ネットワークエンジニア転職市場の特徴です。それは、ほとんどの転職求人例が、ネットワークスペシャリストを必須要件ではなく歓迎要件にしていることからもわかります。資格を保有しても実務経験に応じて管理・保守からスタート、といったケースも珍しくありません。また、トータルの実務経験が豊富でも、資格取得からブランクがあれば資格の有効性を疑われる場合もあります。ただし、実務経験が伴っていれば、重要なポジションを任せてもらいやすいというメリットもあります。実務経験が豊富であれば、転職を有利に進めるのはもちろん、ネットワークエンジニアとしての仕事の幅も広げられるでしょう。
ネットワークスペシャリスト資格が必須の企業も
近年は減少傾向にあるといわれていますが、ネットワークスペシャリストの資格を必須とする求人企業もあり、保有者に月5,000〜1万円程度の資格手当を支給する企業もあります。これは、一定人数のネットワークスペシャリストが在籍していることを入札条件にする公共案件が少なからず存在したからです。国家資格であるネットワークスペシャリストらしい例ですが、残念ながら、この場合でも資格が大幅な年収アップにつながるわけではありません。なによりも実務経験が求められるのがネットワークエンジニアのポイントです。
ネットワークスペシャリストが年収を上げるには?
それでは、ネットワークスペシャリストの資格保有者が、転職を有利に進めるだけでなく、年収アップを実現させるにはどうしたらいいでしょうか?まずは、重要なポジションを任せてもらいやすいネットワークスペシャリストのメリットを活かし、実務経験を重ねながらより上流のポジションを目指すことです。サーバエンジニアとしての知識・スキルを高める、クラウド関連の技術も習得すると将来的に仕事に困ることもなくなります。
また、シスコ認定資格「CCNP」を併せて取得すれば、転職がより有利になるだけでなく、年収アップも狙えます。英語力も問われるエキスパート資格「CCIE」も取得すれば年収1,000万円以上が狙え、より高年収の外資系企業への転職も視野に入ってくるでしょう。ただし、いずれの場合でも技術の進歩が著しい、業界の最新事情に目を向けておくことが重要です。
ネットワークスペシャリスト試験の概要
最後に、ネットワークスペシャリスト試験の概要を簡単に紹介しておきましょう。情報処理技術者試験の上位カテゴリーに属するネットワークスペシャリスト試験は、毎年10月第3日曜日に実施されています。受験料が5,700円と低額で受験資格が設定されていないため、学歴・経験も関係なしに誰でも受験できるのが特徴です。難易度はCCNPよりは難しく、CCIEよりは易しいといわれていますが、年1回の実施に限定されているため、約14%の合格率とあわせて取得が難しい、最難関のIT資格のひとつとされています。
まとめ
ネットワークスペシャリストの資格は、ネットワークに関する高度な知識を有することを証明してはくれますが万能ではありません。転職時に有利に働くとしても、重要なポジションを任せてもらえるかは実務経験次第であり、それを補完する証明書として機能するのがネットワークスペシャリストなのです。ただし、試験勉強ではネットワークに関する幅広い知識を学び直す必要があるため、自身の知識に偏りがなかったかを評価できるメリットもあります。ネットワークの知識を整理して体系的に学び直すためにも、ネットワークスペシャリスト試験は有効だといえるでしょう。
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