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はじめに

PMP(Project Management Professional)は、アメリカの非営利団体PMIが認定するプロジェクトマネジメントに関する資格試験です。この試験はPMBOKというプロジェクトマネジメントを行う上で考えるべきこと、管理すべきことを体系的にまとめたガイドに沿った内容から構成されており、国際的な標準とされているため、資格を取得できれば転職・就職時のアピール材料として国内外で有効となる可能性が高いです。この記事ではこれから取得する資格の選択に迷っている方に向けてPMBOKとは何かを紹介したうえで、PMP試験について詳しく紹介していきます。すでにPMPのプロジェクトマネジメントの立場にいる、あるいはこれからなる予定、またPMBOKについては十分理解していて試験の概要だけ知りたい方は「PMPについて」の項目から読み進めてください。

PMPの資格を取得するのに欠かせない知識とは?

PMPはIT業界だけではなく、様々な業界のプロジェクトマネジメントに有効と言われていて官公庁でもPMPが必要とされるプロジェクトがある程です。多くの資格試験と異なって勉強して試験を受けるだけではなく実務経験が必須となり、取得の難易度は高めと言えますが、取得することで幅広い分野で活躍できる能力を持っていることを証明できることとなります。ここではPMPの試験に欠かせないPMBOKについて説明していきます。PMBOKの内容を全部取り上げるとそれだけで膨大な量となるため、今回は概要のみお伝えします。

PMBOK(Project Management Body of Knowledge)について

PMBOKは「ピンボック」と読み、プロジェクトマネジメントで必要となる知識、手法が体系的にまとめられているガイドで有料販売されています。4年ごとに内容が見直されているため、技術の進歩により加速しているビジネスサイクルの変化の中でも実態と乖離しない内容となっています。なお2022年現在での最新版は2021年7月に改定された第7版で、同年10月には日本語版もリリースされています。

PMBOKを導入する目的

PMBOKでまとめられていることをもう少し専門的に言うとQCDを守るための方法となります。Qは品質(quality)、Cは費用(cost)、Dは納期(delivery)で、プロジェクトマネジメントではこれらのバランスを取りながら業務を遂行していくことが求められます。QCDを守るためにPMBOKではメインの要素として5つのプロセスと10個の知識エリアを提唱しています。5つのプロセスとは「立ち上げ→計画→実行→監視・コントロール→終結」と5つに分割した各工程のことで、10個の知識エリアは、統合、スコープ、スケジュール、コスト、品質、資源、コミュニケーション、リスク、調達、ステークホルダーと10種類に分割した知識の項目です。

これら言葉の羅列だけではイメージが付きづらいと思いますが、5つのプロセスと10個の知識エリアを表の縦と横にそれぞれに配置し、例えば計画の工程におけるスケジュールに関する知識ややるべきものにはどのようなものがあるかを一目で確認できるようになっています。計画の段階でスケジュールに関して行うことはスケジュール・マネジメントの計画、アクティビティの定義、スケジュールの作成等があります。これらやるべきことが全部で49個定義されています。なおPMBOKにおいて注意いただきたいのは、これらを完全再現する必要はないということです。完全再現していてはプロジェクトにおいて全く合わない管理項目が出てきたり、管理に囚われすぎてプロジェクトの全容を見失っていたということにもなりかねません。あくまでプロジェクトマネージャー、は管理しているプロジェクトに合っていると判断した項目だけを抜き出して導入します。

PMBOKを導入するうえでの注意点

PMBOKの説明として最後にデメリットを2つ挙げておきます。一つは、複数プロジェクトの運用に向けた内容になっていないという点です。PMBOKはあくまで一つのプロジェクトの成功に向けて作成されたガイドであるため、複数プロジェクトを同時進行しなければいけない状態での具体的な手法は記載されていません。そのため管理しているプロジェクトの概要を自身で捉えたうえで、PMBOKを適宜導入していく必要があります。二つ目は、第7版の時点では人に焦点を当てた内容が含まれていないという点です。プロジェクトを進行しているのは人であるにもかかわらず、コンピュータに対して書かれた設計書のような面が強く表れていて、人同士のコミュニケーション等の重要性については解かれていません。そのためプロジェクトマネージャーはPMBOKに忠実に従うだけではなく、プロジェクトを円滑に進めていくための人のマネジメントも考慮しながら対応していくこととなります。

PMPについて

PMPの特徴として重要なことは、受験資格を得るまでに数年の時間を要するということです。中等教育卒業(高校卒業)の方は60ヶ月以上かつ7,500時間以上、4年制大学卒業の方は36ヶ月以上かつ4,500時間以上の一意あるいは重複しないプロジェクトにおけるマネジメントの実務経験が求められます。さらに受験前には、ATP(Authorized Training Partner)による35時間以上の公式なプロジェクトマネジメントに関する研修を受講して修了証を獲得しなければなりません。

受験方法

受験資格が得られたら、試験の申し込みを行うことになります。基本的な流れとしてはPMIの会員登録、受験申請、監査、受験料支払い、試験予約、受験、結果発表となります。PMIの会員登録はPMIの公式ページから行いますが、有料となります。年会費は初年度が139ドル(入会金10ドル含む)、翌年以降は129ドルです。なお会員登録は必須ではありませんが、登録することで受験料が割引になったり、PMI発行の書籍類が割引価格で購入できる、セミナー等に安く参加できるといった特典もあります。PMPの受験料自体は一般で555ドル(再受験は375ドル、更新は150ドル)、PMI会員の場合は405ドル(再受験は275ドル、更新は60ドル)に割引となります。

続いて会員登録の有無に関わらず、試験を受けるためには受験申請が必要となります。申請もPMIの公式ページにある「Certification Types」内から可能です。申請後は監査が行われます。監査とは申請した内容が正しいかの確認で、証明書の提出や上司からの確認サインをもらうこととなりますが、全ての人が必要となるわけではなく、無作為に監査対象が選ばれる仕組みとなっています。

受験料の支払いを行うとPMIよりPMI eligibility IDというものが発行されます。支払い後は試験予約をすることになりますが、その際にeligibility IDを利用します。予約は試験運用機関であるピアソンVUEから行います。PMIの公式ページではなく、ピアソンVUEの公式ページからとなることにご注意ください。試験はピアソンVUEの会場がある場所で常に実施されているので希望日を指定して予約を完了させましょう。なお合否結果は受験終了後すぐに発表されます。また不合格となった場合も同年に3回までであれば再受験が可能ですが、3回とも不合格となった場合は最終試験日から1年間受験不可となります。

試験概要

試験はパソコン上で行う全180問(4者択一式)で、時間は230分設けられています。予測型プロジェクトマネジメント・アプローチ、アジャイル、ハイブリッドアプローチに関する内容が試験範囲となっており、問題は「人」「プロセス」に関する内容がほとんどで、残り数パーセントは「ビジネス環境」となります。PMPに関して合格率や合格点は特に公表されていませんが、合格率はおおよそ8割、合格点は6割程度という情報が多く見られますが、複数回受験している人が多いという点も挙げられます。

PMPの資格維持制度

PMPでは資格の有効性を維持するための制度が設けられています。具体的には60ポイントのPDUポイントというものを獲得することで資格が更新できるという内容です。このポイントはPMPに関する教育プログラムの受講や、自ら講演活動を行うことで獲得でき、1時間が1PDUポイントとして換算されます。取得後も資格の維持が困難なPMPですが、一方で誰でも安易に取得・維持ができず、資格を保有している人は継続的にプロジェクトマネジメントに携わっていて、保有に値するだけのスキルを維持できていると認識できるので、この制度によって資格の価値が保たれていると言えます。なおPMPの試験概要についてはPMIの公式ページ内にも日本語のPDFが用意されており、随時情報も更新されている可能性があるので、そちらも併せて確認いただくことをおすすめします。

まとめ

PMPは資格を取得できるまでに実務経験を含め多くの時間がかかりますが、取得することでIT業界だけではなく、異業種に転職した際にも役立つ知識やスキルを身につけられ、客観的な証明も可能となります。なおPMPを受けるにはまだハードルが高過ぎるという方はCAPMの受験をおすすめします。CAPMもPMIによって認定されているプロジェクトマネジメント関連の試験ですが、実務経験は不要で、プロジェクトマネージャーなりたての方や学生を対象としたPMPよりは優しい内容になっています。現時点でPMPを受験するという方向性が決まっている方はすでに多くのプロジェクトマネジメント経験を積んでいる状況と思われるので、ぜひ今回の記事を参考に受験の準備を万全にして、PMP試験に臨んでいただけると幸いです。