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はじめに

IT業界の進歩スピードは年々勢いを増していて、近年、ITを利用して今までにはなかった新たなものを生み出せる高度IT人材と呼ばれる人材は、2030年までに大幅な不足が見込まれているという経済産業省の発表もされています。注目されている分野も、情報セキュリティ、クラウドコンピューティング、AI・ビックデータと目まぐるしく変わっていきます。IT企業はもちろん、現場で働くエンジニア達はそういった業界の動向に常にアンテナを張ってチェックしながら、自分のスキルや知識もアップデートしてエンジニアとしての活躍を続けているという状況です。

そういった中でIT関連の資格も試験形態を変えたり、内容を大幅に変更したりと、時代遅れの無意味なものにならないよう対応し、高度IT人材を生み出すきっかけとしても利用されています。IT関連の資格は入門的なものから難易度の高いものまで種類が豊富で、いざIT業界を目指すために取得をしてみようと思っても、どれから手を付けてよいか迷うこともあるでしょう。また資格の選択を誤ると就職・転職に全く役立たなかったり、評価してもらえなかったりということにもなりかねません。

そのため、今回は2022年時点でおすすめのIT資格について、また業界における資格の重要性や、一般的な資格勉強の方法についても紹介していきます。これから取得するべき資格に迷っている方、資格は本当に意味があるのかわからない方はぜひご覧ください。

IT業界での資格の重要性は?

初めに断っておきますが、基本的にIT業界において資格が必須となることはほぼありません。これは各種エンジニアや管理職等に就くに当たって、運転免許や医師免許のように必須の資格はないという意味で、企業によっては特定の資格の取得を内定の条件としていたり、社内で取得を推奨していたりという場合があります。またごく一部ですが、例えば政府機関に関わる業務を担当する条件として「情報処理安全確保支援士」の保有が必須となっているプロジェクトもあります。

特にプログラマーやエンジニア職に関しては未経験・無資格での募集も多く見受けられ、転職の場合であっても資格の取得状況や取得数よりは、即戦力として計算できる程の実務経験があるかという点に着目されることの方が多いです。それでも多くのIT資格が存在し、企業によっては取得を推奨されているのには意味があります。

資格を取得する4つのメリット

一つ目のメリットは、履歴書等に記載することで自分の持つ知識やスキルを簡単に、また客観的にアピールできることです。あまり知られていない資格や、活用できる場面の少ない資格、初級レベルの資格と中にはアピールとしては弱いものもありますが、「情報処理安全確保支援士」「CCNA」といった資格のようにIT業界の幅広い分野での活用が見込めるため、アピールとして有効な資格も多くあります。また、異業種からIT業界に転職する際に「基本情報技術者試験」等の資格を持っていると、ITの十分な基礎知識はすでに持っているということを証明できるでしょう。実務試験がない限り面接の場で自分の持つ知識やスキルを披露することは難しく、言葉で伝えたとしてもその信憑性を証明するのは困難なため、こういった場面で客観的な証明となる資格の保有は有効となります。

二つ目は、自身の持つ現状のスキルや知識のレベルが把握できるというメリットです。IT業界は業務分担がしっかり整備されているとは限らず、エンジニアによっては自分でも気づかないうちに複数の職種を兼任しているということも珍しくありません。そういった状況下にいると、自分の得意分野が把握できていない、職種を聞かれて答えに迷うというようなこともあるでしょう。キャリアアップをするにも自分のスキルを把握していないために、どの方向に進むべきかがわからないという方もいるでしょう。また同じ企業に居続ける分には問題ありませんが、転職活動の際には、現状に適した転職先を見つけるため、あるいは面接でスムーズに回答できるように、自分のスキルを振り返るという作業が必要です。資格を持っていると、自分のスキルを把握しやすくなります。

また在職中も、資格勉強をすることで自分に足りていない部分が明確になるので、効率的に知識を補うことが可能になります。さらに業務と資格勉強を並行していると、これまで業務であまり理解できていなかったことが資格勉強をしていることで納得いくようになったり、逆に参考書だけではピンと来なかったことが、たまたま業務で対応していることと重なったために体得できたりという相乗効果が生まれることもあります。

三つ目は、手当の獲得やキャリアアップが叶う可能性があるということです。全ての企業ではないですが、資格を取得すると手当をもらえるところがあります。また手当が発生しないまでも受験料を負担してくれる場合があります。国家資格であればまだしもベンダー資格となると数万〜数十万の受験料がかかることもあるので、企業で負担してくれる制度があれば、個人では手を出せない資格の取得チャンスがあると言えます。なお他にも、指定された資格の取得がキャリアアップや職種変更の条件となっている企業もあります。特定のプロジェクトに携わる場合に資格の保有が条件づけられていることもあるでしょう。

四つ目は資格取得に向けた勉強に励むことで、業務に関する知識が蓄えられるということです。資格試験なのでもちろん合格するに越したことはありませんが、どうしても試験という形式が苦手、本来の実力が発揮できないという人もいます。そうなると十分な知識は身についているにもかかわらず合格点を満たせずに取得に至らないケースがあります。それでも勉強というそれまでのプロセスをしっかり行っていれば知識は付けられているので、十分有意義なものとなります。また、漠然と勉強をするより資格取得という目標があった方がやる気になるという方もいることでしょう。なおこのメリットは、あくまで自分の担当している業務に関連する資格の取得を目指している時に限られます。全く関係のない資格取得に向けて勉強していても、いつかは役に立つこともあるかも知れませんが未知数であり、直近では役立つ可能性が低いためです。

国家資格とベンダー資格について

IT資格は、試験の区分を国家資格とベンダー資格の2種類に大きく分けることができます。なお資格のジャンルを分ける場合はエンジニア系、マネジメント系、情報系の3種類に分けられることが多いです。国家資格は、IPA(情報処理推進機構)が運営する資格群で、有名なところでは基本情報技術者試験、応用情報技術者試験等があります。他にも入門系資格としてITパスポートや、難易度の高い専門分野ごとの資格があり、「情報処理安全確保支援士」はこれら国家資格の最上位となります。

対するベンダー資格は、IT製品・サービスを展開している企業によって、自社製品・サービスに関する知識の取得具合を図るために独自に運営されているものを指します。前述したCCNA(Cisco Certified Network Associate)やOracleマスター、AWS認定試験、マイクロソフト認定資格、Oracle認定Java資格など、国家資格に比べて種類が豊富です。

この2つの違いとしてはまず受験料が挙げられます。国家資格は高くても1万円以内で収まりますが、ベンダー資格は数万円という高額なものがほとんどで、ものによっては取得するのに数十万円を要する資格さえあります。また資格の有効期限にも違いがあり、国家資格は「情報処理安全確保支援士試験」を除き、一度取得すれば再受験や更新手続きをせず維持できますが、ベンダー資格はそれぞれに有効期限(数年単位であることが多い)が定められていて、維持するためには再受験や講習の受講等が必要となります。もう一つの違いとして受験日があります。国家資格の場合は年1、2回の受験日が決められていて、当日は指定された会場で受験することとなります。例えば基本情報技術者試験や情報セキュリティマネジメント試験は上期・下期、応用情報技術者試験は春期・秋期の2度、ITストラテジスト試験は春期だけ、プロジェクトマネージャ試験は秋期だけとなっています。なお入門系のITパスポート試験も指定された試験会場でCBT(Computer Based Testing)方式で行うものの、この試験だけは随時受験が可能となっています。

ベンダー資格は試験会場や試験日が指定されておらず、全国にあるテストセンターに事前に受験を申し込み、当日は自分で指定した会場で受験する仕組みとなっています。それぞれに定められた期間を経過すれば年内に何度も再受験することも可能です。またベンダー資格には「バウチャー」と呼ばれるクーポンのようなチケットが存在し、これを事前購入することで安く受験料を安くできる場合もあります。さらに両者の違いとして、国家資格の方が手当を受けられる企業が多いという情報も見受けられました。実際、資格取得を目指すに当たってこれら2つの違いを常時意識する必要はありませんが、以上のような違いがあることを覚えておくと、試験の概要を把握する助けになる可能性があります。

2022年に取得すべき資格とは?

それでは、国家資格、ベンダー資格の順で、2022年に取得できると役立つ可能性の高い資格を具体的に紹介していきます。今回は汎用的な内容となっているため、専門職を目指している場合の資格については別途調べることをおすすめします。

基本情報技術者試験[国家資格]

情報技術に関する全般的な知識が問われるベーシックな試験で、テクノロジ系、マネジメント系、ストラテジ系といった分野の中から満遍なく基礎的な内容が出題されます。ベーシックと位置づけられており、問題の半分以上が過去に出題された問題からとなっているものの、プログラミングやアルゴリズム、データ単位に関する計算問題、コンピュータシステムの仕組み等の知識が必要となってくるため、IT業界に関わったことのない多くの人は勉強が必要となります。基本情報技術者の資格を取得することで、IT全般の基礎知識が備わっていることを証明できます

応用情報技術者試験[国家資格]

名称にもある通り、基本情報技術者試験の応用編となり、経営戦略・情報戦略に関わる知識が必要になる等、より幅広い知識が求められる構成となっています。期待される技術水準としては自ら提案活動が行えることや、システム設計・開発・運用といった一連の業務において自発的に各役割を全うできることが求められる旨が、IPAの公式ページに記載されていました。応用情報技術者の資格を取得することで、IT全般の基礎知識はもちろん、経営側に関する知識も保有していることを証明できます

ITパスポート[国家資格]

この資格においては、すでにIT業界に身を置く人が取得することでのメリットは薄いと言えます。しかしながら異業種からIT業界へ転職する人や、新卒で入社した人、学生等が取得すると、パソコンを難なく使いこなせる程度の知識は持っているということを証明する材料となります。学生に関してはITパスポートを取得することで学費の一部免除を受けられる場合もあります。基本情報技術者よりも内容が易しく、学習時間も少なくて済むので、IT関連の試験がどういったものかを確かめるために気軽に受験するには適当な資格と言えます。

CCNA[ベンダー資格]

主にネットワーク機器を開発・販売しているシスコシステムズという企業が認定する資格で、自社製品に関する知識が問われます。しかしそれだけではなく合格するにはネットワークに関する基礎〜応用的な知識も必要となってくるため、一般的にネットワークを学ぶに当たって有効な資格という見方がされています。CCNAは5段階となっているシスコの資格のうち下から2番目に位置し、他にはエントリーとなるCCENT、プロフェッショナルのCCNP、エキスパートのCCIE、アーキテクトのCCArがあります。CCNAの資格を取得することで、ネットワークやシスコ製品に関する基礎知識が備わっていることを証明できます

Oracleマスター[ベンダー資格]

Oracleとは数あるデータベース製品の一つで、Oracle社によって開発されています。Oracleデータベースを使用しない企業やプロジェクトでの取得メリットは少ないですが、特徴的な仕様を持ち合わせていることもあり、Oracleを採用している現場では資格を取得していると重宝される可能性が高いです。なお2022年時点では一番下位のオラクルマスターブロンズから順にオラクルマスターシルバー、オラクルマスターゴールド、オラクルマスタープラチナという4つのグレードで構成されています。Oracleマスターの資格を取得することで、データベースの基礎知識と、世界的な需要があるOracleデータベースに特化した知識の保有を証明できます

マイクロソフト認定資格[ベンダー資格]

マイクロソフト製品全般に関する資格試験で、製品や役割、レベルごとに様々な種類の試験に分かれています。仕組みが複雑なので受験をする際はマイクロソフトの公式ページ等で詳細を調べて間違いがないように申し込みを進めていく必要がありますが、取得することでMicrosoft365やAzure、Dynamics365、GitHub等のマイクロソフト製品に関する知識の習得状況を証明できます。なおマイクロソフト認定資格に関しては、資格の実用性を保つために試験の体系が頻繁に変更されることには注意が必要です。

その他注目の資格について

今回は汎用的に役立つ可能性の高い資格を中心に紹介してきましたが、その他にも携わる業務によって様々なおすすめの資格があります。例えばAmazonのクラウドサービスに関わる場合はAWS認定資格、Javaでのプログラミングを行うのであればOracle認定Java資格、アドビ製品を利用するのであればアドビ認定プロフェッショナル等のベンダー試験が有効です。また国家資格の中では、マネジメントするに当たってITサービスマネージャ、プロジェクトマネージャー、ネットワークのスペシャリストを目指すのであればネットワークスペシャリストの取得が推奨されます。自分の現職や今後のキャリアアップを考慮した上で取得を目指す資格を設定しましょう。

IT資格の勉強方法

資格によっては実務経験があるとあまり勉強することなく合格できる試験もありますが、多くの場合は学習が必要となることを心得ていきましょう。特にすでに仕事をしている方は仕事の後や合間で根気よく学習を続けていくこととなり、ものによっては数ヶ月、一年の学習期間を要することもあります。

資格の勉強には昔ながらの方法ではありますが、参考書・問題集を利用する方法があります。有名であったり需要のある資格であれば書店に行くとたくさんの関連書籍が並んでいるので、自分に見合ったものを選んで利用しましょう。なお書籍はどうしても出版されるまでのタイムラグがあり、その間に試験内容や範囲が変わってしまうということも考えられます。そのためできるだけ出版時期が最新のものを選ぶことをおすすめします。

オンラインの学習サイトを利用する方法もあります。特にプログラミング系の学習サイトが充実している傾向がありますが、スライドや動画で解説してくれるので、書籍を読み進めて勉強するのが苦手という方も安心です。なお学習サイトは無料で利用できるもの、一部無料でさらに学習を進める場合は有料となるもの等様々なので、自分が一番勉強しやすく、かつ無理のない料金のものを選びましょう。有名な学習サイトとしては、Progate、ドットインストール、paiza等が挙げられます。

学習サイトよりやや費用がかかる可能性がありますが、通信講座を利用するという方法もあります。通信講座は、例えば基本情報技術者試験等のプログラミング以外の内容も充実している傾向にあり、学習に関するサポートも充実している可能性があります。良くサービス名を耳にする有名な通信講座としてはスタディング、フォーサイト、資格の大原、ITEC、TACといったところが挙げられます。

ここまで紹介した書籍やオンライン学習サイト、通信講座という学習方法よりは割高にはなってしまいますが、IT・プログラミングスクールに通うという方法もあります。こちらは独学が苦手でどうしても続かないという方におすすめです。無料カウンセリング等を利用して自分に見合った無理のないスクールを選択しましょう。また厚生労働省の給付金を利用できる場合もあるので、費用の捻出が厳しいという方はぜひ一度調べてみてください。

なお独学をサポートするサービスとして、「スタディプラス」というアプリがありました。こちらは自分の学習状況を記録して可視化できる他、同じ資格の取得を目指している他の人とのコミュニケーションも取れるという、モチベーションの継続に向いているアプリとなっていました。無料で利用できる機能も多いので、独学で資格取得を目指そうと思っている方は利用を検討してみてはいかがでしょうか。

まとめ

繰り返しとはなりますが、今回紹介したもの以外にもIT資格はたくさんあります。また職種や携わっているプロジェクトによって必要となる資格はそれぞれ異なります。いずれの場合においても、資格は闇雲に取得するのではなく関連性のあるものから取得していくことをおすすめします。なおITの進歩と共に試験内容や範囲も著しく変化していくので、受ける試験が決まったら必ずその試験の最新の情報をチェックしてから学習を進めていきましょう。