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はじめに

IT関連の資格は特定の職種に就くために必須のものはほぼありませんが、取得することで就職・転職活動を有利に進めたり、すでに職に就いている場合は昇格や報酬獲得に繋がったりする可能性があります。また資格取得を目指して学習することで実務においてその知識を生かせたり、逆に実務で経験したことで試験勉強が進めやすくなる等の相乗効果も期待できます。

なおIT関連の資格の種類は非常に多いですが、業務と関係性が薄いものの取得を目指してもあまり意味を成しません。例えばLinux系OSでのサーバー運用をしているのであればLPIC、ネットワークエンジニアを目指しているのであればCCNP等、業務に関連している資格を取っていくことで知識やスキルのレベルアップ、キャリアップに繋げていく必要があります

今回はMicrosoftの認定する資格体系であるMCP(Microsoft Certification Program)について詳しく紹介していきます。Microsoft製品を使ったエンジニア業務をしているので資格を取得しようと思っている方、MCPの試験を受けたいもののどれを受けたら良いか迷っている、仕組みが良くわからないという方はぜひご覧ください。

MCPの概要

今回はMicrosoft認定資格であるMCPについて紹介しますが、初めにMCP自体は試験名ではなく、試験体系であることを覚えておいてください。それはMCPの2022年時点の正式名称が「Microsoft Certification Program」であることを知ると理解できることでしょう。なお2012年以前は正式名称が「Microsoft Certified Professional」でした。MCPには製品別、ロール別、レベル別に多くの試験があり、単一または複数の試験に合格することで資格を認められるようになっています。具体的な試験の種類は「MCPの試験分類について」で改めて紹介していきます。

MCPの資格を取得するメリットについて

MicrosoftのMCPに関する公式ページでは資格取得のメリットを円グラフで紹介しており、仕事で実行する能力に対して自信を持てるようになった、仕事の満足度が向上した、給与または賃金が増加した、専門的な知識を持っているとの信頼感を与えられた、組織内で専門知識の保有を認められた、付加価値が提供できる人材として認められたというような内容が記載されていました。

もう少しメリットを具体的に見ていくと、企業によってはMCPに限ったことではありませんが、資格を取得することで昇格の対象になったり、報酬を受け取れる可能性があるということが挙げられます。またMicrosoft社製品を利用している業務において、不足している業務知識を補うことができ、より専門的な知識を身に付けられる可能性があります。さらにMCPの試験は細分化されているため、自分がどの分野における知識やスキルを持っているか、足りていない部分はどこかを整理して把握することもできます。また近年は多くのシステムでクラウドサービスが取り入れられていますが、Microsoftにも「Microsoft Azure」というクラウドサービスがあり、こちらに関する試験も実施されているため、資格を取得できればクラウドエンジニアとして活躍できることを客観的に証明できるようになると言えます。

MCPの試験分類について

MCPの試験体系は非常に複雑であるうえに短い期間で試験体系が変わり続けているため、Microsoft以外のサイトでMCPの情報を得ようと検索すると、以前の体系に関する古い情報と最新の情報が記載されたページが混ざって検索結果として表れ、混同してしまう可能性があります。そのためこの記事では2022年5月時点のMicrosoftの公式ページにある情報を基に試験分類について紹介していくことにします。もしこの記事以外でさらにMCPの情報を検索したいという場合は、古くても更新履歴が1年以内の記事を参考にすることをおすすめします。なおMCPに関して以前の試験体系で把握している方もいると思われるため、混乱しないように体系変更前の内容についても触れながら説明していきます。

2019年以前は、テクノロジー アソシエイト (MTA)、ソリューション アソシエイト (MCSA)、ソリューション デベロッパー (MCSD)、ソリューション エキスパート (MCSE)という4つのレベル分けと5つのソリューションカテゴリで分類されていましたがこれらの分類が廃止され、ロール(役割)をベースとしながら製品や、従来とは異なるレベルで分類される体系となりました。現在あるロールの定義は、開発者、管理者、ソリューションアーキテクト 、データエンジニア、データサイエンティスト、AIエンジニア、DevOpsエンジニア、セキュリティエンジニア、機能コンサルタントの9つです。

「開発者」はクラウドソリューションの設計・構築・テスト・保守、また他のロールと連携しての実装を行うロールです。「管理者」はコンピュート、ストレージ、ネットワーク、セキュリティといったMicrosoftソリューションの実行・監視・保守を行うロールです。「ソリューションアーキテクト」はコンピュート、ストレージ、ネットワーク、セキュリティに関する専門知識を持って設計・実装を行うロールです。「データエンジニア」はあらゆるデータサービスを使用してデータの管理・監視・セキュリティ・プライバシーの設計・実装を行うロールです。「データサイエンティスト」は、機械学習技術を利用してビジネス問題を解決するモデルのトレーニング・評価・デプロイを行うロールです。

「AIエンジニア」はAzure Cognitive Services、機械学習、ナレッジマイニングを使ってMicrosoft AIソリューションの設計・実装を行うロールです。「DevOpsエンジニア」はエンドユーザーのニーズやビジネスの目的を満たす製品・サービスを継続的に供給できるよう人とプロセス、テクノロジーを結合させるためのロールです。「セキュリティエンジニア」は、様々な脅威からデータ、アプリケーション、ネットワークを保護すべくアクセス管理等をしながらセキュリティの制御を行うロールです。「機能コンサルタント」はMicrosoft Dynamics 365、Microsoft Power Platformを活用し、顧客のニーズを予測・計画するロールです。

以上9つのロールにはそれぞれFundamentals、Associate、Expertといった3つのレベルが設定されており、さらに各製品に対応する複数の資格試験が設定されています。例えば「開発者」のロールの中にはMicrosoft Azureに関する「Microsoft Certified: Azure Developer Associate」、Microsoft Dynamics 365に関する「Microsoft 認定: Dynamics 365: Finance and Operations アプリ開発者アソシエイト」、Power Platform に関する「Microsoft 認定: Power Platform Developer Associate」等の資格があります。

その他認定資格の分類

Microsoftの公式ページではさらに別軸で各種資格をFundamentals 認定資格、ロールベースの認定資格、Additional certifications (その他の認定)の3つに分類しています。Fundamentals 認定資格は、これから技術を学ぼうとしているエンジニア向けの基礎知識が問われる資格として「Microsoft Certified: Azure Fundamentals」「Microsoft 365 Certified: Fundamentals」等が分類されています。ロールベースの認定資格は業務に準じたより専門的なスキルが問われる資格として「Microsoft Certified: Azure Developer Associate」「Microsoft 365 Certified: Security Administrator Associate」等が分類されています。そしてAdditional certifications (その他の認定)はさらに専門性を増した資格として「Microsoft Certified: Azure for SAP Workloads Specialty」「Microsoft Certified Educator」、また「Microsoft Office Specialist: Microsoft Word Expert (Word and Word 2019)」等が分類されています。

以上がMPCの概要となりますが、試験体系の変更や一部認定試験が廃止される理由として、Microsoftのページにはテクノロジの進化によるエンジニアの業務内容の変化スピードが速くなっていることが記載されています。また継続的に試験の見直しが行われ、最新の状態を反映するということを繰り返し行っていると記載されているため、今回紹介した内容ですら数年のうちに大幅に変わっていることが考えられます。この記事を執筆している2022年5月の時点でさえ、2022年6月30日に廃止される予定の試験が12個記載されていました。もし長期間かけてMCPの試験に臨むことを計画しているのであれば、必ず受験勉強を始める直前にMicrosoftの公式ページも隈なく確認してください。

MCPの受験方法について

MCPに受験資格はなく、年齢や国籍にも制限はありません。また決まった試験日はなく、自分の都合の良い日を予約してピアソンVUE公認テストセンターまたは自宅やオフィス等でオンライン監督を利用して受験します。なおピアソンVUEで受験する場合は「MICROSOFT LEARN」のページからマイクロソフト認定プロファイルというものを作成する必要があります。このプロファイルの登録は無料で数分で完了できますが、あらかじめMicrosoftアカウントを作成しておく必要があることにご注意ください。

MCPの試験は1,000点満点となっており、そのうち700点以上取れると合格となります。出題数は試験によって異なりおよそ40〜60問となります。また試験時間はレベルごとにFundamentalsで45分、Associate・Expertで100分、実技となるラボ試験が含まれるAssociate・Expertに関しては120分となっています。

試験料金は10,000円以上〜20,000円台前半とそれぞれ異なるため、詳しい料金については受験したい試験の申込ページにてご確認ください。なおMCPでは試験料金が割引となる受験バウチャーの利用が可能です。MCPのバウチャーはMicrosoftの各ラーニングパートナーのページから購入が可能で、不合格となった場合に1度だけ再受験が可能なExam Replayが付いています。バウチャーはメリットが大きいですが、有効期限があること、バウチャーを購入した場合も試験の申し込みは別途必要であること、MCPには一部バウチャーが適用できない試験があることにご注意ください。

MCP資格の維持について

MCP各資格の有効期限は1年となっています。これはMicrosoftが常に最新で有用なスキルや知識を保つことを重要視しているからとも言えます。しかしMCPの場合、更新方法は同じ試験の再受験ではなく、Microsoft Learnでの無料のオンライン試験へ合格するという内容になっています。また試験は始めに受けたものより短く、あらかじめMicrosoft Learnで更新に向けた学習が無料で可能となっています。なお更新は有効期限の半年前からできるようになっていて、早めに更新したとしても有効期限はその時点の有効期限+1年で更新されるので、忘れないうちに更新することをおすすめします。Fundamentals認定資格に関しては有効期限がないため更新を行う必要はありません。

まとめ

Microsoft社製品は世界的なシェアがあり、日本でも個人用のパソコンだけではなく企業のパソコンやサーバーでもMicrosoft社製品であるWindowsOSが利用される傾向にあります。またクラウド化の流れと共に「Microsoft Azure」というクラウドサービスも需要を伸ばしてきているため、今後も色々な場面でMicrosoft社製品の知識が必要となることでしょう。今回見てきたようにMCPには非常に多くの試験があるため、まずは皆さんの現在の業務やキャリアアップに必要となる資格がどれであるかを整理したうえで適切な学習を進め、有効活用できる資格の取得を目指してみてはいかがでしょうか。