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人材不足が深刻化する日本のIT業界では、エンジニアが求人企業を選べる売り手市場が形成されつつあります。高待遇の求人にチャレンジするため、ITスキルを磨く必要はあっても、あえて英語必須の求人に応募する必要はないのかもしれません。しかし、市場のグローバル化に伴い、あらゆる業界が英語力を持つ人材を求めており、IT業界であってもそれは例外ではありません。まだまだ少ないながらも、求人要件にビジネスレベルの英語力を含む企業も増えているのです。

日本で働く限り英語は不要と考える方もいるかもしれませんが、エンジニアにとっても英語力は大きな武器になります。エンジニアという貴重なスキルを持つ人材が、英語という貴重なスキルを身に付ければ、希少なバイリンガルエンジニアになれるからです。そこで本記事では、英語を活かせるIT求人例を紹介するとともに、英語力を磨くメリットや学習方法なども紹介していきます。

ITエンジニアに英語力が求められる理由

ビジネスを継続的に成長させていくにはそれに見合った市場規模が必要ですが、人口が縮小する日本国内だけを対象にしていたのでは限界があります。中小企業も含んだグローバル化の加速はこのためであり、Webサイトの多言語化はもちろん、英語対応のシステム開発など、グローバル対応のプロジェクトが増えています。

一方で、IT企業がもっともグローバル対応しやすい業種だという点も見逃せません。世界中にインターネットを含むインフラが整備され、世界標準の技術を活用するIT企業は、優秀なバイリンガルエンジニアさえ確保できればグローバル対応は比較的簡単です。日本に進出する外資系IT企業はもちろん、オフショア開発する国内企業からも、英語力のあるエンジニアへのニーズは高まっているのです。

英語力のあるITエンジニアが得られるメリット

一方、ビジネスレベルの英語力を持つエンジニアはそう多くはありません。つまり、バイリンガルエンジニアであれば、同等のITスキルを持つエンジニアと比較してもさまざまなメリットが得られます。具体的な一例をご紹介します。

最新の技術情報の入手が容易

日本で開発されたRubyのような例外もありますが、現在主流として活用されているプログラミング言語の開発元はほとんどがアメリカであり、当然のことながら仕様書・技術書は英語で書かれています。英語のスキルがあれば、こうした技術書を読解して最新の情報をいち早く入手できます。海外のフォーラムを問題なく読解できる英語力があれば、トラブルシューティングにも役立つでしょう。世界の動向をリアルタイムに補足し、最新の知識・スキルを身に付けてエンジニアとしての価値を高めるのに英語が役立つのです。

外国人スタッフとのコミュニケーション

エンジニアの絶対数が不足していることを要因に、外資系IT企業やオフショア開発する国内企業はもちろん、一般的なIT企業の間でも外国人エンジニアを採用する動きが加速しています。英語力のあるバイリンガルエンジニアであれば、増加傾向にある外国人スタッフと円滑にコミュニケーションできるため、社内でも重宝される存在になれるでしょう。外国人との混成チームでプロジェクトにあたれるなど、社内での仕事の幅を広げるのにも英語は役立ちます。

求人の幅が広がる・年収アップが見込める

まだまだ数は少ないとはいえ、英語力が必須のITエンジニア求人は増えており、公用語を英語に切替える企業も少なくありません。バイリンガルエンジニアであれば、外資系を中心にした英語力必須の求人でも躊躇なく応募できるため、求人を選択する幅が広がるメリットがあります。特に外資系IT企業は、国内企業よりも年収が高額であるケースが多く、キャリアアップ転職で大幅な年収アップも期待できるでしょう。実際、ある転職サービスサイトでは、TOEIC900点以上の人材の年収が、TOEIC未受験者に比べて100万円以上高いという調査結果を発表しており、これはIT企業であっても例外ではありません。

海外を視野に入れた働き方ができる

スキルによっては1,000万円超えが可能など、エンジニアは日本でも高年収が狙える職種ではありますが、アメリカでの待遇はさらに破格です。たとえば、Go言語エンジニアの平均年収は日本で600万円程度といわれていますが、アメリカなら平均年収は11万ドル(約1,150万円)です。購買力平価や世帯年収の平均が両国で異なるため、単純な比較はできませんが、アメリカで働けば同じスキルでも倍近くの年収が狙えることになります。英語力のあるバイリンガルエンジニアであれば、アメリカを含めた海外を視野に入れた働き方が可能になるのです。大きくキャリアアップを果たしたいエンジニアの方にとっても、英語は大きな武器になるのです。

英語ITエンジニアの求人例

それでは、具体的にどのような求人があるのか?バイリンガルエンジニアを目指す方が転職のイメージを描きやすいように、公開されている正社員求人情報をいくつか紹介しましょう。ある転職エージェントでの英語ITエンジニア求人数は、検索時で約290件ありました。

クラウドサービス開発エンジニア求人
・必須要件:ソフトウェアエンジニアリング経験3年以上、SaaSの基礎知識
・歓迎要件:英語力(日常会話、ビジネス文書読解力)Scalaの開発経験
・待遇:正社員、年収600〜1,200万円

データベースエンジニア、シニアマネージャー候補求人
・必須要件:SQLを含むプログラミング言語経験3年以上、リーダー経験
・歓迎要件:英語ドキュメントの読解力、Scalaの利用経験
・待遇:正社員、年収450〜700万円

グループウェアのサーバサイドエンジニア求人
・必須要件:PHP、リレーショナルDBの開発経験
・歓迎要件:英語の基本的なリーディング/ライティング、スクラム開発経験
・待遇:正社員、年収400〜800万円

海外ベンダーと働くシステムエンジニア求人
・必須要件:英語でメール・打ち合わせができること、対外折衝能力
・歓迎要件:海外ベンダーとの製品開発経験
・待遇:正社員、年収400〜700万円

ITエンジニア求人の総数が約8,300件であることを考えれば、英語ITエンジニアの求人数はその4%にも満たない結果であり、まだまだ英語力を活かせる求人がそれほど多くないのは事実です。必須要件というよりは歓迎要件になっていることが多いのも特徴ですが、なかにはエンジニアとしてのスキルよりも、英語のスキルを重視したブリッジSEといえる仕事があるのも興味深いポイントです。そういった意味では、プログラミング言語のスキルと同じレベルで英語スキルを捉える考え方が浸透しはじめているのかもしれません。

バイリンガルITエンジニアの年収は?

それでは、英語のスキルを持つバイリンガルITエンジニアの年収はどのくらいなのでしょうか?もちろん、エンジニアとしてのスキルや英語力のレベル、求人企業の事情にもよるため一概にはいえませんが、TOEICの点数に応じて年収に差が生じるのは事実です。たとえば、正社員エンジニアの平均年収は約420万円ですが、TOEIC400〜600点の社員であれば同じスキルであっても500万円が平均年収です。年収400万円のエンジニアが外資系IT企業にブリッジSEとして転職し、年収が650万円になったという例もあります。特に給与の高い外資系企業で英語力が重視されるため、バイリンガルエンジニアであれば高年収が狙えるのは間違いありません。

どの程度の英語力が必要なのか?

英語力を判断する基準にはスピーキング・ヒアリング・リーディング・ライティングの4つがあり、それぞれがどの程度のレベルなのかをチェックするのが一般的です。ただし、すべてのエンジニアに完璧な英語力が求められているわけではありません。求人企業のビジネスモデルやサービス、担当する役割に応じて、エンジニアに求められる英語力が異なるからです。英語が得意でない方であっても、現在の役割に応じた分野のスキルを磨くことで、仕事の幅は広がっていくでしょう。

プログラマー・オペレーター

コーディング・テスト・デバッグなどを担当するプログラマー・オペレーターであれば、メール・チャット・コメントアウトができる程度のリーディング・ライティング能力が求められます。クライアントとの折衝能力は求められないため、高度な英語力は必要ありませんが、専門用語を使いながら意味の通じる文章をやり取りする必要はあります。一方のスピーキング・ヒアリングは日常会話程度でもそれほど問題にならないかもしれません。

SE・PM

上流工程を担当するSE・PMの場合は、会議・ドキュメント作成などの業務が追加されるため、より高度な英語力が求められます。クライアントとの折衝も必要になるため、スピーキング・ヒアリング能力を磨いていくのが重要です。問題なく英語でコミュニケーションできるようになれば、リーディング・ライティング能力も追い付いてくるでしょう。

ブリッジSE

オフショア開発や外資系IT企業でよく見られるブリッジSEの場合は、SE・PGよりもさらに高度な英語力と、両国の文化や商習慣に精通した知見が求められます。ただし、求人企業の考え方によりますが、高度な英語力が求められる反面、高度なプログラミングスキルがなくても採用されるケースが多いのもブリッジSEの特徴です。英語力をもっとも活かせる役割がブリッジSEなのだといえるかもしれません。

エンジニアにおすすめの英語学習方法

英語の習得はそれほど簡単ではなく、ネイティブレベルになるには1万時間の学習が必要ともいわれています。しかし、完璧な英語は必ずしも必要ではありません。エンジニアが英語を学習する際のポイントは「完璧さを求めない」「英語に慣れる」「TOEICを重視する」「専門用語を英語で理解する」の4つです。簡単に解説していきましょう。

TOEIC対応のオンライン英会話

TOEICに関しては批判的な意見もありますが、学習結果が点数に反映されやすく、転職・求人の際に重要な指標となるのは事実です。また、ネイティブの発音でなくても英会話に触れられるコストパフォーマンスの高い学習法がオンライン英会話です。つまり、TOEIC対応のオンライン英会話サービスを利用すれば、発音の完璧さには欠けるとしても、英会話に慣れ親しめるうえにTOEICも学習できます。1レッスンが20分程度の短時間にまとめられているため、空いている時間を利用できるなど、一石三鳥・四鳥にもなる学習方法です。

技術書の原本を活用する

TOEIC学習・オンライン英会話だけでは身に付けられない英語の専門用語は、技術書の原本を活用するのがおすすめです。いきなり原本に取り組むのではなく、翻訳されている技術書を理解したうえで、比較する形で原本を読み進んでいくのがベストです。リーディング力を身に付けるのにも最適です。

開発環境を英語化する

手軽に英語学習に取り組む方法としては、開発環境を英語化する、使っているスマートフォンを英語化する、SNSで外国人をフォローするなどもおすすめです。普段から英語メニューや言い回しに慣れていれば、外国人スタッフとの意思の疎通もしやすくなり、気が付かなかった英単語の関連性を発見できることもあるでしょう。

まとめ

英語を完璧に話そう・書こうと考える日本人は意外に多く、いざというときに自身の英語力に引け目を感じて遠慮がちになってしまう傾向があります。しかし、世界の公用語である英語であってもネイティブスピーカーはそれほど多くありません。とにかく積極的にコミュニケートするのが上達への早道であり、貴重なバイリンガルエンジニアになるための近道なのです。