支援対象地域:札幌、仙台、関東、愛知、関西、広島、福岡

  • TOP
  •   
  • コラム
  •   
  • プロマネになった場合、これからなる場

はじめに

IT企業のプロジェクトは、プログラマー、インフラ、ネットワークといった部門とは別に発足させ、各部門からエンジニアを適切にアサインさせます。そして、それぞれが自身の役割を全うすることで初めて成功を収めることができます。個人で完結できる業務であればプロジェクトを組むことなく管理業務も作業も自分だけで行いますが、複数人で遂行するプロジェクトでは、そのプロジェクトをまとめる役割、コーディング等を行う役割と業務を分担して効率的に進めていきます。また、大規模なプロジェクトであればある程、マネジメントの重要性は比重が増していき、苦労も多くなっていきますが、その分やりがいも増し、それはもちろん給料にも反映されます。

今回は、プロジェクトの管理を行うプロジェクトマネージャー(以降はプロマネと表記します)の概要を紹介したうえで、役立つ資格を紹介していきます。組織の都合上、急遽プロマネになったものの知識やスキルが追いついていないため資格で補いたいと考えている方、マネジメント系の資格を取得して、今後のキャリアパスに備えておきたいという方はぜひご覧ください。

プロマネの仕事内容と必要なスキル・知識

プロマネが担当するのは上流工程とプロジェクト管理であり、下流工程に該当する環境構築やコーディング、テスト等の業務を自ら行うことはまずありません。なお、上流工程、下流工程がそれぞれ何を指しているかを理解するには、開発モデルの一つである「ウォーターフォール」の説明が必要となります。また、プロマネとしては理解しておかなければならない部分でもあるため、今回は簡単に解説しておきます。

開発モデル「ウォーターフォール」について

ITシステムの開発プロジェクトでは、いくつかある開発モデルの中から適宜ふさわしいモデルを採用して開発を進めていく傾向があります。この開発モデルとはビジネスモデルのようなもので、実績のある型にはめてプロジェクトを進めていくことで、やるべきことに迷うことなく、かつ効率的にプロジェクトを遂行できるようになります。そのうちの一つが「ウォーターフォール」というもので、古くから採用されているオーソドックスなモデルとなります。

ウォーターフォールはプロジェクトにおける各工程を大きく上流工程と下流工程の二つに分けます。上流工程には、要件定義、基本設計・詳細設計が含まれ、下流工程には、実装、テストが含まれます。要件定義は、クライアントがシステムに取り入れたい機能等を打ち合わせを重ねて固めていき、最終的にドキュメントに落とし込む工程です。基本設計・詳細設計は具体的に利用する機器やソフトウェア、ネットワーク構成、コーディング内容を定めていく工程で、こちらも設計書としてドキュメントに落とし込みます。なお、基本設計はクライアントでも理解できるような内容とすることが多く、詳細設計は実際に現場で作業するエンジニア向けの設計書とします。

下流工程の実装は、サーバーエンジニアであればサーバー環境の構築、ネットワークエンジニアであればネットワーク環境の構築、プログラマーであればコーディングといった部分に該当し、テストは実装後のシステム動作テストとなります。テストにもいくつか段階があり、一般的には単体テスト、結合テスト、総合テスト、受け入れテストといった順で行われます。

以上で紹介したように、プロマネは基本的にプロジェクトの開始段階で実施される打ち合わせや書類作成といった業務を担当し、その後の下流工程の段階では管理に専念することとなります。なお、参加メンバーの多い大規模なプロジェクトであると、下流工程における管理がとても一人ではできないという状況に陥る可能性があります。そのため、部門ごとにプロマネより近いポジションで現場をまとめるプロジェクトリーダー(PL)が別途配置されることが多いです。

プロマネの管理業務とは

プロマネが管理するべき範囲は非常に幅が広く、様々なスキル・知識が必要となります。管理する項目としては、納期・進捗、品質、機器、チームやメンバーといった人、プロジェクト予算、また、ベンダーが参加している場合はベンダーの管理も必要となります。これらの項目を、プロジェクトリーダーやシステムエンジニアを介しつつ管理しなければなりません。

ステークホルダー(クライアント、経営層、プロジェクトメンバー)との関係性維持

プロマネは、利害関係にあるステークホルダーとの関係性を良好に保つ役割も担うこととなります。そのために要件定義はもちろん、実装中であっても定期的なミーティングの場を設けて認識合わせを行ったり、進捗状況や問題の報告を都度行います。また、プロジェクトの進捗状況については経営層にも報告する必要があります。そのためプロジェクトが開始してからも、プロマネは現場を監視するというよりはミーティング等の会合に出席していることの方が多いと言えます。なお、不在時にトラブルだらけであってはプロジェクトの成功からかけ離れてしまうので、普段からプロジェクトメンバーとも積極的にコミュニケーションをとって信頼関係を築いておく必要があります。

問題分析と解決

全てが予定通りでスムーズに進むプロジェクトはほとんどありません。実績あるベテランのエンジニアばかり集まったプロジェクトであっても多少の問題は発生し、解決していかなければなりません。発生した問題の解決をしていくのもプロマネの仕事で、問題の発生要因を分析したうえで対処方法を決定して現場に指示し、スケジュールや予算を組み直したり、クライアントへの報告を行ったりします。もちろん上流工程等の段階で、問題発生を未然に防ぐための対策を行っておくことも必要です。

テクニカルな知識の重要性

プロマネはまず実装を行うことはないと述べましたが、それでもテクニカルな知識は持っておいた方が良いでしょう。プロマネはクライアントと直に接する機会が多く、要件定義等の打ち合わせの段階から、クライアントの窓口のようなポジションとなります。そのため要望や仕様変更等の相談を持ちかけられることも多く、直接提案を行ったり、エンジニアに正確に伝達したりする必要があります。逆に現場の進捗や発生している問題をクライアントへ正確で簡潔に伝えるためにもテクニカルな知識が欠かせません。知識がないと双方に言われたことをそのまま伝達するだけなので、クライアントの要望に応えられない、実際の要望とはかけ離れた結果となる、現場に混乱が生じるといった結果に繋がりかねません。現場での経験を十分に積んでいることは、プロマネになるに当たって大きな強みとなります。

プロマネへ向けたキャリアパス

よくあるキャリアパスとしては、プログラマーやサーバー、ネットワークエンジニアといった現場で作業する立場からそのチームのリーダーやシステムエンジニア(SE)等を経て、プロマネを目指す方法です。地道に経験を積み上げていくこととなるため、大抵の場合長い時間がかかりますが、同時にテクニカルな知識やスキルも習得することができて、プロマネになった後もそれらが大いに役立ちます。昇格という縦の動き以外に、プログラマーからその他エンジニアの経験も積んだ後にプロマネとなった場合は更に豊富な知識を得られます。また、このキャリアパスをたどる場合はすでに周りとの関係性が築けていることも多いので、マネジメントもしやすくなることでしょう。

もう一つは、初めから管理系の職種に就いてプロマネを目指すキャリアパスがあります。有名なものではPMO(Project Management Office)があり、PMの補佐や、プロジェクトにおける事務的な処理、ルール策定等を担当します。そういった日々の業務を行っていく中でプロマネの仕事を徐々に学んで、習得していきます。そのためマネジメントにおいては専門性を持てるものの、テクニカルな知識やスキルがどうしても欠ける傾向にあります。PMO等からプロマネを目指すのであれば、業務以外で技術面を独学で補うか、常にエンジニアから助言してもらえるような良い関係を築くことが重要と言えます。他にも、一つのエンジニア職を極めてスペシャリストになった人がプロマネになることもあり、この場合、テクニカルな面では突出したものを持っているため、プラスでマネジメントスキルを養っていく必要が出てきます。

プロマネに役立つ資格を紹介

ある程度プロマネの概要は把握していただけたと思われるため、今回のメインとなる資格について4つに絞って紹介していきます。プロマネになるに当たって一般的に資格が必須ということはないですが、企業によっては昇進の条件に含めているところがあったり、転職してキャリア採用を目指す際に必要となったりする可能性もあるため、各試験の特徴をとらえた上で受験を検討してみてください。

プロジェクトマネージャー試験(PM)

IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が運営する情報技術者試験の中の一つで、一般的によく知られている基本情報技術者試験(FE)や応用情報技術者試験(AP)の上位となる「高度な知識・技能」が問われるレベル4に分類されています。試験の実施は2022年時点では秋期のみの年1回で、受験料は7,500円(税込)、指定された試験会場に出向いて受験します。試験時間は午前1(50分)、2(40分)、午後1(90分)、2(120分)に分かれていて、午前と午後の間に1時間の休憩がありますが、試験全体で5時間といった長丁場になります。なお、午前の問題は四肢択一で全55問、午後は記述式で全5問となっています。

平均合格率は15%程とされていて、学習時間は1日2時間程度勉強したとしても3〜5ヶ月を要すると想定されています。ただし、これはすでにエンジニアとして業務していることを想定してのものであるため、一から始める場合はこの数倍の期間がかかる可能性があります。難易度の高いテストではありますが、国家試験であるためプロジェクトマネージャーの資格を持っていると評価される場面は多いと言えます。

公式ページにおいて、この試験の対象像は、高度IT人材であり、かつプロジェクトマネジメント業務を責任を持って先導できる人といった主旨の説明がありました。高度IT人材とは、ITサービスと全く別のサービスを掛け合わせて新たなサービスを生み出せる人材のことを指しています。そのため、プロジェクトリーダーや下位のメンバーを指導しながらプロジェクトを成功に導くとともに、新たなサービスやソリューションを生み出すことが求められています。

試験はマネジメント関連の内容だけではなく、情報理論、通信理論、コンピュータ構成要素といったコンピュータに関する基礎知識や、システム構成要素やアルゴリズム、プログラミング、ソフト・ハードウェア、ネットワーク、データベース等、エンジニアの基礎知識が幅広く問われます。プロマネになった後にテクニカルな知識が不足していると感じた場合は、プロジェクトマネージャー試験の試験勉強をきっかけに、それらの知識を補うチャンスが得られます。

もちろんマネジメント系、ストラテジ系に関する内容も出題されますが、マネジメント系の内容は大きくプロジェクトマネジメント、サービスマネジメント、システム監査といった3項目に分けられます。ストラテジ系は、システム戦略、システム企画、経営戦略マネジメント、技術戦略マネジメント、ビジネスインダストリ、企業活動、法務といった7つの項目に関して、満遍なく細かい内容が問われます。

なお、午後の試験は記述式になるため、プロジェクトマネジメントに関する知識だけではなく、論理の一貫性があり、具体的であり、表現力がある文章が書けるような文章作成能力が求められることとなります。普段文章を書くことにあまり慣れていない方は、長文が書けるようになる必要はありませんが、的を得たまとまった文章が書けるように訓練する必要が出てきます。

PMP(Project Management Professional)

「PMBOK(Project Management Body of Knowledge)」というプロジェクトマネジメントに関する国際標準の知識体系に基づいた試験で、アメリカの非営利団体・PMIによって認定されています。なおPMBOKは「ピンボック」と発音されます。

今回PMBOKについての詳細は省きますが、PMBOKではQCD(高品質、低コスト、早い納期)を実現するために「5つのプロセス」と「9つの知識体系」から構成される各項目を確実にこなしていくことが求められています。PMPでは、そのために必要な知識が問われます。

受験資格が定められており、高卒以上(もしくはそれに相当する資格を持っているもの)+60ヶ月間のプロジェクトマネジメント経験かつ、プロジェクトの指揮・監督という立場での7500時間以上の実務経験を持っていること、もしくは大卒以上(もしくはそれに相当する資格を持っているもの)+36ヶ月間のプロジェクトマネジメント経験かつ、プロジェクトの指揮・監督という立場での4500時間以上の実務経験を持っていることのいずれかです。PMPは、実務経験がないと受験ができないということに注意が必要です。学習時間はおよそ100時間程度が目安となっています。なお、受験料はPMI会員か非会員かで異なります。会員の場合は405ドル(再受験:275ドル)、非会員の場合は555ドル(再受験:375ドル)ですが、変動する場合もあるので、受験を検討している人は公式ページで確認することをおすすめします。

PMOスペシャリスト認定資格

これまで紹介してきた資格はプロマネに特化した内容が中心でしたが、PMOスペシャリスト認定資格は、プロマネの支援や補佐を行うPMO(Project Management Office)向けの知識も含んだ内容となっています。一般社団法人日本PMO協会が認定する試験で、eラーニング講座を使って学習し、オンラインで受験できるので、インターネット上だけで勉強から受験までが完了する試験となっています。なお、eラーニング講座はスマートフォンでも利用できます。

試験はシングルスター、ダブルスター、トリプルスターの3種類あり、シングルスターではPMOの基礎や概念が問われ、ダブルスターではPMOマネジャークラスの知識と技術が問われ、トリプルスターはそれまでの知識+経験が証明される内容で構成されています。ただしトリプルスターは、2022年9月の時点で策定中ということが公式ページにも記載されていました。

試験は、一般社団法人日本PMO協会の発行する教材の中から出題され、受験料はシングルスターが会員で10,780円(税込)、一般で13,200円(税込)、ダブルスターが会員で13,200円(税込)、一般で18,700円(税込)となっています。

P2M資格試験

日本プロジェクトマネジメント協会が認定する国内の資格で、PMC(プロジェクトマネジメントコーディネータ)、PMS(プロジェクトマネジメントスペシャリスト)、PMR(プログラムマネジャーレジスタード)、PMA(プログラムマネジメントアーキテクト)という4つの試験で構成されています。PMCが4つの中で最も易しい内容の試験であり、順に難易度が上がっていきます。

PMCとPMSは選択式の問題に回答するのみですが、PMRになると論文と面談のある一次試験、論文、ワークショップ、面談のある二次試験の両方へ合格する必要があり、難易度が上がります。なお、2022年9月の時点でPMAに関しては公式ページにも詳細が記載されておらず、いつから開始されるかもわからないため、現時点ではPMRが最上位の資格となります。なおPMSは「PMSプログラム試験」「PMS資格試験」の2つのいずれかを選択して受験可能で、一方に合格すれば資格が認められます。

いずれの試験も基本的には「改訂3版プログラム&プロジェクトマネジメント標準ガイドブック (略称:改訂3版P2M)に準拠した問題が出題されるため、日本プロジェクトマネジメント協会の発行している参考書等を使って勉強することになります。学習時間の目安は、PMCが25時間、PMSプログラが15時間、PMSが45時間程度となり、PMRは論文や面談、ワークショップ等があるため一概には言えない状況です。なお、受験料は試験ごとに異なるので、詳細は公式ページにてご確認ください。

まとめ

プロマネは数々の経験があってこそ成り立つ職種です。基本的にはキャリアを着々と積み上げたうえでなることが多いですが、中には人材不足等の組織の都合で、思わぬ形で任命されるということもあります。自分の所属する部門以外のメンバーを管理していかなければならないうえに、部門の長ではないので、どうしても自分より役職の高い人を管理することも出てきて大変な面も多いことでしょう。しかしプロマネのようなマネジメント業務の経験は、極端に言うと、異業種へ転職した場合であっても汎用的に役立つ能力であり、AIに代替えしづらい能力でもあるため、非常に価値のあるものと言えます。

今回紹介した資格は、プロマネ経験の中で培ってきたマネジメント能力を客観的に示す手段の一つであり、職務経験と共に提示することで裏付けができ、転職時の内定で有利に働く可能性が高いです。すでにプロマネを経験した方も、これからプロマネを目指す方も、ぜひこれらの資格取得を検討してみてはいかがでしょうか。