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会社員ITエンジニアとしてある程度の経験を積んできた方なら、転職を検討しているかもしれません。身に付けたスキルをより活かしていくため、正当な評価を得たいため、やりがいのある仕事をしたいためなど、理由は人それぞれですが、転職で意外に重要なのは「どこで働くか」ではないでしょうか?仕事の基盤となる生活環境は、なによりも重要な要素になるからです。しかし、エリア・都市ごとにIT業界の転職事情は異なるので、どこで働くかを最優先してしまうと、そもそもの転職の動機を満たせないかもしれません。

それでは名古屋のITエンジニア転職事情とは?名古屋のITエンジニア、名古屋で働きたいITエンジニアの方に向け、名古屋のIT業界はどんな市況感なのか?どんな職種が求められるか?名古屋のITエンジニア転職市場の現状を紹介していきます。

名古屋とはどんな街?

計画が延期されそうな気配はあるものの、リニア中央新幹線の終着駅になる予定の名古屋市は、日本列島のほぼ中心に位置する日本の主要都市のひとつです。新幹線で東京まで約1時間半、大阪まで約50分という好立地に位置する名古屋は、伊勢志摩方面、信州・長野方面にも出やすい交通の便の良さが特徴。755万人という全国4位の人口を誇る、愛知県を代表する大都市が名古屋なのだといえるでしょう。

日本の貿易黒字の6割を担うといわれる名古屋港、24時間運用可能な中部国際空港セントレアもあり、名古屋は空と海の要衝としての機能も果たしています。ただし、国内外に広く窓口が開かれているように思える名古屋は、地方都市にありがちな地元に対する愛着が強い一面があり、やや閉鎖的な市場を持つともいわれています。ビジネス上のメリットを最優先するといった、東京的な考え方はあまりないように感じられるのも名古屋の特徴です。

名古屋で盛んな産業は?

ミシン・プリンターのブラザー、食器のノリタケ、金型プレス加工のナガラなどはもちろん、近郊の豊田市には世界No.1のトヨタ自動車もあり、名古屋は「モノづくりの街」と呼ばれるほど製造業が盛んです。これは立地のよさを活かしたいメーカーが多数進出してきた長い歴史を持つからであり、名古屋市だけでも三菱電機・三菱重工、日清製粉、パロマ、三井化学などの工場があるほか、名古屋市周辺にはトヨタ自動車の関連企業が多数点在。静岡方面に向かえば製薬・電気メーカーなどの拠点も多数存在します。ベンチャーキャピタルによる中小・ベンチャー企業への投資など、名古屋では製造業だけにとどまらない経済活動も活発です。

名古屋の物価・平均年収

名古屋めしといわれる独特の食文化でも知られる名古屋は、全国平均を100ptとした場合の食費が「98.6pt」となっているほか、住居費も「92.3pt」と平均を下回る水準になっています。これは、それぞれ「103.0pt」「128.0pt」となる東京はもちろん、それぞれ「100.3pt」「97.5pt」の大阪よりも低い水準です。生活するエリアによっても異なりますが、単純計算でも名古屋なら東京よりも家賃は18%安く、食費も5%程度抑えられる計算になります。一般的な認識でも名古屋の物価水準は低めだといっていいでしょう。

一方、厚生労働省が発表した都道府県ごとの年収状況調査では、名古屋市を含む愛知県が約544万円となり、東京、神奈川に次ぐ全国3位になっているのが興味深い点です。約620万円の東京は別にしても、大阪の約541万円をわずかに上回っており、物価水準から考えた名古屋の可処分所得は全国トップクラスであることがわかります。これはトヨタ自動車をはじめとした世界的メーカーが多数点在するという、名古屋の土地柄が反映されているのかもしれません。

名古屋のIT業界の市況感

日本の要衝としての存在感を持つ名古屋は、比較的低めの物価水準を保ち、さらに平均年収も日本トップクラスだということを紹介してきました。では、名古屋のIT業界も同様の状況だといえるのでしょうか?システム開発案件の質・量とともに、ITエンジニア人材の量を含めた一般的な市況感をご紹介します。

どんな開発案件が多いのか?

まずはシステム開発案件の量に関してですが、一極集中型といわれる東京に比べれば、大幅に少ないといわざるを得ません。一般的には、名古屋のシステム開発案件は東京の1/5〜1/10程度だといわれているのが現実です。ただし、東京に次いで案件の多い大阪とは、それほど大きく離されていないのも事実であり、地方都市としては充分な案件数があるのも名古屋の特徴です。

ありとあらゆる開発案件のある東京と異なり、業務システム開発案件が多いのも、モノづくりの街である名古屋の特徴です。モバイルアプリ開発案件に関しても、メディア・ゲーム系というよりは工場内で利用されるIoT系が多く、Web系開発の場合でも、モダンな言語を使用するというよりはオーソドックスな開発が中心になりがちです。

名古屋のITエンジニアは不足しているのか?

約755万人の誇る愛知県の人口は、東京都の約半分です。一方、システム開発案件数が東京の1/5〜1/10程度であるなら、ITエンジニアの人材は充分に足りているようにも思えます。しかし、実際には名古屋の方が、東京よりもIT人材を獲得しにくい状況にあるのが現状です。

明確な統計があるわけではありませんが、あるエージェントによれば、一極集中の東京にはエンジニアも集中しやすいため、感覚的には名古屋の6〜7倍程度のエンジニアが東京に在住しているのではないかということです。閉鎖的な市場という名古屋の特徴はIT業界にもいえることであり、流動性の低さから新規プロジェクトに人が集まりにくく、総じて採用難易度は高いといわれています。

名古屋のエンジニア転職市場における求人例

それでは実際に、名古屋のITエンジニア転職市場はどのような状況なのでしょうか?名古屋のIT業界への転職目指すエンジニアの方がイメージを描きやすいように、公開されている正社員求人情報をいくつかご紹介します。

公共・製造業のインフラ設計・構築エンジニア求人
・必須要件:インフラの設計・構築経験3年以上
・歓迎要件:積極的にコミュニケーションの取れる方
・待遇:正社員、年収400〜800万円

業務システム開発のアプリケーションエンジニア求人
・必須要件:オープンアプリケーションの開発経験3年以上
・歓迎要件:積極的にコミュニケーションの取れる方
・待遇:正社員、年収400〜650万円

家電・自動車などの組み込みエンジニア求人
・必須要件:C / C++での開発経験3年以上
・歓迎要件:組み込みソフトウェア開発経験
・待遇:正社員、年収300〜600万円

顧客管理システム改修・保守のプロジェクトマネージャー求人
・必須要件:PM経験5年以上、Webの開発実務経験
・歓迎要件:戦略を描きながら自身で手も動かせる方
・待遇:正社員、年収700〜1,000万円

名古屋の転職求人数は多い?

上述した転職求人例は、ITエンジニアに特化した転職エージェントで公開されているものからピックアップしていますが、同様の条件で検索した東京23区の転職求人数が約4,400件であったのに対し、名古屋の転職求人数は44件でした。東京の約1/100という名古屋の求人数は、かなり少ないということもできますが、どちらかというと東京を中心とした関東に強みを持つエージェントでの結果なのも事実です。

IT業界に強い大手転職エージェントで同様の検索をしてみましたが、こちらでは東京都の転職求人が約4,400件だったのに対し、名古屋を含む愛知県の求人数は約570件ありました。これは名古屋の求人が東京の約1/8であることを示しており、一般的な名古屋IT業界市況感とも一致します。上述のエージェントの言葉を借りれば、名古屋の採用難度は高く、エンジニア数に対する求人数は充分にあるといえるでしょう。

名古屋で求められている職種は?

転職求人例で感じられる名古屋の特徴として、サーバ・ネットワークを含むインフラエンジニア、組み込み系エンジニア、プロジェクトマネージャーといった職種への需要が高いということが挙げられます。サンプル例が少ないため、明確な傾向とはいえないかもしれませんが、インフラエンジニアの求人が8件、プロジェクトマネージャーの求人が7件、組み込み系エンジニアの求人が6件となっており、この3つの職種でほぼ名古屋のIT転職市場の半分を占めているのがわかります。

もちろん、アプリケーション、サーバサイド、モバイル、クラウドなど、バラエティに富んだ求人もありますが、それぞれ2〜4件程度となっており、主流というほど多くはないのが特徴です。モバイル開発はIoT関連になっており、組み込み系が多いのもモノづくりの街、名古屋ならではの特徴といえるかもしれません。

名古屋のITエンジニアの平均年収は?

転職求人例を見るだけでは、名古屋で働くITエンジニアの平均年収は推し量れませんが、フリーランスの場合、東京よりも名古屋は10〜15%低い報酬水準だといわれています。正社員で雇用される場合も、これが当てはまるといえるでしょう。ある転職エージェントの調査によれば、ITエンジニアの平均年収は東京が540万円であるのに対し、名古屋は475万円であり、東京よりも約13%程度低い水準になっています。

ただし、これは年収の突出した東京を除けば大阪の489万円に次ぐ水準であり、神奈川の464万円を上回っています。名古屋を含む東海エリア全体では、全国No.1の平均年収を稼いでいるのも興味深い点です。産業全体で平均年収が全国3位という名古屋の特徴は、IT業界でも同じだといえるでしょう。

転職活動をスムーズに進めるには?

一般的には、高額年収が期待できる売り手市場の名古屋IT業界ですが、転職活動をスムーズに進めるためにはマッチングが重要です。そのためには、名古屋のIT転職市場の傾向を踏まえたうえで、実務経験を積んで求められているスキルを身に付ける必要があります。転職求人例では比較的実務経験が重視され、PMを求める傾向があることから、上流工程を含むマネジメント経験があれば、転職を有利に進められるでしょう。また、業務システムやIoT、組み込み系が多いことから、Java / C / C++ / C#などのスキルを持つ人材も歓迎されそうです。転職エージェントによっては地方案件に強くない場合もあるため、複数のエージェントをうまく活用していくのも重要です。

未経験から転職できるか?

それでは、実務経験の少ない若手エンジニアや、現在の職種からキャリアチェンジしたいエンジニア、異業種からの未経験者が名古屋のIT業界へ転職するのは可能なのでしょうか?転職者ごとに異なる事情があるため、一概にはいえませんが、採用面での経験・スキルのハードルが高い東京比べれば、名古屋の方が転職しやすいようです。これは、目の前の利益よりも会社間・人間間の関係性を重視する、県内の人間に優しいといわれる名古屋の特徴が現れているのかもしれません。特に第二新卒程度までの年齢であれば、ゼロから育ててくれるという会社も少なくないようです。

まとめ

名古屋という街の特徴やIT業界の市況感とともに、ITエンジニアの具体的な転職事情を紹介してきました。ありとあらゆる開発案件があり、最新技術にも触れられる東京とは異なる、名古屋独自の特徴があるのがおわかりいただけたでしょう。それさえ理解できれば、比較的高額な年収が見込め、生活費も抑えられる名古屋のIT業界は非常に魅力的です。転職を検討している方はアクションを起こしてみてはいかがでしょうか?