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RPA(Robotic Process Automation)とは、企業の生産向上に向けて、バックオフィスを中心に生じる定型業務を自動化するツールです。ロボット・デジタルレイバーとも呼ばれる「シナリオ」の作成・実行によって飛躍的な業務効率改善が見込めることから、多くの企業で導入が進められているツールだといえるでしょう。必然的に、RPAエンジニアへの求人需要は高まりつつあります。特別なプログラミングスキルがなくてもシナリオを作成できる気軽さも手伝って、RPAエンジニアへの転身を検討する方も多いのではないでしょうか?

しかし、シナリオの作成はエンドユーザーでも可能であり、RPAがまだまだ発展途上の技術でもあるのも事実です。シナリオ作成を中心としたRPA求人がどのくらいあるのか?今後のトレンドが気になる方もいるかもしれません。そこで本記事では、RPAシナリオ作成に焦点をあわせた求人市場の動向を紹介するとともに、RPAの進化を踏まえた将来性に関して検証していきます。

RPAエンジニアとSE / PGの違い

一般的には、業務自動化ツールであるRPAの導入〜運用に携わるエンジニアを「RPAエンジニア」と呼びます。導入に際しては、シナリオ作成・開発といったプロセスを踏むため、SE / PGといった一般的なITエンジニアと同じだと感じる方も多いかもしれませんが、大前提としてRPAエンジニアには「RPAツール」の知識・スキルが欠かせません。プログラミング言語・フレームワークなどを駆使するSE / PGと異なり、特定のプログラミングスキルを必要としないのもRPAエンジニアの特徴です。クライアントの課題を解決するという点では同じかもしれませんが、仕事・役割に違いがあるのは認識しておく必要があります。

RPAエンジニアの仕事・役割

それでは、RPAエンジニアが具体的にどのような仕事をしているのか、一般的なシステム開発を担うITエンジニアと役割が異なる点はなにか、簡単にご紹介しましょう。

業務分析・要件定義

導入効果を最大化するためにも、まずはRPAを適用する業務を特定して、自動化に向けた各種要件を定義しなければなりません。一般的なシステム開発であればPM・SEが担当するフェーズですが、どの業務を優先的に自動化するか、作業に掛かる時間、手順、頻度など、RPAではより突っ込んだ業務分析が必要になる点が異なるといえるでしょう。経営層だけでなく、ときには現場担当者の意見もヒアリングする必要があり、ツールの選定もこの段階で行われます。このフェーズを担当するRPAエンジニアを「RPAコンサルタント」と呼ぶ場合もあります。

シナリオ作成・検証

業務分析・要件定義をもとに、人間のPC操作をRPAに置き換える「シナリオ」を作成し、本稼働に向けて動作検証していきます。RPAのシナリオ作成には、操作手順を記録・編集するタイプ、簡単なプログラミングで構築していくタイプがありますが、いずれの場合でもツールを使いこなすための知識・スキルが求められます。一般的には、シナリオ作成を担当するエンジニアを「RPAエンジニア」と呼ぶ場合が多くなりますが、RPAコンサルタントと役割を明確に区別していない企業もあります。

RPA運用・保守

RPAの導入は、自動化効果の大きい業務からスモールスタートし、徐々に適用範囲を拡大していくのが一般的です。このため、本稼働後の運用・保守フェーズが重要になります。より業務効率を高めるためのシナリオ連携、ソフトウェアのバージョンアップに伴う微調整、適用業務拡大に伴う新規シナリオ作成などがこのフェーズに含まれますが、導入企業が自社内に「RPA管理者」を置く場合もあります。

RPAのシナリオ作成手順とは?

RPAにはエンドユーザーコンピューティングという概念があり、業務を知り尽くした現場担当者が自動化を主導できるよう、プログラミングの知識が乏しくてもシナリオ作成できるような工夫が施されています。VBAやマクロの知識があれば、RPAのシナリオ作成はそれほど難しくないといえるでしょう。RPAの初期導入フェーズをアウトソーシングする一方、運用・保守フェーズを自社内で賄う企業が少なくないのはこのためです。例として、国産RPAであるWinActorのシナリオ作成手順を簡単に解説しておきます。

作業手順を記録してシナリオ作成

普段、定型業務に利用しているPCでWinActorを開き、記録モードに設定したうえで「自動化したい操作」を実行して記録・録画します。記録をストップさせると、WinActorがバックグラウンドで操作フローを自動プログラミングしてくれるため、再生して問題ないようならシナリオ作成は完了です。複数のアプリケーション間を横断するといった複雑なシナリオでなければ、プログラミングの知識はまったく必要ありません。

作成したシナリオを編集

新たな作業を追加する、指定するデータを個別に設定するなど、作成したシナリオを編集・カスタマイズするのも簡単です。WinActorの編集画面はGUIが採用されているため、パーツをドラッグ&ドロップするだけの編集も可能。入り組んだスクリプトを実行させるなど、複雑なシナリオを作成するのもそれほど難しくありません。もちろん、プログラミングの知識・スキルがあればよりスピーディーな編集も可能ですが、ITリテラシーの高い事務員でも充分シナリオ作成・編集が可能です。

RPAシナリオ作成の正社員求人例

それでは、エンドユーザーコンピューティングの概念を持つRPAでは、シナリオ作成に関連する求人はどのくらいあるのか?シナリオ作成スキルを持つ方が、転職のイメージを描きやすいように、公開されている正社員求人情報をいくつかご紹介しましょう。ある転職エージェントでは、RPAシナリオ作成をキーワードに持つ求人数は約18件ありました。

SIerのRPAシナリオ作成・導入支援エンジニア求人
・必須要件:RPAツール、シナリオ作成の知識、開発経験
・歓迎要件:VBA / VB.NET / C / C#などを使った開発経験
・待遇:正社員、年収300〜350万円

SIerのRPAコンサルタント求人
・必須要件:システム企画・導入における上流工程経験、業務フロー作成を主導できる方
・歓迎要件:裁量を与えられた環境で自走できる方
・待遇:正社員、年収500万円〜

RPAシナリオ作成のフリーランス求人例

シナリオ作成に限定したRPA正社員求人は多くはないことがわかりますが、フリーランス向けの求人案件はどうでしょう?公開されているフリーランス案件をいくつかご紹介しましょう。あるフリーランスエージェントでは、RPAシナリオ作成をキーワードに持つ求人数は約11件ありました。

金融系RPAリプレイス案件のシナリオ作成・開発エンジニア求人
・必須要件:RPAのシナリオ作成実務経験
・歓迎要件:UiPath / WinActorの開発経験
・待遇:RPAエンジニア、月/〜45万円

RPAシナリオ作成・テストエンジニア求人
・必須要件:C#.NETを使ったコーディング実務経験2年以上
・歓迎要件:シナリオ設計・作成からテスト、問い合わせ対応も任せられる方
・待遇:RPAエンジニア、月/〜60万円

RPAシナリオ作成の求人動向

シナリオ作成に限定したRPAエンジニアの求人は、正社員・フリーランスともに少ないのがわかりますが、求人企業のほとんどがSIerであることも興味深いポイントです。一般的にRPAエンジニアを求人する企業は、メーカー、SIerのほかに、RPAを運用するクライアント企業が考えられますが、実際の求人動向はRPAを取り巻く状況に大きく左右されているのが見て取れます。

RPAシナリオ作成の求人数・報酬

それでは、RPAに関連する求人自体が少ないのか?というと、そうともいい切れません。約8,200件ある正社員求人のうち、RPA関連は296件あるからです。しかし、約1万件あるフリーランス求人ではRPA関連が96件にとどまっており、プロジェクト単位での個別求人は少ないといわざるを得ません。これは、クライアント企業の業務内容に深く関わることになるRPAでは、エンジニアへの信頼感が重視されるからなのかもしれません。

また、高騰しているといわれていた報酬に関しても、そうとはいい切れない状況であるのがわかります。特にシナリオ作成に限定したエンジニア求人ではその傾向が強く、正社員求人であれば年収300〜400万円程度、フリーランス案件でも月額45〜50万円程度がほとんどです。RPAコンサルタントであれば、年収500万円以上、月額60〜70万円の水準が期待できますが、一時期いわれていた、年収3,000万円などという報酬は期待できそうもありません。

RPAエンジニアの求人傾向

こうした求人市場の動向を見ていくと、RPA導入に際してはSIerにアウトソーシングする、運用・保守に際しては自社内で人材教育・育成するクライアント企業が多いと推測できます。シナリオ作成に限定した求人が少ないのはこうした状況が影響していると考えられ、RPAエンジニアには、シナリオ作成スキルはもちろん、業務分析・要件定義を含むコンサルタントとしての知識・スキルが求められているといえるでしょう。

RPAはどのように進化する?

しかし、発展途上の技術でもあるRPAでは、ツールの進化とともにコンサルタントの仕事も変化していくことが考えられます。現在のRPAは、定型業務の自動化に特化したクラス1ですが、マシンラーニングを取り入れた非定型業務の自動化が可能な、クラス2の「EPA(Enhanced Process Automation)」も登場しています。将来的には、自立型AIを活用したクラス3の「CA(Cognitive Automation)」活用が期待されており、エンジニア・コンサルタントには、より幅広い知識・スキルが求められるのは必須です。

RPAエンジニアが生き残るには?

それでは、RPAエンジニアが求人案件を獲得し、現在から将来にわたって継続的に活動していくには、どうしたらいいでしょうか?RPAツールの知識、シナリオ作成のスキルを持つことを前提に、最低限押さえておきたい要素を紹介しておきます。

業務知識・課題解決能力

どんなツールも例外ではありませんが、RPA導入の目的は生産性向上であり、ツールはあくまでも目的達成するための手段です。つまりRPAエンジニアは、クライアントの業務を精査・分析し、課題解決に向けた最適解を提案できる能力を磨く必要があります。さまざまな業務経験があれば能力向上の助けになりますが、そういった方は多くありません。課題の本質を捉える想像力、関係者に寄り添って考えられる力を養うのが重要です。

最新技術のキャッチアップ

上述したようにRPAは現在進行形の技術であり、ツール自体の本質が変容する可能性もあります。現時点でも重要視されつつあるOCRへの対応、プロセスマイニングはもちろん、徐々に関連性の高まるAIなど、RPAエンジニアには最新技術をキャッチアップし続ける姿勢が重要です。特に需要の高いAI分野の知見を高めれば、貴重な人材として活躍の幅を広げられるでしょう。

まとめ

エンドユーザーコンピューティングの概念を持つRPAでは、シナリオ作成を担うRPAエンジニアになるためのハードルが低いのも事実です。しかし、それだけでは発展途上であるRPA業界のなかで生き残っていくのは難しいでしょう。RPAコンサルタントとして活動できる知識・スキル、最新技術に関する知見を身に付け、幅広い場面で重宝される人材を目指すのが重要です。