支援対象地域:札幌、仙台、関東、愛知、関西、広島、福岡


業務システム、Webサービス・アプリケーションなど、エンドユーザーがクライアントマシンを使って接続する、すべてのシステムで必須の存在が「サーバー」です。日々新たなサービス・システムが開発されている現代では、その土台となるサーバーを使える状態に「構築」する仕事はなくならないと考えられています。しかし、本当にそうなのでしょうか。そもそも、用意されたサーバーにシステムを構築していくSEは、サーバー構築の仕事内容も、サーバーエンジニアの将来性も意外と知らないのかもしれません。

そこで本記事では、サーバー構築の具体的な仕事内容や、必要とされるスキルを解説するとともに、サーバー構築の仕事が不安視されている理由、目指すべきキャリアパスなど、意外と知らないサーバーエンジニアの現状を紹介していきます。

サーバーとは?

サーバーとは、ネットワークで接続されたクライアントマシンのリクエストに応じ、適切なサービスやデータをレスポンスするために、必要なデータや制御システムを格納したコンピューターです。サーバーには用途に応じたさまざまな種類があり、たとえばWebサイトにはWebサーバーが、メールシステムにはメールサーバーが活用されますが、サーバー + ネットワークという構成が同じなだけで、利用されるハードウェア・ソフトウェアはそれぞれのサーバーごとに大きく異なります。

これまでは、サーバーを構築して自社内に設置するオンプレミス型が主流でしたが、近年では、外部のデータセンターに設置されたハードウェアにサーバーを構築するクラウド型が主流になりつつあります。高価なサーバー・ネットワーク機器を導入する必要がない、ハードウェアのメンテナンスを省けることが、クラウドの人気が高まっている理由だといえるでしょう。

サーバーエンジニアの仕事

いまやITシステムに不可欠な存在である、サーバーに関連する仕事を専門的に担当するのがサーバーエンジニアです。実際の現場では、ネットワークエンジニアと連携しながら仕事を進めていくケースが多いですが、インフラエンジニアとしてサーバー・ネットワークを一人で担当することもあります。

サーバー設計・構築

クライアントが実現したいサービス・システムに応じて、最適なサーバーを設計・構築していきます。一般的なシステム開発でいう上流工程にあたるフェーズであり、顧客折衝を含め、実務経験を積んだサーバーエンジニアが担当します。

上述したように、サーバーは種類・用途によって必要なハードウェア・ソフトウェアの構成は大きく異なります。求められる処理速度に応じたCPUのコア数・クロック周波数、ストレージの容量、適切なサービスを提供できるOS・ミドルウェア、想定されるアクセスに応じたネットワーク機器など、予算と優先順位のバランスを取りながらサーバーの選定と設計を進めていきます。インシデント時の対応やセキュリティ面も含めて設計しなければならないケースも多いでしょう。

できあがった設計書をもとにサーバーを構築していくフェーズでは、OS・ミドルウェアのインストール・設定などを実施することはもちろん、サーバー・ネットワーク機器などの物理的なハードウェアをラッキング・設置する作業も必要になります。すでにハードウェアが準備されているパブリッククラウドであれば、物理的な作業は必要ありませんが、ニーズに応じてハードウェアを選定しなければならないのはオンプレミスと同様です。

サーバー運用・保守

構築したサーバーが設計通りのパフォーマンスを発揮できるように、運用・保守していきます。管理者としてのサーバーエンジニアを筆頭に、オペレーター・リーダーなどのスタッフを合わせたチームで担当するケースが多くなります。

具体的な仕事内容としては「監視・障害対応」「各種設定の変更」「バックアップ」「セキュリティチェック」などが挙げられますが、ツールを使った運用自動化も進んでいます。特にパブリッククラウドの場合はその傾向が強く、データセンターに常駐するということはほとんどありません。

サーバー構築エンジニアに必要な知識・スキル

それでは、サーバーの設計・構築を担当するサーバーエンジニアには、どのような知識・スキルが求められるのか、近年ニーズの高まりつつある要素も踏まえて簡単に紹介していきます。

サーバーOS・ミドルウェアの知識・スキル

サーバーを構築するためには、サーバーとして機能させるためのOSや各種ミドルウェアをインストール・設定する知識・スキルが必要不可欠です。ニーズに応じてWindows / UNIX / LinuxなどのサーバーOS、Apache / nginxなどのミドルウェアを使い分ける必要もあるため、幅広いソフトウェアに関する知識・スキルを身に付ける必要もあります。Oracle / MySQLなどのデータベース管理システム(DBMS)の知識を要求されるケースも多く、近年増加傾向にあるサーバー仮想化に伴って、VMWare / Hyper-Vに関するニーズも増えています。

ハードウェア・ネットワークの知識・スキル

クライアントのパフォーマンス要求を満たすサーバーを構築するには、設計段階でどの程度のスペックを持つサーバーを用意すべきなのか、判断するためのハードウェア知識が必要です。ハードウェアを選定する際は、OSやミドルウェアだけでなく、開発中のアプリケーションに関しても考慮する必要があるため、システム開発の知見も求められるでしょう。本来はサーバーエンジニアの仕事ではありませんが、ネットワークに関しても、スループットを満たせる機器を選定できる程度の知識は必要です。

サーバー運用・保守・セキュリティの知識

インシデント発生時の対応を設計に盛り込まなければならないサーバーエンジニアは、実際の運用・保守フェーズで経験を積んでおく必要があります。現実に発生するインシデントは、事前に想定していたものとは異なることがほとんどだからです。また、近年は専門のセキュリティエンジニアが活躍するようになりましたが、まだまだサーバー本体のセキュリティ対策はサーバーエンジニアの役割であることも少なくありません。仕事の幅を広げるためにも、セキュリティの知識・スキルは身に付けておいた方がいいでしょう。

パブリッククラウドの知識・スキル

近年のサーバーエンジニアにもっとも求められるようになったのが、パブリッククラウドの知識・スキルです。サーバーの構成を自由に変更できるクラウドでは、オンプレミスで培ったノウハウも役立てられますが、大量に用意されたサービスから最適なものを選定・設定するのは簡単ではありません。少なくともAWS / Azure / GCPなどのメジャーなサービスに関しては、一通り扱えるようにしておくと参画できる仕事の幅が広がります。

サーバー構築の正社員求人例

仕事内容・求められる知識・スキルが把握できたところで、サーバー構築エンジニアの具体的な仕事のイメージを描きやすいように、正社員の求人情報をいくつか紹介します。

SIer企業のサーバー設計・構築・導入支援エンジニア求人
・必須要件:サーバーもしくはネットワークの実務経験3年以上
・歓迎要件:チームワークを大事にできる方
・待遇:正社員、年収380〜700万円

自社製品向けのサーバー設計・構築・サポートエンジニア求人
・必須要件:Windows / Linuxサーバーの構築経験3年以上
・歓迎要件:ITインフラ管理、またはサーバー製品のサポート経験
・待遇:正社員、年収417〜652万円

サーバー構築のフリーランス案件例

自由な働き方を視野に入れる方がイメージを描きやすいように、サーバー構築のフリーランス案件情報もいくつか紹介します。

金融系サーバー構築・運用のエンジニア求人
・必須要件:Linuxサーバーの構築・運用経験3年以上
・歓迎要件:金融系システムのサーバー構築経験
・待遇:サーバーエンジニア、月/〜70万円

保険会社向けWebサービスサーバー構築のエンジニア求人
・必須要件:Docker / AWSを使ったサーバー構築経験3年以上
・歓迎要件:Webサービスのインフラ構築経験
・待遇:サーバーエンジニア、月/〜75万円

サーバー構築の求人・案件事情とは?

正社員求人・フリーランス案件ともに「サーバー構築」という点に限定すると、求人・案件数はあまり多くないことがわかります。これはサーバーに限定しない、ネットワークも含めたインフラを設計・構築できる人材が求められる傾向にあることが要因として挙げられます。逆に、ネットワーク・セキュリティのスキルも備えたサーバーエンジニアであれば、求人・案件の獲得は難しくないでしょう。本文内でも触れたように、パブリッククラウドのスキルが重要視されることも近年の傾向です。

サーバー構築エンジニアの年収・報酬は?

サーバーエンジニアの年収は、20代の会社員で約380万円、30代で約490万円、40代で約590万円が平均だといわれています。正社員求人例を見てもこのデータは納得できますが、平均を大幅に上回るような年収を稼ぐサーバーエンジニアは少ないです。フリーランス案件に関しては報酬単価55〜70万円ですが、機密性の高い金融系、パブリッククラウドの構築などの案件が高額報酬である傾向があります。

サーバーエンジニアの将来性・キャリアパス

サーバーはITシステムになくてはならない存在ですが、ネットワークも扱えるインフラエンジニアが重用される傾向が強まり、パブリッククラウドへの移行も加速しています。それに伴って、ハードウェアの選定・構築、サーバーの監視・運用といった仕事が減っていることも事実です。サーバーエンジニアの将来性を不安視する声があるのは、こうした現状を踏まえてのことでしょう。しかし、時代・技術の移り変わりをしっかりと捉え、明確なキャリアパスを描いてスキルを身につければ、サーバーエンジニアの仕事がなくなることはありません。

インフラスペシャリスト

サーバーエンジニアが経験・スキルを活かしながら自身の価値を高めるには、ネットワークも含めたインフラスペシャリストを目指すというキャリアパスが考えられます。サーバー構築の高度なスキルを持っている方なら、ネットワークのスキルを身に付けることはそれほど難しくないでしょう。同様に、サーバー構築のスキルはクラウドの活用にも非常に役立ちます。セキュリティ関連の知識・スキルと合わせれば、インフラ関連の仕事をすべて任せられる貴重な存在になれます。

マネジメント職

クライアントのニーズを的確に把握し、サーバー構築に向けてコストバランスを含めた折衝のできるエンジニアであれば、プロジェクトマネージャーなどのマネジメント職を目指すキャリアパスもあります。コミュニケーション能力、チーム間の調整能力を磨く必要はありますが、プロジェクトの全体像を見渡すのにサーバー構築の経験を活かせるはずです。

まとめ

インフラの要であるサーバーは、ITシステムになくてはならないものですが、サーバー設計・構築・運用・保守だけでは仕事を獲得することが難しくなっています。サーバー構築という仕事はなくならないものの、時代の流れと技術の進歩とともに、そのあり方も変化しているのです。サーバーエンジニアとして安住しているのではなく、プラスαの知識・技術を身に付け、自身の市場価値を高めていくことが重要です。