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はじめに

昨今は決して好景気と言われる時代ではありません。もし就職や転職活動をしている場合、人材が溢れている業界を狙っているのであれば就職することは困難となっています。業界にこだわらず、人材不足の業界に絞って応募することで採用の確率は大きく上がってきます。

また人材不足となっている理由を認識しておくことで、その業界の実情を垣間見ることができ、実際に就職した際に元々描いていたイメージとのギャップに悩まずに済むことにもなります。今回は人材不足に悩んでいる業界と、その理由について紹介していきます。

人材不足を調べる上で参考にする指標

「人材不足」という判断はどう行っていくかについては、厚生労働省が毎年公表している有効求人倍率を参考にしていきます。

有効求人倍率とは、有効求人数を有効求職数で割った数値です。算出結果が1.0に近ければそこまで人材不足の状況が深刻ではなく、数値が大きいほど人材不足と見ることができます。例えば有効求人倍率が5.0である場合、5人の募集に対して1人が応募するといった見方となります。厚生労働省からは実際の求人・求職の人数とともに、この倍率が公表されます。

人材不足の業界は?

まずは有効求人倍率の数値が大きい=人材不足である業種を紹介します。様々な職種の中で飛び抜けて人材不足なのは建設・採掘の仕事です。採掘業は現代において耳にする機会が少ない業種ではありますが、建設業は実際に求人を見かけることが多いでしょう。中でも鉄骨や鉄筋、コンクリートを扱う建設躯体工事は、全職種の中で1番となる8.77でした。

管理系の職種とはなりますが、同じく建築・土木関連の仕事となる測定技術者も有効求人倍率5.40と非常に高い数値です。

続いて人材不足となっているのは保安系の職業です。保安系は警察や自衛官、海上保安官といった国家公務員や看守、警備員、交通誘導員と幅が広いですが、これら全体の有効求人倍率は6.50ととても高い位置にありました。

その次に位置するのは外勤事務と言われる職種です。事務系の職業はジャンルによって異なり、テレビや光熱費系、新聞などの集金に該当する外勤事務は有効求人倍率が4.14と高いですが、内勤の一般事務はほとんどが0点台と、あまり求人を必要としていない職種となっています。

同じくらいの有効求人倍率を示す職種には、介護や生活衛生のサービスがあります。以上が特に人材不足の状況が目立つ職業・職種です。

有効求人倍率3点台の位置にある業界の一つが運送・流通業界です。運送業界に関しては、近年その過酷な労働状況が明るみとなりました。事務職に分類される運輸・郵便事務が3.59と、外勤事務と並んで人材不足の事務業の一つです。自動車運転に関しては2.73のためこちらも人材不足です。

職種としての有効求人倍率の平均が高いのはサービス業です。すでに挙げている介護・生活衛生もこの職種に含まれますが、その他の接客・給仕、飲食物調理、保険医療サービス、家庭生活支援サービスも大方3〜4点台となっています。

人材が飽和してる業界は?

次に、有効求人倍率が低い=人材が足りている業種を紹介します。
求人数が少ない傾向にあるのは事務系です。人材不足な職種として紹介した外勤事務や運輸・郵便事務という例外はあるものの、一般、会計、営業・販売系の事務関連の職種はほとんどが0点台、全体としては0.50でした。

運搬・清掃・包装関連の業界も極めて少なく、全体で0.76です。物を作る工程に関する生産業も1.48と低いです。また求人自体をあまり目にすることのない農林漁業関連が1.41と、低い位置にあります。

現代社会においてたくさんの求人を目にすることがあるIT業界がどちらにも含まれていませんでした。IT業界はどの辺りに位置するかというと、有効求人倍率は1.97と、人材が全く追いついていないわけではありませんが、IT業界も人材不足の業界であると言えるでしょう

各業界の人材不足の理由は?

人材不足の理由として、その業界が急速に発展しているという見方や、仕事内容がハードですぐに人が辞めてしまい慢性的に人材不足であるという見方ができます。転職先を探しているのであれば、有効求人倍率の数値を見るだけではなく、不足している理由も把握しておくことをお勧めします。

人材不足が著しい建設・建築業界は力仕事のため、向き不向きが出やすい職業です。その上長時間労働や、休日が少ないなどの状況になりやすいといった実情があります。働き方改革で労働時間の短縮が進む中で、改善が難しい職業にはなかなか人が集まりづらいでしょう。

震災復興や東京五輪関連で需要はたくさんあるため、仕事はたくさんあります。慢性的に人材不足の業界ですが、一方で仕事は常に確保されているというプラスの見方もできるのです。

保安系の仕事に関して、は国家資格ということもあり誰でもできるわけではなく、就労できる条件がある程度限られています。また体が資本となるため、募集人数は多くても見合った人材が確保できないという面があります。希望があっても実際になれる人が少ないということから、他業界の人手不足とは少し理由が異なります。

一般事務と違って外回りが多くなる外勤事務は、人材不足である理由をはっきりとさせることができませんでした。しかし、集金時のトラブル発生や、常に動き回る仕事スタイルが人材の定着に不向きであるという推測ができます。もちろん外勤というスタイルが合っている人もいるため、必ずしも辛い仕事であるとは言えません。

介護や生活衛生のサービスの人材不足の理由は少子高齢化が大きな理由の一つです。2025年には国民の3人に1人が65歳以上になるため、需要が高くなっていきます。しかし、制度によって自由な価格設定ができないことから給料が上がりづらい実情と、重労働から人が集まりづらい業界となっています。介護関連も慢性的な人材不足が続いている業界の一つです。

サービス業の人材不足も慢性的で、正社員雇用が少ないところが多く、人の入れ替わりが頻繁にあるため定着率も低いという特徴があります。また建設・建築や介護関係同様に給料が少ない上に長時間労働になりがちで、休みも少ないという実情があるため、長期的に労働する人も限られてきます。

しかし、現在サービス業界は営業時間の短縮などの労働環境の改善が進められているため、早い段階での改善が期待できるでしょう。

最後に紹介するは運送・流通業界です。この業界に関しては他の業界とは少し状況が異なります。IT業界の傾向に似ていますが、仕事量の増加や発展が理由となります。

運送・流通業界は肉体労働で長時間労働になりやすい職業です。他の業界と同様に、現代でこれらの特徴を持つ業界はなかなか人が集まりづらい傾向にあります。

そんな中、追打ちをかけて様々なネットショッピングが普及してきており、仕事量も増えています。再配達を極力発生させないための仕組みなど業界としての努力も見られ、国土交通省の人材不足改善案も出されていますが現状としてはまだ根本的な解決には至っていません。

IT業界に関しても、仕事量の増加により人材不足が発生しているという点が共通しています。現在は様々な分野でIT技術が導入されている時代です。それこそ各業界の人材不足解消にIT技術が導入されることもあります。またIT技術に関しては、AIやIoT、ビッグデータなど高度な技術を求められる分野の需要が高まってきており、それらの分野に対応できる人材が少ないという原因もあります。言い換えると、高度なIT技術を習得していれば引く手数多の状態となる業界でもあります。

まとめ

ここまで人材不足の業界について紹介してきましたが、その業界が人材不足だとしても単純にマイナス面の理由だけではありません。サービス業のように正規雇用の少なさなど、そもそも人材が流動的な業界であるという特徴を持っている場合もあります。

企業ごとに見ていっても、常に人材不足の企業がブラック企業な訳ではなく、急速に発展していて求人が追いついていない可能性があります。就職・転職活動の際は、しっかりと調べて進めていきましょう