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日本の就職・転職市場では、新卒などを採用してゼロから人材を育てるよりも、即戦力となる人材を求める傾向が続いていました。

新型コロナウイルスによる混乱の影響で、多くの企業が2021年度の新卒採用を見送るという発表も行っていますが、転職市場においては依然として即戦力採用の動きは続いています。

直近の有効求人倍率

厚生労働省が調査した2020年7月の有効求人倍率は1.08倍となっており、2019年12月の有効求人倍率は1.68倍だったので7ヶ月間で0.60ポイント下がっています。コロナ禍により求人動向は悪化したとも考えられますが、これは前述のように翌年度新卒採用の中止や見送りが発表されたことも影響しています。

これだけの大きなマイナス要因があるにも関わらず、全体的な有効求人倍率が「1」を下回っていないということは、新卒採用以外の中途採用需要が依然として高いということを示していると言えるでしょう。

IT系の有効求人倍率

IT業界を含めた「情報処理・通信技術者」の有効求人倍率は、2019年12月の時点で「2.47倍」でした。つまり「1人の求職者に対して就職先が2.47社ある」状態でした。それに対し、コロナ禍の2020年7月の段階でも情報処理・通信技術者の有効求人倍率は「1.47倍」です。

コロナ禍においてもIT技術者の需要は高く、少なくとも1人1社以上の就職先があり、人材は常に求められているという計算になるのが現実です。

IT業界は人材不足

数年前から「IT業界は人材不足である」と言われ続けています。コロナ禍による社会情勢へのマイナス要素は様々ありますが、フードデリバリーを始めとした在宅者を対象にしたビジネスを展開する企業はWebサイトやWebサービスの拡充に力を入れ続けている為、ITエンジニアは依然として求められる状況です。

そのため、Web制作やWebデザイン、Webアプリなどの仕事は安定した需要があります。また、オンライン会議サービスやクラウド会計システムなどオンラインを活用した様々な新サービスの需要もあり、ITエンジニア全体への需要はむしろ増加しています。

なぜIT業界は人材不足なのか?

2016年の時点で既にIT業界における人材不足の現状は明らかになっていました。経済産業省が発表した「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果(2016年度版)」では、2015年の時点で既にIT技術者が17万人不足していると指摘されています。

また同調査では今後IT技術者の人材不足は深刻化し、将来的には59万人が不足するという見込みが示されていました。

日本のIT業界で人材が不足理由はいくつか挙げられますが、主な理由の一つに「IT技術の進化スピードが早い」という点が挙げられます。システム開発やWeb系のサービス開発などに必要な技術は常に新しいものが生み出され、改善や改良点も研究されています。

業務に必要な情報や技術が日々更新されていくスピードに、企業もIT技術者も追いついていくのが難しい現状があります。

なおかつ過去にはIT業界の働き方が長時間労働のわりに給与への反映がされない、というイメージで語られることもあったため、IT技術者になることを躊躇する若年層がいたことも影響しています。

しかし実際にはIT技術者の平均年収は、全ての年代において他業種同年代の社会人と比較して15〜20%以上高いことが調査でわかっています。長時間労働が多いというイメージについては、確かに職種や業務によっては夜勤が必要となるような保守業務もあるため「無い」とは言えません。しかし2018年に厚生労働省が調査した結果として、例えばシステムエンジニアの月間平均残業時間は「月16時間」でした。これは1日平均1時間にも達しておらず、必ずしもIT技術者は長時間労働で残業が多いとは言い切れないということを示しています。

IT業界から求められる人材とは?

このように「求人動向は安定している一方で人材不足である」という状況の中で、IT業界に求められるのはどのような人材なのでしょうか?

基礎や基本技術がしっかりしている人

基本的な技術が身についている人材は確実に求められると言えるでしょう。基礎ができている人材を欲しがらない企業はありません。ただし、これは「未経験者を除外する」ということを意味しているわけではありません。日本のIT企業が口にする「人材育成をする余裕がない」というのは、深堀りすれば「今の状況では知識ゼロの未経験者にIT知識を教えるところからスタートする」余裕がないという意味でもあります。

例えばフリーランスとして個人で仕事をしていた方などであれば基本的な知識や技術、そして実務経験があることは明らかです。組織で働いたことがなくても、クライアントワークをしたことのある人材であれば、IT業界では求められる存在であると言えるでしょう。実務未経験であったとしても、面接やスキルチェックなどで基準を超えることができる人材になることができれば、実際に仕事を任せてもらえる可能性もあります。

プログラミングスクールは年々増加していますが、最近では知識の詰め込み型にならないようにサンプルコードを積極的にコーディングしたり、より実務に近い課題をこなしながら学習していく方式を取るスクールも出てきています。そのようなスクールで学んだ方の場合は、実務未経験でもコース終了後にスキルチェックを突破して案件を獲得できた事例もあります。基礎知識が身についていて、基本的な技術を習得できている人というのが求められる人材としての条件の一つだと言えるでしょう。

コミュニケーション能力がある人

ITエンジニアの業務は商社や小売の営業職や事務職とは異なり、作業自体は単独で行うこともあります。しかし多くの場合、業務はプロジェクト単位で動いており、プロジェクトごとにプロジェクトリーダーやメンバーが存在します。

そのため、リーダーから要求される作業内容と自分の作業ペースの進捗合わせや、他のメンバーがどの段階まで作業を進めているのかのすり合わせなど、一緒に仕事をする仲間や同僚の様子を把握し理解する能力も求められます。場合によっては必要な要求を自分から発信する必要がありますし、意図していない状況が発生した場合には、その状況と事実を周囲に共有しなければいけないこともあります。

そういった意味では他の業種・業態と同様に円滑なコミュニケーション能力が求められることには変わりません。最終的なプロジェクトの成功を実現させるためにはミスを極力減らす必要があるからです。他の業種・業態でもコミュニケーション能力が高い人材は常に求められる存在です。IT技術のベースがあり、コミュニケーション能力も高い人材であれば、どこからも求められる人材になれるでしょう。

語学力がある人

日本のIT業界も成長していますが、グローバルに見た場合は世界のIT業界も日本以上に成長しています。物理的な距離に関係なく業務を進めることができ、なおかつWebを活用したサービスが国境をまたいで普及するようになった現代では海外を意識した開発も必要になります。

IT技術の基礎・基本が身についていて実務経験があれば、IT業界では間違いなく求められる人材になれます。さらに海外を意識した仕事をするために必要な語学力があれば、希少価値はさらに高まることになります。IT業界の最大手企業はアメリカに多く、中国なども成長しているとはいえ世界的なITサービスは多くがアメリカを中心に成長することが多いです。

もし英語を使えるようになれたとすれば、IT業界では引く手あまたの存在になれる可能性が高まります。

IT業界は成長産業

2020年7月全体平均の有効求人倍率が1.08倍なのに対して、なぜIT業界の有効求人倍率は1.47倍と高いのでしょうか?その大きな理由は「IT業界は成長産業」だからだと考えられます。

日本のIT産業成長率

もともと日本のIT産業成長率は2020年度が対前年度1.6%増。2021年度は対前年度1.5%増の成長をすると予測されていました。コロナ禍の影響で全国的な有効求人倍率は下がっていますが、IT業界の求人倍率は「下がってはいるものの全体的には高め」を維持しています。

IT技術を活用した新たなサービス開発は日々進捗しており、公的機関においては押印作業を電子化しようとする動きも始まるなど、日本社会全体でIT技術・ITサービスをこれまで以上に積極活用していこうという動きが加速しています。

2019年度に行われたあるアンケートでは、企業がIT投資を積極的に進める予定であるとする回答が多く、基幹システムの構築・開発に加えて情報セキュリティ分野への投資を数年間に渡って計画しているという回答が目立ちました。テレワークの拡大やリモート勤務の増加によって、それら2種類の分野はこれまで以上に重要度が高まっていると考えられます。

世界のIT産業成長率

2019年に行われた調査をもとにした情報では、2020年においては世界全体でもIT投資に対する支出は対前年比3.8%増加すると予想されていました。コロナ禍の発生によって多少の修正が入ることは予想されますが、世界のIT業界をリードする超大手企業が原則在宅勤務を制度化する発表をしています。

このことにより、日本の企業が行おうとしていたように基幹システムやセキュリティ関連分野では前年よりも成長する可能性も指摘されています。

IT産業はグローバルで成長している産業

日本においても世界的に見ても、細分化して考えた場合は成長予測を下方修正する分野が発生することは予想されますが、IT業界全体としては成長性は失われておらず、むしろ分野によってはこれから更に成長する可能性が出てくると考えられています。

在宅や遠隔でも仕事が可能になるようなサービスやシステム、自宅を離れない状態で買い物や行政サービス・手続きを可能にするシステムなど、これまでなかったような技術が生まれたり求められていく可能性は十分にあります。

このように考えるとIT産業はグローバルで今後も成長していく産業であると言えます。

まとめ

IT業界の求人動向や有効求人倍率、どのような人材がIT業界で求められるのかについて解説しました。

・基礎知識、基本技術がある人

・コミュニケーション能力がある人

・語学力がある人

上記に当てはまる方はIT業界内で求められる可能性が高まり、IT業界全体で人材不足になっていることから常に求められる人材となるでしょう。成長が続くと考えられているIT業界の動向には根拠がありますので、今からでもIT業界で求められる知識や技術を身につけることで必要な人材になることができるでしょう。