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はじめに

企業活動においてITの活用が当たり前となった現代社会において、ITの基本知識と経営企画や戦略の知識が切り離せないものとなってきました。ストラテジに関する知識は、基本情報技術者試験においても出題される重要な知識となっています。筆者がこれまで基本情報技術者試験の学習を進めていく中で、社会人として知っておくべき知識が多く出題される分野であると感じました。そんな基本情報技術者試験のストラテジ系分野について過去問題に頻出されているマストで学習を行うべき問題について、解説を行ってまいります。

午前試験の出題範囲

まず、基本情報技術者試験の出題範囲について解説いたします。午前の部・午後の部と分かれており、両方の受験が必須となりますが、今回は午前試験の出題範囲であるテクノロジ系・マネジメント系・ストラテジ系から、ストラテジ系にフォーカスしていきます。

ストラテジ系(80問中20問出題)

ストラテジ系では、著作権といった関連法規やPDCAサイクルなど、企業活動や業務改善に関する問題が出題されます。約5割が過去問題と同テーマで出題されており、文系出身者やIT業界初心者の方にもわかりやすい分野です。

  • システム戦略
  • システム企画
  • 経営戦略マネジメント
  • 技術戦略マネジメント
  • ビジネスインダストリ
  • 企業活動
  • 法務

筆者は大学で経営学部を専攻していたため、ストラテジ系の分野は一番得意とする分野ですが、理系出身者や実際にSE・PGとして働いている方にとっては苦手分野と認識している方も多くいる分野となっています。また、用語の意味を問う問題も多いため、参考書を読み、知識を定着させる必要がある分野といえます。しかし、ストラテジ系分野は近年、過去問題と同テーマで出題される率が増えており、80問中20問出題されることから大きな得点源となります。次に、過去問題の中で出題頻度の多い問題について、解説していきます。

ストラテジ系の出題傾向について

基本情報技術者試験のストラテジ系分野は、問題文にある説明に適した用語はどれかを選択する問題や、用語の説明として正しいものはどれかを選択する問題といった、用語の知識を問われる問題が多く出題されます。また、近年の流行も素早く反映される分野となっており、令和1年秋期の問題では、ビックデータの取り扱いやRPAの事例、仮想通貨に関する問題も出題されていました。こういった新しい知識については、日常的にニュースを確認したり、最新の参考書から知識を得る必要があります。しかし、過去問題と同テーマで出題される問題も多いため、新しい技術に関する知識以外は、過去問題を攻略することで正答を導けるものが多いといえます。そこで今回は、これまでの基本情報技術者試験でよく出題されていた「著作権」「エンタープライズアーキテクチャ」について解説していきます。

著作権

著作権とは、知的財産権のひとつで、文学やプログラムといった創作した作品(=著作物)や創作した人(=著作者)の保護するための権利です。著作権は実名で公表された著作物に対しては、死後70年保護されます。著作権法で保護され、著作権の内容は著作人格権と著作財産権の2つに分けて定められています。

著作人格権

著作人格権とは、著作物を創作した著作者に対して付与される権利で、他人に譲渡・相続のできない権利です。著作物を公表するかどうか、そのように公表するかを決められる公表権や著作物のタイトルや内容を他人が勝手に変更することができない同一性保護権が含まれます。著作者の社会的な評価や名誉を傷つけるような方法で著作物を利用すると著作人格権の侵害にあたります。

著作財産権

著作財産権とは、著作物から発生する権利で、他人に譲渡・相続することができる権利です。著作物をコピーできる複製権やホームページなどに掲載し不特定多数へ著作物を発信できる公衆送信権などが含まれます。著作物の利用方法についてさまざまな権利が細かく定められており、利用する前には著作権者の許可が必要となります。

著作権に関する問題では、著作権の帰属先や保護範囲を問う問題が多くなっています。以下は、平成30年春期の基本情報技術者試験に出題された問題です。

A社は,B社と著作物の権利に関する特段の取決めをせず,A社の要求仕様に基づいて,販売管理システムのプログラム作成をB社に委託した。この場合のプログラム著作権の原始的帰属はどれか。

ア. A社とB社が話し合って決定する。 イ. A社とB社の共有となる。 ウ. A社に帰属する。 エ. B社に帰属する。

出典:基本情報技術者試験 平成30年春期 問79

この問題は、著作権の帰属先に関する問題となっています。ポイントとなるのは問題文中の『A社は,B社と著作物の権利に関する特段の取決めをせず』と『プログラム作成をB社に委託』です。

先ほどの解説を踏まえると、著作権の権利に関する特段の取り決めがない場合、著作権は著作物を創作した著作者に付与される権限となります。また、著作権法15条において、会社に所属する従業員が仕事の上で創作した著作物に関して、契約や勤務規則といった別段の定めがない限り、所属する会社に著作権が帰属することとなっています。つまり、社員が作ったプログラムであっても、会社の業務として作ったものであれば、著作権の帰属先は会社になるということです。

A社とB社で著作権に関する取り決めがなく、B社が作ったプログラムであることから、エ.B社に帰属する。が正しい答えとなります。

エンタープライズアーキテクチャ

エンタープライズアーキテクチャ(EA)とは、業務やシステムを改善する際に、社会や情報技術の変化に素早く対応できるよう全体像を可視化し、将来のあるべき姿を設定して、会社全体の最適化を行うための考え方や構造のことです。企業の情報システムの標準化、組織や業務手順の最適化を行い、 効率よい組織の運営を図るための方法論を指します。エンタープライズアーキテクチャは、以下4つの体系から構成されています。

1. ビジネスアーキテクチャ(BA)

政策や業務体系について、合理化や共通化といった実現すべき内容を体系的を示したものです。業務説明書や機能構成図、業務フローなどが作成物として挙げられます。

2. データアーキテクチャ(DA)

業務やシステムで利用されるデータの内容やデータの関連性を体系的に示したものです。エンティティ・リレーション図や情報体系クラス図などが作成物として挙げられます。

3. アプリケーションアーキテクチャ(AA)

最適な情報システムの形態やシステムと業務要件の対応関係、個別システム間の互換性を体系的に示したものです。情報システム機能構成図や情報システム関連図などが作成物として挙げられます。

4. テクノロジアーキテクチャ(TA)

技術の変化を考慮し、システムを構築する際に採用すべき ハード・ソフト・ ネットワーク等の技術的構成要素を体系的に示したものです。ネットワーク構成図やソフトウェア構成図などが作成物として挙げられます。

エンタープライズアーキテクチャに関する問題は、エンタープライズアーキテクチャの説明として正しいものを選択する問題や構成する4つの体系について問われる出題が多い傾向にあります。以下は、平成31年春期の基本情報技術者試験に出題された問題です。

エンタープライズアーキテクチャを構成するアプリケーションアーキテクチャについて説明したものはどれか。

ア. 業務に必要なデータの内容,データ間の関連や構造などを体系的に示したもの イ. 業務プロセスを支援するシステムの機能や構成などを体系的に示したもの ウ. 情報システムの構築・運用に必要な技術的構成要素を体系的に示したもの エ. ビジネス戦略に必要な業務プロセスや情報の流れを体系的に示したもの

出典:基本情報技術者試験 平成31年春期 問61

上記の説明を踏まえると、アプリケーションアーキテクチャは情報システムの形態や情報システムの機能について示されたものですので、答えはイ.となります。

選択肢の中で最も間違いやすいのが、ウ.の説明文でしょう。この説明文は、『必要な技術的構成要素を示したもの』とあり、テクノロジアーキテクチャの説明文となります。情報システムに関する説明文のうちに『技術的構成要素』と文言がある場合は、テクノロジアーキテクチャをことを指していますので、重要なポイントととして覚えておきましょう。

おわりに

今回は基本情報技術者試験のストラテジ系分野においてよく出る『著作権』と『エンタープライズアーキテクチャ』について解説されていただきました。今回ご紹介した以外にも、市場に製品・サービスを導入してから衰退までの過程を、導入期、成長期、成熟期、衰退期の4つのプロセスで示す『プロダクトライフサイクル』の特徴やサービスを必要に応じて組み合わせ、新たなシステムを構築する設計手法である『SOA』の説明に関する問題もよく出る問題となっています。ストラテジ系分野においては、用語や問題文に対して正しいものを選択する問題が多く出題される傾向になっていますので、それぞれの用語を理解し、様々な言い回しに対応できるようになることが重要です。たくさん過去問題を解いて知識の定着をしていきましょう。今回ご紹介した内容が皆様のお役に立てれば幸いです。ありがとうございました。