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はじめに

ITエンジニアの登竜門とされる基本情報技術者試験ですが、その出題範囲は経営戦略の知識や計算問題までと多岐に渡っており、途中で挫折してしまいそうになる方も多いのではないでしょうか?かくいう筆者も同じく、分厚い参考書を読むのに大幅な時間を要しました。そこで効率的に学習を進めるために、基本情報技術者試験の午前問題のうち、過去問題に頻出されているマストで学習を行うべき項目について、出題分野ごとに解説してまいります。今回はテクノロジ系編です。

午前試験の出題範囲

まず、基本情報技術者試験の出題範囲について解説いたします。午前の部・午後の部と分かれており、両方の受験が必須となりますが、今回は午前試験の出題範囲であるテクノロジ系・マネジメント系・ストラテジ系から、テクノロジ系にフォーカスしていきます。

テクノロジ系(80問中50問出題)

テクノロジ系は、出題数が他分野より多く、正答率が高ければ合格にぐっと近づける分野といえるでしょう。出題数が多い分、範囲も広くなっていますが、約7割は過去問題と同じテーマで出題される傾向にあります。

  • 基礎理論
  • アルゴリズムとプログラミング
  • コンピュータ構成要素
  • システム構成要素
  • ソフトウェア
  • ハードウェア
  • ヒューマンインターフェイス
  • マルチメディア
  • データベース
  • ネットワーク
  • セキュリティ
  • システム開発技術
  • ソフトウェア開発管理技術

このように理系から文系の知識までを問われる基本情報技術者試験ですが、過去問題を攻略することができれば、合格できる試験でもあることがわかります。次に、過去問題の中で出題頻度の多い問題について、解説していきます。

テクノロジ系の出題傾向について

基本情報技術者試験のテクノロジ系においては、計算問題が必ず出題されます。特に稼働率、MIPSやクロック周波数、再帰関数についての問題がよく出る問題として挙げられます。計算問題以外でも、論理回路図やLAN間接続装置、SQL(SELECT文)についてもよく出題され、文系出身者にとっては苦手分野になりやすいのがテクノロジ系です。今回は、過去10年間で15回以上出題されている、稼働率・LAN間接続装置について解説していきます。

稼働率の計算

稼働率は、基本情報技術者試験の出題範囲中、テクノロジ系のシステム構成要素に分類されます。稼働率とは、システムがトラブルなく正常に動作している時間の割合のことです。稼働率が高いほど品質や信頼性の高いシステムであることを表します。稼働率の問題を解く際にポイントとなるのは、システムが『直列でつながっているか』『並列でつながっているか』を見極めることです。直列か並列かを見極めることができれば、公式に数値を当てはめることで稼働率の計算が可能です。では、実際の過去問題を解いてみましょう。

以下は、令和元年秋期の基本情報技術者試験に出題された問題です。

2台の処理装置から成るシステムがある。少なくともいずれか一方が正常に動作すればよいときの稼働率と、2台とも正常に動作しなければならないときの稼働率の差は幾らか。ここで、処理装置の稼働率はいずれも0.9とし、処理装置以外の要因は考慮しないものとする。

ア. 0.09 イ. 0.10 ウ. 0.18 エ. 0.19

出典:基本情報技術者試験 令和元年秋期 問16

この問題は、稼働率の差を計算する問題となっており、問題文に記載されているそれぞれのシステムの稼働状況が、直列か並列か見極めることが必要です。計算方法を順を追って解説していきます。

①並列システムの稼働率の計算

ひとつめの稼働状況である『少なくともいずれか一方が正常に動作すればよいとき』というのは、2台中1台がトラブル等で正常に稼働していなくても、システム全体は正常に稼働できているということです。よって、並列システムの稼働率を導き出す必要があるとわかります。

並列システムの稼働率は、1ー (1ー R)xの公式を使い、稼働率を求めます。 Rには稼働率、xは装置の台数を挿入します。 今回の問題では、装置は2台、装置の稼働率はいずれも0.9になりますので、公式に当てはめると計算式は以下になります。

1ー((1ー0.9)(1ー0.9))=0.99 よって、『少なくともいずれか一方が正常に動作すればよいとき』の稼働率は、0.99となります。

②直列システムの稼働率の計算

次に、もうひとつの稼働状況である『2台とも正常に動作しなければならないとき』の稼働率を求めます。すべての装置が稼働していないとシステムが正常に稼働しないことから、直列システムであることがわかります。

直列システムの稼働率は、Rxの公式を使い、稼働率を求めます。 並列システムと同様に、Rには稼働率、xは装置の台数を挿入します。公式に当てはめると計算式は以下になります。

0.9 × 0.9=0.81 よって、『2台とも正常に動作しなければならないとき』の稼働率は0.81となります。

③並列・直列システムの稼働率の差分の計算

最後に、『少なくともいずれか一方が正常に動作すればよいとき』と『2台とも正常に動作しなければならないとき』の差分を計算します。①と②で導き出した稼働率の差分を求めればいいだけなので、計算式は以下になります。 0.99 - 0.81 = 0.18 よって、答えはウ.0.18となります。

このように、問題文からシステムの稼働状況が直列か並列かを見極めることができれば、公式に当てはめて計算するだけとなります。計算問題であっても文章の読解力を養うことさえできれば、確実に答えられる問題となるので、稼働率の問題を複数解いて、問題文を正確に読み取れるよう練習を重ねることが大切です。

LAN間接続装置

LAN間接続装置は、基本情報技術者試験の出題範囲中、テクノロジ系のネットワークに分類されます。問題は計算問題ではなく、ア~エ4つの選択肢の中から正しい記述を選択する問題が多い傾向です。LAN間接続装置の問題のポイントとなるのは、ゲートウェイ・ルーター・ブリッジ・リピーターの4つの接続装置の機能を適切に覚えることです。では、実際の過去問題を解いてみましょう。

以下は、平成30年秋期の基本情報技術者試験に出題された問題です。

LAN間接続装置に関する記述のうち,適切なものはどれか。

ア. ゲートウェイは,OSI基本参照モデルにおける第1~3層だけのプロトコルを変換する。 イ. ブリッジは,IPアドレスを基にしてフレームを中継する。 ウ. リピータは,同種のセグメント間で信号を増幅することによって伝送距離を延長する。 エ. ルータは,MACアドレスを基にしてフレームを中継する。

出典:基本情報技術者試験 平成30年秋期 問32

LAN間接続装置の問題は、4つの接続装置の機能を覚えることで簡単に解くことができます。

①ゲートウェイの機能

ゲートウェイとは、トランスポート層(第4層)以上において異なるネットワーク間で、プロトコル変換による中継機能を提供する装置です。日本人と外国人が会話する際に異なる言語を翻訳してくれる通訳士のようなイメージを想像するとわかりやすいでしょう。ネットワークでは、異なるプロトコル同士では通信を行うことができませんが、このゲートウェイを設置することでお互いに通信ができるようになります。

以上を踏まえると、アの記述は『OSI基本参照モデルにおける第1~3層だけ』が間違いになりますので、不適切となります。

②ブリッジの機能

ブリッジとは、データリンク層(第2層)のLANとLANを接続するための中継機能を提供する装置です。流れてきたパケットのMACアドレスを確認し、橋渡しのする必要のあるものだけ中継を行います。中継パケットはCSMA/CD方式に従って中継され、ネットワークの利用率向上に役立ちます。

以上を踏まえると、イ. の記述は『IPアドレスを基にして』が間違いとなりますので、不適切となります。

③リピータの機能

リピータとは、物理層(第1層)でケーブルを流れる電気信号を増幅して中継機能を提供する装置です。LANの規格では、方式ごとにケーブルの総延長距離が定められており、それ以上の距離だと信号がゆがんでしまうため、正常に通信することができません。リピータを設置することで、この信号を増幅・整流し、LANケーブルの総延長距離を伸ばすことができるため、信号のゆがみを解消し、通信を可能とします。

以上を踏まえると、ウ. の記述は適切となります。

④ルータの機能

ルータとは、ネットワーク層(第3層)の異なるネットワーク間の中継機能を提供する装置です。流れてきたパケットのIPアドレスを確認し、最適な経路へとデータを転送します。②のブリッジはMACアドレスを確認できる範囲で中継を行うのと比べて、ルータはIPアドレスを確認し中継を行うため、異なるネットワーク間でのデータ転送を可能とします。

以上を踏まえると、エ.の記述は『MACアドレスを基にして』が間違いとなりますので、不適切となります。

今回は平成30年秋期の問題を解説いたしましたが、実は平成27年春期にも全く同じ問題が出題されていました。LAN間接続装置の問題は、OSI基本参照モデルのどの層で機能するかということもポイントになっていますので、機能と一緒に覚えるといいでしょう。

おわりに

今回は基本情報技術者試験の午前問題、テクノロジ系に関する頻出問題について解説させていただきました。他分野に比べて出題数が多い分野となり、計算問題も含まれ、苦手意識を持つ人も多い分野となりますが、約7割は過去問題と同テーマで出題されています。今回ご紹介できなかったMIPや論理回路図に関する問題も通年頻出問題となっていますので、ぜひ繰り返し過去問題を解いて、ポイントを押さえて学習を行ってみてください。本記事がみなさまの合格へ貢献できれば幸いです。ありがとうございました。