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はじめに

IT技術の進歩・普及により、高度なIT人材は今やどの企業にとって不可欠な存在となっています。ITの基本的知識を保有することを証明する資格として、基本情報技術者試験の合格を目指す方も多いでしょう。基本情報技術者試験は、経営戦略といった知識的な問題や計算問題までと多岐に渡っております。今回は、基本情報技術者試験の午前問題のうち、過去問題に頻出されているマストで学習を行うべきマネジメント系分野の問題について、解説を行ってまいります。

午前試験の出題範囲

まず、基本情報技術者試験の出題範囲について解説いたします。午前の部・午後の部と分かれており、両方の受験が必須となりますが、今回は午前試験の出題範囲であるテクノロジ系・マネジメント系・ストラテジ系から、マネジメント系にフォーカスしていきます。

マネジメント系(80問中10問出題)

マネジメント系では、システム開発やサービスの提供におけるマネジメントの手法やスケジュール管理、コストの見積方法などが出題範囲となっています。約8割は過去問題と同テーマで出題される傾向です。

  • プロジェクトマネジメント
  • サービスマネジメント
  • システム監査

プロジェクトマネジメントは主にプロジェクトのスコープや時間・コストの管理、サービスマネジメントではサービスの運用や設計・移行、システム監査では、監査報告書の内容や監査人、内部統制といった内容が出題範囲となっております。マネジメント系は他分野に比べて出題数は少ないものの、過去問題と約8割が同テーマで出題されており、合格のために確実に点数をとっておきたい分野です。次に、過去問題の中で出題頻度の多い問題について、解説していきます。

マネジメント系の出題傾向について

基本情報技術者試験のマネジメント系分野は、出題範囲は、プロジェクトマネジメント・サービスマネジメント・システム監査の3つです。例年この3つの分類から均等に問題が出題されておりますが、3つの出題分類をさらに小分類に分けると、システム監査は2つ、サービスマネジメントは5つに対して、プロジェクトマネジメントは11と、プロジェクトマネジメントの出題範囲が広いことが特徴となっております。筆者は大学で経営学部を専攻しておりましたが、同じマネジメントといっても、プロジェクトマネジメントは企業活動よりプロジェクトやシステム開発に沿ったものが多く、新たに学ぶことも多い分類科目でした。出題範囲が広い分、過去問題の頻出問題を重点的に理解を深め、確実に点数をとれるよう、効率的な学習が必要となります。今回は、そんなプロジェクトマネジメントにおいて過去問題に頻出していた問題の解説を行います。

アローダイヤグラム

アローダイヤグラムとは、作業の流れとプロジェクトに要する日数を表した図のことです。アローダイヤグラムに関する問題は、これまでの10年間で約18回の出題がされており、解き方さえわかれば簡単に解答できる難易度の低い問題となっています。

以下は、平成31年春期の基本情報技術者試験に出題された問題です。

アローダイアグラムの日程計画をもつプロジェクトの,開始から終了までの最少所要日数は何日か。

アローダイヤグラムの画像

出典:基本情報技術者試験 平成31年春期 問53

まず、問題文の『開始から終了までの最少所要日数』について理解をすることが大切です。これは、アローダイヤグラム中のA~Jの作業がすべて完了するために必要な最小の日数を指しています。この問題では、Aの作業が終了後から作業が分かれており、B・C・Dから始まる3つの経路が存在します。これら3つの経路は分岐後、並行して作業が可能ということです。つまり、3つの経路のうち最も長い日数がプロジェクトの最小所要日数となります。ここまでわかったら、あとは3つの経路の所要日数を計算するだけで問題を解くことができます。

①A→B→E→H→Jの経路

Aの所要日数 + Bの所要日数 + Eの所要日数 + Hの所要日数 + Jの所要日数 = 2 + 2 + 2 + 2 + 4 = 12日

②A→C→F→I→Jの経路

Aの所要日数 + Cの所要日数 + Fの所要日数 + Iの所要日数 + Jの所要日数 = 2+1+3+1+4=11日

③A→D→Gの経路

Aの所要日数 + Dの所要日数 + Gの所要日数 = 2+4+3=9日

よって、①A→B→E→H→Jの経路の所要日数12日が、3つの経路のうち最も長い日数であり、プロジェクトの『開始から終了までの最少所要日数』ですので、答えはエ.12となります。

アローダイヤグラムのうち、最長日数を必要とする経路のことをクリティカルパスといいます。クリティカルパスは直訳すると『重大な経路』という意味で、この経路の作業が遅れてしまうと、プロジェクト全体のスケジュールが遅れてしまう経路です。逆にいうと、クリティカルパス以外の経路は、多少作業が前後してもプロジェクト全体のスケジュールには大きな影響が出ない経路といえます。アローダイヤグラムの問題には日数を解答する問題以外にも、クリティカルパスはどれかを解答する問題も出題されていますので、クリティカルパス=最長日数であることを覚えておきましょう。

WBS(Work Breakdown Structure)

WBS(Work Breakdown Structure)とは、プロジェクトに必要な作業を階層化して表した図のことで、プロジェクトの作業範囲(スコープ)を把握するために使用されます。WBSに関する問題は過去10年間で約9回出題されいます。特に出題されている内容は、WBSを使用する目的について適切なものを選択する問題です。WBSを使用するメリットや役割について理解が解答のポイントとなります。

以下は、平成30年秋期の基本情報技術者試験に出題された問題です。

ソフトウェア開発プロジェクトにおいてWBS(Work Breakdown Structure)を使用する目的として,適切なものはどれか。

ア. 開発の期間と費用がトレードオフの関係にある場合に,総費用の最適化を図る。 イ. 作業の順序関係を明確にして,重点管理すべきクリティカルパスを把握する。 ウ. 作業の日程を横棒(バー)で表して,作業の開始や終了時点,現時点の進捗を明確にする。 エ. 作業を階層的に詳細化して,管理可能な大きさに細分化する。

出典:基本情報技術者試験 平成30年秋期 問51

この問題は、WBSの目的や特徴について理解をしていれば、簡単に解ける問題となっています。

WBSの目的と特徴

WBSとは、プロジェクトにおいて成果物を主体とし、実行すべき作業内容を過不足なく、細分化・階層化して図で表したものです。

WBSの画像

このようにシステムの開発やプロジェクトにおいて、細かい単位で作業を分割することによって、プロジェクトチームの作業が単純化でき、把握しやすくなります。作業の漏れを防ぐこと・細分化した作業ごとに日程や目標を設計できることでプロジェクトのコントロールを行いやすくすることが目的です。

これらの特徴と目的を踏まえると、『作業を階層的に詳細化して,管理可能な大きさに細分化する。』といったWBSの特徴と目的がそのまま記載されている エ が正解となります。

また、WBSに関する問題でよく出る用語に、ワークパッケージがあります。

ワークパッケージとは

ワークパッケージとは、WBSにおいて最下層の作業を指します。例えば、上の図の[画面設計]の作業をさらに細分化すると、[画面レイアウト設計][画面フロー設計]などに分けることができます。こういった上段の作業をこれ以上細分化できないところまで詳細化した作業がワークパッケージです。ワークパッケージはWBSで定義するべき内容であり、担当する人員の配置はこのワークパッケージを基準に取り決めることがよいとされています。WBSで定義するものはどれかを選択する問題において、このワークパッケージがポイントとなりますので、併せて覚えておきましょう。

おわりに

今回は基本情報技術者試験のマネジメント系分野において、頻出問題となっているアローダイヤグラムとWBSについて解説させていただきました。今回ご紹介した以外にも、プロジェクトに要する全工数は何人月かを問われる工数計算の問題や、プログラムの開発規模を見積もるファンクションポイント法についての問題もよく出る問題となっています。マネジメント系分野とはいえ計算問題の出題も多いですが、計算自体は複雑でないものが多いことが特徴ですので、ぜひチャレンジしてみてください。今回ご紹介した内容が皆様のお役に立てれば幸いです。ありがとうございました。