支援対象地域:札幌、仙台、関東、愛知、関西、広島、福岡


はじめに

アイキャッチ

システム開発における工程の中でも、システム運用とシステム保守はやや境界線の曖昧な業務で「運用・保守」と一括りにされる事も多いですが、その役割には明確な違いがあります。
そこで今回は、システム運用とシステム保守のそれぞれの概要や違いについて紹介していきます。

概要

システム運用

簡潔にいうと、システム運用とは「システムを日々稼働させること」です。

日々の業務をスムーズに進めるためには、正常なシステムの稼働が不可欠です。ユーザーがシステムを問題なく使用できるように日々管理し、システム障害や不正アクセスのようなトラブルが起きないよう監視しています。保守や他の工程に比べて作業が定型化されているため、比較的ルーティンワークが多い業務と言えます。トラブルの発生していない平常時に行っている作業と知っていると分かりやすいでしょう。

会社や現場によってはシステム運用管理やシステム維持と呼ばれることもあります。

システム保守

システム運用が「システムを日々稼働させること」であるならば、システム保守は「システムにトラブルが発生した時に対応すること」「システムに変更を加えること」です。

日々のシステムの正常な稼働を目的としているシステム運用と異なり、システム保守はトラブル発生時の復旧対応、システムの変更・アップデート及びメンテナンスが主な業務です。システムを監視しトラブル発生を検知するのは運用担当ですが、トラブルからの復旧作業や原因究明については保守担当が行います。

業務の特性上定型化された作業は少なく、トラブル対応やメンテナンスなどイレギュラーな作業が多いのが特徴です。

会社や現場によって「システム運用」と「システム保守」の定義はやや異なりますが、大元の目的はどちらも「システムを安定して稼働させ日々の業務を円滑にすること」にあります。それぞれの役割を明確にし、連携を図ることが大切です。

仕事内容

システム運用

監視

システム運用におけるメイン業務です。24時間365日システムの稼働状況を確認し、トラブルの発生や不正アクセス、ウィルスを検知します。

運用方法の改善

ユーザーの要望や課題をヒアリングし、それをもとにシステムに改善できる箇所がないか、運用方法を変更するべきかどうか、検討・提案します。

バックアップ

システムを運用する中で蓄積されたデータをストレージやテープ装置に定期的にバックアップします。大抵の場合、バックアップをシステム運用の業務の一部として扱いますが、システム保守の業務として扱われることもあります。

ソフトウェアやOSのバージョン管理

大規模なシステムになると、システムの中で稼働するOSやソフトウェアは膨大な数になります。それぞれのOSやソフトウェアのバージョンを把握・管理し、適切なタイミングでのバージョンアップやパッチ適用の計画を立てることも業務の一つです。

運用レポートの作成及び報告

システム運用はユーザーが自ら携わるか、外部に委託するかのどちらかになります。

どちらの場合でも、業務にシステムの監視結果のレポート作成及び報告が含まれていることが多いです。レポートの項目や内容は実際の現場やシステムによって異なりますが、一般的にCPUやメモリの使用率やディスクやネットワークの使用量、発生したトラブル一覧及び原因や対応状況、ユーザーからの問い合わせ件数などがあります。

システム保守

トラブル発生時の復旧作業

トラブル発生時にシステムの復旧作業を行います。

具体的な作業としては、サーバの再起動や、 ソフトウェアへの修正パッチの適用などがあります。機器の故障や想定外の動作が起きた場合の対応など、定型化できない作業が多く臨機応変に対応できる高度なスキルが求められます。

ソフトウェアやOSのバージョンアップ及びパッチ適用

ソフトウェアやOSのバージョン管理はシステム運用の業務として扱われますが、バージョンアップやパッチ適用に関してはシステム保守の業務として扱われます。

新しいプログラムやシステムの導入

新しいプログラムやシステムの導入など、システムの改修や調整などシステムに変更を加える作業は保守担当者の仕事です。

例えば、トラブル対応やデータベースのチューニング、機器のリプレースなども作業範囲に含まれています。機器の故障や想定外の動作をした場合のような、イレギュラーへの対応も担当します。

求められるスキル・知識

システム運用

ITシステムの知識

運用や操作のマニュアルは用意されていますが、実際に運用していくにはそのシステムの構成や仕様を深く理解しなくてはなりません。そのためにサーバーやネットワークをはじめとしたITシステムの全体的な知識が必要です。

また、IT業界は日々進化し、複雑かつ多様化しています。それに伴い、サーバーやネットワーク環境や構成も見直されています。今後を考えると、近年のクラウド化に伴う仮想化技術のような、新しい技術やシステムの知識を日々学ぶ姿勢も必要となるでしょう。

コミュニケーション能力

システムや運用方法の改善箇所を見つけていくためには、システムを実際に使用するユーザーの要望や課題をヒアリングし、同じ運用担当者からの意見や不満を引き出さなくてはなりません。円滑にコミュニケーションを取れる能力は必須といえます。

業務やシステムの全体を把握する能力

システム運用において、業務及びシステムの全体を把握することは重要です。

どんな業務にシステムがどう関わっているか、どう操作すると業務を行えるかを理解した上で日々の業務を行ないます。トラブルが発生した場合、システムの状態はどうなっていたのか、どんな操作をしてトラブルになったのかを把握していることで早い段階での解決につながります。

正確に業務を行う能力

システム運用における手順や操作のミスは、業務の遂行及びシステムの稼働に多大な影響を与えることがあります。そのため、ミスは許されません。システムや業務の全体を把握した上で、正確に操作する能力が必要です。

システム保守

ITシステムの知識

保守担当者はシステムに関してより深い知識と技術が求められます。不具合やトラブルへの対応力は知識や経験により培われるものであるためです。

コミュニケーション能力

トラブルから復旧させるために、トラブルの発生状況、前後の状況について正確かつ迅速にヒアリングし原因を探る必要があります。また、システムに関する問い合わせに対応したり、他の保守担当者と連携して対応にあたることもあるので、コミュニケーション能力は必要です。

システムの仕組みを理解するスキル

システムの変更やアップデートを行う際には、もちろん手順書が用意されますが、それらの変更が影響する機能を把握しておかなくてはなりません。また、万が一トラブルが起きたときのための対策を立てることも必要になります。

そのためにシステムの詳しい仕組みを理解するスキルが求められます。

ソースコードを読むスキル

システム保守を行う際には、システムの核となるプログラム部分に多く触れることがあります。
直接プログラミングを行うことはほぼありませんが、ソースコードを読む事で影響範囲を把握したり、不具合の原因に当たりをつけることができるため、重要なスキルといえます。

機器に関する知識

保守ではソフトウェアだけでなく機器のメンテナンスにも注意しなくてはなりません。そのためサーバーネットワーク機器ケーブルや電圧などの機器に関する知識も必要です。

トラブル対応の経験

トラブルの原因追求・迅速な解決には、システムや機器に関する知識に加え、経験が必要です。トラブルに見舞われた経験はもちろん、システム構築やプログラミング、デバッグに携わった経験も非常に役立ちます。

おわりに

以上、システム運用とシステム保守の概要や違いについて紹介してきました。

システム運用とシステム保守は混同されがちですが、前述のようにそれぞれの役割には明確な違いが見られます。運用担当と保守担当で分ける場合も、兼任する場合においても、組織内での業務の切り分けと分担は大切です。システム運用とシステム保守の違いについての認識があるとよりスムーズに進められるでしょう。